魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
58 ウィンディア家にて
時は遡り、ロイドがレオンに預かられて3日後。
王都から帰還したルーガス、シルビア、フィンクは帰宅してロイドがいない事に気付き、そしてエミリーから話を聞いていた。
「――ってワケ。だから1年くらいしたら帰ってくるはずよ」
「…………」
話を聞き思案するような、悩むような表情で沈黙するルーガス。
その横のシルビアも似たような表情だ。
「……ふざけるな」
だが、同じ沈黙でもフィンクは違った。
怒りを堪えるような沈黙の後、絞り出したような声音で呟く。
「父上、今すぐロイドを迎えに行きましょう。僕も行きます」
「…………」
目を向けずにルーガスを呼ぶフィンクだが、ルーガスは変わらず声を発さない。
それに焦れたのか、フィンクはルーガスを睨むかのように目を向ける。
「父上!」
「フィンク、落ち着け、らしくもない」
「これが落ち着いてられますか!」
諫める言葉にむしろ激昂するように声が大きくなるフィンク。
普段怒るどころか声を荒げる事さえ少ないフィンクの怒声にも似た声に、ローゼが泣きそうに顔を歪ませる。
「落ち着け。……『死神』レオンは、俺の師匠だ」
「…え?」
「ええっ?!」
あまりに予想外の言葉にさすがのフィンクも怒りを忘れる程驚愕する。
黙って聞いていたエミリーも驚き声を上げた。
「俺もあの人のもとで強くなった。だから大丈夫だ。ロイドもきっと強くなって帰ってくるだろう」
「……そうね。1年も会えないのは寂しいけど、あの子が自分で行ったのなら応援しないといけないわね」
 シルビアもそれを知っていたのか、覚悟を決めたかのように顔を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってお父さん!って事はお父さんでもあいつには勝てないの?!」
エミリーは焦ったようにルーガスに詰め寄る。
エミリーがロイドをあそこまであっさり送り出せた理由のひとつには最悪の場合はルーガスやシルビアに頼ればレオンを倒していつでもロイドを取り戻せる、という考えがあったからである。
「勝てんな。不死を相手に勝つこと自体が厳しい上に、単純な実力差でも及ばないだろう」
「……そんな……」
その考えが実行出来ない事と、最強と疑わなかった父ルーガスでも勝てないという事実に言葉を無くすエミリー。
同じくルーガスより強い存在がいる事に衝撃を受けていたフィンクが口を開く。
「父上でも…そんな人が居るんですね……しかし、父上が師事する程の相手なら心配しなくても大丈夫…ですかね」
「あぁ、あの人はあれでいて教えるのが上手いし、優しい。無理な扱いをされて命を落とすといった心配はないだろう」
「…それなら、良かった。でしたらむしろ帰ってきたロイドに負けないように強くなっておかないといけませんね」
衝撃の事実で怒りがとんでいたフィンクだったが、ルーガスの言葉で落ち着いたようだ。
それなら、とすぐに切り替えてしまえるのはフィンクの強みであり、
「……っ、もちろんよ!むしろ遅れようものならあの銀髪ごと叱りに行けるくらい強くなってみせるわ!」
エミリーの強さでもある。
特にエミリーは今回の騒動で一段と成長したと言えよう。
それに気付いたのか、ルーガスとシルビアも目を瞠っている。
「エミリー、私達がいない間にこんな事になって大変だったでしょう。ごめんなさいね…でも、強くなったわね。無事で帰ってくれてありがとう」
「当たり前じゃない。私はウィンディア家長女でお父さんとお母さんの娘よ?」
そう言って笑うエミリーにシルビアは微笑み、ルーガスがおもむろにエミリーの頭を撫でる。
言葉にはせずとも、それがよくやった、と言われているような気がして、エミリーは嬉しそうに目を細めて大人しく撫でられていた。
その後、話が落ち着いた頃には日は沈み始めており、夕飯の支度をしてそれを済ませた4人。
長旅の疲れかフィンクが眠そうにしており、シルビアの言葉でエミリーも含め寝かしつけられた。
そしてリビングに残ったルーガスとシルビアは、父と母としての柔らかい表情を変えて神妙な面持ちで口を開く。
「……ロイドは知ったかしらね?」
「かも知れんな。だが関係ない、あいつは俺達の息子だ」
「えぇそうね。でも、落ち込んでないといいけど」
「……俺達は帰ってきた時しっかりと迎えてやればいい」
「……ふふっ、そうね」
血の繋がらない息子の帰りを2人は笑顔で迎えると決めた。
王都から帰還したルーガス、シルビア、フィンクは帰宅してロイドがいない事に気付き、そしてエミリーから話を聞いていた。
「――ってワケ。だから1年くらいしたら帰ってくるはずよ」
「…………」
話を聞き思案するような、悩むような表情で沈黙するルーガス。
その横のシルビアも似たような表情だ。
「……ふざけるな」
だが、同じ沈黙でもフィンクは違った。
怒りを堪えるような沈黙の後、絞り出したような声音で呟く。
「父上、今すぐロイドを迎えに行きましょう。僕も行きます」
「…………」
目を向けずにルーガスを呼ぶフィンクだが、ルーガスは変わらず声を発さない。
それに焦れたのか、フィンクはルーガスを睨むかのように目を向ける。
「父上!」
「フィンク、落ち着け、らしくもない」
「これが落ち着いてられますか!」
諫める言葉にむしろ激昂するように声が大きくなるフィンク。
普段怒るどころか声を荒げる事さえ少ないフィンクの怒声にも似た声に、ローゼが泣きそうに顔を歪ませる。
「落ち着け。……『死神』レオンは、俺の師匠だ」
「…え?」
「ええっ?!」
あまりに予想外の言葉にさすがのフィンクも怒りを忘れる程驚愕する。
黙って聞いていたエミリーも驚き声を上げた。
「俺もあの人のもとで強くなった。だから大丈夫だ。ロイドもきっと強くなって帰ってくるだろう」
「……そうね。1年も会えないのは寂しいけど、あの子が自分で行ったのなら応援しないといけないわね」
 シルビアもそれを知っていたのか、覚悟を決めたかのように顔を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってお父さん!って事はお父さんでもあいつには勝てないの?!」
エミリーは焦ったようにルーガスに詰め寄る。
エミリーがロイドをあそこまであっさり送り出せた理由のひとつには最悪の場合はルーガスやシルビアに頼ればレオンを倒していつでもロイドを取り戻せる、という考えがあったからである。
「勝てんな。不死を相手に勝つこと自体が厳しい上に、単純な実力差でも及ばないだろう」
「……そんな……」
その考えが実行出来ない事と、最強と疑わなかった父ルーガスでも勝てないという事実に言葉を無くすエミリー。
同じくルーガスより強い存在がいる事に衝撃を受けていたフィンクが口を開く。
「父上でも…そんな人が居るんですね……しかし、父上が師事する程の相手なら心配しなくても大丈夫…ですかね」
「あぁ、あの人はあれでいて教えるのが上手いし、優しい。無理な扱いをされて命を落とすといった心配はないだろう」
「…それなら、良かった。でしたらむしろ帰ってきたロイドに負けないように強くなっておかないといけませんね」
衝撃の事実で怒りがとんでいたフィンクだったが、ルーガスの言葉で落ち着いたようだ。
それなら、とすぐに切り替えてしまえるのはフィンクの強みであり、
「……っ、もちろんよ!むしろ遅れようものならあの銀髪ごと叱りに行けるくらい強くなってみせるわ!」
エミリーの強さでもある。
特にエミリーは今回の騒動で一段と成長したと言えよう。
それに気付いたのか、ルーガスとシルビアも目を瞠っている。
「エミリー、私達がいない間にこんな事になって大変だったでしょう。ごめんなさいね…でも、強くなったわね。無事で帰ってくれてありがとう」
「当たり前じゃない。私はウィンディア家長女でお父さんとお母さんの娘よ?」
そう言って笑うエミリーにシルビアは微笑み、ルーガスがおもむろにエミリーの頭を撫でる。
言葉にはせずとも、それがよくやった、と言われているような気がして、エミリーは嬉しそうに目を細めて大人しく撫でられていた。
その後、話が落ち着いた頃には日は沈み始めており、夕飯の支度をしてそれを済ませた4人。
長旅の疲れかフィンクが眠そうにしており、シルビアの言葉でエミリーも含め寝かしつけられた。
そしてリビングに残ったルーガスとシルビアは、父と母としての柔らかい表情を変えて神妙な面持ちで口を開く。
「……ロイドは知ったかしらね?」
「かも知れんな。だが関係ない、あいつは俺達の息子だ」
「えぇそうね。でも、落ち込んでないといいけど」
「……俺達は帰ってきた時しっかりと迎えてやればいい」
「……ふふっ、そうね」
血の繋がらない息子の帰りを2人は笑顔で迎えると決めた。
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