ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第454話【三日目の探索】

俺はソドムタウンから魔王城前のキャンプに戻ると自分のテント内に籠った。

まず、ファイアーブレスのスクロールを使って魔法を習得する。

【魔法ファイアーブレス。攻撃力は小。火属性。射程距離10メートルで3秒間の放射魔法。回数は本人レベルが5おきに、一回ずつ撃てる。発動条件は魔法名を述べた後に口から火の息を吐く】

「よし、これで火が吹けるぞ!」

ちょっと試しに吹いてみるか。

いや、ここはテントの中だ。

万が一にもテントに引火したら大火災になりかねない。

まあ、あとで閉鎖ダンジョン内で試してみるかな。

「続いては~」

俺は床に座りながら隣に置かれた小型の檻の中を覗き込んだ。

ヅラ状の生き物が蠢いている。

本当に生きてるヅラだ。

モッサモサの髪の毛がモソモソと動いている。

ヘアーグレムリンには目や鼻、口も耳も無い。

だが、時折キューキューと鳴いている。

その鳴き声も可愛く聴こえた。

なんだか愛敬が溢れた癒し系の小悪魔だな。

これでグレムリン系なのだから、悪魔とは良く分からない存在だ。

まあ、何より──。

「よし、こいつを使い魔として契約するぞ!」

俺はファミリアのスクロールを使って魔法を習得する。

【魔法ファミリア。指定された動物や精霊、小悪魔などを永遠の使い魔として契約する。対象の生物によって難易度が変わる。小動物系の難易度は低い。小型精霊系の難易度は普通。中型動物系は普通。中型精霊系の難易度は困難。小悪魔系は困難。使い魔は魔法使い一人に対して一体のみである】

「よし、習得したぞ」

俺は檻の中のヘアーグレムリンに指先を伸ばすとファミリアの魔法を唱えた。

「ヘアーグレムリン、俺のファミリアになぁ~れ!」

俺の指先が輝く。

するとヘアーグレムリンの毛の束が俺の光る指先に触れた。

一瞬だがヘアーグレムリンがフワリと輝くと、俺の中に何かが入って来る。

これは、なんだろう?

もしかしたらヘアーグレムリンの意識なのだろうか?

なんだかこいつと一つになった感覚がする。

意識と意識が繋がったのかな?

「うし、いま檻から出してやるぞ~」

「キューキュー」

俺が檻の蓋を開けてやると、檻の中からヘアーグレムリンがモソモソと出てくる。

そして、俺の身体をよじ登りだした。

「もしかして、お前……」

俺がじっとしていると、ヘアーグレムリンは俺の頭に鎮座する。

「なるほど、居場所を心得ているってわけか」

俺が感心していると、毛の長さが短くなって行く。

色も黒に変わった。

その変貌した姿は、以前の俺の髪型だった。

こいつは俺の思考を読み取って、俺の髪型を復元したのだろう。

「ゴメス、おまえ、思ったより賢いな」

「キューキュー」

なんとも被り加減が自然だった。

ヅラを被っているような感覚ではない。

まるで自分の髪の毛が生えてきたような自然な感覚であった。

「なるほど……。これは人気の高い使い魔として売り出されるわけが分かったぞ」

今度ヘアーグレムリンを見つけたら、とっ捕まえて売ってやる。

いや、養殖してブリーダーになったほうが儲かるかな?

まあ、それはさておき。

髪の毛が生え変わったかのような錯覚に陥ってる俺は、ルンルン気分でテントを出た。

すると目の前を、偶々オアイドスが通り過ぎた。

オアイドスは髪の毛が生え変わった俺を見て仰天している。

「アスランさん、髪の毛が生えたんですか!?」

俺は笑顔のまま魔法を唱えた。

「ファイアーブレス」

「ぎぃぁああああ!!!!」

俺が突然に吹いた炎の息がオアイドスの金髪ロン毛を燃やしだす。

炎が頭に引火したオアイドスが悲鳴を上げながら走って行った。

どうやら湖を目指しているようだな。

「ひぃぃいいああいいい!!」

「うし、ざま~みろ!!」

これでまずは一人だ。

残りのメンバーは、出合い次第燃やしてやるぞ。

そして、一段落ついた俺は、近くを歩いていたタピオカ姫とキャッサバを呼び止めた。

「おう、タピオカにキャッサバ、いいところで出会ったぜ」

「なんですか、アスラン殿?」

二人が俺の側に歩み寄る。

「これから閉鎖ダンジョンに戻って死海エリアに向かおうと思うんだが、お前ら道案内できるか?」

タピオカ姫が答える。

「暗闇エリアと死海エリアの境目までなら道案内ぐらい可能ですよ」

「じゃあ、そこまで頼むわ」

「「御意」」

二人は礼儀正しくフルプレートでお辞儀をした。

そして、俺たち三人は転送絨毯で閉鎖ダンジョンに戻る。

俺は二人に先導されて閉鎖ダンジョン内を進んだ。

そして、下る階段の前で止まる。

タピオカ姫が言う。

「ここから下が死海エリアです」

俺は階段を覗き込むように眺めた。

幅の広い階段だった。

横幅10メートルほど有る階段が下に伸びている。

その先は暗闇で見えないほどに深い。

俺は二人に質問した。

「お前たちは下に進んだことがあるのか?」

二人が声を揃えて答えた。

「「無いです」」

「なんで?」

キャッサバが答える。

「死海エリアはクラーケンが居る以外に、我々ハイランダーズには致命的なエリアなのですよ」

「致命的?」

「海水です。我々ハイランダーズは鉱物生命体です。その身体は鉄ですからね。剣も鎧も。だから海水で錆びてしまうのですよ」

「あ~、なるほど、錆びるのか。ところでお前らは錆びると死ぬのか?」

「錆びると寿命が縮まります。人間に例えますと老化が進むと言った表現が近いでしょうかね」

「なるほどね。ハイランダーズにとって海は、健康を損ねる有毒地帯ってわけか」

「はい、だから私は下りたことが御座いません」

「なるほど」

俺は床に転送絨毯を敷いてやる。

「サンキューだったな、二人とも帰っていいぞ」

キャッサバがヘルムの後頭部を擦りながら言う。

「お役に立てましたでしょうか、アスラン殿」

「ああ、道案内だけでも助かったぜ。お前らは魔王城に帰ってデートの続きを楽しみな」

「「デート!!」」

二人が声を揃えて驚いた。

「あれ、デート中じゃあなかったのか?」

「違いますよ!!」

「そう、全然違いますわ!!」

「まあ、なんでもいいからさ、さっさと帰りやがれ。それと昼には飯を食いに帰るって伝えておいてくれよな」

「「御意……」」

タピオカ姫とキャッサバは互いを変に意識しながら魔王城前キャンプに帰って行った。

閉鎖ダンジョン内に俺一人が残る。

「よし、俺は先に進むかな」

俺は階段を下りて行く。

しばらく下りて行くと潮の香りが鼻に届き始めた。

地下深くのダンジョンなのに磯の香りとはヘンテコな話である。

この下には死海が有る。

それはおそらく海に近い環境なのだろう。

少なくとも水は海水のような塩分が含まれているはずだ。

「水の流れる音?」

微かに水の流れる音が俺の耳に届く。

その音は下に進めば進むほど大きくはっきりとなっていった。

その音は滝のような音だ。

おそらく大きな水量が有るのだろう。

ドンドンと音は激しくなって行く。

その音につれて潮の香りも強くなる。

周りの空気が湿っぽくなっていった。

塩水のミストを感じる。

水が滝壺に落ちて海水を巻き上げているのだろう。

「だいぶ階段を下りたが、まだ着かないな……」

もう30分ぐらいは階段を下っている。

だいぶ深くまで下りて来たはずだ。

正直足が疲れて来たぞ。

下りの階段は下りでキツイものだ。

「んん?」

突然前方に床が見えた。

底に着いたのか?

俺が階段から床に到着すると、そこは広い通路だった。

階段と同じ程度の幅がある。

「こ、これは……」

だが俺は、通路を前に唖然としてしまった。

こんな光景を見るのは生まれて始めてである。

海、川、池、プール、お風呂、ドブ。

今までの人生の中で、様々な水辺を見てきたが、このような水辺を見たことがなかった。

水が天井に溜まっているのだ。

俺は天井に流れる水辺を見上げながら呟いた。

「重力無視かよ……」


【つづく】

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