神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

107話 大お見合い大会開催!しかし、トラブルは尽きない



 3月半ば


天気は晴れ


またとないお見合い日和である






我が家からの参加者は約50名ほど


で、各国からどれくらいの人数が来るか知らされていない


陛下から父上経由で来た内容は






『当日を楽しみにしておれ』






この一言だけであった






各国の到着予定時刻は昼前なのだが、これには理由がある


飛空船の試験運用が当初の予定より早く、発着は出来るが港の完成には各国とも、まだ時間が掛かる為であった


事故が起きない様にと安全を配慮したためでもある






安全と言えば、今回の警備に黒竜族が参加している


空で万が一があった場合、墜落もあり得るので、1隻に対して黒竜2体で対処にあたって貰うためだ


何も無ければそれで良いんだけどね


尚、黒竜族への報酬は果物と酒であったりする










開催時刻まで残り1時間を切った所で、空に船が見える


飛空船は全部で5隻


順番に港へと着陸し寄港する


何事もなかったので一安心だ






開催時刻15分前には、各国の貴族・商人が到着し、社交辞令の挨拶を始める


表向きはただの挨拶だが、裏の言葉はこう変換される






『選ばれるのは我が子ですよ』『我が娘がクロノアス卿に気に入られるとも』『貴族がなんぼのもんじゃい!』『商人風情はでしゃばるな!』






とまぁ、こんな感じに聞こえる


こういう風に聞こえるという事は、俺もどっぷりと貴族に染まったと言う事であろうか?


今後は注意していこう








開催の宣言まであまり時間も無いので、俺への挨拶は後回しになり、いよいよ時間となる






「本日は、お忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございます。長い話は苦手なので、注意事項をいくつかだけ話させて頂きます。まず、ご参加の方には名前と番号が書かれた名札をお配りしております。ご婚約がご成立したら、受付のメイドへとご報告下さい。我が家の女性陣は男性1名を、男性陣は・・まぁ、甲斐性があれば制限は無しで。料理やデザートに酒などもご用意しておりますので、ご同伴の方も是非、お楽しみください。あ、名札の無い方への口説きはご遠慮くださいね?」






ここでちょっとした笑いが起こる


皆分かっているからこその笑いではあるが


もし、本気で言っていたら不敬だからな






「それでは・・クロノアス家大お見合い大会を開催いたします!」






最後に俺の宣言で、大お見合い大会が始まった








始まって早々に、各国の貴族と商人が俺へ挨拶に来る


当人達は、それぞれ楽しんでいる模様


ちなみに、俺の婚約者達は全員が勢ぞろいしている


婚約者ではないが、ヴェルグも一緒である


身重や余程の事でもない限り、こういった席には揃って顔を出すものだと教わったが、こうしてみると多いよな


妾や愛人がいる者も、こういった席には出席させるらしい


なんでも【妾や愛人まで紹介する者は懐を開いている】と相手に印象付けれるそうだ


俺にはいないから、婚約者か候補だけなんだけどね






「初めまして、クロノアス卿。帝国貴族で伯爵の地位を拝命している、ガリウギ・フィン・ドストーロと申します。以後、お見知りおきを」






「こちらこそ、ドストーロ卿」






「今日は、参加する者とは別に娘を連れて来ておりまして。ほら、ご挨拶しなさい」






「アイリーヤと申します」






「美しいお嬢様ですね」






「ありがとうございます。自慢の娘ですとも。良ければ少しお話など、どうでしょうか?」






「申し出は嬉しいのですが、この後も挨拶が控えてまして」






「そうですか・・・もし、お暇になられましたら、お声をおかけください」






とまぁ、こんなやり取りを延々と繰り返していた


そう・・・全ての貴族と商人が娘を紹介してきたのだ


俺はこれ以上、嫁を増やす気はない!と声を大にして叫べたら、どれだけ楽だろうか


そんなことは勿論できないので、ひたすらにお断りを続けているわけだ








開催宣言から挨拶と言う名の娘紹介を1時間ほど相手にし、今はようやく一息つける状態になった


婚約者達も、自国の貴族と商人相手に挨拶をしている中、ナユが飲み物を手渡してくれる






「ラフィ、お疲れ様」






「ありがとう。ナユは・・暇そうだな」






「私は、平民だから」






「冒険者としては、それなりに名が売れているだろう?」






「そうだけど、挨拶する人なんて数人の商人くらいね」






「なんて羨ましい・・・代わって欲しいわ」






「ラフィは特別な貴族枠だから、無理ね」






「そんなに特別でもないんだがなぁ」






二人で他愛もない話をしながら、参加者たちを見る


既に何人かは良い雰囲気だ


あ、ウォルドに女性陣が群がってる


ブラガスの方も大人気だな


この二人は、既に我が家で役職持ちだからな・・人気なのも当然か


後は・・・






「何人かは既に決まったみたいだな」






「決まったのは・・メイドが数名と執事ね。ただ・・・」






「意外と成立してない人が多いよな?」






「もしかしたら、決まらない人が出るかも」






「そうなると、後が大変だよなぁ」






「今回のお見合いって、はっきり言えば異常だもの」






「まぁ、平民に元貴族が婿入りするわけだからなぁ」






と、ナユと行く末を見守っていると






「久しぶりだな」






「ラナは元気か?」






「リーゼはどうだ?」






「お久しぶりですね」






「苦労しとるようじゃの」






各国のトップが挨拶にやってきた


やっべ!・・本来なら、こっちから挨拶に・・・って!なんでこの場にいるの!?


何にも聞いてないんですけど!?






「驚いとるなぁ」






「まぁ、当然だな」






「ふむ・・これは面白い」






「だから言っただろうが」






「各王も趣味が悪い」






最後にヴァルケノズさんが、さりげなくディスるが全く気にしない4王


あれ?レラフォード代表だけいない?






「あのBBAか?問題は無いからと引き籠っておるぞ」






「皇帝陛下・・言い方が」






「事実だからな。それと、皇帝陛下は止せ。何故か背筋がむず痒い」






「出会いが出会いでしたからねぇ。何とお呼びすれば?」






「ドグラギルでよい。皇帝も要らん」






「流石にそれは・・・」






「余が良いと言っておる。無論、全員がそうだぞ」






皇帝の言葉に、全員が頷く


ただな、俺にも周囲の目ってものがあるんだが


それに、自国の王に対して呼び捨てで名前は呼べないんですけど


かなり困っていると、声が発せられる






「お父様、それに各国の王様方も。クロノアス卿が困っていらっしゃいますよ」






「ぬ!そうか。まぁ、少し砕けて呼べば良い」






「では、ドグラギル皇帝と。それで、そちらの女性は?」






「娘のシャルミナだ。前は碌に挨拶も出来なかったからな。この機会に連れてきた」






「シャルミナ・ザズ・フィン・ガズディアです。以前はご挨拶できずに申し訳ありませんでした」






「グラフィエル・フィン・クロノアスです。どうかお気になさらず。前は色々あったので、仕方ないと思います」






「お気遣い、ありがとうございます」






お互い挨拶を交わし、再び各国の王へ話を戻す






「で、何故ここへ?」






「息抜きだ!」






「ぶっちゃけましたね・・もう少し、建前とか使いましょうよ。ディクラス皇王」






「余もそう思うが、半分はその通りだからの」






「半分?ゼルクト王、それではもう半分はどういった理由で?」






「ん?この状況でわからぬか?」






「・・・ああ。抑止力ですか」






「正解だ。では、何の為の抑止力かわかるか?」






「陛下、少し意地悪ですね。・・・・一つは俺の為ですよね?もう一つは、全員を成立させるため?」






「わかっておるではないか。まぁ、お主に気を使い過ぎだと騒ぐ貴族も多い。余らが集まったのはそう言ったわけだ」






「なるほど・・・お気遣い感謝いたします」






「今日は堅いですね。普段通りで良いのですよ?」






「一応主催者なので。それなりにはしないといけませんから。ヴァルケノズさんも人が悪いですよね」






この言葉の後、3王の眉がピクリと動く


あれ?俺、何かやらかした?






「クロノアス卿?教皇殿だけ何故、さん付けなのだ?」






「不公平ではないか?」






「将来は義家族になるのにな」






皇帝、竜王国国王、皇王から順に非難の声が


ただなぁ・・砕けて良いと言われたし、いつも通りにしただけなんだけど


どう取り繕うか考えていると助け舟が出された






「皆さん、クロノアス卿が困っていますよ。彼が私をさん付けで呼ぶのは、私が彼の家庭教師をしていたからです。教皇になる前なので、ちょっとした癖みたいなものです」






「その話、余は聞いておらんぞ?」






「え?父上が話していないのですか?」






「聞いておらんな。誰か!グラキオスを呼んでまいれ!」






陛下からの指示に、護衛の一人が父を呼びに行った


父上・・ご愁傷様です!言い訳、頑張ってください


俺は心の中で父に祈った






さて、各国の王と話をしていたが、お見合いはどうなったかな?


しかしここで、とある異変に気付く


いつの間にかナユが傍に居なかった


周りを見渡すと、少し離れた所に避難していた


気持ちはわかるけど、それはダメだと思うぞ






と言う事で、ナユを連れてくるために少しだけ席を離れる


非難していたナユに話をするが






「ムリムリムリムリ!ワタシ、タダノヘイミン」






「なんで片言になってんの?いずれは通らなきゃいけない道なんだから、この機会に慣れておかないと」






「うっ!でも、不敬にならない?」






「基本的には善人だから大丈夫だって!何かあれば、助けるからさ」






「う~、ラフィの奥さんになるって結構大変だったんだ」






ナユを説得し、王達の元に戻る


そして当然の如く、全員がこう尋ねる






「「「「クロノアス卿?その女性は?」」」」






「婚約者のナユルです。平民出なので、お手柔らかに」






「ほう・・お主も隅におけんの」






「妾や愛人ではなく、妻としてか」






「初代だからこそ、出来る芸当だな」






「お三方、女性に対してその発言は失礼ですよ」






3王が素直な感想を言い、教皇が言い方に対して窘める


教皇が3王の父親に見えるのは、きっと俺だけではないはず


そしてさっきから、視線が痛い


各国の同伴してきた貴族家の方々が遠巻きにこちらを見ており、聞き耳を立てているのだ






多分だが「婚約不成立?不敬になる?私の立場が!」なんてことを想像しているのかな?


相性もあるので、その辺りは事前に話を通しているから大丈夫ですよー、と声を大にしてい言いたい


言えば王達の面子を潰しそうなので言えないが






その後も軽い雑談をしながら様子を見る


ナユも色々と質問され、たまに目をぐるぐる回していた


ナユ頑張れ!これも慣れだ






とここで、お見合い会場の方が少し騒がしくなる


これは・・女性の声だな


各王達も「何事だ?」と護衛に聞いている


これは主催者として話を聞かなければ


騒ぎの中心へと移動すると、男性の声も聞こえてきた






「君、元は冒険者の様だが、貴族のしきたりは知っているのだろう?」






「どのような事ですか?」






「妻の序列だ。君の妻は貴族ではないのだから、我が娘を正妻にすべきだろう」






騒ぎの中心は、ウォルドとどこかの貴族家みたいだな


詳しく話を聞くため、割って入る事にする






「失礼、我が家の従士長が何かしましたか?」






「これはクロノアス卿。どうか貴殿からも言って下され。貴族の家には貴族のやり方があると」






「それは、彼の正妻の事ですか?」






「聞いておられたなら話は早い。貴殿も貴族ならば、家臣への教養はすべきですぞ」






上からの物言いに少しイラっとする


揉めている貴族は、帝国から来た貴族


爵位は・・確か、子爵だったか?


とここで、護衛を連れて各国王がこちらへと来た






既に全容を掴んでいる王達は、視線を皇帝に向ける


皇帝・・天を仰ぎ、顔を片手で覆う


皇帝の内心はきっと「やっちまった・・・どう詫びようか」とか考えてるに違いない






イラっとはしているがまだ大丈夫ですよー、と視線を送るも皇帝は気付かず


しかし、次の一言で状況は一変する






「正妻は平民の出で、メイドだと?そのような下賤な者よりも我が娘が正妻に相応しい!」






プチン!・・・俺とウォルドがキレた瞬間だった


ウォルドが掴み掛りそうになるのを止める






「ラフィ、止めるな!」






「落ち着けウォルド。それと、一応は公の場だぞ」






「ぐっ!・・申し訳ありません、御館様。しかし!止めないで頂きたい!」






言葉遣いを直し、謝罪するもウォルドは止まらない


気持ちはわかるので、俺に任せて欲しいのだが


だがこの貴族は、更に燃料を投下した






「ふん!やはり元冒険者で平民出は野蛮だな。クロノアス卿、我が息子に腕の立つ者がおります。是非、家臣にしてはいかがでしょうか?」






皇帝の顔色が変わる


皇帝以外の王達は「あ・・あいつ終わった」と確信した顔に


そして当事者の貴族は、各国王が傍まで来ていることに気付かず、自慢の子供達(自称)を俺に勧めてくる


もうこれ以上、戯言を聞く気は無いので、終わらせてあげよう






「メイドで下賤ですか・・・そのメイドはね、俺が幼少期の時から俺に仕えてくれてるメイドなんですけどね?なるほど、なるほど・・・俺は下賤な者に育てられたと?そう言う事ですね?」






ここで、自慢げに話していた貴族の顔が一気に青くなる


尚、俺はこの貴族を許すつもりは無いので、更に追い打ちをかけることにする






「それにね、従士長に抜擢した彼は、高名な冒険者ですよ?聞いたことありませんか?クラン白銀の翼を」






「そ、それは・・・」






「それに、メイドの方も王城にスカウトされるほどの人物ですが?と言う事は、我が国の王に対して、見る目が無い、と仰られるのですね?」






「い、いえ・・・決してそのような」






「それに、優秀な彼女はその功績を認められ、公爵家の養女になっているんですが?帝国はランシェスに宣戦布告した、と受け取ってよろしいですね?」






「あ、あ・・・」






「否!我が帝国はランシェスに対してそのような事は行っておらん!」






ここで皇帝陛下の一喝が飛ぶ


先程、陛下の事を出す前に視線で「やっても良いですか?」と合図を送っていた


陛下は軽く頷き、皇帝に事情を話していた


半分は出来レースである






ちなみに、今の言葉には嘘と真実が混じっていたりする


ナリアの身分について、こうなる事は予測済み


ならば、対策は講じやすい






ヴィルノー先代に頼み、ナリアを養女としてもらったのだ


養女とは言え、相手は他国の公爵家


他国の子爵家如きが敵う相手では無い


自国と他国では色々とあるが、爵位の差は大きい


敵国ならばいざ知らず、現在は同盟国である






そして、喧嘩を売った相手が悪い


その気になれば、帝国など一夜にして滅ぼせるのが俺だ


更に同盟の中心人物でもある


俺と他国と自国の子爵家


皇帝がどちらを取るかは明白であった






「貴様、余は言ったな?今回の件は重大なものだと。貴様の行い一つで、帝国は窮地に立たされるのだぞ?その罪は重いと知れ!近衛兵!その愚か者どもを捕らえよ!飛空船内にて監視を付けよ!沙汰は本国に戻ってから下す!」






「はっ!」






こうして、騒いでいた子爵はお縄についた


騒ぎを見守っていた他の参加者達であったが






「流石はクロノアス卿・・・と言うべきなのでしょうか?」






「ですが家臣の・・それも、相思相愛の者を言葉一つで守るその姿は、素晴らしいですな」






「我らも見習わねばなりませんな」






「ヤバい・・・漢気に惚れた。俺は結婚して家臣になるぞ!」






「ステキ・・私もクロノアス様の妻になりたい」






何故か賞賛が送られた・・当たり前のことをしただけなのにな


商人から始まり、貴族、男性参加者、女性参加者と、次々に賞賛の嵐が送られる


ちょっと恥ずかしい


そして、賞賛が送られているのは俺だけでは無かった






「ウォルドさん・・いや、兄貴!どうか、兄貴の部下に!」






「ウォルド様、とても素敵でしたわ。その・・私の事も守っていただけますか?」






「良い啖呵だった。クロノアス卿は良い家臣を得たな。ただ、言葉遣いは気を付けたまえ」






「主君からの信頼が厚く、逆も厚い。商人にとって信頼は大切な物です。大切になさいますように」






ウォルドも色々な人から賞賛を受けていた


若干、注意も受けていたようだが


で、もう一人の当事者であるナリアだが・・顔を赤らめて、隠れようとしていた


当然見つかり、女性参加者達に根掘り葉掘り聞かれている






ちょっとした騒ぎはあったが、これが良い方向に向かい、無事に全員が婚約成立


ただ、忠義に厚い人達が家臣に加わったのは良い事なのだが、ちょっと暑苦しい






こうして無事に大お見合い大会は成功で幕を収めた








お見合い大会終了後、皇帝が青い顔をしながら






「本当にすまぬ!最悪処刑するから、どうか帝国には何もせんでくれ!」






と懇願してきて、ちょっと引いた


あ、処刑は要らないと言っておいたからな

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