ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第207話【完熟フレッシュ亭】
俺は黒いセーラー服を纏った変態野郎たちに囲まれながら、そのボスらしいゴリラ女と向かい合っていた。
一人だけ白いセーラー服を着ているマッチョでデカイ女だ。
その剛腕の力瘤は、俺の頭ぐらい有りそうだった。
マッチョなセーラー服女は凛々しく俺の前に立ち塞がる。
俺の前まで歩み寄ると、俺を長身から見下ろした。
「悪いな、お客さん。店内で喧嘩をされると困るんだよ」
俺はマッチョ女の顔を見上げながら言い返す。
「最初に喧嘩を売ってきたのは、そっちだぞ」
マッチョ女も言い返す。
「悪いね、私は見ていない。私が見たのは、あんたがうちの客を投げて、二人目を殴り倒したところだけだ」
「よく言うぜ。俺のほうから喧嘩を売ったってのかい?」
動いたら殴り掛かるぞ。
先手必勝だ。
「そうだ。こっちが買ったんだ」
マッチョ女が手を伸ばして来た。
俺は瞬時に拳を放って腹を殴る。
だが、鉄筋コンクリートの壁を殴ったかのような衝撃が俺の拳に跳ね返って来た。
効いていないわ~……。
ぜんぜん効いてないわ~。
「いきなり何をするのさ」
そして、 マッチョ女の右手が俺の肩を掴んだ。
服を掴んだのではない。
肩の肉を鷲掴んだのだ。
万力のような力で太い指が俺の肩に食い込む。
「ぬぬっ!!」
痛い!
俺は掴んだ手を払い除けようと、マッチョ女の肘を下から掌で突き上げた。
肘関節を叩き伸ばしてやる。
「ぅぐ!!」
マッチョ女の腕が真っ直ぐに伸びたが掴んだ手は放さない。
ならば!!
俺の右足が跳ね上がる。
弧を描いた脚首がマッチョ女の頬にめり込んだ。
「がっ!!」
マッチョ女が俺のハイキックで揺らいだ。
だが、掴んだ手は放さない。
粘るな!?
「おーらっ!!」
「ええっ!!」
次の瞬間、俺は一瞬で持ち上げられていた。
マッチョ女に両手で天高く持ち上げられているのだ。
マッチョ女の銀髪が、空中で横になる俺の下に有った。
プロレス技で言うところのボディーリフトだ。
俺の身体は2メートルの高さにある。
ここから投げ落とされるのですか!?
「誰か、入り口を開けて!」
「ハイよ!」
マッチョ女に言われて酒場の扉が開けられた。
「おーーら!!」
「嘘~~~!!」
そして俺は頭から真っ直ぐに投げられた。
そのまま空中を飛んで、出入り口から店の外に投げられる。
「デットリードライブかよ!」
だが───。
「よっと!」
俺は身体を丸めると空中で回転して足から綺麗に着地した。
暗くなり始めた路上には、まだ少数の人が闊歩している。
いきなり店の中から飛んで来た俺に驚いていた。
良かったぜ、歩行者を巻き込まなくってさ。
俺がズボンに付いた埃を払っていると、白いセーラー服姿のマッチョ女が酒場から出て来た。
こん畜生め、追って来やがったな。
「あんた、なかなかやるじゃんか」
マッチョ女は両手の指をポキポキと鳴らしていた。
やたらと威嚇的だな。
だが、見かけほど強くない。
俺は真っ直ぐ凛々しく立ってマッチョ女を睨み付けた。
「いい顔をしてるね。目がいいわ」
「カッコイイとよく言われるよ」
少し間が空いた。
マッチョ女は何も言わない。
そして、やっと口を開いた。
「嘘でしょ?」
「嘘です……」
ちくしょう……。
なんか悲しいぞ……。
「名前を訊こう。私はユキだ。あんたは?」
可愛い名前だな……。
「ソドムタウンのソロ冒険者、アスランだ」
「ソドムタウン?」
「そう」
「それは随分と遠くから来たもんね」
「旅をしているんだ」
マッチョ女が前に出た。
片腕をほぐすようにグルグルと廻している。
やり合う気かな。
よし、受けて立とう。
魔女にさんざんやられてストレスが溜まってるんだよね。
ここは弱い者イジメになるけれど、ストレス発散をさせて貰うぞ!
マッチョ女が間合いに入ると拳を振りかぶった。
来るぞ!
カウンターをぶち込んでやるぜ!!
「おっらああああ!!!」
「こいや!!」
「おーーーーまーーーーちーーーー!!!」
ええっ!?
俺とマッチョ女の拳が第三者の大声で止まった。
マッチョ女が敵の眼前で踵を返す。
俺に背を見せる。
隙を見せることすら憚らず、大声の主を見てやがるんだ。
俺は身体を反らして大柄の向こうに大声の主を見た。
そこには背の低い女性が仁王立ちで立っていた。
酒場の出入り口前で、白いセーラー服にエプロン姿の矮躯な女性が、怖い顔で立っているのだ。
中年女性だが、身長が低くて可愛らしい。
150センチも無いだろう。
そのぐらい背が低い。
しかし、今は形相が怖かった。
まるで肉食の猛獣のようだ。
そして、再び矮躯な女性が吼える。
「ユキ、何サボってんだい!!」
「ママ、こいつがお客さんをぶん投げたから、私も投げただけだよ……」
あれ、なに、この弱気な態度はさ?
それにママって、母だよな?
この二人、親子ですか?
身体のサイズは違うが、顔立ちは確かに似ているな。
そして、矮躯な女性が更に吼えた。
「投げられたのもお客さんだが、あんたが投げたのもお客さんだぞ!!」
「でも、ママ……」
「言い訳は聞かないよ、いいから店に入って仕事をしなさい。休憩は終わりだ!!」
「はい、ママ……」
ユキちゃんはショボくれて店内に入って行った。
残った矮躯な女性が俺に吼える。
「あんたも店に入りな。投げたお客さんと、叩き伸したお客に謝ったら、皆でセーラー服を着て楽しく飲みなさい!!」
「えっ、謝るの? てか、俺もセーラー服を着るの?」
「いいから、早く店に入りやがれ!!」
また、大声で吼えられた。
なんなんだ、この人は……。
俺の表情を見て察したのか、矮躯な女性が言った。
「私は完熟フレッシュ亭の主、ハウリングだ!!」
「ハウリング……」
偽名かな?
「いいからさっさと店に入りやがれ!!」
「はい!!」
俺は叱られてショボショボと店に入った。
それから投げた野郎と叩き伸した野郎に謝罪した。
案外と二人は俺の謝罪をすんなりと受け入れる。
それどころか苦笑いで俺に謝罪を返してきた。
なに、この空気?
スゲー、友好的じゃあね?
俺が騒がしさを取り戻した店内を見回せば、ユキちゃんがお盆を持って酒を運んでいる。
ウェイトレスなのか?
さっきの矮躯な女性はカウンター内でチョコチョコと動いていた。
カウンター越しに銀髪だけがチラホラと見える。
本当に小さいな。
「なんなんだ、この店は……?」
俺の独り言を聞いたセーラー服野郎の一人が答えてくれた。
「この店は、コスプレバーだよ」
「コスプレバー……?」
「そうそう、そして今日はサザータイムズ魔法使い学園の女子服デーなんだ。だから全員セーラー服を着ているんだよ」
「えっ、なに、じゃあ、ここに居る全員は、コスプレ好きな変態ですか……?」
「変態かどうかは議論の余地があるけれど、ここの全員がコスプレ女装マニアだよ」
それを世界では変態って呼ぶんだぜ……。
【つづく】
一人だけ白いセーラー服を着ているマッチョでデカイ女だ。
その剛腕の力瘤は、俺の頭ぐらい有りそうだった。
マッチョなセーラー服女は凛々しく俺の前に立ち塞がる。
俺の前まで歩み寄ると、俺を長身から見下ろした。
「悪いな、お客さん。店内で喧嘩をされると困るんだよ」
俺はマッチョ女の顔を見上げながら言い返す。
「最初に喧嘩を売ってきたのは、そっちだぞ」
マッチョ女も言い返す。
「悪いね、私は見ていない。私が見たのは、あんたがうちの客を投げて、二人目を殴り倒したところだけだ」
「よく言うぜ。俺のほうから喧嘩を売ったってのかい?」
動いたら殴り掛かるぞ。
先手必勝だ。
「そうだ。こっちが買ったんだ」
マッチョ女が手を伸ばして来た。
俺は瞬時に拳を放って腹を殴る。
だが、鉄筋コンクリートの壁を殴ったかのような衝撃が俺の拳に跳ね返って来た。
効いていないわ~……。
ぜんぜん効いてないわ~。
「いきなり何をするのさ」
そして、 マッチョ女の右手が俺の肩を掴んだ。
服を掴んだのではない。
肩の肉を鷲掴んだのだ。
万力のような力で太い指が俺の肩に食い込む。
「ぬぬっ!!」
痛い!
俺は掴んだ手を払い除けようと、マッチョ女の肘を下から掌で突き上げた。
肘関節を叩き伸ばしてやる。
「ぅぐ!!」
マッチョ女の腕が真っ直ぐに伸びたが掴んだ手は放さない。
ならば!!
俺の右足が跳ね上がる。
弧を描いた脚首がマッチョ女の頬にめり込んだ。
「がっ!!」
マッチョ女が俺のハイキックで揺らいだ。
だが、掴んだ手は放さない。
粘るな!?
「おーらっ!!」
「ええっ!!」
次の瞬間、俺は一瞬で持ち上げられていた。
マッチョ女に両手で天高く持ち上げられているのだ。
マッチョ女の銀髪が、空中で横になる俺の下に有った。
プロレス技で言うところのボディーリフトだ。
俺の身体は2メートルの高さにある。
ここから投げ落とされるのですか!?
「誰か、入り口を開けて!」
「ハイよ!」
マッチョ女に言われて酒場の扉が開けられた。
「おーーら!!」
「嘘~~~!!」
そして俺は頭から真っ直ぐに投げられた。
そのまま空中を飛んで、出入り口から店の外に投げられる。
「デットリードライブかよ!」
だが───。
「よっと!」
俺は身体を丸めると空中で回転して足から綺麗に着地した。
暗くなり始めた路上には、まだ少数の人が闊歩している。
いきなり店の中から飛んで来た俺に驚いていた。
良かったぜ、歩行者を巻き込まなくってさ。
俺がズボンに付いた埃を払っていると、白いセーラー服姿のマッチョ女が酒場から出て来た。
こん畜生め、追って来やがったな。
「あんた、なかなかやるじゃんか」
マッチョ女は両手の指をポキポキと鳴らしていた。
やたらと威嚇的だな。
だが、見かけほど強くない。
俺は真っ直ぐ凛々しく立ってマッチョ女を睨み付けた。
「いい顔をしてるね。目がいいわ」
「カッコイイとよく言われるよ」
少し間が空いた。
マッチョ女は何も言わない。
そして、やっと口を開いた。
「嘘でしょ?」
「嘘です……」
ちくしょう……。
なんか悲しいぞ……。
「名前を訊こう。私はユキだ。あんたは?」
可愛い名前だな……。
「ソドムタウンのソロ冒険者、アスランだ」
「ソドムタウン?」
「そう」
「それは随分と遠くから来たもんね」
「旅をしているんだ」
マッチョ女が前に出た。
片腕をほぐすようにグルグルと廻している。
やり合う気かな。
よし、受けて立とう。
魔女にさんざんやられてストレスが溜まってるんだよね。
ここは弱い者イジメになるけれど、ストレス発散をさせて貰うぞ!
マッチョ女が間合いに入ると拳を振りかぶった。
来るぞ!
カウンターをぶち込んでやるぜ!!
「おっらああああ!!!」
「こいや!!」
「おーーーーまーーーーちーーーー!!!」
ええっ!?
俺とマッチョ女の拳が第三者の大声で止まった。
マッチョ女が敵の眼前で踵を返す。
俺に背を見せる。
隙を見せることすら憚らず、大声の主を見てやがるんだ。
俺は身体を反らして大柄の向こうに大声の主を見た。
そこには背の低い女性が仁王立ちで立っていた。
酒場の出入り口前で、白いセーラー服にエプロン姿の矮躯な女性が、怖い顔で立っているのだ。
中年女性だが、身長が低くて可愛らしい。
150センチも無いだろう。
そのぐらい背が低い。
しかし、今は形相が怖かった。
まるで肉食の猛獣のようだ。
そして、再び矮躯な女性が吼える。
「ユキ、何サボってんだい!!」
「ママ、こいつがお客さんをぶん投げたから、私も投げただけだよ……」
あれ、なに、この弱気な態度はさ?
それにママって、母だよな?
この二人、親子ですか?
身体のサイズは違うが、顔立ちは確かに似ているな。
そして、矮躯な女性が更に吼えた。
「投げられたのもお客さんだが、あんたが投げたのもお客さんだぞ!!」
「でも、ママ……」
「言い訳は聞かないよ、いいから店に入って仕事をしなさい。休憩は終わりだ!!」
「はい、ママ……」
ユキちゃんはショボくれて店内に入って行った。
残った矮躯な女性が俺に吼える。
「あんたも店に入りな。投げたお客さんと、叩き伸したお客に謝ったら、皆でセーラー服を着て楽しく飲みなさい!!」
「えっ、謝るの? てか、俺もセーラー服を着るの?」
「いいから、早く店に入りやがれ!!」
また、大声で吼えられた。
なんなんだ、この人は……。
俺の表情を見て察したのか、矮躯な女性が言った。
「私は完熟フレッシュ亭の主、ハウリングだ!!」
「ハウリング……」
偽名かな?
「いいからさっさと店に入りやがれ!!」
「はい!!」
俺は叱られてショボショボと店に入った。
それから投げた野郎と叩き伸した野郎に謝罪した。
案外と二人は俺の謝罪をすんなりと受け入れる。
それどころか苦笑いで俺に謝罪を返してきた。
なに、この空気?
スゲー、友好的じゃあね?
俺が騒がしさを取り戻した店内を見回せば、ユキちゃんがお盆を持って酒を運んでいる。
ウェイトレスなのか?
さっきの矮躯な女性はカウンター内でチョコチョコと動いていた。
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「なんなんだ、この店は……?」
俺の独り言を聞いたセーラー服野郎の一人が答えてくれた。
「この店は、コスプレバーだよ」
「コスプレバー……?」
「そうそう、そして今日はサザータイムズ魔法使い学園の女子服デーなんだ。だから全員セーラー服を着ているんだよ」
「えっ、なに、じゃあ、ここに居る全員は、コスプレ好きな変態ですか……?」
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