ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第429話【四本腕のラスボス】

棺桶から出て来た十一体目の敵は、この部屋のラスボスなのだろう。

しかも大層長い名前である。

スライム・イン・ザ・フォーハンドスケルトンウォリアー……。

兎に角長すぎだよな。

外観も酷い。

まずは長身で、蜥蜴のようなヘルムのフルプレートメイルに四本腕だ。

そのすべての腕にバトルアックスを持っていやがる。

そのバトルアックスすべてがマジックアイテムなのか四色のオーラを揺らぎ出していた。

赤、青、緑、紫だ。

たぶん炎属性、冷属性、毒属性、酸属性だろうさ。

なんとも豪華な武装だよね。

しかも一番酷いと表現できるのは、フルプレートメイルの中に緑色のスライムを宿していることだ。

寄生させているのか寄生されているのか分からないけれど、たぶんあのスライムで攻撃してくるのは容易く予想できるよね。

それが良くあるパターンだ。

スライムで攻撃してこなければ嘘になる。

しかも蜥蜴のようなデザインのヘルムの中で炎が揺らいでいるのも分かった。

おそらく蜥蜴の口が開いてファイアーブレスを撃ってくるんだろうな、こいつもさ。

前振りはあったもんな。

まあ、なんとも豪勢な武装だこと──。

攻撃パターンにバリエーションが豊富だよね。

「さて、どうするかな~」

正直なところ俺も疲れているんだよね~。

何せ、たいして強くなかったとは言えフォーハンドスケルトンたちを十体連続で撃破したばかりだもの。

スキルの数もだいぶ使ったしね。

ダメージはファイアーブレスで受けた僅かだが、運動量は激しかった。

簡単に述べれば、兎に角疲れてヤル気が湧かないってことですわ~。

ここでの連戦は気力的にキツイと思っているわけよ。

あー、面倒臭せえ~、面倒臭せえ~。

息をするのも面倒臭せえ~。

でも、こんなことを言ってると、北斗な人にピピッて経絡秘孔を突かれて呼吸を止められてしまうわ。

しゃあねえな~。

息も整ってきたし、戦ってやるか~。

何せこのエリアのラスボスだもんな。

花形スターだもんな。

フォーハンドにスライムのハイブリットだから、これでこのフロアーのネタも打ち止めのころだろうさ。

「しゃあねえ、最後の最後だろうから、付き合ってやろうかな」

って、俺がグダグダ考えていると、ヤル気満々の敵さんから前に歩み出てきた。

四本のバトルアックスを持った腕をXの字に大きく広げて大胆に歩み寄って来る。

襟巻き蜥蜴のように体を大きく見せる威嚇的な構えだった。

「じゃあ、まずは俺から先手を取らせてもらうぜ!」

まだ距離がある俺は、異次元宝物庫からシルバークラウンを取り出して被った。

大技からスタートである。

すると敵さんも蜥蜴ヘルムの口を大きく開いてファイアーブレスを吐いて来る。

「マジックイレイザー!!」

俺の波動魔法と火炎の息がぶつかり合う。

だが、マジックイレイザーのほうが破壊力で上のようだった。

ファイアーブレスを光の魔法が飲み込みながら押し進む。

そして、マジックイレイザーの光線が敵さんの全身を飲み込んだ。

火炎と波動砲の激突で吹き荒れた突風が室内に溜まっていた埃を舞い上げて視界を濁してしまう。

その大量の埃が波動砲を浴びた敵さんの姿を隠してしまった。

「ファイアーブレスは容易く強魔法で押しきれたぞ。だが、マジックイレイザーは効いてるかな?」

徐々に晴れていく埃の煙幕。

部屋の視界が取り戻されると、そこには丸焦げになって全身のあちらこちらから煙を上げている敵さんが立っていた。

「まあ、この一撃程度で倒せないだろうさ。だがダメージは十分に入っただろうよ。あとは近接攻撃で決めてやるぜ!」

そう言いながらシルバークラウンを異次元宝物庫に閉まった俺は、腰から黄金剣を引き抜いた。

すると──。

ガシャンっと音を鳴らして敵さんが前のめりに倒れ込む。

その倒れた甲冑の隙間から液体化したスライムの汁がダラダラと流れ出した。

「弱っ!!!!」

勝っちゃった………。

まさかの勝利である。

まさかまさかのマジックイレイザーの一撃でラスボスキャラを倒せるとは思わなかったぜ……。

あきれながら俺は倒れた敵さんに歩み寄ると黄金剣の先でフルプレートを突っついた。

「本当に死んだの……?」

俺が確認していると、俯せに倒れている敵さんが僅かに動く。

痙攣した腕を弱々しく上げると、落としたバトルアックスを掴もうとしていた。

「うわ、まだ生きてるよ!」

慌てた俺は、無造作にフルプレートのヘルムを蹴っ飛ばした。

するとボギッと音を鳴らしたあとに折れた首が飛んで行く。

飛んだ頭は石棺にぶつかって止まった。

【おめでとうございます。レベル42に成りました!】

あっ、レベルが上がったわ……。

今度こそ勝ったようだ。

オレ、つえーー!!

なんか、でも……。

まあ、いいか……。

「さて、マジックアイテムでも回収するかな~」

ルンルン気分で俺はマジックアイテムの回収作業を開始した。

なかなか今回は豊富で大量である。

何せ腕が四本あるイコール普通の人型モンスターより武器を倍の数だけ持っている敵たちなのだ。

四刀流が十一体だもんね。

よってかなりの数のマジックアイテムを確保できた。

まあ、マジックアイテムじゃあない武器もお小遣い程度には売れるから全部回収して異次元宝物庫に仕舞った。

それとフォーハンドスケルトンたちが入っていた棺桶を調べてみると、魔法のスクロールとか雑貨系のマジックアイテムが何個か出てきた。

本当に大収穫である。

「さて、残るは──」

そして俺はマジックアイテムの回収を終えると、一つだけ蓋が開いていない石棺の前に立つ。

あと調べていないのは、この棺桶だけである。

「ここにまた隠し階段でも有るのかな?」

俺は呟きながら両手で石蓋を押してずらした。

すると──。

『…………っ』

「……………」

俺は再び石棺の蓋を閉める。

居やがった……。

あのミイラ野郎が寝てやがったぞ……。

しかも目が合った……。

なんかスゲー脅えた眼差しで俺を見上げていたわ。

まるで雨の日に捨てられた子犬が段ボールの中から拾ってくださいって懇願しているような悲しい眼差しだったぞ……。

「これ、どうしよう……」

とりあえず俺は石棺の上に座ってから考えた。

「やっぱ、開けるしかないよな……」

石棺の中のヤツが、ウザイキャラじゃあないことを祈る。


【つづく】

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