ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第421話【赤いポーションと青いポーション】

『むぅ~すんで、ひぃ~らいて、てぇ~をうって~、むぅ~すんで、まぁ~たひらいて、てぇ~をうって~、そぉ~のてぇ~を、うーえーにー♪♪』

幼女テイアーがマヌカハニーさんと一緒に遊んでいる。

俺たち男衆は、その横で玉座に隠れながら幼女にビクつきながらも話し合っていた。

四人がしゃがんで輪になっている。

「この子は何故か男性にだけ暴力的に振る舞うんだ……」

ベオウルフが髭を撫でながら遊んでいる幼女テイアーをチラチラと警戒しながら言った。

俺が問う。

「年齢も関係ないのか?」

ベルセルク坊やが答える。

「ワシにも容赦無いぞ……」

「こ、こわいな……」

ワイズマンが汗をハンカチで吹きながら言う。

「デブにも容赦無いぞ……」

「知るか、そんなの!」

更にワイズマンが語る。

「見た目は幼女でも、中身はドラゴンだからね。子供のドラゴンでもパワーは人間の何倍あることやら……」

「普段はどうしてるの?」

ベオウルフが答える。

「特定のメイドに面倒を見させているが、彼女たちはテイアーがドラゴンとは知らない。だが、このままでは知られるのも時間の問題だろうさ……」

あー、その辺は秘密なのね。

でも、普通の幼女は火を吹かんだろ……。

「いつから子供に戻ったんだ?」

ベルセルク坊やが答える。

「一昨日の夜に城でパーティーを行っていたんだ。その晩からだ……。パーティーが終わってテイアーの様子を見に行ったら幼女に戻っていた……」

「なんでテイアーは若返りのポーションなんて飲んだんだよ?」

「彼女は元々が不老不死を望んでいたからのぉ。ポーションはその仮定だったんだろうさ。それが若返り過ぎたのじゃろうて……」

俺は背後で遊ぶ幼女を親指で指しながら言った。

「でぇ、どうすんだよ、これ?」

するとベルセルク坊やが俺を指差しながら答える。

「だからお前を呼んだんじゃ……」

「なんで俺が?」

ベルセルク坊やが服の袖から古びた本を一冊取り出した。

その本には栞が挟まれている。

そして、そのページを開いて見せた。

「ここに、テイアーの研究が記載されているんじゃが」

「読めんぞ……?」

「ドラゴン語じゃわい」

そんなもの読めるか。

ランゲージリング+2は下等種族の文字や言葉しか読み取れんから意味がない。

ドラゴンの文字は上位種族らしい。

「なんて書いてあるんだ?」

そのページはポーションが入った小瓶が画かれていたが文字までは理解できなかった。

ドラゴン語が読み書きできるベルセルク坊やが説明してくれる。

「簡単に説明したのならば、赤いポーションが若返りで、青いポーションが時間を戻すポーションだ」

若返りと時間を戻す?

「どっちも若返ってしまうんじゃないか?」

「いや、以前テイアーから聞いた話だと、若返りのポーションは肉体の老化を細胞核から再生復元させる魔法の薬らしいのじゃ」

言ってる意味が難しくて分からんな……。

「それに引き換え、時間を戻すポーションは、魔力で細胞核の時間を巻き戻して昔の形に戻す魔法の薬なんじゃわい」

うん、やっぱり意味が分からん。

どっちも同じ効果に聞こえるぞ……。

ここは結論を急ぐかな。

「それで、結論的に俺にどうしろと?」

ベルセルク坊やが本に画かれた小瓶を指差しながら言った。

「この魔法のポーションを、取って来てもらいたいんだ」

「どこからだ?」

「テイアーの研究室からだ」

「テイアーの研究室って、どこにあるんだよ?」

「閉鎖ダンジョンの地下だ」

「なるほど」

ならば前に行ったところだろう。

もう俺のレベルも高くなっているからチョロイ仕事だな。

「ただし、テイアーから聞いた話だと、閉鎖ダンジョンは年末大移動で形が変わっているらしいぞ」

「へぇ?、なにそれ??」

「閉鎖ダンジョンの年末大移動じゃわい」

「だから、それはなんだ?」

「知らんのか?」

「知らんがな……」

「閉鎖ダンジョンは年に一度だけ、ダンジョン内部が動いて形を帰るのじゃ。有名な話だぞ」

俺がワイズマンのほうを見たら頷いていた。

どうやら本当らしい。

「しかもテイアーの話だと、研究室が更に地下深くに移動してしまって面倒臭いって言ってたわい。テレポートにも距離で魔力の消費量が違うらしくてのぉ」

んんーー……。

大体話が読めてきたぞ。

「要するにだ。今回の依頼は、変形した閉鎖ダンジョンに入ってテイアーの研究室から、そのポーションを取ってこいと?」

ベルセルク坊やとベオウルフのオヤジが声を揃える。

「「その通りだ」」

「でぇ、俺は赤いポーションを取って来ればいいんだな?」

ベルセルク坊やが俺のハゲ頭を正面から上下に擦りながら言う。

「ちゃうわい。赤は若返りだ。青の時間を戻すポーションを取って来い。この絵の瓶に入ってるはずだ」

んん~~……。

まあ、いいか……。

「ところでなんで若返ったテイアーに更に若返りのポーションを飲ませるんだよ?」

「違う違う、時間を戻すポーションを飲ませるんだ。それで若返る前に時間を戻すんだよ!」

んんー……。

難しいな……。

「まあ、分かった。兎に角、この絵の瓶に入った青いポーションを閉鎖ダンジョンの研究室から持って帰ればいいんだな?」

親子が再び声を揃える。

「「その通りだ」」

さて、問題は──。

「それで、俺への報酬はいくらだ?」

それが一番大切な話である。

安かったら直ぐに逃げ出してやるぞ。

こんな怪物幼女の相手なんてしてられるかってんだ。

するとベルセルク坊やがガキなのに渋い顔で言う。

「1000000Gでどうだ?」

「えっ、マジで?」

前回の報酬の倍じゃんか。

かなりの高額報酬だぞ。

こんな仕事もあるんだな。

「更にダンジョン内で発見した物品は、全てお前の物で構わんぞ」

「おお、マジかい!?」

ベルセルク坊やはテイアーをチラ見しながらい言う。

「ただしじゃ、条件が有る……」

「条件?」

「出来るだけ急げ。何せこっちは危険物を抱えながら待たなければならないのだからな……」

「あー、なるほどね~」

確かに怪物幼女は例えるならニトログリセリンだわな。

男たちにしてみれば、ちょっと揺れたら、いつ大爆発するかも分からない超危険物だ。

テイアーの正体がバレるよりも怖い現実だろうさ。

「分かった。明日の朝イチから閉鎖ダンジョンに入るよ」

「一日過ぎるごとに報酬がマイナス100000Gだからな」

「マジ! それはズルくない!?」

「マジじゃわい!」

「九日で報酬がゼロになるじゃんか!!」

「十日だろ……」

すると──。

『アスラーーン、遊ぼうよ~』

あどけない幼女テイアーがこちらに駆け寄って来る。

「やばい!!」

「逃げろ!!」

「えっ!?」

瞬時にベルセルク坊やたちが、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

狼狽える俺だけが、その場に残る。

「えっ、えっ、えっ!!」

『がぉぉおおおお!!!』

また容赦無いファイアーブレスだ!!

「ぎぃぁあああああ!!!」

その晩のうちに俺は閉鎖ダンジョンに逃げ込んだ。

これは地上より地下のほうが安全だと悟る。

朝なんて待ってられんわい!!


【つづく】

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品