ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第499話【折れない心】
「おめー……、傷が治ってないか?」
クラウドの様子を見てみれば、俺がブン殴った傷が癒えている。
前歯が数本抜け飛んで、血反吐をダラダラ流していたはずなのに、その血反吐の痕跡まで消えていた。
ヒールか?
いや、違うな。
ヒールでは流れた血の跡まで消えることはない。
ならば……。
「さあ、アスラン君。続きを始めようか」
シャーシャーと言いながらクラウドがバスタードソードの刀身を頬に当てると軽く引く。
綺麗な顔に小さな傷を刻み込んだ。
あれ?
デジャブ?
さっきもクラウドの奴、頬を少し切ったよな?
前は儀式みたいなことを言ってたような……。
「いざっ!!」
おおっと、クラウドが切り掛かって来たぞ。
右足の踏み込みからの袈裟斬りだ。
そのバスタードソードを俺が打ち落とそうと黄金剣を振るう。
刹那。
袈裟斬りと横切りのぶつかり合い。
ガキィーーンと鋼が響き鳴った。
「どうだっ!!」
「なんの!!」
だが、弾いたはずのクラウドの剣が筋を変えて俺の足元を狙って飛んで来た。
変則攻撃かよ。
弾かれることを予想してやがったな。
でも、太刀筋が遅い。
俺は太股から足を上げると曲げた膝をしならせて爪先で鞭のような素早い蹴りを放った。
瞬速の爪先がクラウドの顎先を狙う。
「ささっ!」
あっ、躱された。
俺が狙った先はクラウドの顎先だったが、クラウドは頭を引いて俺の爪先を寸前で躱しやがったのだ。
躱すなんて、クラウドの癖に生意気だな。
「そらっ!!」
体勢を戻したクラウドが怯まず再び切り掛かって来た。
その剣打を俺は黄金剣で受け止める。
俺とクラウドの鍔競り合いが始まった。
力なら俺のほうが上だ。
ここはパワーで押し潰してやるぞ。
しかし──。
「力比べなんてしないよ!」
「なにっ!?」
クラウドが体を引いて俺の押しを反らした。
すると俺の姿勢が前に倒れる。
「おおぅ……」
続いて素早くクラウドが俺の左側に回り込む。
そこからの攻撃だった。
「はっ!!」
「なんのっ!!」
俺は左鉄腕を横に立ててクラウドのバスタードソードを受け止めた。
「鉄の腕なのか!?」
「おうよ、特注品でな!!」
今度は俺の反撃だぜ。
俺は身体をクラウドのほうに向けると同時にローキックを放った。
土煙を上げながら俺のローキックがクラウドの膝関節を外側から蹴り殴る。
ガンっと甲冑が鳴った。
「ぐはっ!!」
重い激音と共にクラウドの膝間接がダメージに崩れて曲がる。
そこに今度は右手をVの字に立てた卑拳が瞳を狙う。
ズブリ……。
目潰し命中。
「ぎぃぁああああ!!」
悲鳴を高々と上げたクラウドが眼を押さえながらよろめいた。
潰れていないがしばらくは見えないだろうさ。
「これで終わりだ!!」
俺は黄金剣を地面に突き立てると棒高跳びの容量で跳ね上がり、その高い打点からのドロップキックを打ち込んだ。
「食らえ、ドロップキックだ!!」
俺の揃えられた両足裏がクラウドの顔面をバズーカ砲のように蹴り飛ばす。
「どらっ!!」
全身のバネを生かした飛び両足蹴りを食らったクラウドが5メートルほど後方に飛ぶと積まれた木材に頭から激突して止まった。
「よし、決まったぜ!!」
俺は地面に着地するとガッツポーズを決める。
俺の全身全霊のドロップキックだ。
これでクラウドも気絶してノックダウンだろうさ。
「くぅん~……」
だが、クラウドの奴が立ち上がった。
フラフラとした足取りで前に出る。
「気絶しないか……」
その手からはバスタードソードが離れていない。
あれだけ飛んで、あれだけ気絶しそうな強打だったのに剣を手放さないなんて感心だな。
しかし、もう虫の息だ。
目潰しで両目とも真っ赤だ。
前も見えていないだろう。
荒い呼吸に肩が力少なく弾んでやがる。
立つに立ったが、戦う力は残っていないだろうさ。
これで俺の勝利は決まりだな。
「どうだ、クラウド。降参するなら許してやるぞ~」
「ぬ、抜かせ……」
「おうおうおう。強がっちゃってさ」
「それは、どうかな……」
「体力も残っていない、目も見えていない。それでどう戦うんだ。次は金玉を蹴り潰してやろうか?」
「ふ、ふふ……」
鼻血で汚れたクラウドの口元がニヤリと微笑んだ。
あれ、金玉を蹴られることに期待でもしちゃったかな。
まさかその手の趣味が有るのかな……?
そしてクラウドが再び呟く。
「切り戻し」
えっ?
デジャブ?
さっきも似たようなことを言わなかったっけ?
するとクラウドがダメージに崩れていた姿勢を正した。
背筋を伸ばして凛々しく立つ。
その顔からは鼻血が消えて凛々しさを取り戻していた。
目潰しを食らったはずの瞳も赤みが取れて、ちゃんと見えているようだ。
頬に刻んだ小さな傷も消えている。
また無傷に戻ったのだ。
「てめー……」
流石に俺がお馬鹿でトロくてスケベでも築くぜ。
こいつ、何かをしてやがる。
「回復しているな」
真面目な眼光でクラウドが言い返す。
「ああ、回復させてもらっている。またこれで一からやり直しだ」
「ちっ、面倒臭いな~」
ドロップキックでKOするつもりで打ったのに、決まらなかった。
出来れば拳で切り捨てたくないんだよな。
「しゃあねえか。もう少し本気を出そうかな……」
「もっと本気を出してくれ。そしてもっと僕を鍛え上げてくれ!」
生意気な台詞を放ったクラウドがバスタードソードで再び頬を傷付ける。
さっきもやってたよな。
そうして気合いを入れているのかな?
いや、これは違うだろう。
たぶん──。
兎に角自分で自分を傷付けたクラウドが走り出した。
「ぜぇぁあああ!!」
「そりゃあ!!」
俺の黄金剣とクラウドのバスタードソードが激突した。
両者の剣が弾け合う。
当たりは五分五分か!?
クラウドのパワーが増しているぞ?
そんなバカな……。
こんな短期間で、そこまで成長するのか!?
「そりゃ、そりゃ、そりゃ!!!」
クラウドの連打。
袈裟斬り、逆袈裟斬りから、バックスピンしての逆水平斬り。
少し変則攻撃を入れて来やがったぞ。
学んでやがる。
だが、俺は、膝から落ちるように屈むとスピンしながら低い姿勢で地面を滑った。
そこからの水面蹴りである。
回避と反撃の同時選択だ。
そして、俺の下段後ろ回し蹴りの脹ら脛がクラウドの両足を揃って凪払う。
「ぬはっ!?」
体を斜めにしながらクラウドが綺麗に宙を舞った。
そのまま地面に肩から落ちる。
そして変わりに俺が宙に飛んでいた。
「これで、終わりだぜ!!」
宙から降下する俺は拳を振り上げクラウドの顔面を狙って落ちて行く。
そのまま着地と同時に全体重を乗せた下段瓦割り拳打をクラウドの顔面に叩き落としたのだ。
ガゴンっと連続で二つの音が鳴った。
俺の拳がクラウドの顔面を殴った音と、その衝撃で後頭部を地面に叩きつけた二つの音である。
「がぁぁ………」
俺の拳はクラウドの顔面に3センチほど痛々しくもめり込んでいた。
鼻が潰れて、上顎も潰れて、整った顔が凹んでいる。
打たれたクラウドは全身を大の字に広げながら痙攣させていた。
それでもバスタードソードから手を話していない。
見上げた根性だぜ。
顔面を潰されながらも剣を離さないって凄いよな。
俺が関心しながら立ち上がると、クラウドが崩れた上顎を動かしながら呟いた。
「ひ、ひり、も、ろ、し……」
んん?
刹那である。
素早い動作でクラウドが倒れていた向きを腹這いに変えるとバスタードソードで俺の足を狙って反撃を繰り出した。
俺は咄嗟にバク転でバスタードソードを躱して見せる。
「まだ、動けるのか……」
俺が唖然としながらクラウドを見てみれば、立ち上がったクラウドの潰れた顔面が修復していた。
またである。
また、ムカツク美形が元に戻ってやがる。
傷が直ってやがる。
ヒールじゃあないな。
そんな暇は無かったからな。
だとすると──。
やはり、おれの推測が正しければ──。
「クラウド。なんかマジックアイテムを使ってやがるな?」
クラウドが糞真面目な表情で俺を睨みながら答えた。
「正解さ!」
ちっ……。
面倒臭い……。
【つづく】
クラウドの様子を見てみれば、俺がブン殴った傷が癒えている。
前歯が数本抜け飛んで、血反吐をダラダラ流していたはずなのに、その血反吐の痕跡まで消えていた。
ヒールか?
いや、違うな。
ヒールでは流れた血の跡まで消えることはない。
ならば……。
「さあ、アスラン君。続きを始めようか」
シャーシャーと言いながらクラウドがバスタードソードの刀身を頬に当てると軽く引く。
綺麗な顔に小さな傷を刻み込んだ。
あれ?
デジャブ?
さっきもクラウドの奴、頬を少し切ったよな?
前は儀式みたいなことを言ってたような……。
「いざっ!!」
おおっと、クラウドが切り掛かって来たぞ。
右足の踏み込みからの袈裟斬りだ。
そのバスタードソードを俺が打ち落とそうと黄金剣を振るう。
刹那。
袈裟斬りと横切りのぶつかり合い。
ガキィーーンと鋼が響き鳴った。
「どうだっ!!」
「なんの!!」
だが、弾いたはずのクラウドの剣が筋を変えて俺の足元を狙って飛んで来た。
変則攻撃かよ。
弾かれることを予想してやがったな。
でも、太刀筋が遅い。
俺は太股から足を上げると曲げた膝をしならせて爪先で鞭のような素早い蹴りを放った。
瞬速の爪先がクラウドの顎先を狙う。
「ささっ!」
あっ、躱された。
俺が狙った先はクラウドの顎先だったが、クラウドは頭を引いて俺の爪先を寸前で躱しやがったのだ。
躱すなんて、クラウドの癖に生意気だな。
「そらっ!!」
体勢を戻したクラウドが怯まず再び切り掛かって来た。
その剣打を俺は黄金剣で受け止める。
俺とクラウドの鍔競り合いが始まった。
力なら俺のほうが上だ。
ここはパワーで押し潰してやるぞ。
しかし──。
「力比べなんてしないよ!」
「なにっ!?」
クラウドが体を引いて俺の押しを反らした。
すると俺の姿勢が前に倒れる。
「おおぅ……」
続いて素早くクラウドが俺の左側に回り込む。
そこからの攻撃だった。
「はっ!!」
「なんのっ!!」
俺は左鉄腕を横に立ててクラウドのバスタードソードを受け止めた。
「鉄の腕なのか!?」
「おうよ、特注品でな!!」
今度は俺の反撃だぜ。
俺は身体をクラウドのほうに向けると同時にローキックを放った。
土煙を上げながら俺のローキックがクラウドの膝関節を外側から蹴り殴る。
ガンっと甲冑が鳴った。
「ぐはっ!!」
重い激音と共にクラウドの膝間接がダメージに崩れて曲がる。
そこに今度は右手をVの字に立てた卑拳が瞳を狙う。
ズブリ……。
目潰し命中。
「ぎぃぁああああ!!」
悲鳴を高々と上げたクラウドが眼を押さえながらよろめいた。
潰れていないがしばらくは見えないだろうさ。
「これで終わりだ!!」
俺は黄金剣を地面に突き立てると棒高跳びの容量で跳ね上がり、その高い打点からのドロップキックを打ち込んだ。
「食らえ、ドロップキックだ!!」
俺の揃えられた両足裏がクラウドの顔面をバズーカ砲のように蹴り飛ばす。
「どらっ!!」
全身のバネを生かした飛び両足蹴りを食らったクラウドが5メートルほど後方に飛ぶと積まれた木材に頭から激突して止まった。
「よし、決まったぜ!!」
俺は地面に着地するとガッツポーズを決める。
俺の全身全霊のドロップキックだ。
これでクラウドも気絶してノックダウンだろうさ。
「くぅん~……」
だが、クラウドの奴が立ち上がった。
フラフラとした足取りで前に出る。
「気絶しないか……」
その手からはバスタードソードが離れていない。
あれだけ飛んで、あれだけ気絶しそうな強打だったのに剣を手放さないなんて感心だな。
しかし、もう虫の息だ。
目潰しで両目とも真っ赤だ。
前も見えていないだろう。
荒い呼吸に肩が力少なく弾んでやがる。
立つに立ったが、戦う力は残っていないだろうさ。
これで俺の勝利は決まりだな。
「どうだ、クラウド。降参するなら許してやるぞ~」
「ぬ、抜かせ……」
「おうおうおう。強がっちゃってさ」
「それは、どうかな……」
「体力も残っていない、目も見えていない。それでどう戦うんだ。次は金玉を蹴り潰してやろうか?」
「ふ、ふふ……」
鼻血で汚れたクラウドの口元がニヤリと微笑んだ。
あれ、金玉を蹴られることに期待でもしちゃったかな。
まさかその手の趣味が有るのかな……?
そしてクラウドが再び呟く。
「切り戻し」
えっ?
デジャブ?
さっきも似たようなことを言わなかったっけ?
するとクラウドがダメージに崩れていた姿勢を正した。
背筋を伸ばして凛々しく立つ。
その顔からは鼻血が消えて凛々しさを取り戻していた。
目潰しを食らったはずの瞳も赤みが取れて、ちゃんと見えているようだ。
頬に刻んだ小さな傷も消えている。
また無傷に戻ったのだ。
「てめー……」
流石に俺がお馬鹿でトロくてスケベでも築くぜ。
こいつ、何かをしてやがる。
「回復しているな」
真面目な眼光でクラウドが言い返す。
「ああ、回復させてもらっている。またこれで一からやり直しだ」
「ちっ、面倒臭いな~」
ドロップキックでKOするつもりで打ったのに、決まらなかった。
出来れば拳で切り捨てたくないんだよな。
「しゃあねえか。もう少し本気を出そうかな……」
「もっと本気を出してくれ。そしてもっと僕を鍛え上げてくれ!」
生意気な台詞を放ったクラウドがバスタードソードで再び頬を傷付ける。
さっきもやってたよな。
そうして気合いを入れているのかな?
いや、これは違うだろう。
たぶん──。
兎に角自分で自分を傷付けたクラウドが走り出した。
「ぜぇぁあああ!!」
「そりゃあ!!」
俺の黄金剣とクラウドのバスタードソードが激突した。
両者の剣が弾け合う。
当たりは五分五分か!?
クラウドのパワーが増しているぞ?
そんなバカな……。
こんな短期間で、そこまで成長するのか!?
「そりゃ、そりゃ、そりゃ!!!」
クラウドの連打。
袈裟斬り、逆袈裟斬りから、バックスピンしての逆水平斬り。
少し変則攻撃を入れて来やがったぞ。
学んでやがる。
だが、俺は、膝から落ちるように屈むとスピンしながら低い姿勢で地面を滑った。
そこからの水面蹴りである。
回避と反撃の同時選択だ。
そして、俺の下段後ろ回し蹴りの脹ら脛がクラウドの両足を揃って凪払う。
「ぬはっ!?」
体を斜めにしながらクラウドが綺麗に宙を舞った。
そのまま地面に肩から落ちる。
そして変わりに俺が宙に飛んでいた。
「これで、終わりだぜ!!」
宙から降下する俺は拳を振り上げクラウドの顔面を狙って落ちて行く。
そのまま着地と同時に全体重を乗せた下段瓦割り拳打をクラウドの顔面に叩き落としたのだ。
ガゴンっと連続で二つの音が鳴った。
俺の拳がクラウドの顔面を殴った音と、その衝撃で後頭部を地面に叩きつけた二つの音である。
「がぁぁ………」
俺の拳はクラウドの顔面に3センチほど痛々しくもめり込んでいた。
鼻が潰れて、上顎も潰れて、整った顔が凹んでいる。
打たれたクラウドは全身を大の字に広げながら痙攣させていた。
それでもバスタードソードから手を話していない。
見上げた根性だぜ。
顔面を潰されながらも剣を離さないって凄いよな。
俺が関心しながら立ち上がると、クラウドが崩れた上顎を動かしながら呟いた。
「ひ、ひり、も、ろ、し……」
んん?
刹那である。
素早い動作でクラウドが倒れていた向きを腹這いに変えるとバスタードソードで俺の足を狙って反撃を繰り出した。
俺は咄嗟にバク転でバスタードソードを躱して見せる。
「まだ、動けるのか……」
俺が唖然としながらクラウドを見てみれば、立ち上がったクラウドの潰れた顔面が修復していた。
またである。
また、ムカツク美形が元に戻ってやがる。
傷が直ってやがる。
ヒールじゃあないな。
そんな暇は無かったからな。
だとすると──。
やはり、おれの推測が正しければ──。
「クラウド。なんかマジックアイテムを使ってやがるな?」
クラウドが糞真面目な表情で俺を睨みながら答えた。
「正解さ!」
ちっ……。
面倒臭い……。
【つづく】
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