ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第178話【魔王城への旅立ち】

その晩の話である。

俺はバイマン&ゴリとの三人で狭苦しいテントで寝ることにした。

右から俺、バイマン、ゴリの順で並んでいる。

そもそも一人か二人用のテントなのだ。3人では狭くて当然である。

「おい、カイマン。もうちょっと詰めてくんないか?」

「バイマンです。それにゴリさんが大き過ぎて狭いんですよ」

「俺がデカイのは生まれつきだ。仕方ないだろ。それより毛布を引っ張るなよ」

「毛布だって一枚しかないんだ、仕方ないだろ。明日になったらテントと毛布を、人数分だけ新しく買ってくるから、今晩だけ我慢しやがれ」

「ああ、分かったよ」

「ちょっとゴリさん、お尻を撫でないでくださいな!」

「俺は撫でてないぞ!」

「すまん、撫でたの俺だわ」

「「なんで!!」」

「もー、五月蝿いな。文句あるヤツは、スカル姉さんのテントで寝ろよな」

「「ありませーん」」

隣のテントから「なんで!!」と声が聞こえたが、男三人は綺麗に無視した。

「てか、カイマンって家が在るだろ?」

「バイマンです。それに、あの家は風通しが良すぎて寒いんですよ」

「そのぐらい我慢せいや」

「何より、寂しくて……」

「「なるほどね……」」

「じゃあ、寝るぞ」

「「はーーい!」」

俺たち三人は、仲良く添い寝した。

そして朝が来る。

俺は旅の準備を終えるとスカル姉さんに50000Gを預けた。

「とりあえずの建築代と、しばらくの生活費に使ってくれ。それと二人の面倒を見てやってくれないか」

「ああ、分かった。建築代には全然たらんが、このお金は大切に使わせて貰う。間違っても博打で倍に増やしてやるぜ、ひゃっはー。な~んて考えないから安心してくれ」

「マジで、それはやめてくれないか……」

「冗談だ。マジでやるわけないだろ。私を信用しろ」

「とりあえず、旅の期間は一ヶ月から二ヶ月ぐらいだと思う。でも転送絨毯を使ってちょくちょく帰って来るからさ」

「ああ、転送絨毯はそのまま広げて置くから心配するな」

そして、ゴリとバイマンが訊いて来る。

「お前が魔王城まで旅をしている間、俺たちは何をしてたらいいんだ。なんなら戦士として俺も付いて行こうか?」

「いや、パーティーは要らないわ。ソロのほうが俺としては動きやすいからな」

「お前は強いな……」

「まあ、お前たち二人の出番は、俺が魔王城に到着してからだから、それまで他人に迷惑が掛からないように生きてろや」

「分かったぜ。俺も人足の仕事が貰える日は、ちゃんと働くからよ。心配すんな」

「おう」

俺はゴリの分厚い胸を拳で叩いてからバイマンに言う。

「カイマン。お前は火を付けるなよ!」

「そ、それは我慢します……。それとバイマンです」

我慢かよ……。

まあ、いいか。

「じゃあ、行ってくるぜ!」

「「「いってらっしゃあ~い」」」

俺は三人と狼三匹に見送られながら空き地を出た。

ソドムタウンを離れる前に、ギルガメッシュにも話さなければならないだろう。

そんなわけで俺は、冒険者ギルドに向かった。

俺が冒険者ギルドに到着すると、一階の酒場でクラウドが酒を煽っていた。

今日は一人である。

朝から酒とは優雅なヤツだな。

俺はアマデウスが居ないからクラウドに歩み寄り、フレンドリーに話しかけた。

「よう、クラウド。朝から酒とは呑気だな」

クラウドはボケーとした眼で俺を見上げた。

「やあ、アスランか……」

「なんだ、元気が無いな?」

「今、朝稽古から帰ってきたところなんだ……」

「疲れてるのか?」

「ちょっとな……」

俺はクラウドの向かえに座った。

「アマデウスのところは辛いのか?」

「あ、ああ、ちょっとな」

「お前もゴリみたいにクビになるなよ」

「知ってたのか……」

「本人から聞いたぜ」

「そうか……。実は俺もヤバイかも……」

「なんでだよ?」

「アマデウスさんは、完璧を求めすぎるんだ。だから厳しい。自分の配下として、使えなければ放り投げるんだ……」

「あー、完璧主義者ってやつだな」

「でも、その分だけ、仲間なら稼ぎも半端ないんだよ……」

「お前は稼ぎの量で、冒険を続けているのか?」

「…………」

クラウドは俯いて答えない。黙ってしまう。

暗いな、まったくよ。

「まあ、いいけどさ」

俺は椅子から立ち上がると踵を返した。

背中を向けながら手を振るう。

「じゃあ、俺は急ぎの仕事が有るから、またな~」

そう言うと俺は二階に上がった。

受付に居る六つ子のお兄さんにギルマスとの面会を求めると、すんなり奥に通して貰えた。

ギルマスの部屋に入るとソファーセットでギルガメッシュが朝食を食べていた。

隣にはコックの衣装を纏ったパンダが立っている。

もしかして、この料理はパンダゴーレムが作ったのかな?

「よう、アスラン。おはよう」

「ああ、おはよう」

俺はギルガメッシュの向かえに座った。

「なあ、ギルガメッシュさん。この料理はパンダが作ったのか?」

「まさか~。そもそもゴーレムは、何かを運んだりぐらいは出きるが、料理なんて作れるわけがなかろう」

「じゃあなんでコックの格好をしてるんだ?」

「気分の問題だ」

「そうですかー……」

「やっぱりメイド服のほうが良かったかな?」

「うん、どちらかと言ったらメイド服かな~」

「じゃあ次はメイド服を買っておくか」

まあ、いいや。

このおっさんが、納得できるなら問題無いだろう。

「それで、朝から何の用事だ。仕事の注文か?」

「いや、さっそく魔王城に旅立とうと思う」

「決断が早いな」

「スカル姉さんも了解してくれたからな」

「なるほど」

「そこでギルマスに頼みたいことがあるんだ」

「魔王城の権利を得たいと?」

「ああ、そうだ」

流石はギルマスだ。

話が早くていいやね。

「魔王城となると、こっちも骨が折れるぞ。政治的にも関係するやも知れないからな」

「だから、ギルマスに頼んでんだよ」

「まあ、金が掛かるぞ。人だって動かさなければならないからな」

「幾らかかる?」

「前金で30000Gだ。あとはかかっただけ経費を請求して、残りは30000Gってところかな」

かなり金が掛かるな。

でも、仕方無いか。

「すまん。今20000Gしか持ち合わせが無い。残りは後払いにしてもらえないか?」

「前金20000Gで、後払いが40000G。その他経費代だな?」

「それで頼む」

「ああ、良かろう」

「ありがとう、助かります!」

「あと、それとだ。冒険者ギルドへの貢献も忘れるなよ」

「分かってるってばさ!」

俺はソファーから立ち上がると、ギルマスの部屋をあとにした。

残りのお金は、旅の道中で冒険をしながら稼ぐしか無いだろう。

ハクスラスキルが有れば、マジックアイテムがガンガンと手に入る。

それを捌けば、お金なんて直ぐに作れるだろうさ。

最悪でも、黄金剣を売れば……。

それは、本当に最悪の事態だな……。

まあ、ネガティブよりポジティブだ。

兎に角、前向きに進もうじゃあないか。

基本は楽しく明るくだぜ!

こうして俺の魔王城への旅が始まったのである。


【魔王城編スタート】

【つづく】

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