ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第158話【大きなつづらと、小さなつづら】

俺はテイアーの魂と一緒に、テイアーの体が眠る大部屋まで戻った。

「あらあら、懐かしい私の身体だこと」

なに、自分の身体を二百年ぶりに見ての感想が、それですか?

なんか冷めてない?

ドラゴンって良く分からない種族だわな。

「私に言わせれば人間の中でも冒険者って人種が良く分からないですよ」

へえ、なんでさ?

「冒険なんてして、何が楽しいのですか?」

冒険……。楽しいじゃんか?

「私に言わせれば、他人の家に勝手に上がり込んで小銭を盗んで行く、ちんけな泥棒さんですよ」

あー、ドラゴンから見ての冒険者って、その程度の害虫扱いなのね。

「まあ、あなたは行儀が良い害虫ですけどね」

やっぱり害虫なのね……。

「じゃあ、そろそろ私は身体に戻りますわよ」

おっ、待ってました。

魂が本体への帰還ですな。

これは見逃せないイベントですよ。

ドラゴンの魂が二百年ぶりに己の身体に返るんですよ。

ある意味でエロくね?

エロイよね。

「いや、エロくは無いですな……」

なんでだよ?

エロイぞ。エロイビックイベントだよ。

「ならば何故にあなたの胸が痛みませんの?」

あー、本当だ~。

全然胸が痛まないってことは、エロく無いってことか?

ドラゴンの魂が身体に戻るのにエロく無いなんて……。

残念だ……。

「いや、聞いてて意味が分かりませんよ」

じゃあ、さっさと身体に戻れよ。

そしたら、ベルセルクの爺さんに謁見してくれよな。

「分かりました。それは約束なので果たしましょう」

テイアーの魂が身体に歩み寄って行く。

財宝の山をザックザックと音を鳴らして登って行くのだが、魂も重量があるのかな?

まあ、いいや。

この辺は気分の問題だろうさ。

テイアーの魂は自分の巨大な龍頭に手を当てると何やら呟いた。

一瞬だがテイアーの魂が輝くと、小さな光と変わってドラゴンの体内に吸い込まれて消えて行く。

するとドラゴンの身体が小刻みに震えだした。

グラグラと音を鳴らして首を上げる。

眠たそうなまなこがうっすらと開く。

それから大きな欠伸を一つ付いた。

周囲の空気がドラゴンの口内に吸い込まれて行く。

ほら、やっぱりエロイじゃんか。

ドラゴンの寝起きシーンだよ。

官能満点じゃあないか。

『おはよう、アスラン』

「やあ、おはよう、テイアー。数百年ぶりのお目覚めだ。気分はどうだい?」

『ちょっと長い冬眠みたいなもんだからね。あまり何ともないよ』

そう答えたテイアーのドラゴンボディーが光出すと人型に変形する。

俺が見慣れた貧乳美女に変わったが、以前よりも輪郭がハッキリとしていた。

魂のようなぼやけた感じが無い。

貧乳美女型のテイアーが財宝の山を降りて来る。

すると念力を使って財宝の中から二つの箱を取り出した。

二つの箱が宙を舞って俺の目の前に置かれる。

「なんだ、これは?」

『褒美よ。どちらか一つをあなたにあげますわ』

箱は二つ。大と小である。

大きいつづらと小さなつづらなのかな?

「褒美をくれるのは嬉しいが、いいのか。俺は三体の英雄アンデットを倒す条件として、お前さんにベルセルクの爺さんと会って貰うことを頼んであるんだぞ?」

『ええ、それも引き受けますわ。これは僅かな褒美ですよ。要らないなら、下げますが?』

「要ります。じゃあ大きな箱をくださいな」

『何故に大きな箱のほうが欲しいのですか?』

「小さいより大きい物を求めるのは、小さく産まれた生き物のさがだ。ドラゴンのように大きく産まれた生き物には、理解しずらいかな」

『なるほどね。では、中身を受け取りなさい』

ワッヒャー!!

ご褒美だーー!!

お宝だーー!!

『うわ、子供みたいね……』

なんとでも言いやがれ。

俺は大きな箱を開けて中身を確認した。

大箱の中には二枚のカーペットが入っていた。

「なに、この絨毯?」

俺は一枚を取ってその場に広げてみた。

1.5メートル四角形の赤いカーペットには魔方陣が描かれている。

「マジックアイテムだな。でも俺よりレベルが高いアイテムだから鑑定ができないぞ。なんなんだ、これは?」

『転送絨毯よ。その二枚の絨毯の魔方陣が互いの上の物を転送してくれるの』

俺は二枚を床に敷いてみた。

それから俺自らが魔方陣の上に乗る。

しかし、何も起きないな……。

「どうしたら使えるんだ?」

『まずは絨毯に合言葉を登録するの。そして登録した合言葉を述べれば瞬間移動するわ』

「どうやって合言葉を登録すればいいんだ?」

『それは難しい作業だから、私が登録してあげますわ。好きな合言葉を決めてちょうだいな』

「じゃあ、チ◯コで頼むわ」

『えっ……、本気?』

「うん、マジだよ」

『本気で、いいの?』

「マジでマジだ」

『後悔しない?』

「しないしない」

『じゃあ登録するわよ』

「頼むは」

『本当にいいのね!?』

「ああ、いいから早くやれよ!」

『本当にチ◯コでいいのね!?』

「うぜーよ、いいから登録しろよ!」

『大人になってから後悔しないわね!?』

「諄いぞ、テイアー!!」

『わ、分かったわ。それじゃあチ◯コで登録しますわね』

こうして転送絨毯の登録が済んだ。

よし、試しに転送を実体験してみるかな。

「チ◯コ!」

すると俺が瞬間移動した。

もう一つの絨毯の上に一瞬で飛んでいる。

「おお、これは凄いな!」

うむ、かなり便利だぞ。

この一枚を家に置いておけば、もう一枚を使って冒険先から直帰ができるぜ。

んん、待てよ?

そうなると冒険先に絨毯が残るから、また取りに戻らなければならないのか?

えーと、それって結局帰りはちゃんと旅をして帰らないと成らないのか?

んんーー……。

まあ、野宿しなくて済むだけでも、ましなのかな。

うんうん、便利ってことにしておこう。

貰い物に罪は無いしね。

俺は転送絨毯を異次元宝物庫に仕舞うと、もう一つの小さな箱をチラ見した。

「ちなみに小さな箱には何が入ってたんだ?」

『惚れ薬のポーションです』

「すみません。このカーペットを返品しますので、そのポーションをくださいな!?」

『それは駄目でしょう……』

俺はしばらく駄々を捏ねたが無駄だった。

一度決めた掟は曲がらないらしい。

さすがはドラゴンである。

ヘッドまで堅物だ。

それから俺たち二人は、ユルユルと地上を目指す。

通信リング+5を使ってベルセルクの爺さんに報告した。

これからドラゴンの幽霊だったドラゴン本体と一緒に、そちらに向かうと。

ベルセルクの爺さんは、かなり慌てていたな。

何せ、憧れのドラゴンさんとの再会だもの。

そりゃあ、慌てたり、緊張だってするよね。

まあ、そろそろ、この話もクライマックスだな。


【つづく】

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