ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第194話【不倫騒動の誤解】
俺は次の日に、メトロ・ガイストから報酬の120000Gを受け取ると、ワイズマンの屋敷に一部屋借りて、しばし宿泊していた。
今は借りた部屋に転送絨毯を敷いて、ソドムタウンに帰って来ている。
俺はスカル姉さんの空き地で隣の家の壁に寄りかかりながら日陰でダラダラと過ごしていた。
午前中からずっと青い空を眺めている。
まあ、とりあえずレベルアップしたので覚えた新スキルを報告しておこうか……。
今回の宝物は何も無かったので、本当に新スキルだけの紹介だ……。
しかも覚えた新スキルは一つだけである。
【パッシブ・マーシャルアーツ。素手系格闘術の戦闘技術が向上】
今回は素手で殴ったり殴られたりが多かったから覚えたのかな。
まあこれで、俺も喧嘩が強くなったってことだろう……。
でも、なんだろう、この心の空白感は……。
心のド真ん中に、ポッカリズッポリパッカリと、大きな穴が開いた気分だわ……。
これが噂に名高い失恋ってやつですか?
俺は今まで女の子にモテたことがなかった……。
そう、輝ける童貞野郎ですがな……。
何せ彼女が居ないから、告白もしたことがない。
勿論ながらされたこともない。
故に失恋したこともなかった。
そうなのだ、これが初めての失恋なのだ。
しかも相手が人妻だなんて思ってもいなかった。
もしもそのままラブラブで両想いに進んでいたら、それは不倫状態に突入するところだったんだろう。
そんなふしだらな恋愛が俺には耐えられただろうか?
ドロドロとした大人の恋だ……。
そんなシリアスなストーリーなんて俺には無理だろう……。
そう、この恋は結ばれなくて正解だったんだ……。
そう考えれば少しは心の深い生傷は癒えるだろうさ……。
でも、まだ深く抉られた傷跡からは、ドクドクドバドバと血液が噴出しているような気分である。
「はぁ~、恋ってしんどいな……」
俺が失恋に暮れていると、ゴリと全裸のオアイドスがコソコソと何かを話していた。
「アスランさんは、どうしたんですか?」
「なんでも人妻に不倫を申し込んだらしいが、断られたらしいぞ」
畜生、スカル姉さんのヤツめ、しゃべりやがったな。
悲しみのあまりスカル姉さんに愚痴ったのが失敗だったぜ。
あの人は口がペラペラなぐらい軽いんだな。
体育座りをしている俺は膝の間に顔を埋めて泣いた。
畜生、もっと良い人を見つけてラブイチャストーリーをエンジョイしてやるからな!!
「はーい、お前たちー、飯の時間だぞ~」
高々に声を上げたのはスカル姉さんだった。
焚き火に鍋を掛けて作った昼食が準備できたようだ。
ゴリに全裸のオアイドスが器とスプーンを持って駆け寄ると、その回りを白銀の狼三匹が駆け回っていた。
あー、無邪気だな、あいつらはさ……。
「腹へった……」
どうやら失恋してても腹はちゃんと減るらしい。
人間の機能って、正直だな……。
俺も器とスプーンを持ってゴリたちの後ろに並んだ。
「今日の午前中、久々に重症の怪我を負った患者が出てさ、ヒールをふんだんにかけて来たから、儲かった儲かった。だから奮発して牛肉を買って来たんだ。今日の昼食は豪華な牛肉入りスープだぞ、ホームレスども。たぁ~んと、食べな~」
「わーい、やったぜ!!」
ゴリと全裸のオアイドスが両手を上げて喜んでいた。
しかし俺には、そんな元気は無い。
スカル姉さんから牛肉のスープを貰うとテントの前で座って食べた。
「これ、テールスープだな……」
俺がスープを啜っていると、向かえにスカル姉さんが座った。
「まだ、しょぼくれているのかい、アスラン?」
「あー、もう元気だ。食欲も有るから心配無いぞ……」
嘘である。
まだ泣きたい気分だ……。
「そうは見えないぞ。そんなに人妻と不倫が出来なかったことが、悔しいのか?」
あー、俺の説明が悪かったのかな……。
昨晩、急に帰って来て、わんわん泣きながらスカル姉さんに話したもんな。
たぶん訳の分からないことを口走っていたんだろうさ。
しゃーないか……。
「アスラン」
「なに、スカル姉さん……」
スカル姉さんが優しく微笑みながら両腕を広げて言った。
「悲しかったら、泣いてもいいんだぞ。私が胸を貸してあげるからさ」
俺はスカル姉さんの胸元を見てから言った。
「ペチャパイに飛び込むほど俺も落ちぶれてないぞ……」
「そうか」
スカル姉さんはニッコリと微笑みながら俺の後ろに回った。
そして背後からそっと身体を寄せて来る。
スカル姉さんの小さな胸が俺の背中に当たっていた。
なんだか人の優しい温もりを感じる。
それからスカル姉さんが俺の耳元で囁くように言った。
「ゴー・トゥー・ヘル!!」
スカル姉さんは背後から俺を羽交い締めに抱き寄せると、力任せに持ち上げた。
凄い力である。
俺の身体が軽々と持ち上げられた。
「ヒィィイイイイ!!」
「死ねーー、糞ガキーーー!!」
ジャーマンスープレックスだった。
俺は脳天から逆さまに投げられていた。
凄いスピードで世界が逆転する。
そして、空き地の土の上に頭を打ち付けると意識を失う。
その後に聞かされた。
スカル姉さんが冒険者だったころの必殺技がジャーマンスープレックスだったと──。
とんでもないヒーラーである。
なんでもジャーマンスープレックスだけで、コボルトの集落を壊滅させたことが有るとか……、無いとか……。
もしも、その話が本当ならば、世の中にはとんでもない冒険者が存在するんだなって、アスランは思った。
【つづく】
今は借りた部屋に転送絨毯を敷いて、ソドムタウンに帰って来ている。
俺はスカル姉さんの空き地で隣の家の壁に寄りかかりながら日陰でダラダラと過ごしていた。
午前中からずっと青い空を眺めている。
まあ、とりあえずレベルアップしたので覚えた新スキルを報告しておこうか……。
今回の宝物は何も無かったので、本当に新スキルだけの紹介だ……。
しかも覚えた新スキルは一つだけである。
【パッシブ・マーシャルアーツ。素手系格闘術の戦闘技術が向上】
今回は素手で殴ったり殴られたりが多かったから覚えたのかな。
まあこれで、俺も喧嘩が強くなったってことだろう……。
でも、なんだろう、この心の空白感は……。
心のド真ん中に、ポッカリズッポリパッカリと、大きな穴が開いた気分だわ……。
これが噂に名高い失恋ってやつですか?
俺は今まで女の子にモテたことがなかった……。
そう、輝ける童貞野郎ですがな……。
何せ彼女が居ないから、告白もしたことがない。
勿論ながらされたこともない。
故に失恋したこともなかった。
そうなのだ、これが初めての失恋なのだ。
しかも相手が人妻だなんて思ってもいなかった。
もしもそのままラブラブで両想いに進んでいたら、それは不倫状態に突入するところだったんだろう。
そんなふしだらな恋愛が俺には耐えられただろうか?
ドロドロとした大人の恋だ……。
そんなシリアスなストーリーなんて俺には無理だろう……。
そう、この恋は結ばれなくて正解だったんだ……。
そう考えれば少しは心の深い生傷は癒えるだろうさ……。
でも、まだ深く抉られた傷跡からは、ドクドクドバドバと血液が噴出しているような気分である。
「はぁ~、恋ってしんどいな……」
俺が失恋に暮れていると、ゴリと全裸のオアイドスがコソコソと何かを話していた。
「アスランさんは、どうしたんですか?」
「なんでも人妻に不倫を申し込んだらしいが、断られたらしいぞ」
畜生、スカル姉さんのヤツめ、しゃべりやがったな。
悲しみのあまりスカル姉さんに愚痴ったのが失敗だったぜ。
あの人は口がペラペラなぐらい軽いんだな。
体育座りをしている俺は膝の間に顔を埋めて泣いた。
畜生、もっと良い人を見つけてラブイチャストーリーをエンジョイしてやるからな!!
「はーい、お前たちー、飯の時間だぞ~」
高々に声を上げたのはスカル姉さんだった。
焚き火に鍋を掛けて作った昼食が準備できたようだ。
ゴリに全裸のオアイドスが器とスプーンを持って駆け寄ると、その回りを白銀の狼三匹が駆け回っていた。
あー、無邪気だな、あいつらはさ……。
「腹へった……」
どうやら失恋してても腹はちゃんと減るらしい。
人間の機能って、正直だな……。
俺も器とスプーンを持ってゴリたちの後ろに並んだ。
「今日の午前中、久々に重症の怪我を負った患者が出てさ、ヒールをふんだんにかけて来たから、儲かった儲かった。だから奮発して牛肉を買って来たんだ。今日の昼食は豪華な牛肉入りスープだぞ、ホームレスども。たぁ~んと、食べな~」
「わーい、やったぜ!!」
ゴリと全裸のオアイドスが両手を上げて喜んでいた。
しかし俺には、そんな元気は無い。
スカル姉さんから牛肉のスープを貰うとテントの前で座って食べた。
「これ、テールスープだな……」
俺がスープを啜っていると、向かえにスカル姉さんが座った。
「まだ、しょぼくれているのかい、アスラン?」
「あー、もう元気だ。食欲も有るから心配無いぞ……」
嘘である。
まだ泣きたい気分だ……。
「そうは見えないぞ。そんなに人妻と不倫が出来なかったことが、悔しいのか?」
あー、俺の説明が悪かったのかな……。
昨晩、急に帰って来て、わんわん泣きながらスカル姉さんに話したもんな。
たぶん訳の分からないことを口走っていたんだろうさ。
しゃーないか……。
「アスラン」
「なに、スカル姉さん……」
スカル姉さんが優しく微笑みながら両腕を広げて言った。
「悲しかったら、泣いてもいいんだぞ。私が胸を貸してあげるからさ」
俺はスカル姉さんの胸元を見てから言った。
「ペチャパイに飛び込むほど俺も落ちぶれてないぞ……」
「そうか」
スカル姉さんはニッコリと微笑みながら俺の後ろに回った。
そして背後からそっと身体を寄せて来る。
スカル姉さんの小さな胸が俺の背中に当たっていた。
なんだか人の優しい温もりを感じる。
それからスカル姉さんが俺の耳元で囁くように言った。
「ゴー・トゥー・ヘル!!」
スカル姉さんは背後から俺を羽交い締めに抱き寄せると、力任せに持ち上げた。
凄い力である。
俺の身体が軽々と持ち上げられた。
「ヒィィイイイイ!!」
「死ねーー、糞ガキーーー!!」
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そして、空き地の土の上に頭を打ち付けると意識を失う。
その後に聞かされた。
スカル姉さんが冒険者だったころの必殺技がジャーマンスープレックスだったと──。
とんでもないヒーラーである。
なんでもジャーマンスープレックスだけで、コボルトの集落を壊滅させたことが有るとか……、無いとか……。
もしも、その話が本当ならば、世の中にはとんでもない冒険者が存在するんだなって、アスランは思った。
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