神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

106話 大お見合い大会に向けて



王城からの呼び出しを乗り切り、春先のお見合い大会に向けて準備を進めていく


去年は年末年始とのんびりしていたが、現在は多忙である


と言うのも、空間拡張用の魔道具作りが思いの外、難航したためであった






「もうやだ・・ラフィ~、助けて~」






「頭撫でてやるから、頑張れ!」






「なでなで気持ち良い~」






「お二人だけでじゃれあわないでください。皆に告げ口しますよ?それがイヤなら・・・」






「リーゼもなでなで~」






「これは・・気持ち良いですね。あ、なんかふにゃぁってなります~」






とまぁ、多少イチャコラしながら作業をしていた


尚、このイチャコラがナリア経由でバレて、全員に頭なでなでしたのだった












月日は少し流れ、現在2月


我が屋敷内はと言うと・・・・一部で阿鼻叫喚が起こっていた






「うがぁぁぁぁ!なんで!また!失敗なんだよぉぉぉ!!」






「ラフィ・・僕、もう無理。マジで死んじゃう」






「神喰はそう簡単に死なねぇよ!」






「ラフィ様が、まさかここまでだったとは・・・」






リーゼの言うここまでとは?


それは、俺が使う付与魔法の才能の無さであった


時は少し戻る






招待客の選定は各国首脳陣が行っていた


名簿が作られ、ランシェスに届けられる


郵送方法は転移陣を応用したものだ






そこへミリア達も加わり、最終調整が行われ、招待状が1月中に届けられることになっていた


各国の貴族家や商家にはその旨が伝えられており、多少遅くても問題無く参加出来るようにもしていた






当然だが、連日あったアポイントメントはお触れが出た為、限りなく少なくなっていた


まぁ、あっても「権限が離れてしまって・・・」で切り抜けたが






その間にも空間拡張魔道具の作製は続けていた


魔道具作成はヴェルグが担当


俺はその魔道具に空間拡張の魔法を付与する役割だった


空間拡張の魔法を使えるのって俺だけだから仕方ないんだけどね






そして、製作から1カ月以上経つが、未だに1本も完成していなかった


理由は、付与する際に魔力を流すのだが、強力過ぎて魔道具自体が破損してしまうのだ


また、付与する際に物凄く条件付けが複雑だったりするのも、未だに成功しない要因の一つだった






「ヴェルグ、もう少し簡略化出来ないか?」






「またぁ?もうかなり簡略化したんだけど」






「条件付けが厳しすぎる。1本辺りの空間拡張量はまだ良いけど、消費魔力量や持続時間の調整に複雑な魔術紋の起動方式。流石に処理限界を超えてる」






「起動方式は最大限簡略化したから無理。これ以上やると、暴走したり、起動できなくなったり、最悪は大爆発するよ?」






「他に簡略化は無理か?」






「う~ん・・・消費魔力量=持続時間には出来るけど、使い勝手が悪くなるよ?元々がそれなりの魔力を使うわけだし」






「それだと本末転倒だな・・・なんとかするしかないか」






「頑張って♡」






などとやり取りをしたのが1月後半


そして、その都度失敗をし、また作り直しを繰り返して1か月


で、現在に至る






ヴェルグが作った魔道具は既に千を超える


そして、その全てが失敗作


更に悪い事に、一度失敗すると新しく作り直さないといけない


魔術紋が複雑なので、失敗すると使い物にならないのだ


もう既に材料費だけで白金貨数枚は溶けていたりもする






「これ、成功する未来が見えねぇ」






「僕はもう、魔術紋を刻みたくない」






「手順は合っているのですが・・魔力量もそこまで強くもありませんし。何故、成功しないのでしょうか?」






「・・・仕方ない。あれを使うか」






あれとは、全智神核である


練習にと頑張ってきたのだが、一向に先が見えないし、お見合い大会まで1カ月を切った


背に腹は代えられない






と言う訳で・・・全智先生おなしゃす!






『誰が先生ですか!そして、呼ぶのが遅すぎます!』






『説教は後で聞くから、打開策を!』






『はぁ~・・そもそも、今のままでは無理ですよ。神喰と神もどきですよ?相性が悪すぎます』






『え?そんな理由?じゃ、どうすれば良いんだ?』






『方法は二つ。一つはマスターが全て行うしかないですね。もう一つはそこの神喰が神もどきになれば良いだけです』






『あれ?何か不機嫌・・』






『当たり前です!マスターと神喰が一緒など・・・ましてやラブラブなど・・・きぃーーーー!』






『あ、何か悪い。とは言え、ヴェルグの神化は厳しそうだしなぁ』






『・・・そうですね』






『・・・何を隠してる?』






『隠してなどいませんよ。聞かれていませんから答えないだけです』






『子供か!知ってるなら教えてくれよ』






『・・・・イヤです』






『・・・・・はい?』






『イヤだと言ったんです!他の婚約者は仕方ないとしても、神喰が妻になるなんて認めません!』






『いや、まだそうと決まったわけでは・・・』






『端から見ていて、あんなにイチャラブしておいて、その言葉はあんまりです!私なんて・・私なんてぇー!』






全智さん・・泣き出してしまう


あー、確かに用事がある時以外は呼んでなかったなぁ


後、どうしようも無い時とか


つまり、拗ねていらっしゃると






【もっと頻繁に自分を使え】と






そう言っているわけだ


ふむ・・・少し本音を出すか






『え~と、なんかすまん。ただな、頻繁に何でも聞いたりさせたりすると駄目になりそうでな。だから、命の危険がある時やどうしようもない時だけ呼んでたんだ。呼べば確実に答えてくれる事に甘えてたな』






『い、いえ!こちらこそお見苦しいところを・・・』






『いや、それは構わない。それにな、頼りにしているからこそ、いざという時にしか呼ばないというのもある。全智は俺が最も信頼する者の一人だ。スキルであっても、それは変わらない』






『・・・マスター』






『悪かったな。もう少し、頑張ってみるよ。ただ、期日が間に合わなくなったら頼むよ』






『これだから、天然の人たらしは・・・もう良いですよ。マスターに一番最初に信頼されたのは私ですしね』






『ありゃ、バレてた』






『生まれる前からの、神界からの付き合いですよ』






『え?神界の時から?』






『そうですよ?その頃は話したりできませんでしたが』






『そうなのか・・・そうなると、付き合いも長いな』






『ええ。ですから、マスターの事は誰よりも知っていますとも!赤ん坊の頃、母親からお乳を貰う際に、何気に内心では恥ずかしがっていたことも知っています』






『うん・・・地味にダメージ入れてくるのは止めような』






そんなこんなで全智神核と和解?し、製作を再開


とは言え、ここまでやって、俺とヴェルグの相性が悪いでは話にならない


そこで・・裏技を使う事にした


あ、ちゃんとヴェルグには失敗理由は話したぞ






「ふ~ん・・・力の質が違うのが理由ねぇ。で、解決方法はどうするの?」






「魔剣貸して」






「良いけど・・・喰われるよ?」






「効率は悪いけど、出来ない事は無いんだよな。なら、やるだけさ」






「意外と負けず嫌い?」






「俺は前から負けず嫌いだぞ」






そして、ヴェルグから魔剣を借り、付与を開始


結果から言うと成功はした・・・したんだが・・






「ヤバい・・・マジ、ヤバい」






「だから言ったのに・・・でも、僕より魔剣を使いこなしてない?」






「この魔剣って、意思があるだろう?どういう訳か好かれていてな。言う事は聞いてくれたんだ。代わりに、魔力を死ぬほど持っていかれたが」






「ちなみにどれくらい?」






「わからん・・ステータスを確認したが数値化はしていなかったから、余力は十分にあると思う」






「体感的には?」






「・・・・・6兆くらい」






「・・・・後でお仕置きしとくよ」






「まぁ、おかげで打開できたし、程々にな」






「計算式の制御はラフィがやってないでしょ?」






「バレてたのか。全智が言うにはな『人間の脳で制御できる範疇を超えてるでしょうが!』って言われて、スゲー怒られた」






「え?あれでも無理なの?ラフィって神人だよね?」






「え?」






「え?」






その後、数秒の沈黙


ヴェルグは何やら勘違いをしていた模様






「言っとくが、基本性能は人だぞ?特に処理速度とか。思考加速は出来るけど、処理速度は一定レベルで打ち止めだぞ」






「てっきり、神人だと思ってた」






「俺は、神の力に近い人だな。少しややこしいんだよ」






「でも、何か納得した。噛み合ってなかったわけだ」






「幻滅したか?」






「全然。寧ろ、惚れ直したかも。力は神クラスでも、人の身で僕を倒したんだから、尊敬にも値するよ」






「そりゃどうも。・・・さて、と・・残りも作ってしまおうか」






「その前に、僕に言う事は?」






「何を?」






「愛してる・・は?」






「言うと思うか?」






「言っても良いんだよ?」






「・・・・そのうちに・・な」






「そのうちに・・ね。(一歩前進かな)」






そして、残りの作業にも取り掛かる


翌日、リーゼが様子を見に来て、完成したと伝えたら






「そうですか。では、今日からは私達がラフィ様とイチャイチャできますね!」






そう言ってヴェルグから引き離し、数日の間、ヴェルグは俺に近寄れなかった








2月末日


完成した魔道具の起動実験を行う


完成してから1週間程経っているが、これにはちゃんと理由がある






「簡単な魔道具なら、その場で試験運転できるけど、複雑な場合は魔力を慣らさないといけません」






とは、リーゼの言葉だ


彼女の知識量は想像よりも凄かった


リーゼ自身の戦闘能力は皆無だが、軍を後方で指揮させたら恐ろしいのではないだろうか?


バグキャラな個対バグ指揮をする軍・・勝つのはどっちだろうな?






なんてアホな事を考えながら、実験を開始


作った魔道具は全部で12本


その全てが問題無く動作し、安全面も確認された


ようやく、肩の荷が下りた






お見合い大会まで残り半月


時間も無いので、魔道具を組み込んだ簡易建物を造ってしまおう


雨風を凌げるように、屋根と壁を設置


壁は1面だけ開けておく


後で壊すので、2日程で完成


但し、外装だけ


内装はこれから1週間かけて仕上げる


その辺りは本職に任せるので、俺達は退散した






次にお見合い大会で出す料理などの案を出す


普通のお貴族様パーティーとは違うので、軽食系がメインかな?


サンドイッチ、焼き菓子などの女性受けしそうなものが候補に挙がる


しかし何かが足りない


俺が首を捻ると、当然だが全員が注目する






「御館様?何かおかしなところでも?」






「ん?いや、種類が少ないと思ってな」






「サンドイッチや軽めのパンに焼き菓子とフルーツでは少ないですか?」






「もう少し、種類が欲しいかなぁ・・と」






「他に何かありましたかな?」






「立食形式なので、種類が多すぎても」






「ミリアは、これで楽しめる?」






「そう言われると・・何処か物足りなさも」






そして第二の問題にぶつかる


開催まで後2週間を切っている


早急に解決しなければいけない






だが、数日経っても進展なし


普通の立食パーティーなら、お肉ドーン!野菜ドーン!マシマシドーン!で片付くのだが、今回はお見合いだ


華やかな見栄えや取り分けやすい料理に話題になりそうな料理も必要だろう


そこで、甘い物は何があるのか聞いてみると






「基本は焼き菓子ですね」






「どの国でも同じではないでしょうか?」






「竜王国ではお餅もあります」






「フェリックですと・・・フルーツ酒でしょうか」






「プリンとかケーキは無いの?」






「それはどんなお菓子なの?」






「シアも初めて聞くです」






会話に混ざっていなかったリアとナユも首を振り、知らない告げる


リリィは用事があって今日は欠席


ヴェルグは「狩りに行きたい!」と言って、冒険者数名と狩りへ


で、残る者達で会議中なのだが・・プリンやケーキは無いのか


それなら、話題にはなるのかな?






「今から作ってみるか。ただ、一つだけ注意事項が」






「何ですか?」






「食べ過ぎると・・・・」






「食べ過ぎると?」






「太る」






「「「「「「「ラフィ様!!」」」」」」」






「いや、ごめんって。でも、結構甘いから食べ過ぎは注意ね」






そう言って、料理長を呼んで調理開始


でもな、作り方なんて知らないんだよ


てなわけで・・・全智先生さんに頼もう!






『私って、料理系に凄く呼ばれてませんか?』






『気にしたら負けだと思う。それに、頼めるのが全智しかいないし』






『私にしか頼めない・・・マスター!ガンガン教えますよー!』






全智神核は全智チョロ核さんに進化した


いや、退化したのかな?


とにかく、チョロかった






全智神核から聞いた話を料理長に伝え、手際よく試作品を作っていく


プリンは焼きと蒸しで両方作る


魔道具にオーブンに似たようなのがあるから、調理は比較的簡単に行えた


ケーキも生クリーム、チョコ、フルーツ系と作る


そこへ、思い出したかのようにミリアとリーゼがやってきて






「ラフィ様、パイがありましたわ!具材を変えれば、新しい料理になりませんか?」






「今のパイだと、ミートやポテトだっけ?」






「そうですね。後はアッポパイでしょうか」






アッポパイとはアップルパイの事だ


甘いパイもあるのなら、派生は可能だな






「それなら、クリームパイやバナーヌパイも作ってみようか」






「バナーヌって、あのバナーヌですか?」






「そうだけど・・もしかして苦手?」






「あの触感が苦手という方は多いですね」






「なるほど。なら、少し手順を増やすか」






「ラフィ様、前にお作りになったチョコはどうでしょうか?」






「あれは暑さに弱いからなぁ」






「ラフィ様なら、どうにかできるのでは?」






「一応、出来るけど・・好まれるかどうか」






「試作ですし、お作りになられてみては?」






「そうだな・・作ってみるか」






と言う訳で、お見合いに参加しないメイド達を試食に付き合わせることにした


意見は多い方が良いのだが、当事者たちには楽しみにしてもらいたいからだ


それと、大量に作ってしまったのも理由だと付け加えておく








「とりあえず、焼きプリンと普通のプリン。生クリームケーキにチョコケーキにフルーツケーキ。杏仁豆腐にバナーヌパイだな」






「見事に甘い物ばかりですね」






「他にもあるぞ?スパゲティとかパエリアとか」






「こちらは麺ですか?こちらはお米に見えますが」






「とりあえず、取り分けやすい料理を作ってみた。後はサラダだな」






「サラダ・・ですか?確かに取り分けやすいですが」






「ちゃんと秘密兵器は用意してるさ。因みに、サラダはどうやって食べる?」






「塩か生です!」






「シアの言う通りだね。だからこその・・これだ!」






「これは何ですか?」






「何か、油が浮いてない?」






「ふっふっふ・・ナユもリアも食べてみればわかるさ」






と言う訳で・・・いざ、実食!


思い思いに試作料理に手を付けていくと






「え!?なにこれ?美味しい!」






「プリンでしたっけ?私は蒸しの方が好みですね」






「私は焼き一択です!」






「杏仁豆腐・・・プルプルとした食感が面白いですね」






「ケーキも甘い物、少し苦みがある物、果物の甘みが多い物と多種多様ですね。私はチョコケーキ派ですが」






試食に来たメイドさんの評価が高かった


バナーヌが苦手と言ってたリーゼは勇敢にもバナーヌパイに手を伸ばして試食していた






「バナーヌの食感が全く無いのに、味と風味に強いバナーヌを感じます。とても不思議ですが美味しいですね」






「これは、私が提案したチョコですね。ケーキ以外にも出して頂けるなんて」






「ラスクって言うパン系のお菓子にチョコを染み込ませて焼き上げてみたんだ」






「これは美味しいです」






「いや、それよりもサラダだよ!何、このタレ!?酸味が少し強めだけど凄く美味しい!」






「このゴマダレも美味しいですよ。盛り合わせで乗っているお肉に絡ませても美味しいです」






「ラフィ様?このタレには我が国の醤油が使われていませんか?」






「お!ラナは気付いたか。タレの一部には確かに醤油は使ってるね。後は、砂糖も少量使ってたりする」






「ラフィ様!この麺は凄く美味しいです!でも、お口の周りが汚れてしまうのです・・」






「ナポリタンか。やっぱり、無しの方が無難かなぁ」






概ね高評価だった


但し、ナポリタンは今回出さない方向で決まった


口の周りが汚れやすい料理は、今回は見送り






試食会は問題無く終わり、俺のアイデアに刺激された料理人は






「さらに完成度を高めます!後、色々と試作しても良いですか?」






と聞かれたので、了承しておく


時間があるならば、クランに居るラギリアシェフに相談しに行くと良いとも伝えておく


彼ならば力になってくれるだろうから






その後、お見合い会に必要な物を一式取り揃え、当日を待つだけとなった


前日に雨が降りそうになったので、雨雲を吹き飛ばして少し騒ぎになったが、ちょっとした余興にはなったかな?

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