ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第350話【社長と交渉】
糞真面目なイメージが強いエルフだって酒を飲むらしい。
社長の家で行われた宴では、果物やら木の実やらの食事しか出なかったが酒はちゃんと出た。
麦から作った酒らしいが、俺は飲めない。
何せ、ゲコだからだ。
「なんだ、お前、飲めないのか!?」
木のジョッキを持った社長が俺に絡んできた。
もう、ウザイ……。
ついさっき、酔っぱらって調子こいて来た凶介を、ジャーマンスープレックスで眠らせたのに、今度は父親に絡まれたよ。
もう、ウザイな……。
マジ、ウザイ……。
「俺はゲコなんだよ……」
「えっ、本当か?」
「ああ、本当だ……」
「昔一緒に戦った人間の兵士から聞いたが、人間って酒が燃料で動いているんだろ!?」
「ああ、兵士には、そう言う人種も居るけど、俺は違うんだ。兎に角俺は酒が飲めない」
「人間には可愛そうなヤツも居るんだな!」
「なんとでも哀れめってんだ」
俺はひたすらライチの皮を剥いて食べた。
これ、好き。
初めて食べたけど、柔かな甘さの中にほんのりと酸っぱさが潜んでいるのが爽快だ。
今度は凶子が絡んで来た。
「ねぇーねぇー、アスラーン!」
「なんだよ。あっ……」
可愛い……。
凶子の野郎、いつの間にか着替えて着やがった。
特効服から肩が見える軽い上着にミニスカートだ。
しかも、無かった眉毛も描いてきてやがる。
化粧もケバさが消えて、素朴になっていた。
それが、可愛いのだ。
「ねーねー、アスラン。いつあたいをソドムタウンに連れてってくれるの!?」
「はぁ……?」
「ほら、テレポーターで転送してくれるんでしょ!!」
「はぁ……?」
「だって約束したよね!?」
「はぁ……?」
「何をすっとボケてるんだ、テメー! 絞めるぞ、ゴラッ!!」
凶子が額に青筋を浮かべて俺の襟首を掴んで引っ張った。
「何を急に怖い顔を作ってんだよ。可愛い顔が台無しじゃあねえか!!」
「えっ、あたいって、そんなに可愛いかな……?」
デレた……。
「はぁ、そんなでも無いぞ~」
すると凶子が背中から風林火山の木刀を引き抜いた。
「どこに入ってたんだ、それ?」
「問答無用じゃあ、ぶっ殺してやる!!」
凶子が全力で伝説の木刀を真っ直ぐ振り下ろした。
だが、その一撃を真剣白羽取りで受け止めたのは父の社長だった。
「凶子、私はお父さんだよ。ド近眼なんだから、暴力を振るう時ぐらいは眼鏡を掛けておくれ……」
「あっ、ごめんなさい、パパン……」
そして向きを変えた凶子はジャーマンスープレックスでお尻を上げている兄の元に言って甘い声を出した。
「アスラーン、頼むよ。明日、あたいをソドムタウンに連れてっておくれよ~」
そう言いながら兄のお尻に頬擦りをする。
うん、やっぱりこいつは眼鏡を掛けたほうがいいな……。
そんなこんなしていると、社長が真面目な声色で話し掛けてきた。
「でぇ、アスラン。本当に魔王城を観光地にするつもりか?」
「ああ、そのつもりだ。観光地として流行るかは分からんがな。それに関してエルフの村としては問題があるのか?」
「我々は、魔王城の入り口の村を、戦後五百年守って来たのだ……」
「それを踏まえて、問題があるのかって訊いてるんだ」
「まず、我々が何故にこんな片田舎で墓守みたいなことをしているか分かるか。誰にも望まれていないし、求められてもいないのに、何故に魔王城を守るみたいなことをしているか、分かるか?」
「知らんな。そもそも本気で魔王城を守ってないだろ?」
きっぱりと言った俺はライチを頬張る。
「我々は、戦後行き場がなかったエルフたちなのだ……」
「行き場がない?」
「私の祖父は、エルフだったが特殊でな……」
特殊ってなんだろう?
ただの変態かな?
「異世界転生者って、ヤツらしいんだ……」
「えっ、マジ!!」
で、出たよ、ここで。
「魔王や勇者も異世界転生者だったと噂されているが、私の祖父も、そうだったらしいのだ……」
それで、こんな変態なエルフなのか!?
「破極道山もアンドレアも私の親戚だ。私の血が近いものは、異常な体型で生まれてくる」
「それで、あんなにエルフ離れした怪物が……」
「そう、怪物なのだよ……。だからエルフからも嫌われ、エルフの町を追い出された……」
「なるほど、そんな事情があったのか」
「そして、我々は五百年前の功績から、ここに村を構えることをゆるされてな。それから守り人のようなことをしている……」
「それは分かった。でえ、俺の町作りは、反対なのか?」
「私は心配だ……。同族のエルフにすら受け入れられない我々が、人間の町と隣り合わせでやっていけるのだろうか……?」
「今まで人間との交流はなかったのか?」
「村で作っている籠や家具を人間の町に下ろしている。今日もイルミナルの町から帰って来たところだ……」
「へぇ~、家具とか作れるのか~。そりゃあいいな」
町が出来れば、その分だけ家具が必要になる。
これは手頃な職人たちをゲットできたかもしれんぞ。
しめしめだ。
「だが、私たちが人間の町に行けば、間違いなく白い目で見られる。恐れる者すらあるのだ。破極道山やアンドレアは特に怖がられる。やはりエルフにすら嫌われるエルフだからかも知れない……」
「いや、違うと思うぞ……。お前ら巨漢はエルフじゃあなくても怖いから……。それにお前ら極道っぽいものさ」
「ゴクドウ?」
この世界には極道が無いのか?
「ヤ◯ザのことだよ」
「◯クザ?」
無い物が多いな!!
「兎に角、お前には分からないのだ。白い目で見られる我々の気持ちが!!」
「だが、安心しろ!!」
俺は胸を張って言った。
「何故だ……?」
「ここは魔王城の観光地になるんだぞ!」
「だからなんだ?」
「観光地にはアトラクションが付き物だ。お前らエルフは魔王と戦ったのなら、その役をやってもらいたい。それに魔王軍役も必要だ。お前ら巨漢どもが演じればいいんだよ!!」
「我々が魔王軍……?」
「耳が尖っているから、それなりの衣装で着飾れば、魔族にだって見えるだろうさ!!」
「我々が魔族を演じるのか……?」
「そうだ、社長! お前は体格も良いしマッチョマンで貫禄も有るから、魔王役をやれよ!!」
「わ、私が魔王だと……」
「そうだ、かなりイケてると思うぞ!!」
「そ、そうか……。私が魔王役か……。出きるかな……。演技とか素人だし……」
でも、なんかやる気有りそうだぞ。
「お前は五百年前に魔王を見たことあるんだろ?」
「あるが……」
「ならば、パクれ。真似しろ、模倣しろ!!」
俯いて考える社長。
「まあ兎に角だ。やるやらないはあとの話だ。まずは町を作る。それをお前らエルフの村が協力する。それでいいだろ?」
するとムクリと社長が立ち上がった。
顔が怖い……。
静かで気迫が滲み出た表情からは貫禄が怖さとなって伝わって来る。
「パパン……」
凶子も心配そうに見上げていた。
近眼で見えてなくても気迫を感じ取ってるのだろう。
社長が渋声で言う。
「ならばアスラン。外に出よ」
俺もスタリと立ち上がった。
「OK」
俺は鼻歌混じりで出口に向かう。
その後ろに社長が続いた。
「パパン、アスラン、どうしたの!!」
俺が出入り口を潜る前に振り返って言った。
「やっぱり最後は男らしく、拳で決着をつけるらしいぞ」
「な、なんで……?」
凶子は、わけが分からないって顔をしていたが、俺たち二人は外に出た。
外は夜だ。
俺たちは再び広場の真ん中に立つ。
静かな森の夜に冷たい風が服と、俺のローブと社長の白いマフラーを揺らした。
【つづく】
社長の家で行われた宴では、果物やら木の実やらの食事しか出なかったが酒はちゃんと出た。
麦から作った酒らしいが、俺は飲めない。
何せ、ゲコだからだ。
「なんだ、お前、飲めないのか!?」
木のジョッキを持った社長が俺に絡んできた。
もう、ウザイ……。
ついさっき、酔っぱらって調子こいて来た凶介を、ジャーマンスープレックスで眠らせたのに、今度は父親に絡まれたよ。
もう、ウザイな……。
マジ、ウザイ……。
「俺はゲコなんだよ……」
「えっ、本当か?」
「ああ、本当だ……」
「昔一緒に戦った人間の兵士から聞いたが、人間って酒が燃料で動いているんだろ!?」
「ああ、兵士には、そう言う人種も居るけど、俺は違うんだ。兎に角俺は酒が飲めない」
「人間には可愛そうなヤツも居るんだな!」
「なんとでも哀れめってんだ」
俺はひたすらライチの皮を剥いて食べた。
これ、好き。
初めて食べたけど、柔かな甘さの中にほんのりと酸っぱさが潜んでいるのが爽快だ。
今度は凶子が絡んで来た。
「ねぇーねぇー、アスラーン!」
「なんだよ。あっ……」
可愛い……。
凶子の野郎、いつの間にか着替えて着やがった。
特効服から肩が見える軽い上着にミニスカートだ。
しかも、無かった眉毛も描いてきてやがる。
化粧もケバさが消えて、素朴になっていた。
それが、可愛いのだ。
「ねーねー、アスラン。いつあたいをソドムタウンに連れてってくれるの!?」
「はぁ……?」
「ほら、テレポーターで転送してくれるんでしょ!!」
「はぁ……?」
「だって約束したよね!?」
「はぁ……?」
「何をすっとボケてるんだ、テメー! 絞めるぞ、ゴラッ!!」
凶子が額に青筋を浮かべて俺の襟首を掴んで引っ張った。
「何を急に怖い顔を作ってんだよ。可愛い顔が台無しじゃあねえか!!」
「えっ、あたいって、そんなに可愛いかな……?」
デレた……。
「はぁ、そんなでも無いぞ~」
すると凶子が背中から風林火山の木刀を引き抜いた。
「どこに入ってたんだ、それ?」
「問答無用じゃあ、ぶっ殺してやる!!」
凶子が全力で伝説の木刀を真っ直ぐ振り下ろした。
だが、その一撃を真剣白羽取りで受け止めたのは父の社長だった。
「凶子、私はお父さんだよ。ド近眼なんだから、暴力を振るう時ぐらいは眼鏡を掛けておくれ……」
「あっ、ごめんなさい、パパン……」
そして向きを変えた凶子はジャーマンスープレックスでお尻を上げている兄の元に言って甘い声を出した。
「アスラーン、頼むよ。明日、あたいをソドムタウンに連れてっておくれよ~」
そう言いながら兄のお尻に頬擦りをする。
うん、やっぱりこいつは眼鏡を掛けたほうがいいな……。
そんなこんなしていると、社長が真面目な声色で話し掛けてきた。
「でぇ、アスラン。本当に魔王城を観光地にするつもりか?」
「ああ、そのつもりだ。観光地として流行るかは分からんがな。それに関してエルフの村としては問題があるのか?」
「我々は、魔王城の入り口の村を、戦後五百年守って来たのだ……」
「それを踏まえて、問題があるのかって訊いてるんだ」
「まず、我々が何故にこんな片田舎で墓守みたいなことをしているか分かるか。誰にも望まれていないし、求められてもいないのに、何故に魔王城を守るみたいなことをしているか、分かるか?」
「知らんな。そもそも本気で魔王城を守ってないだろ?」
きっぱりと言った俺はライチを頬張る。
「我々は、戦後行き場がなかったエルフたちなのだ……」
「行き場がない?」
「私の祖父は、エルフだったが特殊でな……」
特殊ってなんだろう?
ただの変態かな?
「異世界転生者って、ヤツらしいんだ……」
「えっ、マジ!!」
で、出たよ、ここで。
「魔王や勇者も異世界転生者だったと噂されているが、私の祖父も、そうだったらしいのだ……」
それで、こんな変態なエルフなのか!?
「破極道山もアンドレアも私の親戚だ。私の血が近いものは、異常な体型で生まれてくる」
「それで、あんなにエルフ離れした怪物が……」
「そう、怪物なのだよ……。だからエルフからも嫌われ、エルフの町を追い出された……」
「なるほど、そんな事情があったのか」
「そして、我々は五百年前の功績から、ここに村を構えることをゆるされてな。それから守り人のようなことをしている……」
「それは分かった。でえ、俺の町作りは、反対なのか?」
「私は心配だ……。同族のエルフにすら受け入れられない我々が、人間の町と隣り合わせでやっていけるのだろうか……?」
「今まで人間との交流はなかったのか?」
「村で作っている籠や家具を人間の町に下ろしている。今日もイルミナルの町から帰って来たところだ……」
「へぇ~、家具とか作れるのか~。そりゃあいいな」
町が出来れば、その分だけ家具が必要になる。
これは手頃な職人たちをゲットできたかもしれんぞ。
しめしめだ。
「だが、私たちが人間の町に行けば、間違いなく白い目で見られる。恐れる者すらあるのだ。破極道山やアンドレアは特に怖がられる。やはりエルフにすら嫌われるエルフだからかも知れない……」
「いや、違うと思うぞ……。お前ら巨漢はエルフじゃあなくても怖いから……。それにお前ら極道っぽいものさ」
「ゴクドウ?」
この世界には極道が無いのか?
「ヤ◯ザのことだよ」
「◯クザ?」
無い物が多いな!!
「兎に角、お前には分からないのだ。白い目で見られる我々の気持ちが!!」
「だが、安心しろ!!」
俺は胸を張って言った。
「何故だ……?」
「ここは魔王城の観光地になるんだぞ!」
「だからなんだ?」
「観光地にはアトラクションが付き物だ。お前らエルフは魔王と戦ったのなら、その役をやってもらいたい。それに魔王軍役も必要だ。お前ら巨漢どもが演じればいいんだよ!!」
「我々が魔王軍……?」
「耳が尖っているから、それなりの衣装で着飾れば、魔族にだって見えるだろうさ!!」
「我々が魔族を演じるのか……?」
「そうだ、社長! お前は体格も良いしマッチョマンで貫禄も有るから、魔王役をやれよ!!」
「わ、私が魔王だと……」
「そうだ、かなりイケてると思うぞ!!」
「そ、そうか……。私が魔王役か……。出きるかな……。演技とか素人だし……」
でも、なんかやる気有りそうだぞ。
「お前は五百年前に魔王を見たことあるんだろ?」
「あるが……」
「ならば、パクれ。真似しろ、模倣しろ!!」
俯いて考える社長。
「まあ兎に角だ。やるやらないはあとの話だ。まずは町を作る。それをお前らエルフの村が協力する。それでいいだろ?」
するとムクリと社長が立ち上がった。
顔が怖い……。
静かで気迫が滲み出た表情からは貫禄が怖さとなって伝わって来る。
「パパン……」
凶子も心配そうに見上げていた。
近眼で見えてなくても気迫を感じ取ってるのだろう。
社長が渋声で言う。
「ならばアスラン。外に出よ」
俺もスタリと立ち上がった。
「OK」
俺は鼻歌混じりで出口に向かう。
その後ろに社長が続いた。
「パパン、アスラン、どうしたの!!」
俺が出入り口を潜る前に振り返って言った。
「やっぱり最後は男らしく、拳で決着をつけるらしいぞ」
「な、なんで……?」
凶子は、わけが分からないって顔をしていたが、俺たち二人は外に出た。
外は夜だ。
俺たちは再び広場の真ん中に立つ。
静かな森の夜に冷たい風が服と、俺のローブと社長の白いマフラーを揺らした。
【つづく】
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