ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第224話【チ◯コ味のキノコ】
矮躯な爺さんだった。
禿げた頭に薄汚れた白衣を着ている。
普通なのはそれだけだ。
問題なのは、股間の部分から特徴的なキノコが生えていることだ。
俺はそのキノコを凝視した。
うん、間違いないな。
チ◯コではないぞ。
ちゃんとしたキノコだ。
セーフだな。
爺さんは頑固そうな口調で言った。
「坊主、何しに来た?」
「道に迷ってな。マタンゴに追われてここに逃げ込んだ」
「ここは避難所じゃあないぞ」
「追い出すのかい?」
「いや、久々の人間だ。ゆっくりしていけ」
なんだよ、寂しがりやなんじゃあないか。
歓迎ムードですか。
俺は部屋の中を見回しながら訊いた。
「爺さんは、ここに一人で住んでるのか?」
「ああ、四十年になる」
「すげーな」
「この森がこんなになる前からじゃ」
「じゃあ、昔はこんなじゃあなかったのか?」
俺が勝手に椅子に座ると爺さんはベッドに越しかけた。
股間のキノコを撫でている。
アカン、その仕草はアカンぞ!
「三十年前ぐらいから、キノコに汚染されたんじゃ」
「なぜ?」
「どこかから誰かがマタンゴの菌類を持ち込んだんだろうさ。ハッキリしたことは分からん」
「それで、こんな森に」
「最初はキノコもここまで酷くなかった。だが、マタンゴが増えると森の汚染も激しく成っていったんだ」
「マタンゴの数に応じて森の汚染も進んだと?」
「たぶんだがな」
この爺さんは、悪い人では無いようだな。
ただの物好きなのだろう。
この森を捨てきれずに残っているのかな。
「ああ、言い忘れたな。俺はソロ冒険者のアスランだ」
「ワシは、キノコ研究家のクラークじゃ」
クラークだと──。
「もしかしてファミリーネームはケントじゃあないよな?」
「ファミリーネームは、とうに捨てたが、そんな名字ではないぞ」
「そうか、良かった……」
「なあ、坊主」
「なんだいクラーク爺さん?」
「良かったら、ワシの研究の成果を見ていってくれないか?」
「ああ、いいよ。それは面白そうだ」
爺さんはベッドから腰を浮かすと奥の部屋に進んで行く。
「こっちに来てみろ」
場所を移動するのかな?
俺はクラーク爺さんのあとに続いた。
クラーク爺さんは、螺旋階段を下って地下を目指す。
「けっこう深い穴だな」
「ワシが子供のころから有る縦穴じゃ。なんのために作られたかも知らん」
「へぇ~」
やがて最地下に到着すると、そこは大きな部屋だった。
ここの天井にも光茸が寄生している。
「わおっ!」
部屋の中には沢山のプラントが有り、多くのキノコが栽培されていた。
それらのキノコは地上の毒々しいキノコと違って食べれそうな感じであった。
「これらのキノコは全部食べれるぞ。何せ綺麗な地下水で育てられているからな。ワシの貴重な食料源でもあるんじゃ」
「なるほど」
「ここのキノコと虫が、主な食料じゃ」
「虫を食べるのか……?」
「虫は貴重なタンパク質だからの。それに虫にはマタンゴが寄生しないんじゃ」
そうなのか。
でも、やっぱり虫は無理だわ。
俺では食べれない……。
クラーク爺さんは、いくつかのキノコを抜くと俺に手渡す。
「持ってけ、今晩の飯だ」
「俺は調理が出来ないぞ」
「じゃあ、焼いて食うか」
「分かった」
大振りのキノコだったから、二個か三個食べればお腹がいっぱいに成りそうだな。
俺たちは上の階に戻ると暖炉の火でキノコを焼いた。
そう言えば爺さんは夕飯だって言ったな。
もう、外は夜なのか?
「爺さん、外の時間が分かるのか?」
「発光キノコの光加減で分かるんじゃ。そろそろ夜が来るぞ」
「へぇ~、そうなんだ」
「飯を食ったら出て行くといいぞ」
「なんでだ?」
「マタンゴは、夜になると行動力が衰えるんじゃ。奴らも寝るんだよ」
「そうなのか」
「だから極めて安全に森を出れるだろうさ」
「流石はこの道三十年の研究家だな。貴重な情報をありがとう」
「ところで、今焼いているキノコの中に、ワシの股間から生えていたキノコが混ざっている」
「なぬっ!?」
俺がクラーク爺さんの股間を覗けば確かに股間のキノコが根本から切断されていた。
俺は枝で串刺しにされながら暖炉の火に炙られているキノコを見る。
焼かれているキノコは四本だ。
この中の一つがクラーク爺さんの股間から生えていたキノコになる!?
「どれか分かるかな?」
分からん……。
見た目はほぼほぼ一緒だ。
まさかこんなチャレンジを挑まれるとは思ってもいなかったから、持って来たキノコをマジマジと見ていない。
もう、どれがどれだか分からないぞ。
だが、ハズレは四つに一つだ。
ハズレを引く確率は低い!!
「どうする、食べるのを止めるか?」
クラーク爺さんは、意地悪く微笑んでいた。
その表情を暖炉の火が照らし出す。
「食べるのは、ワシとお前さんとで二つずつだ。選ぶのは、勿論お前さんだぞ」
「ぬぬぬぬぬ~……」
「安心せい。ワシの股間から生えていただけで、毒素は無いキノコだ」
毒素とかの問題じゃあない。
これは人としての尊厳の問題だ。
間違っても股間から生えたキノコなんて食べられない。
それだけは、出来ないのだ。
そして、逃げれもしない。
この程度の勝負から逃れたと有っては、ソロ冒険者アスランの名が廃るってもんだ!!
「よし、選ぶぞ!!」
俺は思いきって二つのキノコを選んだ。
「じゃあ、一緒に食べようか」
「お、おう……」
俺は恐る恐るキノコを食べた。
爺さんも残りのキノコを食べる。
焼きキノコの香りは凄く良かったが、味はほとんど無いな。
でも、香ばしいぞ。
不味いか旨いかって言えば、それでも旨いかな。
だが、問題は、今食っているキノコが、クラーク爺さんの股間から生えていたキノコかどうかだ。
二つのキノコをたいらげてから俺はクラーク爺さんに訊いてみた。
「で、結果は?」
クラーク爺さんは、勿体ぶらずに答えた。
「お前さんが食ったのが、ワシの股間から生えていたキノコだわい!」
「ゲロゲロゲロ~~」
俺はクラーク爺さんの言葉を全部聞く前に吐いていた。
まさか、チ◯コ味のキノコを食べて美味しいかなって思ってしまった自分が恥ずかしい。
一生の不覚である……。
【つづく】
禿げた頭に薄汚れた白衣を着ている。
普通なのはそれだけだ。
問題なのは、股間の部分から特徴的なキノコが生えていることだ。
俺はそのキノコを凝視した。
うん、間違いないな。
チ◯コではないぞ。
ちゃんとしたキノコだ。
セーフだな。
爺さんは頑固そうな口調で言った。
「坊主、何しに来た?」
「道に迷ってな。マタンゴに追われてここに逃げ込んだ」
「ここは避難所じゃあないぞ」
「追い出すのかい?」
「いや、久々の人間だ。ゆっくりしていけ」
なんだよ、寂しがりやなんじゃあないか。
歓迎ムードですか。
俺は部屋の中を見回しながら訊いた。
「爺さんは、ここに一人で住んでるのか?」
「ああ、四十年になる」
「すげーな」
「この森がこんなになる前からじゃ」
「じゃあ、昔はこんなじゃあなかったのか?」
俺が勝手に椅子に座ると爺さんはベッドに越しかけた。
股間のキノコを撫でている。
アカン、その仕草はアカンぞ!
「三十年前ぐらいから、キノコに汚染されたんじゃ」
「なぜ?」
「どこかから誰かがマタンゴの菌類を持ち込んだんだろうさ。ハッキリしたことは分からん」
「それで、こんな森に」
「最初はキノコもここまで酷くなかった。だが、マタンゴが増えると森の汚染も激しく成っていったんだ」
「マタンゴの数に応じて森の汚染も進んだと?」
「たぶんだがな」
この爺さんは、悪い人では無いようだな。
ただの物好きなのだろう。
この森を捨てきれずに残っているのかな。
「ああ、言い忘れたな。俺はソロ冒険者のアスランだ」
「ワシは、キノコ研究家のクラークじゃ」
クラークだと──。
「もしかしてファミリーネームはケントじゃあないよな?」
「ファミリーネームは、とうに捨てたが、そんな名字ではないぞ」
「そうか、良かった……」
「なあ、坊主」
「なんだいクラーク爺さん?」
「良かったら、ワシの研究の成果を見ていってくれないか?」
「ああ、いいよ。それは面白そうだ」
爺さんはベッドから腰を浮かすと奥の部屋に進んで行く。
「こっちに来てみろ」
場所を移動するのかな?
俺はクラーク爺さんのあとに続いた。
クラーク爺さんは、螺旋階段を下って地下を目指す。
「けっこう深い穴だな」
「ワシが子供のころから有る縦穴じゃ。なんのために作られたかも知らん」
「へぇ~」
やがて最地下に到着すると、そこは大きな部屋だった。
ここの天井にも光茸が寄生している。
「わおっ!」
部屋の中には沢山のプラントが有り、多くのキノコが栽培されていた。
それらのキノコは地上の毒々しいキノコと違って食べれそうな感じであった。
「これらのキノコは全部食べれるぞ。何せ綺麗な地下水で育てられているからな。ワシの貴重な食料源でもあるんじゃ」
「なるほど」
「ここのキノコと虫が、主な食料じゃ」
「虫を食べるのか……?」
「虫は貴重なタンパク質だからの。それに虫にはマタンゴが寄生しないんじゃ」
そうなのか。
でも、やっぱり虫は無理だわ。
俺では食べれない……。
クラーク爺さんは、いくつかのキノコを抜くと俺に手渡す。
「持ってけ、今晩の飯だ」
「俺は調理が出来ないぞ」
「じゃあ、焼いて食うか」
「分かった」
大振りのキノコだったから、二個か三個食べればお腹がいっぱいに成りそうだな。
俺たちは上の階に戻ると暖炉の火でキノコを焼いた。
そう言えば爺さんは夕飯だって言ったな。
もう、外は夜なのか?
「爺さん、外の時間が分かるのか?」
「発光キノコの光加減で分かるんじゃ。そろそろ夜が来るぞ」
「へぇ~、そうなんだ」
「飯を食ったら出て行くといいぞ」
「なんでだ?」
「マタンゴは、夜になると行動力が衰えるんじゃ。奴らも寝るんだよ」
「そうなのか」
「だから極めて安全に森を出れるだろうさ」
「流石はこの道三十年の研究家だな。貴重な情報をありがとう」
「ところで、今焼いているキノコの中に、ワシの股間から生えていたキノコが混ざっている」
「なぬっ!?」
俺がクラーク爺さんの股間を覗けば確かに股間のキノコが根本から切断されていた。
俺は枝で串刺しにされながら暖炉の火に炙られているキノコを見る。
焼かれているキノコは四本だ。
この中の一つがクラーク爺さんの股間から生えていたキノコになる!?
「どれか分かるかな?」
分からん……。
見た目はほぼほぼ一緒だ。
まさかこんなチャレンジを挑まれるとは思ってもいなかったから、持って来たキノコをマジマジと見ていない。
もう、どれがどれだか分からないぞ。
だが、ハズレは四つに一つだ。
ハズレを引く確率は低い!!
「どうする、食べるのを止めるか?」
クラーク爺さんは、意地悪く微笑んでいた。
その表情を暖炉の火が照らし出す。
「食べるのは、ワシとお前さんとで二つずつだ。選ぶのは、勿論お前さんだぞ」
「ぬぬぬぬぬ~……」
「安心せい。ワシの股間から生えていただけで、毒素は無いキノコだ」
毒素とかの問題じゃあない。
これは人としての尊厳の問題だ。
間違っても股間から生えたキノコなんて食べられない。
それだけは、出来ないのだ。
そして、逃げれもしない。
この程度の勝負から逃れたと有っては、ソロ冒険者アスランの名が廃るってもんだ!!
「よし、選ぶぞ!!」
俺は思いきって二つのキノコを選んだ。
「じゃあ、一緒に食べようか」
「お、おう……」
俺は恐る恐るキノコを食べた。
爺さんも残りのキノコを食べる。
焼きキノコの香りは凄く良かったが、味はほとんど無いな。
でも、香ばしいぞ。
不味いか旨いかって言えば、それでも旨いかな。
だが、問題は、今食っているキノコが、クラーク爺さんの股間から生えていたキノコかどうかだ。
二つのキノコをたいらげてから俺はクラーク爺さんに訊いてみた。
「で、結果は?」
クラーク爺さんは、勿体ぶらずに答えた。
「お前さんが食ったのが、ワシの股間から生えていたキノコだわい!」
「ゲロゲロゲロ~~」
俺はクラーク爺さんの言葉を全部聞く前に吐いていた。
まさか、チ◯コ味のキノコを食べて美味しいかなって思ってしまった自分が恥ずかしい。
一生の不覚である……。
【つづく】
コメント
くあ
主人公キノコきらいじゃなかったの!?