ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第70話【異次元牢獄】

俺は不思議な四畳半の部屋で、リボンを全裸に巻いた少女と向かい合いながら、正座をしていた。

リボンの美少女も俺を真似て正座をしている。

正座をした俺たち二人が膝を向かえ合わせて居た。

俺はそのセクシーな裸体を見ないようにフードを深く被って視線を隠しているが、本当はマジマジと彼女の裸体を鑑賞したかったのだ。

しかしそれは糞女神の呪いが許さない。

本当に勿体無いことを、俺は今しているのだ。

リボンの少女が、気を荒くしながら言う。

「何故に何故に何故に、私までもが、このような拷問スタイルな座りかたをしなくてはならないのだ?」

リボンの彼女はキュートな顔を怒らせながら訊いて来た。

「まずはお互いに冷静になろうと思ってな。これは遠方にある俺の祖国の座りかたで、正座と言うスタイルの座りかただ。書いて字のごとく、正しい座りかたなのだ。もしも、辛いなら崩して座ってもかわまないぞ」

「崩すだと!? それでそれで貴様は私に勝ったつもりになるんだな!」

「ならねーーよ!」

「いいや、いいや、絶対になる! 心の奥ではドラゴン族の私に勝ったとせせら笑うんだ!」

「おまえ、ドラゴンのくせして被害妄想が激しいな!」

「いやいやいや、被害妄想ではない! ただ負けず嫌いなだけだ!」

「どっちでもいいから、いちいち突っ掛かってくんなよ!」

「断る!」

「断るなよ!」

やっぱりこのドラゴン娘は面倒臭そうだわ。

「大体おまえは、遠方から来たと言ったが、どの辺の国から来たのだ!?」

「おそらく地図にも載ってない小国だろうさ……」

「なるほど、なるほど。貧乏で貧相で貧しい小国から来たのだな」

「なんでお前は直ぐに人を下に見るかな!」

「人間とは人間とは、下等だからだ! 決まっているではないか!」

「まあ、いいさ。勝手に下に見ていろ……」

「言われなくても、そうしている!」

「とりあえず、まずは冷静に考えよう。そのための正座だ……」

「何故に何故に何故に冷静になるのに、こんな座りかたをする?」

「精神統一だよ」

「うむ、奴隷の境地になるのだな!」

「言っている意味が分からんわ……」

「私もだ!」

兎に角俺は、精神統一をしながら考えた。

今の状況を整理して考える。

俺は間違いなく、このドラゴンたちの兄妹喧嘩に捲き込まれただけだ。

そもそもこいつら兄妹に、俺を捲き込んだ意思はなかったのだろう。

こいつの兄貴も、こいつだけをこの空間に閉じ込めた気でいるはずだ。

たまたま兄妹喧嘩をしていたら、近くに小さな昆虫が居て、それをなんとなく踏んじゃった感じなのだろう。

こいつらのようなドラゴン様から見たら、俺のような人間なんて、その程度のちっぽけな存在なのさ。

そして、この空間は、おそらく何らかの魔法で作られた異空間だろう。

牢獄の一種だと思われる。

更に、話を聞いていた限り、こいつはこの牢獄に閉じ込められるのは二度目のようだ。

しかも、以前より結界がパワーアップしていて抜けられないと来たもんだ。

そこが問題である。

更に言うなら、こいつも結界が破れないと悟って諦めてしまっていることだ。

俺は、完全に閉じ込められている。

兎に角ここは、冷静に事態の解決を試みなくてはならないだろう。

じゃないと飢え死にしてしまう。

もう、一日も飯を食っていないのだから。

この異次元牢獄はドラゴン用で、人間が閉じ込められる状況を考慮されていない。

この異次元牢獄内では、当たり前のように人間が長くもたないだろう。

こいつらドラゴンは一ヶ月二ヶ月は飲まず食わずでも平気らしいのだ。

おそらくドラゴンの寿命からして、一ヶ月二ヶ月なんて僅かな時間なのだろう。

この異次元牢獄は、そのぐらいの時間が経っても構わないように作られている。

しかし人間では、そのぐらいの時間でも、余裕で飢え死に出来るだろうさ。

下手したらミイラだ……。

「なあ、まずは自己紹介でもしないか?」

「何故だ!?」

「何故って、お互いに名前すら呼び会えないなんて、不便ではないか?」

「そうかな!?」

「それとも下等な人間には名乗る名前なんて無いか?」

「そんなことは無いぞ、非常食!」

「ちょーーーと、待てや!!」

「何、何、何!?」

「今さ、俺のことを非常食とか呼ばなかったか!?」

「この閉じ込められた状況からしたら、懸命で聡明で確実な判断だと思うが、可笑しいか?」

「可笑しい可笑しくないじゃなくて、俺を食べちゃうの!?」

「安心しろ、それは最終的な手段なだけだ!」

「だから安心できないんだろ!!」

「まあ、まあ、まあ、いいから先に名乗れよ。じゃないと非常食と呼び続けるぞ!」

「わ、分かった。非常食と呼ばれ続けるよりましだな……」

「そうそうそう!」

「俺の名前はアスランだ。宜しくな」

「ほほう、ほほう、ほほう、人間のくせして神々しい名前なんだな!」

「神々しいのか?」

「アスランとは我々ドラゴン族に伝わる古い古い古い神の名前だ。英雄から神に昇格したとされる英雄神だぞ。もう神話世界の話だがな!」

「へー、そうなんだ」

「お前なんかに、その名前を名前を授けた親が賢明だったのだろうさ!」

まあ、転生したさいに、自分で付けた名前なんだけどね。

「で、お前の名前は、アンだったっけ?」

「そうだ。アンネリッターマインスロックフォードルダムタムリロンドベスティアンラ・カルベリュンミラハスカイバイ・シリュウスカイウスマイムハオサ・ガブンデェリュウサヘディーゼーダルンルだ」

「なが!」

「だから、親類にはアンとかアンネと呼ばれている。だが、お前はお前はお前は親類でもなんでもないから敬意を込めて、フルネームで呼べよ!」

「敬意を込めるのはいいが、フルネームは無理だろ! 覚えられんわ!」

「これだから下等で下等で下等で知力の低い生命体は憐れなのだ!」

「はい、ごめんなさい……。もう否定しないよ……」

「かっかっかっ、完全勝利だな!」

勝手に威張ってろ。馬鹿娘が。

それより俺は、疑問に思っていたことを訊いてみる。

「ところでアン。なんでお前はそんな露出狂見たいな格好をしているんだ?」

フードで視線を隠す俺を真っ直ぐ見ながらアンは恥ずかしげもなく答えた。

「ああ、これはだな。お兄様がお兄様が先日5400歳の誕生日だったので、私をプレゼントしたのだよ!」

あー、やっぱりこいつは馬鹿な子だ。

「それで強引に迫ったら、この牢獄に閉じ込められたってわけか……」

「そんなところかな! はっはっはっ!」

「で、お兄様は、俺たちをこの部屋からいつごろ出してくれるのさ?」

「さあな、一年ぐらい待てば待てば、解放してくれるのではないのかな!」

「い、一年……。飲まず食わずでか?」

「流石に流石に一年間のダイエットは辛いよね!」

死ねる……。

こんなところに一年間も飲まず食わずで閉じ込められたら人間の俺なら余裕で飢え死にした上にミイラ化してしまうだろうさ。

本当に干物の保存食になってしまうぞ。

流石にヤバイな。

ピンチ確定だわ……。

こいつらドラゴンの感覚で、悠長に待っていられないぞ。

脱出を真剣に考えなくてはならん。


【つづく】

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