魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる

みどりぃ

65 神力

「くく、はっはっは!何かっこつけてるんだ!」

“もうっ、レオン!今は基本的にこの話し方なの!”

 とうとう我慢出来なくなったのか、口を開けて笑うレオンに、顔が見えたら頬を膨らませていると想像出来るような拗ねたような話し方のアリア。

 気心が知れた仲というのが伝わる会話は、しかしロイドの中の2人のイメージを大きく揺るがすものでもあった。

(なんか俺と如月みてーだな……てかここ繋がってたんか?)

 ロイドは前世の黒川涼だった頃の自分と後輩だった如月愛を思い返しつつ、2人の関係に首を傾げる。

 レオンは不死者である。
 それはつまり不老不死であり、であれば昔の仲間だったりしたのかと考えてみる。

 が、それだとアリアはどうなのか。
 女神なら永く生きるとかするかも、と勝手なイメージで想像するが、本人も女神でないと否定していたし普通の人族なのだろう。

 ならどこで知り合ったのか?てかアリア何歳?

“ごほんっ!…とにかく!空間魔術を使いこなして、私の所に遊びに来てくださいね!”

「はーっはっは!それが目的か!そんな理由で幻の魔術が復活するとはな!」

 空気を変えようとしたアリアが漏らした本音に、レオンは更に大きく笑う。
 腹を抱えて笑うレオン。図星だったのか、アリアはう〜っと唸っており、これといった反撃は出来てなかった。

 色々浮かぶ疑問にフリーズしかけているロイドは、整理しようと頭を押さえつつ提案する。

「待て待て、それより色々聞きたい事があるんだけど」
「あー…空間魔術に使う魔力ではない燃料は何か。アリアと俺の関係。アリアと話せている事。ってところか?」

 笑いの余韻を残しつつ、ロイドの質問内容を先回りするレオン。
 ロイドはなんだかんだで伊達に長生きしてねーな、と思いつつ、言葉を付け足す。

「……あと、幻の魔術ってのかな」

 “ではまず順に説明しましょうか。まず空間魔術の行使にあたって、私は魔力ではなく神力というものを用いてます”

「じんりょく…?」
「魔力とは次元の違う力だ。神の如き力を得る事が出来るという言い伝えから、神力と呼ばれるようになった。極稀に扱えるやつがいんだよ」

“ええ。と言っても実際は魔力より高エネルギーの力というのが本質で、あとはいくつか特徴がある程度ですがね”

 アリアの言葉にレオンが付け足し、競うかのようにアリアが説明する。
 
「なるほど。その、神力?ってのを使えば空間魔術ももっと楽に使えるってワケか」

“.そうです。そして、その力は涼さん、あなたにも扱えます”

「え?マジ?」

 さらっと述べられた言葉にロイドは驚く。
 視界の端でレオンも目を丸くしている事から、かなり重大な情報だったのではないかと思われた。

「おいアリア、マジか?なんでロイドが?」

“実は私も驚いたのですが…以前盗賊達に捕まった際、涼さん、盗賊達に追われていたでしょう?その時に顕現させまして…」

 言われて思い出す。
 確か、ゴミ捨て場に魔術具である短剣がないか探して、そこで盗賊達に追いつかれたのだ。

 何かに呼ばれる感覚がそこにあったにも関わらずそこには何もなかったが、気付いたら盗賊達は気絶していた。

 ていうかなんで知ってる?覗かれてたの?という疑問を抱くが、もしそうなら嫌すぎるので聞かなかった。
 ちなみに、たまにだが覗いているというのが真相だったりする。

「あれって、俺がやったんか…?」

“はい。恐らくそこに何か神力を顕現する要素が置かれていたのでしょう。それにより神力を顕現した事で、その特徴のひとつである『魔力を弾く』作用により盗賊達の魔力を弾き飛ばし、魔力枯渇を起こさせて気絶させたんです”

「そっか。まぁ使えるならラッキーって事で。それの使い方が分かれば空間魔術もどうにか使えそうだし」
「軽いなオイ…かなり希少な力だってのに」
「無茶言うなって。いきなり聞いた事もない力を持ってます、って言われてどう反応しろってんだ」
「まぁ、そうかも知れんがな…」

 珍しく頭を抱えるレオン。
 そこまで希少な力なのかと思いつつ、やはり実感が湧かない。

 そもそも実感はおろか扱い方すら分からないのに、実感しようもない。

“とは言え、慣れるまでは上級魔術並に扱いが困難な力です。魔術適性がある涼さんからすればどの魔術よりも難しいと言えるかも知れませんね”

 上級魔術とは言えど、魔術適性がある分発動や行使に補正がかかる。
 その為、同じ難易度ならば適性のない神力の方が扱いが難しくなる。

 それはつまり、

「扱いやすい魔術を使う為に、扱いにくい神力を使えるようにならないといけないって……うまくいかねーもんだな」

 と言う事である。
 折角の力も使いこなせない現状では持ち腐れであった。

「そうだな。お前、魔術適性とか神力とかすげぇ強力で珍しいもの持ってるのに、実質身体魔術と魔術具しか戦力ないしな」
「うるせーじじい。……でもそーなんだよな、なんでこう扱いやすい力が手に入らねーんだ」

“ふふっ、でも扱えれば大きな力になりますよ。頑張ってくださいね”

「てゆーか神力の使い方とか教えてくれよ!」

 沈んで下げていた顔を起こしてロイドは言う。
 せっかく希少な力を扱える者がここにいるのだ、聞くしかない!と思わず前のめりになる。

“そうですね…こう、体の奥の魔力とは違う力をぐいっと引っ張りだしてがっと纏める感じですかね”
「…は?」
「あー……ロイド、諦めろ。こいつは教えたりすんのは向いてねーんだ」

 あまりに綺麗な声音であまりに粗雑な説明に、ロイドは呆けていると、もっと呆れた声でレオンが吐き捨てるように言う。
 どうやらレオンの言う通りらしい。これはひどい。

“ちょ、ひどいよレオン!そんな事ないもん!”

「あ?そんな説明で出来るのなんざほっといても出来るヤツくらいだろ。お前の説明は凡人向けじゃないんだよ、天才め」

 ロイドも思っていた文句を綺麗に纏めてくれた言葉に、レオンも苦労した経験があるのかと思わざるを得ない。
 ぎゃーぎゃーとアリアが言う文句や抗議の言葉を受け流しながらレオンは口を開く。

「まぁ神力は俺も扱えん。地道にやっていくしかないだろうな」

 だよねー、と頷きつつも、ロイドは溜息を堪えられないのであった。

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