ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第569話【ザ・サン】
魔王城街石橋前の冒険者ギルドの酒場。
魔王城街でも一等地に建てられた建物は、一階が酒場で二階は宿屋、三階は冒険者ギルドの本部になる予定である。
一階の酒場はハンスさんがオーナーでありマスターを勤めている。
共同経営者を勤めるユキちゃんはウエイトレスのリーダーを勤めていた。
この酒場の経営権に関しては、ハンスとユキちゃんの間で特殊な契約が結ばれていた。
それは、いずれこの店の経営状態が波に乗ったら、二人は結婚して共同財産として酒場を経営することだった。
そう、二人は夫婦になるのだ。
最初はソドムタウンの酒場のマスターとウエイトレスとの関係だった二人は、いつの間にか酒場を経営する夢を語り合う仲になって意気投合して、ついつい酔った勢いでベッドを共にするまでの仲に発展していたのだ。
ユキちゃんと言えばアスランに惚れ込んでソドムタウンまで追いかけて来た娘だったはずが、いつの間にか渋いおじ様マスターに靡いてしまったのである。
歳の差15歳の夫婦になるのだ。
だが、心配は無いだろう。
二人の酒場に対しての情熱は本物だ。
その情熱が夫婦愛より大きいのだ。
だから二人は仲良くやっていけるだろう。
「暇だね、ユキちゃん……」
「そうね~、ダーリン……」
まだ昼前の客がほとんど居ない時間帯、マスターのハンスはカウンター内でグラスを丁寧に磨いていた。
体格の良いユキちゃんはカウンター席に座ったままのんびりと店内を眺めている。
店内にはホビットのアインシュタインが一人でエール酒をジョッキで煽っていた。
お摘まみはピーナッツだけである。
その側をアルバイトの凶子がウエイトレス姿でモップ掛けをしていた。
床を丁寧に磨いている。
ユキちゃんが掃除に励む凶子を眺めながらハンスに述べる。
「それにしても、いや~、良かったわ~。あんな真面目な娘がバイトに来てくれてさ~。エルフも捨てたもんじゃあないね。あたし、掃除とか苦手なんだよね」
ハンスが眉間に皺を寄せながら言葉を返す。
「ユキちゃん、掃除をバイトに任せっきりは良くないよ」
「私は掃除が苦手なの。もしもバイトが居なくなったら、マスターに掃除してもらうわよ」
「そんな~……」
「その代わり、料理は任せてね。大得意だからさ!」
「料理は私も得意だよ。何せ若いころに王都で板前修行に励んでいたぐらいだからね」
「料理は愛と筋力だ!!」
「その筋力を掃除に活用してよ」
「もう、細かいことばっかり言ってると、婚期を逃すわよ!」
二人の話を聞いていたアインシュタインが言う。
「これは、二人が結婚したら旦那は尻に敷かれまくりだな~(棒読み)」
「アインシュタインさん、やっぱりそう思いますか?」
「思う思う~(棒読み)」
「いや~、私も先が思いやられますよ、とほほ……」
「二人とも失礼だな!」
ユキちゃんが少し怒った表情をすると、掃除の手を休めた凶子が言う。
「安心してください。私は掃除が好きだから、二人が老いて引退しても、この店でバイトしながら掃除を続けて上げますから」
凶子の笑顔を見ながらハンスとユキちゃんの顔が引きつっていた。
寿命が人間の10倍は生きるエルフだから本当になりそうな話である。
「エルフのあんたが言うと、冗談に聞こえないんだけど……」
「だよね、ユキちゃん……」
アインシュタインが木のジョッキを高く翳しながら言う。
「おかわりー(棒読み)」
「はいはい、少々お待ちを~」
ハンスさんがジョッキにエール酒を盛るとユキちゃんがアインシュタインのテーブルに運んだ。
「あんまり昼間っから飲み過ぎるなよ、糞ホビット」
「大丈夫大丈夫~(棒読み)」
「ユキちゃん、頭の緩いとは言え、それでもお客様なんだから、もっと丁重に扱わないとね。じゃないとお金を絞り取れないぞ」
「お前も失礼だな~(棒読み)」
酒場内に和やかな空気が流れていた。
するとハンスが異変に気が付く。
「んん、揺れてる?」
ハンスが近くに置かれたグラスや瓶を見てみると、カタカタと揺れ出しているのだ。
「揺れているね……?」
ユキちゃんも瓶の中の酒が揺れているのを確認していた。
立っていられないほどの揺れではない。
だが、確かに揺れている。
凶子が窓から店の外を眺めてみると、外の作業員たちが揺れに困惑している様子だった。
「この揺れはなんだ~?(棒読み)」
揺れが段々と激しくなっていった。
棚からグラスや坂瓶が落ち始めると、もう立っていられない。
ハンスはカウンターにしがみつき、ユキちゃんはカウンター席を抱き抱えるようにしてしゃがみ込んだ。
アインシュタインはジョッキを盛ったままテーブルの下に隠れた。
凶子だけが、平然と立っている。
恐るべきエルフのバランス能力だ。
店内の四人が激しい揺れに怯えていると、大地の底から突き上げるような振動に身体が跳ね上がる。
刹那、店の外から爆音が轟いた。
「なんだ、今の音は!?」
「噴火か!?」
「わはー(棒読み)」
その爆音を最後に揺れが収まる。
そして、店の外を見ていた凶子が言った。
「な、なんか地面から出て来たよ……?」
三人が凶子の背後に掛け寄って窓から外を眺める。
すると店の前に巨大な何かが地面から突き出ていた。
毛だらけの薩摩芋のような身体に、大きく短足な前足は鉤爪のようで、鼻先は鑿岩機のドリルのように螺旋を描いている。
それは鋼鉄の巨大モグラのように見えた。
その鋼鉄巨大モグラの頭部に黒いフルプレートメイル姿の肥満体が乗っている。
肥満体男は胸を剃らしながらガハガハと笑っていた。
「私の名前はアルカナ二十二札衆の一人、ザ・サンを暗示する守護者、ダークネスマイナー様だ!!」
ダークネスマイナーと名乗った騎士の甲冑もマントも漆黒の一色だった。
そして、ヘルムの形は口元が尖ったモグラ形である。
外観もモグラ、乗って地底から現れた乗り物もモグラ、モグラモグラの姿である。
「くはっはっはっはっ~~!」
モグラの騎士が腰の剣を抜くと切っ先で天を指した。
ロングソードの先は太陽を指している。
「そして、世界は闇に包まれる。ザ・サン、リバース!!」
そうモグラ騎士が叫ぶと太陽が漆黒に染まる。
周囲が唐突に暗くなった。
まるで日食のような景色だった。
すると上空に岩の船が浮遊しながら流れ進んで来た。
全長100メートルはありそうな巨大な岩の船だった。
天空要塞ヴァルハラだ。
「さあ、これで準備はOKじゃわい! レッツラゴーだ~!!」
酒場の中で様子を見ていたハンスとユキちゃんが声を揃えて言った。
「「なに、あの芸人さんは?」」
「芸人じゃあ無いと思いますよ……」
凶子が力弱くツッコミを入れていた。
「でも、モグラ人間だよね~(棒読み)」
「それは否定できないわ……」
【つづく】
魔王城街でも一等地に建てられた建物は、一階が酒場で二階は宿屋、三階は冒険者ギルドの本部になる予定である。
一階の酒場はハンスさんがオーナーでありマスターを勤めている。
共同経営者を勤めるユキちゃんはウエイトレスのリーダーを勤めていた。
この酒場の経営権に関しては、ハンスとユキちゃんの間で特殊な契約が結ばれていた。
それは、いずれこの店の経営状態が波に乗ったら、二人は結婚して共同財産として酒場を経営することだった。
そう、二人は夫婦になるのだ。
最初はソドムタウンの酒場のマスターとウエイトレスとの関係だった二人は、いつの間にか酒場を経営する夢を語り合う仲になって意気投合して、ついつい酔った勢いでベッドを共にするまでの仲に発展していたのだ。
ユキちゃんと言えばアスランに惚れ込んでソドムタウンまで追いかけて来た娘だったはずが、いつの間にか渋いおじ様マスターに靡いてしまったのである。
歳の差15歳の夫婦になるのだ。
だが、心配は無いだろう。
二人の酒場に対しての情熱は本物だ。
その情熱が夫婦愛より大きいのだ。
だから二人は仲良くやっていけるだろう。
「暇だね、ユキちゃん……」
「そうね~、ダーリン……」
まだ昼前の客がほとんど居ない時間帯、マスターのハンスはカウンター内でグラスを丁寧に磨いていた。
体格の良いユキちゃんはカウンター席に座ったままのんびりと店内を眺めている。
店内にはホビットのアインシュタインが一人でエール酒をジョッキで煽っていた。
お摘まみはピーナッツだけである。
その側をアルバイトの凶子がウエイトレス姿でモップ掛けをしていた。
床を丁寧に磨いている。
ユキちゃんが掃除に励む凶子を眺めながらハンスに述べる。
「それにしても、いや~、良かったわ~。あんな真面目な娘がバイトに来てくれてさ~。エルフも捨てたもんじゃあないね。あたし、掃除とか苦手なんだよね」
ハンスが眉間に皺を寄せながら言葉を返す。
「ユキちゃん、掃除をバイトに任せっきりは良くないよ」
「私は掃除が苦手なの。もしもバイトが居なくなったら、マスターに掃除してもらうわよ」
「そんな~……」
「その代わり、料理は任せてね。大得意だからさ!」
「料理は私も得意だよ。何せ若いころに王都で板前修行に励んでいたぐらいだからね」
「料理は愛と筋力だ!!」
「その筋力を掃除に活用してよ」
「もう、細かいことばっかり言ってると、婚期を逃すわよ!」
二人の話を聞いていたアインシュタインが言う。
「これは、二人が結婚したら旦那は尻に敷かれまくりだな~(棒読み)」
「アインシュタインさん、やっぱりそう思いますか?」
「思う思う~(棒読み)」
「いや~、私も先が思いやられますよ、とほほ……」
「二人とも失礼だな!」
ユキちゃんが少し怒った表情をすると、掃除の手を休めた凶子が言う。
「安心してください。私は掃除が好きだから、二人が老いて引退しても、この店でバイトしながら掃除を続けて上げますから」
凶子の笑顔を見ながらハンスとユキちゃんの顔が引きつっていた。
寿命が人間の10倍は生きるエルフだから本当になりそうな話である。
「エルフのあんたが言うと、冗談に聞こえないんだけど……」
「だよね、ユキちゃん……」
アインシュタインが木のジョッキを高く翳しながら言う。
「おかわりー(棒読み)」
「はいはい、少々お待ちを~」
ハンスさんがジョッキにエール酒を盛るとユキちゃんがアインシュタインのテーブルに運んだ。
「あんまり昼間っから飲み過ぎるなよ、糞ホビット」
「大丈夫大丈夫~(棒読み)」
「ユキちゃん、頭の緩いとは言え、それでもお客様なんだから、もっと丁重に扱わないとね。じゃないとお金を絞り取れないぞ」
「お前も失礼だな~(棒読み)」
酒場内に和やかな空気が流れていた。
するとハンスが異変に気が付く。
「んん、揺れてる?」
ハンスが近くに置かれたグラスや瓶を見てみると、カタカタと揺れ出しているのだ。
「揺れているね……?」
ユキちゃんも瓶の中の酒が揺れているのを確認していた。
立っていられないほどの揺れではない。
だが、確かに揺れている。
凶子が窓から店の外を眺めてみると、外の作業員たちが揺れに困惑している様子だった。
「この揺れはなんだ~?(棒読み)」
揺れが段々と激しくなっていった。
棚からグラスや坂瓶が落ち始めると、もう立っていられない。
ハンスはカウンターにしがみつき、ユキちゃんはカウンター席を抱き抱えるようにしてしゃがみ込んだ。
アインシュタインはジョッキを盛ったままテーブルの下に隠れた。
凶子だけが、平然と立っている。
恐るべきエルフのバランス能力だ。
店内の四人が激しい揺れに怯えていると、大地の底から突き上げるような振動に身体が跳ね上がる。
刹那、店の外から爆音が轟いた。
「なんだ、今の音は!?」
「噴火か!?」
「わはー(棒読み)」
その爆音を最後に揺れが収まる。
そして、店の外を見ていた凶子が言った。
「な、なんか地面から出て来たよ……?」
三人が凶子の背後に掛け寄って窓から外を眺める。
すると店の前に巨大な何かが地面から突き出ていた。
毛だらけの薩摩芋のような身体に、大きく短足な前足は鉤爪のようで、鼻先は鑿岩機のドリルのように螺旋を描いている。
それは鋼鉄の巨大モグラのように見えた。
その鋼鉄巨大モグラの頭部に黒いフルプレートメイル姿の肥満体が乗っている。
肥満体男は胸を剃らしながらガハガハと笑っていた。
「私の名前はアルカナ二十二札衆の一人、ザ・サンを暗示する守護者、ダークネスマイナー様だ!!」
ダークネスマイナーと名乗った騎士の甲冑もマントも漆黒の一色だった。
そして、ヘルムの形は口元が尖ったモグラ形である。
外観もモグラ、乗って地底から現れた乗り物もモグラ、モグラモグラの姿である。
「くはっはっはっはっ~~!」
モグラの騎士が腰の剣を抜くと切っ先で天を指した。
ロングソードの先は太陽を指している。
「そして、世界は闇に包まれる。ザ・サン、リバース!!」
そうモグラ騎士が叫ぶと太陽が漆黒に染まる。
周囲が唐突に暗くなった。
まるで日食のような景色だった。
すると上空に岩の船が浮遊しながら流れ進んで来た。
全長100メートルはありそうな巨大な岩の船だった。
天空要塞ヴァルハラだ。
「さあ、これで準備はOKじゃわい! レッツラゴーだ~!!」
酒場の中で様子を見ていたハンスとユキちゃんが声を揃えて言った。
「「なに、あの芸人さんは?」」
「芸人じゃあ無いと思いますよ……」
凶子が力弱くツッコミを入れていた。
「でも、モグラ人間だよね~(棒読み)」
「それは否定できないわ……」
【つづく】
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