ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第543話【第四試合、ジェガンvsゴリ】

試合が終わった俺は逃げるように喧嘩祭り会場を出て行くと、フードを深々とかぶってから観客席の後ろから場内に入って行った。

皆に気付かれないように気を使ったのだ。

あんなに恥ずかしい結果に終わったのだからね。

まともに人には姿を晒せない。

収穫祭が終わってガルマルの町から出るまで堂々と町中を歩けないだろう。

後ろ指指されまくりだろうさ。

俺は観客席の背後からガイアやメタルキャリアの姿を探した。

「あっ、パンダゴーレムが居たぞ」

俺は人を掻き分けてガイアたちの元に進む。

「よう、ガイア」

俺はメタルキャリアに肩車されて喧嘩祭りを見ていたガイアの隣に立った。

ガイアが俺を見下ろしながら言った。

「あっ、負け犬のアスランだ」

「厳しいな、この糞餓鬼は……」

ガイアたちの隣にはゴリの両親が双子の娘を連れて喧嘩祭りを観戦していた。

これからゴリの試合が始まるのだ、真剣な眼差しでステージを見詰めている。

心配なのだろう。

『それでは第四試合、ジェガン選手vsゴリ選手の入場です!!』

右からジェガンがステージに上り、左からゴリが上がって来る。

二人とも静かに睨み合っていた。

闘志は満点だ。

キラリとゴリのスキンヘッドが輝いた。

ところでジェガンの野郎は独身なのだろうか?

まさかあいつもデブ専でキシリアお嬢様を狙ってなんていないよね?

まさか~。

「ゴリ、久しぶりだな」

「ジェガン、お前こそ久しぶりだな」

えっ、こいつら顔見知りなのか?

「王都で騎士団に入ったんだって」

「キミは冒険者になったとか」

「お前は昔っから、すかしてて気に食わなかったんだ。それが騎士団だと。更にすかした野郎になりやがったな」

「ゴリ、お前だって下品でムカつくんだよ。それが冒険者とわね。本当に更にムカつく奴に成長したな」

「幼馴染みだからって、調子こいてると、ボコボコのボロ雑巾にしてやるぞ」

「冒険者になって、口だけは達者になったのか、ゴリ」

こいつら、幼馴染みなのかよ。

これは、宿命の対決なのね。

「ジェガン、俺は負けない。キシリアお嬢様の隣に立つのは俺だからな!」

「ぬかせ、魔法学院から帰ってきたキシリアお嬢様を見て、その美しさに目が眩んだか!」

「違う、俺は……」

「お前にはキシリアお嬢様が釣り合わない。彼女に釣り合うのは騎士団員の俺だけだ!!」

マジか!!

こいつもデブ専だよ!!

最近はデブ専が多いな!!

「この喧嘩祭りに備え習得してきた、エクスカリバーチョップスキルで、貴様の夢ごと刻んでやるぞ!!」

「俺の情熱は刻めない!!」

何をあいつら格好付けてるんだ?

馬鹿なの?

『それでは第四試合、開始だ~!!』

進行役の掛け声に合わせて鐘が鳴り響いた。

試合開始である。

ジェガンがチョップを振りかぶる。

「行くぞ、エクスカリバーチョッ~~プ!!」

「なんの、真剣白刃取り!!」

パチンっとゴリの両手が頭上で鳴った。

しかし、ジェガンのチョップをゴリは取れていない。

ゴリのハゲ頭にジェガンのチョップが突き刺さる。

「ぎぃぁぁああああ!!!」

ゴリの脳天が割れて鮮血が火山の噴火のように飛び出した。

「阿呆めが。私のエクスカリバーチョップを取れるわけがなかろうて」

「くそっ……」

するとゴリが懐から一枚の紙切れを取り出した。

なんだ、あの紙は?

ジェガンが問う。

「なんだい、その護符は?」

「呪いの護符だ……」

「呪いの護符だと?」

しかしゴリは取り出した呪いの護符を破り捨てる。

「これでパワーアップしようとも考えたが……。それは改めた」

「何故だ?」

「こんな物を使って貴様に勝手も、誰も喜ばない。ましてやこんな物で掴んだ勝利でキシリアお嬢様と結婚出来ても仕方がない」

「ならば、どうする!?」

「ジェガン、お前を正々堂々と倒す!!」

「しゃらくさい、刻んでやるぞ!!」

再びジェガンが高くチョップを振り上げた。

「食らえ、ゴリ!!」

「今度こそ、成功させるぞ。真剣白刃取り!!」

再びゴリの頭上で両手がパチンと鳴った。

しかし、また今度もチョップを掴めていなかった。

ジェガンのチョップか再びゴリの脳天に突き刺さる。

天丼かよ……。

「ぎぃぁぁあああ!! 一度打たれた場所に、またチョップが刺さったぁあああ!!」

ゴリが鮮血を吹き出しながら膝を付いた。

ダメだな、これは……。

ゴリが負けるだろう。

そう、俺が思った刹那だった。

特等席で観戦していたキシリアお嬢様がジャンプ一番でステージにインして来た。

まるで父親のギデンが乱入してきた時と同じような光景だった。

あの巨漢で15メートルは飛んで居たぞ。

あのデラックスデブって凄くないか?

『おお~~っと、キシリアお嬢様が乱入して来たぞ。これは何事だ!?』

そして、キシリアお嬢様は二人の間に立った。

「「キシリアお嬢様……」」

ゴリとジェガンが呆然としながら呟いていた。

二人とも何故にキシリアが乱入して来たか理解できていない。

ムスリとした表情でキシリアが二人に述べた。

「私は二人が優勝しても、どちらとも結婚なんてしないわよ」

『おお~~っと、キシリアお嬢様の結婚拒否宣言が出たぞ。何故だ!?』

キシリアがジェガンに向かって言う。

「ジェガン、私は小さな頃から貴方が大嫌いだったの」

「何故ですか!?」

「あなた、私服のセンスがダサイじゃんか。それと性格も悪いし」

「そ、そんな……」

ジェガンが絶望を露に膝から崩れた。

続いてキシリアがゴリに言う。

「それと、ゴリ」

「な、なに……」

「私はハゲが嫌いなの」

「スキンヘッドはダメですか……」

「うん、ハゲは遺伝するからね」

ゴリも膝から崩れ落ちる。

二人ともフラれた。

見事にフラれたぞ。

だが、俺は観客たちを掻き分けてステージを目指した。

そして、ステージに乱入する。

「ゴリ、まだ諦めるな!!」

『おお~~っと、先程脱落したアスラン選手が再び乱入してきたぞ!!』

俺は被っていたヅラのゴメスを取るとゴリの血だらけなハゲ頭に被せた。

「ゴリ、カツラだ。これをやるから、もう一度告白するんだ!!」

俺の髪の毛もだいぶ生えてきたからカツラは要らない。

だからゴメスをゴリに託したんだ。

そして、立ち上がったゴリが再びキシリアと向かい合う。

ゴリの表情は血だらけだが凛々しかった。

誠実に、男らしく、再びキシリアにゴリが告白した。

「もうスキンヘッドはやめる。これからちゃんと髪も生やす。だから俺と結婚してくれ!!」

キシリアがゴリを真っ直ぐに見詰めながら沈黙した。

会場の観客たちも静まり返る。

皆がキシリアの返答を待った。

永い永い沈黙に感じられた。

その沈黙は、時間にしたら三十秒も無かっただろう。

だが、永く永く永遠に感じられたのだ。

そして、ついにキシリアが回答を述べる。

キシリアは返答する前に、優しく明るく微笑んだ。

「ごめんなさい。私、ゴリラは無理……」

「ぐはっ!!」

再びゴリが膝から崩れる。

ゴリもジェガンも絶望に沈み込んでいた。

髪も表情も真っ白だ。

生気が無い。

そして、踵を返したキシリアが特等席に帰って行った。

『ええ~~っと、これは……。両者戦意喪失で、両者脱落で宜しいでしょうか……?』

顔面に包帯を巻いたギデンが頷いた。

『それでは、両者失格です。これで決勝戦に進出したのはグフザク選手となります!!』

結果を聞いた会場はざわついていた。

あんまり納得していない。

そして、失格した二人がトボトボとゾンビのようにステージから降りて行く。

第四試合、ジェガンvsゴリ。

勝者、無し。

敗者、両者。


【つづく】

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