ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第48話【スバル】
ギルマスのギルガメッシュが酒場を出て行ってしばらくすると、他の冒険者たちがゾロゾロと戻って来る。
酒場に入って来るギルメンたち全員が全員、決まって俺を一瞥してからテーブルに戻って行った。
その視線から、彼ら各々の立場を知らしめている。
ギルガメッシュを支持する者は友好的な表情だし、アマデウス派は敵対的な眼差しなのだ。
彼らなりに、自分たちの立ち位置を分かりやすく知らしているのだろう。
今後のために、誰がどのような態度を見せていたか、出来るだけ覚えておくことにした。
一通り皆が席に腰かけると酒場の賑わいが戻る。
それから俺はギルマスから貰った羊皮紙の依頼書に目を通した。
内容はこうである。
【魔法使いの護衛と手伝い。魔法使いギルドのスバル氏が少し離れた森に特殊な薬草を採取しに行くのを護衛しながら手伝え。依頼料は400G。想定日数は徒歩で三日程度】
だ、そうな。
護衛と薬草取りの手伝いの仕事らしい。
RPGのテンプレ的な仕事だな。
俺は早速だが、依頼人のスバル氏を訪ねることにした。
しかし、不親切な依頼書である。
雇い主の居場所が書かれていないのだ。
これってクソゲーの乗りだよね。
まあ、魔法使いギルドのスバル氏って書いてあるから、魔法使いギルドで訊けばいいだろう。
俺は冒険者ギルドの酒場をあとにして、魔法使いギルドを目指す。
しばらく歩いて魔法使いギルドに到着すると、早速カウンターの受付嬢に訊いてみた。
俺は依頼の羊皮紙を見せながらスバル氏の居場所を問う。
すると受付嬢は自分の手首に嵌めているブレスレットに向かって話し出した。
魔法通信でスバル氏を呼び出しているようだった。
魔法って、便利だな。
この超ローテク異世界の暮らしを便利に支えているのは魔法なんだなっと思った。
だったら魔法でトイレットペーパーぐらい作ってくれよと思う。
このままでは俺のお尻が崩壊してしまうだろう。
兎に角、荒縄はキツイ……。
しばらくすると、ゾディアックさんが現れた。
スカル姉さんの知人で痩せた長身の魔法使いである。
「ゾディアックさん、こんにちわ」
「やあ、アスランくん。まさかキミが冒険者ギルドから派遣されて来るとは思わなかったよ」
どうやらこの態度からして、ゾディアックさんにも依頼の話は通っているようだ。
「僕がスバルくんのところまで案内するからね」
「ありがとうございます」
俺とゾディアックさんは、一旦魔法使いギルドを出てソドムタウン内を進んだ。
スバル氏は魔法使いギルド本部には居ないようだ。別の場所に居るのだろう。
道中でゾディアックさんが話し掛けて来る。
「この依頼にキミが派遣されたってことは、キミはギルガメッシュ派に属すると決めたのだね」
「なんとなく流れで、そうなりました。ところでゾディアックさんは、冒険者ギルドの内部抗争をご存知なのですか?」
「キミは知らないのかな?」
「あまり知りません」
「僕が知る限りだと、現在のギルマスのギルガメッシュ派と、成り上がりのアマデウス派が、覇権を争ってるぐらいしか知らないな」
「どちらが勝つと思いますか?」
「噂では、まだまだ分からないね」
「じゃあ、同じ魔法使いだから、アマデウスのことを知ってますか?」
「ああ、知っているとも。何せ腐れ縁に近いからね」
「腐れ縁だと、良い仲間ってことですか?」
「どちらかって言うと、切りたい最悪の仲かな。だが、運命がそれをなかなか許してくれないって感じだよ。昔は小さなことでよく対立したもんだ」
「なるほど。味方や友達ってわけでは無いんですね」
「でも、同期の桜だ」
「魔法使いとして一緒に学んで来たってことですか?」
「嘗て彼も魔法使いギルドのメンバーだったんだ。でも、学ぶことより強くなることを選んでね。それで冒険者ギルドに下ったんだよ」
「出来る魔法使いだったんですか?」
「ああ、当時から天才的だったかな。特に魔法の操作に関しては段違いで優れていたよ。冒険者に下らなければ僕と同じように魔法使いギルドの幹部になっていただろうさ」
「なるほど……。そうですか」
やっぱり俺は、かなり強いヤツを敵に回したようだ。
本腰を入れてやらないと、こっちが潰され兼ねないな。
「彼は強敵だぞ。敵に回して大丈夫かい?」
なに!?
ここにもエスパーがいやがる!?
もしかして俺の心の声って駄々漏れなのかな!?
「まあ、どうにでもなりますよ」
「だといいね……」
そしてどうやら目的地に着いたらしい。
場所はソドムタウンの外れで寂しい場所だった。
煙突から真っ黒な煙りが登っている平屋である。
玄関前にはわけの分からないガラクタが複数散らかっている。
そのありさまからスバル氏は、魔法使いと言うよりも発明家じゃないのかと思った。
「スバルは錬金術師系の薬師だよ。それも天才クラスの薬師だ」
天才が多いな。最近──。
ゾディアックさんがドアをノックしてスバル氏を呼び出す。
「スバルくん、ゾディアックだ。居るんだろ、出てきなさい」
スバルくんっと言ったな。
だとすると、若いのか、スバルとは。
しかも、スバルくんだから男なのかな?
なんか、つまんね~。
「はいはーい、今開けますよ。ゾディアックさーん」
明るい女性の声だった。
どうやらスバルは女性らしい。
しかも、かなり可愛らしい声だった。
わざとらしい声優のボイスと表現したらいいだろうか。
そして、俺は恋の予感を強く感じる。
これからラブロマンスがスタートされるだろう!
あの扉が開いたら始まりである!
そして俺の期待を背負って扉が開かれた。
すると彼女が顔を出す。
「こんにちわ~」
赤毛のツインテールで眼鏡っ子だ!
年頃は俺と同じぐらいだろう。
しかも、なかなか可愛い!
ヒットだ!
ナイス、ツインテール!
ナイス、眼鏡っ子!
ナイス、魔女っ子!
ナイスが三拍子揃ってるぜ、やっほーーい!
よし、まだエロイ妄想はしていないから胸も痛まないぞ。
最近だと、ここまで前振りなどで凄く期待させておいてから、最後の出落ちでスッこけるパターンが多かったから少し心配したけれど、今回はジャストミートだ。
そのマンネリ化したパターンでは無いぞ!
もう本当にストライクだ!
ストライクゾーンのド真ん中だ!
ナイスが三つでスリーアウトチェンジだもの!
今回は期待を裏切られていないぞ、よしよし!
そして、スバルちゃんが家の中から出て来る。
赤毛のツインテールにピンクのローブ。小柄で可愛らしい女の子である。
だが、まだだ!
これから第二審査だぞ!
大概は外見が可愛ければ性格に問題があるパターンが多い。
何せポニーテールで可愛かった魔女のパターンが前例としてあるからだ。
不動産屋のミーちゃんも同類である。
だから、まだ油断はできない。
そして、彼女が明るい笑みでお辞儀した。
「初めまして、私は薬師の魔法使いのスバルです。よろしくお願いします。くすっ」
あれ、礼儀ただしいな。
一般常識はちゃんとしてそうだ。
しかも最後に「くすっ」っとか言って小首を傾げながら可愛らしく笑ったぐらいだし。
でも、なんだろう?
何か凄く鼻に付くな?
凄い臭うぞ?
この違和感は、なんだろう?
そして彼女がちょこちょことした足取りで駆け寄って来る。
駆け寄る仕草も可愛いな。
しかし、何か臭う?
なんだ、違和感とは違う臭いだ?
「初めまして」
スバルちゃんは俺の前に立って握手をしようと手を差し出した。
そこで俺は違和感の正体に気付いた。
「ぐぅぅううう!!」
俺は後ずさる。
「あれ、どうしました?」
スバルちゃんは不思議そうに首を傾げていた。
その仕草も可愛いな。
だが、可愛いが……。
「え、え、どうかしましたか?」
彼女は無垢に戸惑いながら、更に詰め寄って来る。
「ぐぅぁあああ!!」
俺は鼻を押さえながら更に後ずさった。
彼女に感じた臭いの違和感が分かったぞ。
この子、マジ臭い!
超臭い!
悪臭だ!
体臭が半端ない!
体から想像出来ないほどの悪臭を放っていたのだ。
近付けないほどにだ……。
俺の初恋は、また終わった。
これだけの体臭は、百年の恋すら冷ましてしまう。
【つづく】
酒場に入って来るギルメンたち全員が全員、決まって俺を一瞥してからテーブルに戻って行った。
その視線から、彼ら各々の立場を知らしめている。
ギルガメッシュを支持する者は友好的な表情だし、アマデウス派は敵対的な眼差しなのだ。
彼らなりに、自分たちの立ち位置を分かりやすく知らしているのだろう。
今後のために、誰がどのような態度を見せていたか、出来るだけ覚えておくことにした。
一通り皆が席に腰かけると酒場の賑わいが戻る。
それから俺はギルマスから貰った羊皮紙の依頼書に目を通した。
内容はこうである。
【魔法使いの護衛と手伝い。魔法使いギルドのスバル氏が少し離れた森に特殊な薬草を採取しに行くのを護衛しながら手伝え。依頼料は400G。想定日数は徒歩で三日程度】
だ、そうな。
護衛と薬草取りの手伝いの仕事らしい。
RPGのテンプレ的な仕事だな。
俺は早速だが、依頼人のスバル氏を訪ねることにした。
しかし、不親切な依頼書である。
雇い主の居場所が書かれていないのだ。
これってクソゲーの乗りだよね。
まあ、魔法使いギルドのスバル氏って書いてあるから、魔法使いギルドで訊けばいいだろう。
俺は冒険者ギルドの酒場をあとにして、魔法使いギルドを目指す。
しばらく歩いて魔法使いギルドに到着すると、早速カウンターの受付嬢に訊いてみた。
俺は依頼の羊皮紙を見せながらスバル氏の居場所を問う。
すると受付嬢は自分の手首に嵌めているブレスレットに向かって話し出した。
魔法通信でスバル氏を呼び出しているようだった。
魔法って、便利だな。
この超ローテク異世界の暮らしを便利に支えているのは魔法なんだなっと思った。
だったら魔法でトイレットペーパーぐらい作ってくれよと思う。
このままでは俺のお尻が崩壊してしまうだろう。
兎に角、荒縄はキツイ……。
しばらくすると、ゾディアックさんが現れた。
スカル姉さんの知人で痩せた長身の魔法使いである。
「ゾディアックさん、こんにちわ」
「やあ、アスランくん。まさかキミが冒険者ギルドから派遣されて来るとは思わなかったよ」
どうやらこの態度からして、ゾディアックさんにも依頼の話は通っているようだ。
「僕がスバルくんのところまで案内するからね」
「ありがとうございます」
俺とゾディアックさんは、一旦魔法使いギルドを出てソドムタウン内を進んだ。
スバル氏は魔法使いギルド本部には居ないようだ。別の場所に居るのだろう。
道中でゾディアックさんが話し掛けて来る。
「この依頼にキミが派遣されたってことは、キミはギルガメッシュ派に属すると決めたのだね」
「なんとなく流れで、そうなりました。ところでゾディアックさんは、冒険者ギルドの内部抗争をご存知なのですか?」
「キミは知らないのかな?」
「あまり知りません」
「僕が知る限りだと、現在のギルマスのギルガメッシュ派と、成り上がりのアマデウス派が、覇権を争ってるぐらいしか知らないな」
「どちらが勝つと思いますか?」
「噂では、まだまだ分からないね」
「じゃあ、同じ魔法使いだから、アマデウスのことを知ってますか?」
「ああ、知っているとも。何せ腐れ縁に近いからね」
「腐れ縁だと、良い仲間ってことですか?」
「どちらかって言うと、切りたい最悪の仲かな。だが、運命がそれをなかなか許してくれないって感じだよ。昔は小さなことでよく対立したもんだ」
「なるほど。味方や友達ってわけでは無いんですね」
「でも、同期の桜だ」
「魔法使いとして一緒に学んで来たってことですか?」
「嘗て彼も魔法使いギルドのメンバーだったんだ。でも、学ぶことより強くなることを選んでね。それで冒険者ギルドに下ったんだよ」
「出来る魔法使いだったんですか?」
「ああ、当時から天才的だったかな。特に魔法の操作に関しては段違いで優れていたよ。冒険者に下らなければ僕と同じように魔法使いギルドの幹部になっていただろうさ」
「なるほど……。そうですか」
やっぱり俺は、かなり強いヤツを敵に回したようだ。
本腰を入れてやらないと、こっちが潰され兼ねないな。
「彼は強敵だぞ。敵に回して大丈夫かい?」
なに!?
ここにもエスパーがいやがる!?
もしかして俺の心の声って駄々漏れなのかな!?
「まあ、どうにでもなりますよ」
「だといいね……」
そしてどうやら目的地に着いたらしい。
場所はソドムタウンの外れで寂しい場所だった。
煙突から真っ黒な煙りが登っている平屋である。
玄関前にはわけの分からないガラクタが複数散らかっている。
そのありさまからスバル氏は、魔法使いと言うよりも発明家じゃないのかと思った。
「スバルは錬金術師系の薬師だよ。それも天才クラスの薬師だ」
天才が多いな。最近──。
ゾディアックさんがドアをノックしてスバル氏を呼び出す。
「スバルくん、ゾディアックだ。居るんだろ、出てきなさい」
スバルくんっと言ったな。
だとすると、若いのか、スバルとは。
しかも、スバルくんだから男なのかな?
なんか、つまんね~。
「はいはーい、今開けますよ。ゾディアックさーん」
明るい女性の声だった。
どうやらスバルは女性らしい。
しかも、かなり可愛らしい声だった。
わざとらしい声優のボイスと表現したらいいだろうか。
そして、俺は恋の予感を強く感じる。
これからラブロマンスがスタートされるだろう!
あの扉が開いたら始まりである!
そして俺の期待を背負って扉が開かれた。
すると彼女が顔を出す。
「こんにちわ~」
赤毛のツインテールで眼鏡っ子だ!
年頃は俺と同じぐらいだろう。
しかも、なかなか可愛い!
ヒットだ!
ナイス、ツインテール!
ナイス、眼鏡っ子!
ナイス、魔女っ子!
ナイスが三拍子揃ってるぜ、やっほーーい!
よし、まだエロイ妄想はしていないから胸も痛まないぞ。
最近だと、ここまで前振りなどで凄く期待させておいてから、最後の出落ちでスッこけるパターンが多かったから少し心配したけれど、今回はジャストミートだ。
そのマンネリ化したパターンでは無いぞ!
もう本当にストライクだ!
ストライクゾーンのド真ん中だ!
ナイスが三つでスリーアウトチェンジだもの!
今回は期待を裏切られていないぞ、よしよし!
そして、スバルちゃんが家の中から出て来る。
赤毛のツインテールにピンクのローブ。小柄で可愛らしい女の子である。
だが、まだだ!
これから第二審査だぞ!
大概は外見が可愛ければ性格に問題があるパターンが多い。
何せポニーテールで可愛かった魔女のパターンが前例としてあるからだ。
不動産屋のミーちゃんも同類である。
だから、まだ油断はできない。
そして、彼女が明るい笑みでお辞儀した。
「初めまして、私は薬師の魔法使いのスバルです。よろしくお願いします。くすっ」
あれ、礼儀ただしいな。
一般常識はちゃんとしてそうだ。
しかも最後に「くすっ」っとか言って小首を傾げながら可愛らしく笑ったぐらいだし。
でも、なんだろう?
何か凄く鼻に付くな?
凄い臭うぞ?
この違和感は、なんだろう?
そして彼女がちょこちょことした足取りで駆け寄って来る。
駆け寄る仕草も可愛いな。
しかし、何か臭う?
なんだ、違和感とは違う臭いだ?
「初めまして」
スバルちゃんは俺の前に立って握手をしようと手を差し出した。
そこで俺は違和感の正体に気付いた。
「ぐぅぅううう!!」
俺は後ずさる。
「あれ、どうしました?」
スバルちゃんは不思議そうに首を傾げていた。
その仕草も可愛いな。
だが、可愛いが……。
「え、え、どうかしましたか?」
彼女は無垢に戸惑いながら、更に詰め寄って来る。
「ぐぅぁあああ!!」
俺は鼻を押さえながら更に後ずさった。
彼女に感じた臭いの違和感が分かったぞ。
この子、マジ臭い!
超臭い!
悪臭だ!
体臭が半端ない!
体から想像出来ないほどの悪臭を放っていたのだ。
近付けないほどにだ……。
俺の初恋は、また終わった。
これだけの体臭は、百年の恋すら冷ましてしまう。
【つづく】
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