ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第438話【負けられない戦い】
薄暗い部屋だった。
10×20メートルの部屋だ。
洋風世界のダンジョンのはずが、足元は畳である。
壁際に座るのはフルプレートを纏った老体。
畳に正座をしている。
腰には鞘に収まったロングソードを指していた。
鎧を纏い、武器を刺したまま正座を組んでいるので座りずらそうだ。
何故にフルプレートなのに老体だと分かるか?
それは、ヘルムの顔に白い髭が生えているからだ。
その白い髭が、露骨に老人だと印象付ける。
そして、部屋の前方に座るのは、黒い女性用のフルプレートを纏った存在。
その背後には、奥に進む扉がある。
室内に居るのは、この二人だけであった。
その他には室内を照らす複数の灯台だけである。
蝋燭の火が幾つも揺れていた。
この部屋を、必ず通らなければテイアーの研究室に行きつけない重要なポイントだ。
更に説明するならば、この部屋を境にハイランダーズの勢力圏が分かれている部屋なのだ。
そして、女性用のフルプレートを纏った存在は、謀反軍の一人である。
その名を『隼斬りのエクレア』。
謀反軍の中でも剣技のスピードならば一番と言われる女剣士である。
老戦士と女剣士の二人は、フルプレートでありながら畳に正座していた。
そんな女剣士に老戦士が声を掛ける。
「まだ……、待たれるつもりですかな、エクレア殿?」
しゃべったのは、腰に刺されたロングソードだ。
そのロングソードの柄に老人の顔が有り、その顔がしゃべったのだ。
「キャラメル師範は、タピオカ姫が、もう、このまま引き下がっていると思ってますか?」
「その回答は、何度も言っているのでは……」
「来ると?」
「いえ、来ませんな……」
「何故っ!?」
「姫様はヘタレです。絶対に父上の無念を払いに来るようなことはございません」
「何故にだ!?」
「だから、ヘタレだから……」
「何故に、何故に、何故にだ!!」
「だーかーらー、ヘタレなんですよ、姫様は。だから私も忠義を捨ててティラミス殿の謀反に参加したのでありますぞ!!」
「私は信じないぞ。幼馴染のタピオカ姫が、必ず父上の無念を返すために、再びこの砦に挑んでくることを……」
「それでエクレア殿は、ここで待ち受けていると?」
「左様だ。でなければ門番なんて勝手出るか!」
「でえ、なんでエクレア殿は、慕っているタピオカ姫に付いて行かなかったのですか?」
「私は彼女のライバルだぞ。ならばいつでも彼女の敵に回るのが筋だ。それが運命だ!」
「面倒臭いな……」
「面倒臭いとか言うな!!」
「はいはい、老体なのに付き合わされる身にもなってくださいよ……」
「それは申し訳ないと思っている」
「そもそもアレでしょう……」
「アレとはなんだ?」
「彼氏の取り合いでしょう。なんて言いましたっけ、あの青年?」
「キャッサバは関係ないぞ!!」
「嘘おっしゃいませ。エクレア殿もキャッサバが好きなんでしょう?」
「私はキャッサバのことなんて、なんとも思ってないんだからな!!」
「はいはい、そう言うことにしといてあげますよ……。あー、面倒臭い……」
「ぬぬぬぬ…………」
このような会話を二人は何度も繰り返していた。
まあ、暇だから……。
そんな暇を持て余している部屋の扉が開いた。
その扉から一人の人間が入って来る。
「ごめんください……」
人間は少年だった。
一人である。
腰を上げたキャラメル師範が声を掛けた。
「どちら様かな?」
少年は答えた。
「ソロ冒険者のアスランって申しますが、ここを通りたいのですが宜しいでしょうかね~?」
「「ダメでしょう」」
エクレアとキャラメル師範の声が揃う。
「あー、やっばりダメですよね~」
キャラメル師範が理由を述べた。
「ここから先は下の階まで一方通行ですので、我ら謀反軍の本拠地を通らなければなりませぬ。故にここは通れませんぞ」
少年は頭をかきながら言った。
「じゃあ力ずくでなら、通ってもいいですか?」
「いやいや、ダメですぞ。力ずくだと、尚ダメですな……」
キャラメル師範とエクレアが立ち上がる。
すると少年は足元を見ながら述べた。
「えっ、床は畳なの?」
「ほほう、畳をご存知ですか」
「ああ、これだと土足厳禁だよね?」
言いながらも少年は土足のまま畳に上がる。
「貴様、無礼だぞ!!」
「お前らだってフルプレートのまま上がっているじゃあねえか」
「このプレートブーツは内履きだ!!」
「内履きの鉄靴かよ……」
キャラメル師範が腰の鞘からロングソードを引き抜いた。
ロングソードの刀身が輝いている。
「無礼な人間め。八つ裂きにしてやろうか!」
「爺さん、無理すんな。腰を痛めるぞ」
「我らハイランダーズに腰と言う概念は存在せぬ!」
怒りのままにキャラメル師範が前に出ようとした。
それをエクレアが声で止める。
「待たれよキャラメル師範。ここは私が人間の相手をしましょうぞ」
エクレアが腰の鞘から細身の剣を抜いた。
レイピアだ。
レイピアの刀身も目映く輝いている。
そのレイピアをエクレアがヒュンヒュンと可憐に振るう。
「人間の冒険者よ。私があなたを串刺しにしてあげますわ!」
「エクレア殿……」
キャラメル師範の呟きに人間の冒険者が反応を見せる。
「えっ、あんたがエクレアか?」
「ええ、そうよ」
「隼斬りのエクレアなの?」
「ああ、私が隼斬りのエクレアだ!」
「よし、勝負しよう」
「えっ、何故に?」
「お前はここから先に誰も通さないのが仕事なんだろ?」
「ええ、門番ですからね」
「俺は下の階に進みたいから、強引にでも通りたいんだ。だから戦ったほうが早いよね」
「そうね!」
「ただし、俺が勝ったらここを通してもらうぞ」
「ならば、私が勝ったらお前の身ぐるみは全て私の物とするぞ!」
「それは構わんぞ」
「荷物も死体も、全てだ!」
「ああ、いいだろう」
「後悔するなよ!!」
「ただしだ!!」
「えっ、まだ何か?」
「俺が勝ったら、お前を俺の物とさせてもらうぜ!!」
「「なにっ!?」」
キャラメル師範が言う。
「エクレア殿、もしも負ければ口では言えないような卑猥な行為を強制されますぞ!!」
「た、例えばどんな!?」
「亀甲縛りで吊るされて、前と後ろと横から同時に冷え冷えのアイスキャンディーをねじ込まれながら変顔しているところを動画に撮影されて、ネットに無料でバラ撒かれますぞ!!」
「そんな恥ずかしいーー!!」
「そんなことするか、ボケ……」
「こ、これは負けられないわ……」
「エクレア殿、これは負けられない勝負ですぞ!!」
【つづく】
10×20メートルの部屋だ。
洋風世界のダンジョンのはずが、足元は畳である。
壁際に座るのはフルプレートを纏った老体。
畳に正座をしている。
腰には鞘に収まったロングソードを指していた。
鎧を纏い、武器を刺したまま正座を組んでいるので座りずらそうだ。
何故にフルプレートなのに老体だと分かるか?
それは、ヘルムの顔に白い髭が生えているからだ。
その白い髭が、露骨に老人だと印象付ける。
そして、部屋の前方に座るのは、黒い女性用のフルプレートを纏った存在。
その背後には、奥に進む扉がある。
室内に居るのは、この二人だけであった。
その他には室内を照らす複数の灯台だけである。
蝋燭の火が幾つも揺れていた。
この部屋を、必ず通らなければテイアーの研究室に行きつけない重要なポイントだ。
更に説明するならば、この部屋を境にハイランダーズの勢力圏が分かれている部屋なのだ。
そして、女性用のフルプレートを纏った存在は、謀反軍の一人である。
その名を『隼斬りのエクレア』。
謀反軍の中でも剣技のスピードならば一番と言われる女剣士である。
老戦士と女剣士の二人は、フルプレートでありながら畳に正座していた。
そんな女剣士に老戦士が声を掛ける。
「まだ……、待たれるつもりですかな、エクレア殿?」
しゃべったのは、腰に刺されたロングソードだ。
そのロングソードの柄に老人の顔が有り、その顔がしゃべったのだ。
「キャラメル師範は、タピオカ姫が、もう、このまま引き下がっていると思ってますか?」
「その回答は、何度も言っているのでは……」
「来ると?」
「いえ、来ませんな……」
「何故っ!?」
「姫様はヘタレです。絶対に父上の無念を払いに来るようなことはございません」
「何故にだ!?」
「だから、ヘタレだから……」
「何故に、何故に、何故にだ!!」
「だーかーらー、ヘタレなんですよ、姫様は。だから私も忠義を捨ててティラミス殿の謀反に参加したのでありますぞ!!」
「私は信じないぞ。幼馴染のタピオカ姫が、必ず父上の無念を返すために、再びこの砦に挑んでくることを……」
「それでエクレア殿は、ここで待ち受けていると?」
「左様だ。でなければ門番なんて勝手出るか!」
「でえ、なんでエクレア殿は、慕っているタピオカ姫に付いて行かなかったのですか?」
「私は彼女のライバルだぞ。ならばいつでも彼女の敵に回るのが筋だ。それが運命だ!」
「面倒臭いな……」
「面倒臭いとか言うな!!」
「はいはい、老体なのに付き合わされる身にもなってくださいよ……」
「それは申し訳ないと思っている」
「そもそもアレでしょう……」
「アレとはなんだ?」
「彼氏の取り合いでしょう。なんて言いましたっけ、あの青年?」
「キャッサバは関係ないぞ!!」
「嘘おっしゃいませ。エクレア殿もキャッサバが好きなんでしょう?」
「私はキャッサバのことなんて、なんとも思ってないんだからな!!」
「はいはい、そう言うことにしといてあげますよ……。あー、面倒臭い……」
「ぬぬぬぬ…………」
このような会話を二人は何度も繰り返していた。
まあ、暇だから……。
そんな暇を持て余している部屋の扉が開いた。
その扉から一人の人間が入って来る。
「ごめんください……」
人間は少年だった。
一人である。
腰を上げたキャラメル師範が声を掛けた。
「どちら様かな?」
少年は答えた。
「ソロ冒険者のアスランって申しますが、ここを通りたいのですが宜しいでしょうかね~?」
「「ダメでしょう」」
エクレアとキャラメル師範の声が揃う。
「あー、やっばりダメですよね~」
キャラメル師範が理由を述べた。
「ここから先は下の階まで一方通行ですので、我ら謀反軍の本拠地を通らなければなりませぬ。故にここは通れませんぞ」
少年は頭をかきながら言った。
「じゃあ力ずくでなら、通ってもいいですか?」
「いやいや、ダメですぞ。力ずくだと、尚ダメですな……」
キャラメル師範とエクレアが立ち上がる。
すると少年は足元を見ながら述べた。
「えっ、床は畳なの?」
「ほほう、畳をご存知ですか」
「ああ、これだと土足厳禁だよね?」
言いながらも少年は土足のまま畳に上がる。
「貴様、無礼だぞ!!」
「お前らだってフルプレートのまま上がっているじゃあねえか」
「このプレートブーツは内履きだ!!」
「内履きの鉄靴かよ……」
キャラメル師範が腰の鞘からロングソードを引き抜いた。
ロングソードの刀身が輝いている。
「無礼な人間め。八つ裂きにしてやろうか!」
「爺さん、無理すんな。腰を痛めるぞ」
「我らハイランダーズに腰と言う概念は存在せぬ!」
怒りのままにキャラメル師範が前に出ようとした。
それをエクレアが声で止める。
「待たれよキャラメル師範。ここは私が人間の相手をしましょうぞ」
エクレアが腰の鞘から細身の剣を抜いた。
レイピアだ。
レイピアの刀身も目映く輝いている。
そのレイピアをエクレアがヒュンヒュンと可憐に振るう。
「人間の冒険者よ。私があなたを串刺しにしてあげますわ!」
「エクレア殿……」
キャラメル師範の呟きに人間の冒険者が反応を見せる。
「えっ、あんたがエクレアか?」
「ええ、そうよ」
「隼斬りのエクレアなの?」
「ああ、私が隼斬りのエクレアだ!」
「よし、勝負しよう」
「えっ、何故に?」
「お前はここから先に誰も通さないのが仕事なんだろ?」
「ええ、門番ですからね」
「俺は下の階に進みたいから、強引にでも通りたいんだ。だから戦ったほうが早いよね」
「そうね!」
「ただし、俺が勝ったらここを通してもらうぞ」
「ならば、私が勝ったらお前の身ぐるみは全て私の物とするぞ!」
「それは構わんぞ」
「荷物も死体も、全てだ!」
「ああ、いいだろう」
「後悔するなよ!!」
「ただしだ!!」
「えっ、まだ何か?」
「俺が勝ったら、お前を俺の物とさせてもらうぜ!!」
「「なにっ!?」」
キャラメル師範が言う。
「エクレア殿、もしも負ければ口では言えないような卑猥な行為を強制されますぞ!!」
「た、例えばどんな!?」
「亀甲縛りで吊るされて、前と後ろと横から同時に冷え冷えのアイスキャンディーをねじ込まれながら変顔しているところを動画に撮影されて、ネットに無料でバラ撒かれますぞ!!」
「そんな恥ずかしいーー!!」
「そんなことするか、ボケ……」
「こ、これは負けられないわ……」
「エクレア殿、これは負けられない勝負ですぞ!!」
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