ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第33話【ゴブリン退治】

荷物を盗まれた俺たち三人は、夜になる前にソドムタウンに到着できた。

ゲートの受付で観光ビザを取って町に入ろうとしたら、受付の役人が俺の首に下げられた冒険者ギルドのプレートに気づいて言った。

「なんだ、お前さんも冒険者ギルドに入れたのか」

声を掛けてきた役人は、一昨日の役人と一緒だった。

「俺はてっきりギルドには入れないかと思ってたんだがな」

「どう言うことだい?」

「だってお前さん、貧相だったから、面接で落とされると思ったんだが、意外だぜ」

確か面接なんか無かったぞ?

でも、ギルドマスター直々に受付をしてくれたっけな。

もしかしてあれが面接代わりだったのかもしれない。

だとすると面接で合格を出したのはギルマス直々だったと言うことになる。

俺、ギルマスに期待とかされているのかな?

まあ、いいか──。

「じゃあ、通っていいぞ」

俺は受付の役人に言われてキョトンとする。

まだ通行費も賄賂ワイロも払っていない。

俺が不思議がっているのを見て役人が察する。

「登録住人とギルメンは通行費が無料なんだ。とりあえず次がつっかえているから、さっさと行けよ」

俺は言葉に押されるようにゲートを進んだ。

知らなかった。ギルメンに、そんな特権があるなんてさ。

「じゃあ、ここでお別れだ」

「おう、じゃあな」

「じゃあね」

そう言ってからクラウドたちと別れた。

俺はスカル姉さんの診療所には帰らずに冒険者ギルドに向かった。

そして魔法のバンダナを750Gで売った。

本来ならば倍の値段で売れるのだろうが、今は直ぐに実弾ゲンナマが欲しかったからだ。

直ぐに武器と防具、それに食料を買え揃えるとソドムタウンを出た。

遅れを取り戻すために早歩きで草原を進む。

仲間に裏切られて引き返したことをスカル姉さんには知られたくなかった。

なんだか情けなくって恥ずかしかったからである。

だから仕事の遅れを出来るだけ早く取り返したかった。

ばれないように──。

それに一人のほうが進行は早い。

休憩の時間や、寝る間も惜しめば遅れは取り返せるはずだ。

そんなこんなでタババ村に到着したのは、最初にソドムタウンを出てから四日後だった。

遅れは何とか取り返せたが疲れた。何より眠い……。

それでも俺は、村人を捕まえて依頼人の村長の家を訊き出すと先を急ぐ。

速攻で村長に会ってゴブリンの住みかを訊き出した。

ゴブリンは村の近隣にある森に巣くっているらしい。

なんでも放棄された4LDKの古い山小屋が在るらしくて、そこにゴブリンたちが10匹ほど住み着いたらしいのだ。

ゴブリンを討伐した後に、建物は解体する予定らしいので、どれだけ破壊しても構わないとのことだ。

なので今回は暴れ放題である。

だが、火だけは駄目らしい。

森に引火したら大惨事になるからだ。

俺は村長に山小屋の簡単な間取りを描いてもらうと直ぐに仕事に取り掛かる。

しかし、村長は俺を見て不安がっていた。

何せ屈強な男たちが揃った冒険者ギルドにゴブリン退治の依頼を出したはずなのに、期待とは裏腹に派遣されて来たのがこんな若造一人なのだからだろう。

俺は将来的にギルドの幹部候補生の一人だと嘘をついて、村長を無理矢理にも納得させた。

まあ、まんざら嘘でもない。

俺は将来的にはビックになるのが間違いない逸材なのだから。

まあ、自画自賛なだけだがな。

さてさて、俺はゴブリン退治に向かう。

そして、直ぐに山小屋の屋根だけが森の木々の間から発見できた。

時刻は夕暮れだ。

もうそろそろ夜が来る。

ゴブリンは夜行性のはずだから、そろそろ活動時間が始まるころだ。

でも、今はヤツらにしてみれば早朝のはずだ。

寝坊助ならば二度寝するタイミングのはず。

俺なら母さんに「あと5分……」って言って起きてこない時間帯だ。

奇襲を仕掛けるならば最高の時間帯のはずだろう。

俺、レッツゴーだぜ!

俺はスキル【忍び足】と【気配消し】を駆使して山小屋に接近を試みる。

藪の中を屈みながら進むと山小屋が見えてきた。

ボロボロの一軒家だった。

平屋である。

屋根に穴が空いていた。

壁も何ヵ所か崩れている。

入り口には見張りも居ない。

完全に無防備だった。

不意打ちしほうだいである。

今回はマジックアイテムこそ無いが、買い込んだ武器も豊富である。

ショートソードにショートスピア。ショートボウと矢筒に矢が七本。

それに投擲用ダガーが三本だ。

防具もレザーアーマーでバッチリである。

俺はショートスピアを手に忍び足で山小屋の壁際に張り付いた。

人一人が通れそうな壁の穴から中を覗き込む。

すると俺が張り付いている壁の直ぐ裏側にゴブリンが一匹と、その部屋に三匹のゴブリンが居た。

どいつもこいつも眠っている。

本当にお寝坊さんたちであるな。

俺はスピアを置いて、腰からダガーを取り出してから壁の穴をくぐる。

そして、直ぐ側のゴブリンの口を手で塞ぎながら喉を切り裂いた。

喉を切られたゴブリンは、少し暴れたが直ぐに動かなくなる。

まずは一匹──。

俺は部屋の中を忍び足で進むと、同じ方法で一匹ずつゴブリンを始末していく。

計四匹のゴブリンを難なく片付けられた。

これで残りは六匹ぐらいだろう。

俺は置いていたショートスピアを取り直すと隣の部屋を目指した。

隣の部屋を覗き込めば大きな影が奥の壁際で寝ていた。

その他に四体の影が床に寝ている。

大きな影は、おそらくホブゴブリンだろう。

ちょっぴり強敵だ。

ここは確実に寝首を刈っておきたい相手である。

そして俺は忍び足で室内に侵入しようとした。

その直後である。

踏み込んだ足が何かに引っ掛かった。

とたんにけたたましい音が周囲に鳴り響く。

引っ掻けたのはロープで、それには骨で出来た鳴子が下げられていた。

防犯ようの警備トラップだ。

けたたましい鳴子の音にゴブリンたちが跳ね起きる。

もちろんホブゴブリンもだ。

不味い……。

俺の不意打ちターンの終了である。

ここからは総力戦だ。


【つづく】

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