ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第305話【噂の大トンネル】

さて、朝が来た。

俺がソドムタウンの寝室から野宿しているテントに戻ると、早朝の山は白い霧に包まれていた。

少し冷やかな空気だが清々しい。

朝の霧は冷たさが爽やかだな。

これは俺だけの主観だろうか?

まあ、いいや。

では、早速山道に戻って近道のトンネルを探そうかな。

こうして俺は、緩やかな坂道を登って行った。

しばらく歩くと噂のトンネルを発見する。

誰が噂していたかは、言ってる俺も知らん。

トンネルの入り口は、何処にでも在りそうな外観だった。

縦横4メートルぐらいのアーチ型の入り口だ。

道の両脇は雑草に覆われ、トンネルの入り口の上からは前髪のように蔓がぶら下がっている。

そんな奇怪な風貌のトンネルは、口を開けた先が暗闇であった。

少し覗き見たが、トンネルの奥はやはり暗闇である。

当然ながら明かりなんて設置されていない。

まあ、入ってみるか。

それにしても、なんの使用目的で作られたトンネルだろうか?

まあ道に在るトンネルだから、運搬を目的に作られたトンネルなのかな。

もう、旧魔王城が在るエリアに近い道だから、魔王城に物資を運搬するために作られたトンネルなのだろう?

でも、もう使われて無さそうだ。

周囲も荒れているし、荷馬車が進むには、邪魔になりそうな岩がゴロゴロと転がっていやがる。

「んん?」

辺りを見回しながら進んでいると、入り口を入って直ぐの端に羊皮紙が一枚貼られているのに気が付いた。

「何か書いてあるな?」

石壁に鉄杭で打たれた古い羊皮紙にはこう書かれていた。

【ここモーゼのトンネルは噂高い心霊スポットだぜ。君も彼女を連れて、二人でチャレンジしてみなよ。君が勇気を出して先導すれば、彼女のハートをガッチリゲットできるかもしれないぜ。少年よ、幸運を祈る。アデュー!!】

何がアデューだ!!

えっ、なに!?

ここは心霊スポットなのか!?

なに、戯言なエリアかよ!?

本当に危険な近道なのか?

本当は危険なのは噂だけなんじゃあ無いのかな?

すげー、怪しくなって来たぞ……。

てか、本当に噂されてたよ!?

兎に角だ、先に進んでみるか?

俺はゆっくりトンネルの中に足を踏み入れた。

壁と天井はアーチ状に繋がっているのだが、岩のブロックを上手く組み合わせて補強されていた。

足元はずらずらっと煉瓦が敷き詰められている。

結構立派な作りであったが、時折倒壊している場所も多く、もう馬車などは進めないだろう。

「あっ、足跡が沢山あるな……」

俺が床をチラッと見ただけで異変に気付いた。

【追跡スキル。足跡などを見つけて、対象を追跡や探索ができる】

足跡の数は複数だった。

床いっぱいに広がっている。

裸足と粗末な靴の跡が多いぞ。

人より小さいな。

でも、子供とは違う。

裸足の跡は、爪先が鋭利に擦られている。

生爪の跡かな?

それと、時折だが大きな足跡も混ざっていやがる。

総合するに、ゴブリンかな?

だとするならば、大きいのはホブゴブリンだろうさ。

あと、犬の足跡だ。

いや、狼かな?

ダイナウルフだろう。

こりゃあゴブリンライダーも居そうだわ。

この心霊スポットには、幽霊の代わりにゴブリンが住み着いているな。

しかも大量にだ。

んん~~……。

でも、今さらゴブリンか~~。

物足りないモンスターだよね。

雑魚が何百何千と出て来て、倒したとしてもさ、補正が掛かって経験値なんて一匹1点だろうしな~。

千匹倒しても1000点だよ。

今さらレベルアップに繋がらないよ。

下手すりゃあ雑魚すぎて0点かもしれないぞ。

なんか食べる価値が無いかも知れないわ。

でも、ここまで来て先に進まないわけにも行かないか~。

よし、諦めて中に入るかな。

冒険は冒険だ。

まあ、何か金目の物が有ればラッキーだろう。

俺はハチェット+1を異次元宝物庫から取り出して、刀身にマジックトーチを掛けた。

【ハチェット+1。攻撃力向上】

まあ、たまには手斧程度でいいだろうさ。

どうせ出て来ても相手はゴブリンだもんな。

よし、これで先に進もうかな。

こうして俺はハチェットの明かりを頼りにトンネル内を先に進んで行った。

しかし……。

詰まらんな……。

真っ直ぐな直線だ。

もう、100メートルほど進んだが、何も無いのだ。

しかも遥か先には、出口の明かりが見えていた。

たぶん200メートルほど先なのかな?

このトンネルの全長は、真っ直ぐで300メートルってところだろうか。

このまま進んだら、すぐにトンネルから出てしまいますがな……。

そりゃあ詰まらないよね。

しかし、更に50メートルほど進んだところで異変が現れた。

トンネルのほぼ中央だろう。

「わお~~、横穴だ!?」

歓喜!

横穴発見ですよ!!

しかも大きな横穴だ!!

岩壁が崩れて正規ではない道が出来上がっていた。

崩れた穴は縦横3メートルぐらいだろうかな。

乱雑に崩れており、緩やかに下っている。

ゴブリンたちの足跡もこの横穴に曲がって進んでいた。

なんか臭いし臭うから、この先がゴブリンたちの巣だろう。

よし、俺もここで曲がりますともさ。

俺はゆっくりと雑なトンネルを下って行った。

「もうトンネルじゃあねえな、洞窟だわ……」

声が少し響いた。

今は朝だから夜行性のゴブリンにしてみれば真夜中のはずだ。

まだ、寝ている時間帯だろう。

少しぐらい物音を建てても問題なかろうて。

それに起きて来ても問題ない。

今さらゴブリンなんて何百来ても蹴散らせる。

だから俺は余裕綽々で先を進んだ。

洞窟の幅は段々と広がり天井も高くなって行く。

結構広いな。

5分ぐらい進むと高さと幅が30メートルほどまで広がっていった。

すげーデカイ洞窟だわ……。

高くて広いわ~……。

元のトンネルの数倍の規模になったな……。

奥行きは、どこまで続くのだろうか?

先は果てしなさそうだ。

んん~~……。

これはただ広すぎて、どこにゴブリンが潜んで居るか分からんぞ。

足跡は洞窟内の至るところに広がってるしさ。

でも、ここで端を通ると男らしくないよね。

どうせ俺は明かりを持っている段階で、居場所はバレバレなんだしさ。

ここは上級者のソロ冒険者らしく、ド真ん中を堂々と進もうとも!

てなわけで、俺は堂々と洞窟の真ん中を進んで行った。

すると周囲で気配が蠢く。

岩陰などに何かが嫌がるな。

しかも複数だ。

右も左にもだ。

背後の暗闇に回り込むヤツらも居やがるぞ。

うん、囲まれてますな。

まあ、構わんけれどね。

さて、どこまで進んだら、攻撃しようかな?

それとも相手が攻撃して来るのを待とうかな。

そうだよ。

なんか俺から攻撃を仕掛けたら、俺が弱い者苛めをしに来たみたいじゃあないか。

おとなしく誰にも迷惑を掛けずに暮らしていた平和的なゴブリンを俺が襲ってるみたいじゃあないかよ。

それはやだよな~。

だからゴブリンのほうから攻めて来てくれないかな~。

先に手を出されたら、俺の正当防衛が成立するもんね。

あっ、風切り音だ。

何か飛んで来るぞ。

俺は音が聞こえる右を見た。

すると暗闇の中を、矢が弧を描いて飛んで来るのが見えた。

「おらっ!」

俺は輝くハチェットで矢を薙ぎ払う。

ふっ、甘いぜ。

だが今度は一斉に矢が数十本も飛んで来る

「わぉ、これはヤバイな!!」

俺は走って飛来する矢の範囲から飛び出した。

俺が居た周辺は複数の矢が刺さり、叢のようになっている。

何本撃って来やがったんだ?

「音っ!!」

今度は四方八方から走って来る足音が聞こえた。

その足音は唸りとなって洞窟内に響き渡る。

一斉攻撃か!?

キタキタキター!!

面白い!!

俺は全力でハチェットを暗闇に投げ入れる。

弧を描いたハチェットが照らし出したゴブリンの一匹に突き刺さった。

「ギィャ!!」

適当に投げたのに、ハチェットが刺さるほどゴブリンたちの数は多くて密集していた。 

続いて俺は異次元宝物庫からロングボウ+1を取り出す。

そして矢筒の中の矢にマジックトーチを掛けては次々と暗闇の中に放って行った。

もう適当にドンドンと撃つ。

光る矢は、時にはゴブリンにささり、時には外れ、時には防がれた。

だが、俺が10本も光る矢を放てば周囲は十分に明るくなる。

そして、光る矢に照らされ姿を露にするゴブリンたち。

それは群れを越えた集団であった。

否、軍団──。

否、否、大軍団である。

「ウッキィィイイイイ!!」

「キョェェエエエエエ!!」

「キィーーーーーーー!!」

そんな大軍団が全方向から攻めて来るのだ。

その数は百や二百を余裕で越えている。

おそらく千匹は居そうだぞ!?

いや、二千かな!!

「おもしろい、これは一丁やってみますか!!」


【つづく】

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