ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第171話【三匹の狼】

俺は朝が来ると、テントの前でシルバーウルフシールドから、三匹の白銀狼を召喚した。

【シルバーウルフシールド+2。シルバーウルフ三体を一日一回召喚できる。防御率の向上】

このマジックアイテムには制限時間が書いてないから、時間は無制限なのだろうか?

分からんから、勝手に制限時間は無いことにした。

まあ、時間で消えたらそれまでだ……。

そして俺は、三匹の凛々しい白銀狼を見渡しながら言う。

「お前ら、俺の言葉を理解できるのか?」

白銀狼たちは、黙ったまま俺を直視している。

「じゃあ、言葉をなんとなく理解していることにする。ならば犬っぽい命令は聞くのかな?」

俺は試してみる。

「お座り!」

「「「ガルゥ」」」

おおっ、三匹がちゃんとお座りしたじゃあないか。

こいつらは言葉をちゃんと理解していやがるぞ。

じゃあ、今度は──。

俺は手の平を差し出しながら言う。

「お手!」

「「「ガルゥ」」」

三匹が俺の手の平に前足を片方乗せる。

おおっ、ちゃんとお手もするじゃんか。

可愛いぞ。

三匹の息が合っているところが特に可愛いじゃあないか。

ならば、次は──。

「おチンチン!」

「「ガルゥ」」

「………」

あれ、二匹は前足を上げてウィリーしたけど、一匹だけおチンチンをしなかった。

「もしかして、お前だけ雌か?」

「ガルゥ」

なるほど、この世界の雌はおチンチンを拒否するのか。

勉強になったぜ。

こんな感じで俺が白銀狼たちを弄っていると、ボロテントの中からスカル姉さんが出て来る。

「あら、可愛いワンちゃんね」

おっ、今日はテンションも普通っぽいな。

栄養を補充して、精神も落ち着いたのかな。

まあ、とりあえず否定はしておこう。

「違うよ、犬じゃあない。狼だ」

「狼?」

スカル姉さんは三匹の頭を順々に撫でて回った。

「狼にしては大人しいわね」

俺は魔法の盾を見せながら言う。

「このマジックアイテムから出した魔法の狼だ。どこまで命令を聞くのか試していたんだ」

「へぇ~、放火犯を捕まえるより、ペットの調教のほうが大切なんだ……」

うわ、なんだかスゲー卑屈に言われたわ。

スカル姉さんはネガティブモードだな。

やーなかーんじー。

まあ、ちゃんと説明するか。

「こいつらに放火犯を捕まえて貰うんだよ」

「言っている意味が分からんな。狼に放火犯が捕まえられるのか?」

俺は昨晩、放火犯が残していった修道僧のローブを取り出すと、広げて見せた。

「これを使って狼たちに放火犯を追って貰うんだよ」

「そのローブを狼に着せるのか?」

「ちゃうがな……」

この世界だと、警察犬みたいな捜査方法は無いのかな?

「犬を使って臭いで相手を捜索する方法って知らないか?」

「ハンターが、獲物を追い込む時に、犬を使っているのは知っているが、狼にそんなことが出来るのか?」

あー、やっぱり知らないんだ。

犬とかの鼻が効くってのも、あまり知られていないのかな。

「とりあえず……」

俺は荒縄を、首輪と散歩綱の代わりにして狼たちに括り付けた。

幾らなんでもリード無しで、狼三匹を町には放てまい。

「散歩か?」

「いいや、これから捜査だ」

「捜査もいいが、この子たちに名前は有るのか?」

「ねーよ。こいつらマジックアイテムが作り出した狼だぞ。名前なんか要るかよ」

「散歩に連れていくんなら、名前ぐらい無いといかんだろ」

「だから散歩じゃあねえってばよ」

「じゃあ、私が勝手に命名するぞ、いいか?」

「勝手に名前を付けるなよ!」

「じゃあ、この子はベロ。この子はベラで、この子はベムね」

「だめーー!! その名前はいろいろと問題になりそうだから駄目だ!!」

「じゃあ、この子がアーノルドで、この子はシュワルで、この子がツネッガーにしましょう」

「うーむ、それなら全部人物名だからギリギリOKかな……」

「あー、よしよし。アーノルド、シュワル、ツネッガー。お前たちは可愛いな~」

「だめーー!! 続けて呼ぶのは駄目だってば。訴えられるかも知れないぞ!!」

「何を焦っているんだ、アスラン?」

畜生、この人は……。

俺と作者の気持ちも知らんと勝手にヤバイ名前を呼びやがって。

訴えられたら、即謝罪して改名だぞ。

「まあ、いいか。兎に角、捜索だ」

俺は狼たちの前に修道僧のローブを差し出した。

すると───。

「「「がルルルルぅぅーー!!」」」

狼たちは俺の手からローブを奪い取ると、咥えながら振り回したり、三匹で奪い合うように引っ張りあった。

「ばろーー! 遊んでんじゃあねーよ!!」

俺は狼たちの頭をひっぱたいてローブを奪い取った。

それを見ていたスカル姉さんが言う

「うわー、動物虐待だ~。カッコ悪いな~」

「違うよ、これは違うんだ!!」

ええい、狼たちも臭いで捜査するってことを理解していないとわ……。

正直そこまで考えなかったぜ……。

やっぱり訓練しないと無理なのかな?

俺は狼三匹を並べてマジマジと目を見渡した。

「いいか、お前たち。このローブはオモチャじゃあない。この臭いを嗅いで、このローブの持ち主を探すんだ。いいな」

「「「ガルゥ」」」

よし、分かってくれたらしい。

俺はもう一度ローブを差し出した。

すると──。

「「「がルルルルぅぅーー♡♡♡」」」

再び狼たちはローブを奪い取ると、咥えながら振り回したり、三匹で奪い合うように引っ張りあった。

天丼かよ!!

「てめーら、わざとやってるな! じゃなきゃ語尾にハートマークとかが咲くわけないもんな!!」

俺は再び狼たちをひっぱたいてローブを奪い取る。

「うわ、また動物虐待だわ……」

「スカル姉さん、あんたは黙ってろ!」

「はいはい、分かりましたよ……」

俺は狼三匹の頭を抱えるように引き寄せると、力任せに包み込みながら顔を近付けた。

鬼気迫る口調で言う。

「いいか、お前ら。ローブで遊ぶな。次に遊んだら、盾ごと割ってやるぞ!」

俺が脅すと狼たちは、腕の中で怯えるように頷いた。

「よし、俺の気持ちは理解してもえたようだな」

俺は腕の中から狼たちを解放した。

そしてもう一度、ちゃんと説明する。

「いいか、このローブから臭いを嗅ぎ分けて、持ち主を見つけ出せ。いいな!!」

「「「ガルゥ!」」」

「よし、分かったら嗅げ。そして探せ!!」

今度は真面目に狼たちも臭いを嗅いでいた。

よしよし、ここまではいいぞ。

本番はここからだ。

そして、一通り臭いを嗅いだ狼たちが手綱を引いて空き地を出ていこうと俺を引っ張った。

「うっし、成功だ!」

俺は三匹の狼に引っ張られて、町の中へ走り出していた。

目標は、放火犯だ。

直ぐに捕まえてやるぞ。


【つづく】

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