ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第539話【クジ引き】
収穫祭三日目、喧嘩祭り決勝トーナメント当日。
俺は昼前から闘技場に向かっていた。
参加者に集合が掛けられているのだ。
隣にはササビーさんが歩いている。
俺ら二人の後ろを俯いたままのゴリが付いてきていた。
俺はササビーさんに小声で話し掛けた。
「ゴリの野郎、なんだか朝から暗いな」
「緊張しているんじゃあないか。何せ今日は決勝トーナメントだからね。このトーナメントで、もしかしたらキシリアお嬢様の結婚相手が決まるかも知れないんだしね」
「なあ、ゴリってキシリアお嬢様を好きなのか?」
「好きだと思うよ、何せ幼馴染みだしね。それにキシリアお嬢様が魔法学院に入学したら、 ゴリ君は一流の冒険者になるって言って実家を飛び出したぐらいだからね。三年で一流の冒険者になって帰ってくるって言ってね」
「一流の冒険者になったら、キシリアお嬢様と釣り合うと思ったのかよ」
「若さだよね~。若いって素晴らしいよね~」
「ただ単純なだけだろ」
俺たち三人が闘技場に到着すると、既に他の五名が闘技場に登っていた。
観客席にも人が溢れている。
特等席には領主ギデンと奥様のミネバ、それにデラックスなキシリアお嬢様も居た。
進行役のオッサンが俺たちにメガホンを向けながら叫んだ。
『遅かったじゃあないか、三人。遅刻だよ遅刻!』
俺はイラつきながら言い返した。
「うっせえな~。昨日のパーティーで食った陸の生牡蠣が当たって、ウンコの切れが悪かったんだよ!」
事実である。
朝からお腹がユルユルで大変だったのだ。
ゴリのかーちゃんから下痢止め薬を貰ってなんとか止まったのだ。
止まらなかったら尻の穴にコルクの蓋をネジ込みながら喧嘩祭りに参加しなければならなかったところだ。
マジで危なかったぜ。
『兎に角、これから決勝トーナメントのクジ引きを行います!!』
なるほど、クジで対戦相手を決めるのか~。
『その前に、観客たちにお知らせが有ります!!』
なんだ、お知らせって?
『今回の決勝トーナメントで優勝した参加者は、キシリアお嬢様との結婚が約束されます。これはギデン様のお許しも出ています!!』
会場が一気にどよめいた。
そのどよめきは歓声にも近い。
どうやら町の住人はキシリアお嬢様の婿取りを歓迎しているようだ。
「「マ、マジか……」」
俺とグフザクの野郎が並んでげんなりしていた。
『ただし、既婚者が優勝なられた場合は無効となります。しかしながら未婚者は必ず婚約してもらいます!!』
この優勝賞品は拷問か!?
何かの罰ゲームか!?
俺がゴリのほうを見たら、ゴリの野郎は凛々しく瞳を輝かせていた。
こいつだけ、マジだな……。
これは不味いぞ……。
この際だ、棄権しよう。
そう思い俺が手を上げようとした刹那だった。
隣のビグザムルが俺より早く手を上げて言う。
「オラは、そんなブスと結婚なんかいやズラ。だから棄権するダ!」
まともな意見である。
すると玉座に座っていたギデンが立ち上がった。
そして、飛ぶ。
ギデンは身長190センチはある巨漢のデブだ。
その巨漢デブがひとっ飛びでビグザムルの前まで跳躍した。
距離にして15メートルは跳躍している。
その跳躍に再び会場が沸いた。
巨漢の前に巨漢が着地する。
そして、巨漢が巨漢の顔に顔を近付けながら凄んで言った。
「戦わずして棄権は許さない。棄権は戦闘不能者だけだ!」
「しかし、オラは──」
ビグザムルが何かを言い掛けた刹那だった。
「黙れっ!」
ギデンが素早い速度でショートアッパーを繰り出した。
速いっ!
しかも、力強い!!
するとギデンの拳がビグザムルの下顎を打ち殴る。
そして、拳が振りきられた。
ガゴンっと鈍い音の後に、パコンと下顎が上顎に激突する音が鳴り響く。
空を見上げるビグザムル。
「ぅぅ……」
天を向いたままのビグザムルが膝から力無く崩れ落ちた。
そのまま白目を向いて失神した。
しかも小便を漏らしてやがる。
ギデンが選手たちを睨み付けながら言った。
「棄権は許さんぞ!」
棄権は禁止ですか……。
これは困ったぞ……。
『これは、困ったぞ。一人トーナメント前に脱落してしまったぞ。これでは一人だけシード権になるのか!?』
するとギデンが言う。
「心配するな、リザーバーは私が勤める!!」
更に会場が沸く。
温度が急上昇していく。
えっ、マジで……。
『おおーーっと、これは驚きの展開だ!!』
こっちが驚きだ!!
『失神したビグザムル選手に変わって、ギデン様が喧嘩祭りに参加なされるぞ!!!』
そんなリザーバーなんてありかよ……。
この人は王都の闘技場で以前はチャンピオンだったんだろ……。
確か、プロって参加禁止じゃなかったっけ?
引退したから良いのかよ?
引退したのなら、大人しく引っ込んでいろよな。
『それでは、決勝トーナメントのクジ引きを行います!!』
進行役が割り箸サイズの木の棒を握り締めながらステージに登って来る。
「私が持った棒の先にアルファベットが刻まれています。同じアルファベットを引いた者同士が対戦します。Aが第一試合。Bが第二試合。Cが第三試合。Dが第四試合になります!!」
ギデンが前に出る。
「では、私から引くぞ。よっと、Bだ」
ギデンのオッサンがBか……。
Bだけは引けんな。
殺されてまう。
続いて紅一点グゲルグがクジを引いた。
「私はAだわ」
グゲルグ姉さんがAか。
「じゃあ、今度はこのグフザクが引くぜ、よっと。──Cだぜ!!」
あのリーゼント野郎はCか。
次にジェガンがクジを引いた。
「Dだ──」
ジェガンがDか~。
これでA~Dまで一人分が出揃ったぞ。
これで少なくとも一回戦でジオンググとは当たらないで済むのかな。
だとすれば、Aのグゲルグ、Cのグフザク、Dのジェガンと当たれば、最小限のダメージで負けられそうだ。
わざと負けて結婚から逃れられるぞ。
出来ればグゲルグ姉さんと当たりたいな。
真面目に戦っているふりして、オッパイを軽く揉みながら負けられるぞ。
あたた……。
ちょっと胸が傷んだわ……。
「よし、じゃあ今度は、このアスラン様が引くぜ!!」
当たれ、グゲルグ姉さん!!
来い、A!!
俺はクジを引いて先を見た。
「畜生、Cか……」
対戦者はグフザクの野郎かよ。
まあ、最悪は逃れたからいいかな。
あいつの連続パンチの初弾を食らって、わざと場外まで吹っ飛ぶぞ。
それでジ・エンドだぜ!
奮闘したふりして負けられる。
「じゃあ、次は私が引こうかな」
続いてササビーさんがクジを引く。
「Aだ、ラッキー!」
あの糞野郎、いいな~……。
勝っても負けても幸せじゃんか。
続いてゴリが前に出た。
ゴリが引くのはBかDだ。
Bならギデン、Dならジェガン。
ゴリは運がない。
どっちを引いても強敵だ。
静かにしているけれど、たぶんジェガンは凄く強いぞ。
「Dだぜ……」
ジェガンとか……。
ギデンよりはマシだな。
って、ことは──。
Bの第二試合は、ギデンとジオンググかよ……。
これは、いきなりの決勝戦だな。
【つづく】
俺は昼前から闘技場に向かっていた。
参加者に集合が掛けられているのだ。
隣にはササビーさんが歩いている。
俺ら二人の後ろを俯いたままのゴリが付いてきていた。
俺はササビーさんに小声で話し掛けた。
「ゴリの野郎、なんだか朝から暗いな」
「緊張しているんじゃあないか。何せ今日は決勝トーナメントだからね。このトーナメントで、もしかしたらキシリアお嬢様の結婚相手が決まるかも知れないんだしね」
「なあ、ゴリってキシリアお嬢様を好きなのか?」
「好きだと思うよ、何せ幼馴染みだしね。それにキシリアお嬢様が魔法学院に入学したら、 ゴリ君は一流の冒険者になるって言って実家を飛び出したぐらいだからね。三年で一流の冒険者になって帰ってくるって言ってね」
「一流の冒険者になったら、キシリアお嬢様と釣り合うと思ったのかよ」
「若さだよね~。若いって素晴らしいよね~」
「ただ単純なだけだろ」
俺たち三人が闘技場に到着すると、既に他の五名が闘技場に登っていた。
観客席にも人が溢れている。
特等席には領主ギデンと奥様のミネバ、それにデラックスなキシリアお嬢様も居た。
進行役のオッサンが俺たちにメガホンを向けながら叫んだ。
『遅かったじゃあないか、三人。遅刻だよ遅刻!』
俺はイラつきながら言い返した。
「うっせえな~。昨日のパーティーで食った陸の生牡蠣が当たって、ウンコの切れが悪かったんだよ!」
事実である。
朝からお腹がユルユルで大変だったのだ。
ゴリのかーちゃんから下痢止め薬を貰ってなんとか止まったのだ。
止まらなかったら尻の穴にコルクの蓋をネジ込みながら喧嘩祭りに参加しなければならなかったところだ。
マジで危なかったぜ。
『兎に角、これから決勝トーナメントのクジ引きを行います!!』
なるほど、クジで対戦相手を決めるのか~。
『その前に、観客たちにお知らせが有ります!!』
なんだ、お知らせって?
『今回の決勝トーナメントで優勝した参加者は、キシリアお嬢様との結婚が約束されます。これはギデン様のお許しも出ています!!』
会場が一気にどよめいた。
そのどよめきは歓声にも近い。
どうやら町の住人はキシリアお嬢様の婿取りを歓迎しているようだ。
「「マ、マジか……」」
俺とグフザクの野郎が並んでげんなりしていた。
『ただし、既婚者が優勝なられた場合は無効となります。しかしながら未婚者は必ず婚約してもらいます!!』
この優勝賞品は拷問か!?
何かの罰ゲームか!?
俺がゴリのほうを見たら、ゴリの野郎は凛々しく瞳を輝かせていた。
こいつだけ、マジだな……。
これは不味いぞ……。
この際だ、棄権しよう。
そう思い俺が手を上げようとした刹那だった。
隣のビグザムルが俺より早く手を上げて言う。
「オラは、そんなブスと結婚なんかいやズラ。だから棄権するダ!」
まともな意見である。
すると玉座に座っていたギデンが立ち上がった。
そして、飛ぶ。
ギデンは身長190センチはある巨漢のデブだ。
その巨漢デブがひとっ飛びでビグザムルの前まで跳躍した。
距離にして15メートルは跳躍している。
その跳躍に再び会場が沸いた。
巨漢の前に巨漢が着地する。
そして、巨漢が巨漢の顔に顔を近付けながら凄んで言った。
「戦わずして棄権は許さない。棄権は戦闘不能者だけだ!」
「しかし、オラは──」
ビグザムルが何かを言い掛けた刹那だった。
「黙れっ!」
ギデンが素早い速度でショートアッパーを繰り出した。
速いっ!
しかも、力強い!!
するとギデンの拳がビグザムルの下顎を打ち殴る。
そして、拳が振りきられた。
ガゴンっと鈍い音の後に、パコンと下顎が上顎に激突する音が鳴り響く。
空を見上げるビグザムル。
「ぅぅ……」
天を向いたままのビグザムルが膝から力無く崩れ落ちた。
そのまま白目を向いて失神した。
しかも小便を漏らしてやがる。
ギデンが選手たちを睨み付けながら言った。
「棄権は許さんぞ!」
棄権は禁止ですか……。
これは困ったぞ……。
『これは、困ったぞ。一人トーナメント前に脱落してしまったぞ。これでは一人だけシード権になるのか!?』
するとギデンが言う。
「心配するな、リザーバーは私が勤める!!」
更に会場が沸く。
温度が急上昇していく。
えっ、マジで……。
『おおーーっと、これは驚きの展開だ!!』
こっちが驚きだ!!
『失神したビグザムル選手に変わって、ギデン様が喧嘩祭りに参加なされるぞ!!!』
そんなリザーバーなんてありかよ……。
この人は王都の闘技場で以前はチャンピオンだったんだろ……。
確か、プロって参加禁止じゃなかったっけ?
引退したから良いのかよ?
引退したのなら、大人しく引っ込んでいろよな。
『それでは、決勝トーナメントのクジ引きを行います!!』
進行役が割り箸サイズの木の棒を握り締めながらステージに登って来る。
「私が持った棒の先にアルファベットが刻まれています。同じアルファベットを引いた者同士が対戦します。Aが第一試合。Bが第二試合。Cが第三試合。Dが第四試合になります!!」
ギデンが前に出る。
「では、私から引くぞ。よっと、Bだ」
ギデンのオッサンがBか……。
Bだけは引けんな。
殺されてまう。
続いて紅一点グゲルグがクジを引いた。
「私はAだわ」
グゲルグ姉さんがAか。
「じゃあ、今度はこのグフザクが引くぜ、よっと。──Cだぜ!!」
あのリーゼント野郎はCか。
次にジェガンがクジを引いた。
「Dだ──」
ジェガンがDか~。
これでA~Dまで一人分が出揃ったぞ。
これで少なくとも一回戦でジオンググとは当たらないで済むのかな。
だとすれば、Aのグゲルグ、Cのグフザク、Dのジェガンと当たれば、最小限のダメージで負けられそうだ。
わざと負けて結婚から逃れられるぞ。
出来ればグゲルグ姉さんと当たりたいな。
真面目に戦っているふりして、オッパイを軽く揉みながら負けられるぞ。
あたた……。
ちょっと胸が傷んだわ……。
「よし、じゃあ今度は、このアスラン様が引くぜ!!」
当たれ、グゲルグ姉さん!!
来い、A!!
俺はクジを引いて先を見た。
「畜生、Cか……」
対戦者はグフザクの野郎かよ。
まあ、最悪は逃れたからいいかな。
あいつの連続パンチの初弾を食らって、わざと場外まで吹っ飛ぶぞ。
それでジ・エンドだぜ!
奮闘したふりして負けられる。
「じゃあ、次は私が引こうかな」
続いてササビーさんがクジを引く。
「Aだ、ラッキー!」
あの糞野郎、いいな~……。
勝っても負けても幸せじゃんか。
続いてゴリが前に出た。
ゴリが引くのはBかDだ。
Bならギデン、Dならジェガン。
ゴリは運がない。
どっちを引いても強敵だ。
静かにしているけれど、たぶんジェガンは凄く強いぞ。
「Dだぜ……」
ジェガンとか……。
ギデンよりはマシだな。
って、ことは──。
Bの第二試合は、ギデンとジオンググかよ……。
これは、いきなりの決勝戦だな。
【つづく】
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