神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

104話 商会立ち上げと商売



収穫祭が終わり、神達もレーネスを残して帰った
メナトが帰る間際に


『こいつを渡しとく。信頼出来る者に貸し出すと良い』


そう言って、いくつかの武具を渡してきた
性能?そんなもの、ヤベェに決まってる
特にヤバかったのが、ウォルド当てに預かった剣と槍


剣の方は破断と言う名の大剣
性能は斬りたいものを斬れる剣
障害物があろうが時空断裂で遮っていようが、法則を無視して斬れるというもの
普通に神器クラスだった
但し、使用制限があるので、そこは救いだと思う


次に槍の方だが、名は天槍
性能は剣に同じ
こちらも神器クラス
更に使用制限なしだが、一つ問題がある
クソ重く、普通には扱えない点
流した魔力で重さを調整できるのだが、使用量が超多い


どちらも癖のある一品だったが、ウォルドは難なく使いこなしていた
ウォルド曰く『慣れだな』との事
う~む・・武器の扱いについてはウォルドの方が上だな




そして月日は流れ、神達が帰ってから一月後、ブラガスの一家が我が家へとやってきた


「この度は、我が息子を家臣にして頂き、誠にありがとうございます。我々にまで手を差し伸べて頂き、言葉もありません」


「そんなに畏まらないで欲しい。ブラガスを家宰にしたのは俺が是非にと言ったわけだし、そちらを呼んだのも俺の考えを実行に移してもらえると思ったからだしね」


「息子から手紙でお聞きしてます。何でも、相当な仕事があるとか?」


「間違いないかな・・ただ、下準備も必要だから、大半は冬を越してからになるけど」


「承知しました。ところでそちらの方は?」


「お初や。うちはネス言うやんや。よろしゅうな」


「申し訳ないが、ネスを幹部扱いで入れて欲しい。能力と実力は保証する(商業神だし)」


「クロノアス卿が仰られるのでしたら。ですが、不適合と判断したら容赦なく切りますがよろしいですか?」


「問題ないよ。それは無いと思うから。ちょっと理由があって、自分で立ち上げられない人物だしね」


「ほう、それは楽しみですな」


お互いに握手を交わし、仕事の話に移る
まずは商会の位置だが、クラン傍に店を構えている
次に何の商売をするかだが


「基本は飲食系。後は娯楽品の販売かな。冬だと流行る料理もあるしね」


「それは興味深いですな。食材は農家と直接取引ですか?」


「いや、シャミット商会から購入する。ただ、シャミット商会が扱っていない商品は直接取引になる」


「なるほど・・・貴金属や不動産はどうされるのですか?」


「保留。懇意にしている店もあるしね。とりあえず、食に変革を起こしたい!」


「ただそうなると・・・」


「店舗だろ?既にいくつかは抑えてあるよ。ブラガスが」


「それでしたら、お話は早い。今日中には荷解きも終わりますので、明日からでも動けます」


「あまり気負わずにね。とりあえず、2、3日は休んでからでも・・・「あかんで!」」


ここでネスから待ったが入る
あ、ネスとはレーネスを略した呼び方だ
レーネスだとバレるので偽名でネスにしたのだ
当然、ステータスも偽装してある
で、ネスが待ったをかけた理由は


「商売は鮮度が命や!とりあえず、冬に人気が出そうな飲食と娯楽関係は真っ先にやるべきやで!」


と力説するネス


「いやいや、着いて早々はダメだろ。疲れを取ってからでも良くない?俺はブラックな職場にする気は無いぞ」


とまぁ、ネスの言葉に反論したのだが


「いえ、ネス殿の言う通り!我々は明日から動こうと思います」


ブラガスの父親で商会のトップが燃えていた
商業許可証は陛下達が用意してくれたので問題はない
ただな、ブラック企業はダメだと思うんだよ
しかし、二人は聞く耳を持たず、明日から動くことになった


早速飲食系に取り掛かる
冬は主にスープやシチュー系が多い
ただ、それだと飽きる
そこで考えたのが鍋である
竜王国にもないので、人気が出るのでは?と考えたわけだ


問題は材料だが、少し力技で解決した
暫くは、竜王国で大量に買い付けした出汁用ブンコとカッオをアイテムバッグ内へ大量に入れておく
ブンコは前世での昆布でカッオは鰹節
味付けは醤油、味噌、塩の3種類
そこに前世の鍋通りにするだけ
庶民向けには良いと思うし、貴族なら珍しい物や高価な物も買い付けたりするだろう


後はチーズタッカルビもどきも作ってみた
龍の舌と呼ばれる香辛料が鷹の目と同じだった
これで唐辛子を作成し、前世で食べたものに近い物を再現


そしてラーメンもどきの作成にも取り掛かる
問題は麺に使うかん水の入手であったが、ぶっちゃけるとシャミット商会から購入できた
この世界にもかん水ってあったのね


それと、豆腐も作る事にした
鍋で豆腐無しは嫌だったので
にがりも卵の殻を使う事で解消


開ける店の内容としてはラーメン屋と鍋屋
チーズタッカルビもどきは鍋屋で販売
但し、ラーメン屋でも上乗せ具材として使う


スープは猪型魔物の骨をベースに鳥やその他の捨てる骨を再利用
野菜も入れて臭みも取り、それなりの物が完成
改良は本職に任せます


ここまで宣伝なども込みでおよそ1週間弱
物珍しさからか、開店前なのに店の前には人が何人かいたりする
主に冒険者が多いみたいだが


値段はラーメン1杯大銅貨2枚
チーズタッカルビもどき乗せが追加で大銅貨2枚
1杯2千円のラーメンと4千円のラーメン・・・前世なら間違いなく食べないな


鍋の方は食べる具材にもよるが、最安値で大銅貨3枚になる
最高値はいくらかって?今の具材だと銀貨1枚だな
1万円の鍋・・俺なら作った方が安いな


そんなことを考えながら、開店の様子を見ていると


「クロノアス卿!わざわざご足労頂き、申し訳ありません」


最終確認をしていたブラガス父が声を掛けてくる


「気にしないで良いですよ。それよりも、前評判はどうですか?」


「物珍しさが勝っていますね。味と見た目は十分ですから、大丈夫だと思います。鍋屋の方は、夕方から開店します」


「何か問題でも?」


「いえ、あちらは夕食と家族向けにしようと思いまして。お聞きした〆なるものもご提供できます」


「それは良かった。俺も後で食べに来ようかな?」


「是非に!お待ちしています!」


販売と経営は商会に任せ、アイデア料を受け取る様にしたわけだが・・・人気が出ると良いなぁ
利益は純利益から1割支払われる
2割支払いますと言われたのだが理由があって断った


『資本金は大事ですよ。冬が空けたら、新しい飲食系を展開するので貯蓄してください。出来る事なら、薄利多売が好ましいんですが、出来ますか?』


この理由を話した後、全員が首を縦に振り、やる気を全開にした
ある程度浸透したら、チェーン展開にしてみるかな




次に娯楽品の提供だな
実は娯楽品がかなり少なく、トランプは一応あるが、遊び方はポーカーだけだったりする
なので、トランプでの遊び方の本を出すことにする
値段は大銅貨1枚と少しお高めだが、紙自体が高いのでどうしようもなかったりする
尚、トランプは1セットで大銅貨3枚と意外に高い


後は、将棋、独楽、けん玉、双六、リバーシ辺りだろうか?
制作費も抑えられるので安価で提供できそうだ
将棋は少し手間が掛かるので庶民向けが大銅貨2枚
貴族向けは装飾や素材を豪華にして大銀貨5枚にするかな


え?高すぎないかって?素材にトレントの魔樹とか前世で棋士が使うような立派な物にするから良いと思うぞ
庶民向けは厚めの木の板にするからな


独楽とけん玉に双六も庶民向けと貴族向けで差を付けよう
リバーシは・・素材位にしか差を付けれそうにないな
チェスは元からあるのでパス
直ぐに真似されるだろうから、先売りして逃げよう
生産量は徐々に落としていくべきだな


そして・・・もう一つ悩んでいるのが麻雀とボーリングである
麻雀はランシェスの法律に引っ掛かりそうなんだよな
ボーリングは土地と建物に設備など


「この二つは要注意しないと駄目だな。暫くは温存しよう」


一人愚痴り、保留とする
次に衣類だが、こちらも悩んでいた


「ネタはある。ただ、工房がなぁ・・それに、急ぎでもないし、今は保留するべきか?」


悩んでいると、ブラガスが声を掛けてくる


「手広くやるのも良いですが、まだ立ち上げたばかりです。食と娯楽で十分なのでは?それに、まだ食のアイデアはあるのでしょう?」


ブラガスは良く見ているな
・・・・少し、試してみるか


「何でそう思う?」


「御館様は冬に売れると仰っておりました。となれば、四季折々に売れる料理や四季に関係なく売れる料理のアイデアもあるのでは?と考えました」


ブラガスさん、マジ優秀で有能
先を既に見据えていたか
ただな、アイデアの大半は真似しやすいんだよなぁ
その事をブラガスに話すと


「真似しやすい料理は、素材で差をつけるしかないでしょうな。若しくは、シャミット商会に話を持ち掛けます」


「どういうことだ?」


シャミット商会に話を持ち掛けてもどうにもならないのでは?
しかしブラガスは『待っていました!』とでも言わんかの勢いで説明を始める


「食材の仕入れはシャミット商会からです。しかし、鶏肉は安価で質が良い物は少ないのが現状です。牧畜関係や養鶏は御館様の発案でかなり改善されましたが、市場に出回り切ってないのが実情です」


「そうだな。だが、シャミット商会に繋がる意図がわからん」


「簡単な話です。基礎のレシピをシャミット商会に売ってしまうのです。御館様は、真似されやすい料理の派生もお考えでしょう?ならば、同じ土俵に立つ必要はありません」


「言いたいことは分かるが・・食いつくか?」


「必ず食いつきます!それに、完全に手放すのではなく、純利のいくらかを毎月支払っていただきます。誤魔化せばこちらを敵に回すのですから、心配もないかと」


・・・ああ!そういうことか!
ブラガスのやっている事は、特許とチェーン展開を合わせたやり方か!
特許は決められた年月の利益が保証される代わりに、内情の暴露が必須
しかし、この世界に特許と言う概念は無い
契約を結んでしまえば、永続的に利益が出るわけか


更にシャミット側もレシピを売る際に、同じことをすればチェーン展開が可能なわけか
王都のみならず、それなりに発展した領地なら事業も拡大できるわけだ
となると・・・問題はどれくらいにするかだが


「いくらにするつもりだ?」


「3%~5%が妥当でしょうか。契約はレシピに該当する全てにしてしまえば、販売益からも収入が見込めるでしょう」


「問題は流行るかどうかだが」


「御館様考案で監修となれば問題ないでしょう。それよりも問題は・・・」


「誰でも簡単に参入できるレシピの考案と派生料理の構築か」


「出来れば、高価な素材を使用して差別化を図りたいですな」


「レシピの複写はどうするんだ?」


「クランにて特別手当を出し、職員にさせましょう。情報は漏れると大変ですから」


「となると・・・彼の力が必要だな。シャミット商会は半分こちらの傘下に入る事にならないか?」


「シャミット商会は、基本卸業です。政商側が手を組みたいと言えば、喜びこそすれ断る事は無いでしょう。ある程度の商品はこちらも購入するのですし、手を取り合った程度に納めます」


「・・・わかった。こちらの利益は、纏まらなかった場合を考慮して、最低ラインまで落として良いと伝えてくれ」


「では、父に伝えておきます。御館様は、これからクランに?」


「彼の力は必須だからね。快く引き受けてくれると思うけど」


最後に、少し不安を吐露しながら部屋を出る
向かう先はクラン内にある彼の城だ








「そう言う事ですか。是非ともご協力させて頂きますとも」


「そう言って貰えて助かったよ」


クランの一室にて、彼・・ラギリアに事情を話し、快く引き受けてもらえた
ラギリアは職人気質なところがある
故に、金儲けには乗らないのでは?と考えていたのだが


「差別化を図ると言う事なら、ご協力しますとも。料理人の世界も切磋琢磨しなければ、良い料理は産まれませんからね」


とは、ラギリアが全ての話を聞いた後に言った言葉だ
彼は本当に料理が好きで、自分が作った料理を美味しそうに食べる人が好きな模様
とりあえず簡単な物だと、唐揚げ辺りからになるらしい
調味料関係で焼きそばなどは難しいとも言っていた


調味料の【さしすせそ】はこの世界にある
しかし、それ以外は無いのが現状だ
今、唯一あるのがマヨネーズ
こちらは既に、量産体制に入っている
勿論、こちらが主導でだ


ついでに、ランシェス産の【さしすせそ】も製作中だ
後は酒蔵と手を組み、みりんの製造にも取り掛かった
そして、現在の悩みはソースの製作である
はっきり言おう!材料が足りんし、見つからない!
結果、ソースの製作は暗礁に乗り上げていた
まぁ、ぼちぼちやっていこう


話が少し脱線したが、ラギリア協力の元、あくまでも基本的で真似の出来る料理のレシピ作成に取り掛かる
それと並行して、蒸し器の作製にも取り掛かる


蒸し料理が無いので調理器具が無い
そこで、この世界でも作れそうな蒸籠せいろを作る事にした
材料費はそこそこするが、手に入らない物ではないし、完成品も銀貨2枚とそこまで高くもない
いや、蒸籠せいろ1セットで前世だと2万円
高いのか安いのか良くわからんな


とまぁ、基本は蒸しと揚げを中心に考案していく
後は、水餃子とか焼き物の味付けとか
煮るや焼くに関しても真似しやすい料理のレシピは全て作成
まぁ、全部ラギリアが作ったんだけどね


「そう言えば、片栗粉とかは無いのですか?」


「片栗粉?・・・そう言えば、見たことないなぁ」


「簡単ですし、作っていただけませんか?」


「どうやって作るんだ?」


ぶっちゃけ、料理の知識なんて無い
全て全智に任せていたからな
料理は知っていても、作り方を知らないとは
・・・前は食えれば良かったから、簡単な物しか作らなかったんだよな
それでも多少は拘ったけれど・・・


ラギリアに作り方を聞くと・・手間は必要だが超簡単だった
・・・もう少し、料理の知識を知るべきだな
その後も日が暮れるまで話し合い、屋敷へと戻る


屋敷に戻ると、ブラガスとブラガスの父とネスが待っていた
メイドに部屋を用意させ、3人の話を聞く


「交渉は無事に終わりました。商業ギルドも噛ませたので、問題はないかと。ただ・・・」


「何かあったのか?」


「利益の件ですが、最大利益を得ようとしたのですが・・見事にやられました」


「俺も懇意にしている商会だしなぁ」


「中々のやり手でしたよ。あれならば政商でもやっていけるでしょう。本人にその気は無いようですが」


「そこまで話したのか?」


「商人にとっての武器は財力、人材、信用です。あの件は話してませんが、他は多少話しました」


「なるほど。で、どうなったんだ?」


「純利益の4%で話はつきました。10%取ろうとしたのですが、かなり手ごわかったです。まぁ、ただでは引きませんでしたよ」


「何をしたんだ?」


「こちらで仕入れる材料の値引き交渉ですね。お屋敷に卸す材料も含めて、月5%値引きしてもらえました」


「・・・向こう赤字じゃね?」


「何か考えがあるようですよ?ああ、レシピは自分達も使って良いかと聞いてきましたね。そちらは了承しておきました」


「・・・・・あ~、多分だが、派生料理にする気だな。もしくは手を加えるかだな」


「それも利益になるのでは?」


「利益にはなるけど、その料理は使えない可能性があるな。使うなら、こちらと同じ手に出る可能性がある」


「考えすぎでは?」


「シャミット商会の跡取りな・・級友なんだわ」


「それは・・・してやられた感じですな」


「突拍子もない事してきたからなぁ・・・恐らく、真似て突拍子もない事をしてくるぞ」


「渡す予定のレシピにどう手を加えるのか怖いですな」


「最悪の場合、レシピをヒントに全く違うものを売り出す可能性がある。そうなると、利益は取れないぞ?」


「方法はありますが?」


「そこまでして欲しいとは思わないな。良好な関係が第一だからな。それに・・・」


俺はニヤリと笑う
このアイデアは前世のパクリだが、ラギリアにも伝えておらず、確実に流行る料理だ
ただ、時期が悪いので期を待つ必要がある
そんな俺の顔を見た3人は


「あくどい顔してんなぁ」


「私はクロノアス卿を過小評価していたようだ」


「まぁ・・御館様ですからね。恐らく、相当な無茶振りが来そうな気がします」


と、各々に言葉を漏らす
その言葉への返答は当然


「3人揃って酷くね?」






こうして、商会は一気に事業を拡げて拡大
独自に工房と契約したり、料理人や職人を雇ったりしていった
商会名はスペランザ商会
僅か数年でその名は世界に轟く事となる

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