神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

92話 大規模ダンジョン攻略戦・三度の勇者(笑)編



35階層の安全地帯セーフティーゾーンで6時間の休息を取り、現在はダンジョン突入から37時間が経過






体力的にも精神力的にもそこそこ回復


ダンジョン内なので完全回復は無理なのだよ!


一応、寝てる間も緊張感は保ってるし・・・


魔法ドーピングで色々と強化してるから、精神的には参ってないだけとも言えるけどな






軽く運動をし、部屋を出る準備をする


ディストとリュミナの方も問題はないようなので






「これから扉を開けて再攻略を目指しますが、なるべくこの部屋には魔物を入れないようにします。ただ・・・」






「わかっている。・・入ってきても少数だろうし、残りはこちらで処理する」






俺の言葉に、リーダー格の冒険者が答える


周りの冒険者達も彼の言葉に異論はない様だ






お互い頷き、ディストが扉を開けると同時に俺は飛び出し、地上型魔物が部屋に入らない様に戦闘


リュミナは俺の上を跳躍して、空中型魔物が入らない様に倒していく


最後にディストが扉を閉めて、安全を確保


この間、僅か5秒






部屋の中から小さながらも声が聞こえる


戦闘しながら耳を傾けると、どうやら魔物の侵入は無かった模様


少し安堵し、戦闘に集中


数分後、扉の前に集まっていた魔物は全て倒され、俺達は再度攻略を始める






森林階層を攻略していき、40階層の階層魔物がいる部屋に到達


次の階層魔物はリフレクトギガディアーとビッグトレントアブソープション


どちらも通常の大きさの鹿型と樹型魔物ではなく、このダンジョン産ぽかった


正確に言えば、リフレクトディアーとビッグトレントの進化版?変異体?の様な感じだ






そして、この2体は結構面倒だった


まず、鹿型の方だが、物理反射と広範囲物理攻撃


樹型は魔法吸収と広範囲土属性魔法攻撃


更に厄介なのが、相手の攻撃に合わせて、立ち位置を変える事


配下がいない分、物量戦にはならなかったが、攻撃方法が広範囲なので、別の意味で物量戦となる


唯一の救いは、トレントが樹の根で包囲物理攻撃をしてこなかったことぐらい






神銃で魔力攻撃をすればトレントが防御し、物理に切り替えればディアーが防御


非常に連携が取れていた


しかし!こちらも負けてはいない






神銃で魔力攻撃すると同時にディストとリュミナが飛び出して竜化


魔力攻撃は吸収されるが、トレントは2体の竜により上空へ持ち上げられる


盾役が連れ去られたディアーは反撃に移るが






「チェックメイトだ」






その言葉と共に、神銃をマシンガンの如く連射連射連射ぁぁ!!


1分後、鹿さんは黒い霧となって消えました


トレントの方も2体の竜に抗えず、樹の幹を折られ抉られして、鹿さんの後を追いました






「少し時間が掛かったな」






「・・・早い方だと思いますが?」






俺の言葉にディストがツッコミを入れる


うむ、そのツッコミや良し


無言でサムズアップをディストに向ける


隣でリュミナは「キーッ!」と何処からか取り出したハンカチを口に咥えていた


ついでに言っとくと、2体は既に人化済です








41階層からは砂漠地帯になっていた


今まで見たいな迷路型とは変わり、見渡す限り砂


次階層への入り口は不明


何故不明かって?それは、この砂漠地帯の情報が無いからだ


恐らくだが、異変が起きてから出来たものだと思われる


一応壁はあるので、無限に続いてるわけでは無いと思う


それなりに広大だとは考えてるけど






さて、ここでどう進むか珍しく意見が分かれる


ディストは安全を期して壁伝いに


リュミナは最短で真っ直ぐに一直線に


俺?俺も珍しく迷っている






情報は一つの武器である


情報はただあれば良いわけではないが、無いとこれまた不便


偽装などもあるから精査も必要だが、情報が無いと手探りで行動しなければならないわけで・・・






議論すること10分、とりあえず直進する


但し、起点となる場所の位置は覚えておく


万が一は、スタート地点からやり直し、壁伝いに行くことも考えた為だ






そして、結論から先に言うと、どっちも正解で不正解


一定距離進み、何も無かったので引き返し、今度は壁伝いに同じ距離を進み、また何も無し


また戻るのも時間の無駄なので続行した所、空間の歪みを発見


色々試した結果、空間を一度潜り、反転して出るとあら不思議


次の階層に見事到着






「ふっざけんな!」






「我も少々、イラっ!としました」






「この仕掛けを作った者には、お仕置きです」






三者三様に苛立ちを言葉にして出す


ディストとリュミナは人化しているにも関わらず、竜眼になっているほど


砂漠階層にも当然魔物はいるので、八つ当たりしながら駆逐


サンドワームはディストのマジ蹴りで、胴体爆散


ビッグスコーピオはリュミナの拳で爆散して半分に






以降は、直進、空間通過、反転を繰り返し45階の階層魔物へ






45階層の階層魔物は毒性を持つ各種ビッグスコーピオ3体


未だ苛立ちが治まらないディストに瞬殺される


若干、スコーピオが涙目だったのは気のせいではないはずだ








そして、46階層・・・ここで俺は精神の均衡が崩れる








46階層は普通に岩肌の階層だった


これだけなら発狂寸前にはならない


だが、ここから先の魔物が発狂ものだった・・・






体長3m~5mの黒くてカサカサ動く生理的嫌悪MAXの生物


そう!奴である!その名もG!!


そいつらが襲い掛かってくるのだ


チート持ち?神殺し?そんな物があっても、奴の生理的嫌悪感が消えることなど無い






顔を引き攣らせ、ちょっと錯乱気味に魔法を乱射


ディストとリュミナが「あ、主!?」「ご主人様!?」と狼狽える程


しかし、そんな声を聞く余裕など無い


前世から奴は・・・Gだけは!駄目なのだ!!


そして訪れる限界点・・・・・






ブチッ!






何かが切れる音がし、目の色が単一色に変化


そして、発動される極大魔法






〖永久凍土ニブルヘイム〗






極大魔法の発動により、永遠に溶けない氷の階層が誕生する


当然Gも全てが凍死


踏みたくもないので、死骸の上に空間固定で道を作り、その上を〖蠢動〗で駆け抜ける


それを50階層まで繰り返す


ひたすらに・・・この悪夢から逃れるために








しかし、神は我を見放した・・・・








50階層の階層魔物・・・体長10mのGと5mのG5体に無数のG


それを見た瞬間






『我は神器が主。我が神器よ。我が声に応えよ。汝、今こそ真なる姿を晒し「あ、主!お待ちください!」』






ディストに羽交い絞めされて止められる


リュミナも流石にドン引きしている


だが、余裕のない俺は






「放せぇぇぇぇぇ!!奴らはなぁ、1匹残らず絶滅させないといけないんだぁぁぁぁぁ!!!」






羽交い絞めにされたまま叫び、ジタバタする


その間にもG共はこちらに向かって進行中


段々と眼が据わる俺


良し!全智神核起動!奴らを1匹残らず絶滅させられる魔法を!






『・・・・マスター、気持ちは分かりますが、神器開放はやりすぎです。ダンジョンごと破壊するおつもりで?』






『奴らを絶滅させられるなら、それも止む無し!』






『マスター達は無事でも、生き残りは無事では済みませんよ?』






『止む無し!!』






全智さんの溜息が脳内に零れる


しかし!俺にとっては世界の危機よりGの絶滅こそが急務なのだ


人命救助?Gを絶滅させるための尊い犠牲だったな・・・






ディストが羽交い絞めしながら呆れている


リュミナが「こんなご主人様は見たくない・・・でも、カワユス」みたいな目で見てくる


全智さんは溜息が止まらない






仕方ない・・と全智さんが一言






『多少、魔力消費が大きいですが、マスターの精神安定の為です。疑似超重力圧縮球ブラックホールの魔法を構成します。・・・・・・構成完了』






そして放たれる魔法


照準は奴らの中心点


作る球体の大きさは、直径3cm


全智さん、制御に集中


2分後、そこにGの存在は無かった






一刻も早く、この階層から脱したい俺は、直ぐに51階層へ


そこは今までと違い、大きな部屋だった


精神を極限まで減らされた俺が次に見たのは・・・勇者(笑)一行の姿だった


うん・・このダンジョンは、俺の精神を殺しに来てるんだな?


OK・・・その喧嘩、買ってやろうじゃねぇか!






未だ精神的なダメージが抜けきってないので、少々野蛮な裏の人格が出現


今の俺の顔は恐らく、職業が怖いお兄さんでも裸足で逃げ出すほど怖い顔の筈だ


現に、勇者(笑)一行以外にも生き残りの冒険者がいたが、彼らは目を合わせようとしない


そんな空気の中、勇者(笑)が初めて勇者らしい行動に出る






「お前が、何でここにいるんだ!」






「ア゛ア゛!?」






空気を読まず突っかかってくる勇者に、ドスの利いた声で眼が据わったまま返答


勇者(笑)、一瞬で黙らされる






「・・・リュミナよ、主の精神安定を。そういうのは得意だろう?」






未だ情緒不安定な俺に溜息をしながらも、俺の事を第一に・・・






「今の主では、生き残りの者に話すら聞けんからな。我が主の代わりをしよう」






ではなかった・・ちょっと悲しい


とは言え、荒んでいる心は直ぐにそれを忘れた


そして、ディストに指名されたリュミナはとても楽しそうである






「さぁ、ご主人様!私が膝枕しますね」






リュミナが女の子座りし、膝をポンポンと叩く


精神的に疲れていた俺は、考えることなく膝枕されようとして、ふと婚約者達の顔がよぎる・・・・あの深~い笑みをしたミリア達の笑顔が・・・・・


そこで一気に冷静さが戻る






「(これは孔明の罠だ!)」






足を止めて一言






「いや・・もう大丈夫だ。ディストにも心配をかけた」






鎮静効果のあるミリア達の怖い笑顔により、冷静さを取り戻せた俺だが・・






「(将来は尻に敷かれるだろうな・・)」






なんてことを同時に考えてしまう


実際は既に尻に敷かれているが、本人だけが気付いていなかった








冷静になった俺は、避難していた冒険者達に話を聞いて行く






「見苦しいものをお見せしました。もう大丈夫なので、話を聞きたいのですが?あ、そこの勇者(笑)は要らないから」






「お前っ!」






「以前取った行動の結果だろうが。非協力的な奴の話は要らん」






以前の尋問で非協力だった勇者(笑)なので、バッサリと切り捨てる


当然だが阿藤も除外している


残りの冒険者達は、まだ少し距離を置いていたが、一人の冒険者が声を掛けてくる






「恐ろしいまでの威圧プレッシャーだったな・・流石、【蹂躙者】殿と言ったところか」






「お褒めにあずかり光栄です。それで、あなたは?」






「・・・褒めてないんだけどな。俺は、フェリックで最高ランクの冒険者だ。ランクはSだ」






年齢が30代前後の男冒険者は、自身のランクを証明するために、ステータスを開示する


俺は有名人らしく、ステータス開示は求められなかった






「それで、ダンジョンの異変について聞きたいんだが」






「そちらで分かっていることは?」






「俺達はこのエリアを拠点に攻略を進めていたんだが、52階層以降を探索していた冒険者は全てこの51階層にある安全階層セーフティーフロアに強制移動させられたみたいだ」






「何故、強制移動だと?」






「52階層からは遺跡の様な階層なんだが、現状把握のために次の階層に降りたら、違う階層になっていたんだ」






「・・・50階層の階層魔物はどんな奴ですか?」






「ん?ビッグトレントだったが。それがどうしたんだ?」






これで、仮説が確信へと変わる


やはり、異変によって新しい階層が出来上がっていた


上階の分も含めて、それを伝えると






「・・・・・見るのも嫌だな。良く、突破しようと考えたものだよ」






この世界にもGは存在する・・・魔物だが


ただ、冒険者には全く好かれない


見た目の生理的嫌悪が働くと共に、魔物としても美味しくないからだ






取れる素材は魔石のみ


しかも、解体が必須で匂いもえげつない


誰もGがいる魔物領域には行かないほど


尚、兵士は間引く仕事があるので、ご愁傷様というやつだ


毎年数名の兵士が辞めていくほどである






他の冒険者も全員が顔を青くしたり、想像力豊かな者は吐きそうになっていたりする


しかし、ダンジョンを深くまで潜った冒険者達だ


実際に吐いたものはいなかった






「・・・最低でも数百万のGとか、相手にしたくねぇ」






「私なら来栖と阿藤を盾にして、ひたすら逃げるわ」






「異変が起こる前に、この階層に来れて良かった・・・」






八木、姫崎、春宮も他の冒険者達と同じ思いの様だ


姫崎は少し黒姫崎が出ている様だが


そして、勇者(笑)と阿藤は






「その話が本当なわけがない!どうせ作り話だ!」






「本当なら、証拠を見せろよ」






認めたくない!とばかりに全否定


当然、残りの冒険者達から睨まれる


(またあの威圧プレッシャーは浴びたくない!)と言う気持ちで一杯の様だ


そこへ、先程の冒険者が立ち上がり、声を荒げる






「お前は馬鹿か!一早い現状把握は、冒険者にとって必須だろうが!敵視するのは勝手だが、こちらを巻き込むな!」






ランクが上で先輩でもある冒険者に正論を言われ、口籠る来栖と阿藤


残りの冒険者達も同じ意見の模様


そこで勇者(笑)一行の残り3人が謝罪と共に






「すいません。この二人、おつむが弱いんで」






「八木・・弱いんじゃなくて、お花畑の間違いよ」






「お花畑は可愛すぎるんじゃないかな?ミジンコで十分だよ」






更なる追撃・・・来栖と阿藤は四つん這い状態に


自業自得なので同情はしないけど


さて、話を戻さないと・・・






「52階層は、どう変わっていましたか?」






「火山帯になっているな。溶岩なども流れていたし、魔物も見たことが無いのがいたな」






「その先は?」






「すまんがわからん。俺達も直ぐに引き返したからな。ただ、魔物の数は多かった」






「・・・そうですか」






とりあえず、次以降の階層の情報はここまでしかなさそうだ


後は、遺跡風の階層が控えてることくらいか


さて、ここからが本題だな






「それで、皆さんはこれからどう動くのですか?」






「・・・救助はどうなっているんだ?」






「最優先は異変の調査と元凶の排除ですね。冒険者の救助はその次、と言ったところでしょうか」






「他に生き残りは?」






「35階層にいますよ。ダンジョン内に居た全てではないですが。彼らは、安全地帯セーフティーゾーンで救助、若しくは事態の解決まで動かない方針です」






「情報提供に感謝する。皆で少し話し合いたいが良いか?」






「休憩するので数時間は大丈夫ですよ。あれが何もしなければ」






そう言って、来栖と阿藤に親指を向けて名指しする


全員が苦笑


しかし、彼らのパーティーだけを除け者にするわけにもいかず、全員で話し合いが行われる


その間に、俺は休息を取る


ディストとリュミナが一応交代で見張る様だ








「ご主人様、起きて下さい。結論が出たようですよ」






リュミナの言葉で意識を覚醒させる


感覚的に5時間は寝れたみたいだな






「(と言うか、5時間も纏まらなかったのかよ)」






リュミナに時間を聞くと、5時間半纏まらなかったと答える


纏まらなかった理由は、大体察しがつくけど


その考えは間違っていなかったようで






「時間が掛かって済まない。一部の者を除いて、概ね意見は一致した。それで相談なんだが・・・」






「まずは結論を教えてください。相談はそれからで」






「ああ。一部の者・・・と言うか、あの馬鹿のパーティー以外はこの階層で待機することに決まった。ただ、再度異変があり、危険だと判断したら強行するしかないが」






「賢明な判断だと思いますよ。広域戦闘と単体能力が高くないと危険ですから。・・・相談事は食料ですか?」






「それもあるが、あの馬鹿の事だ。あんたが進めるなら俺達も進めると言って聞かなくてな」






「はぁぁぁ・・・わかりました。あの二人はどうでも良いですが、残り三人の面倒は見ますよ。余裕があれば、あの二人の面倒も見るで良いですかね?」






「いや、自分の命を最優先で構わない。まだ利口な三人には申し訳ないが、組んだ相手が悪かったとしか言えないな。最終的な判断はそっちに任せる。何かあれば、証人になろう」






「わかりました。まぁ、あの三人なら大丈夫ですよ」






「そう言って貰えると助かる。一応、全員で諫めたんだがなぁ・・あの二人は、何であんなに馬鹿なんだ?」






「現実と非現実の区別がついてないんですよ」






「それで良く、冒険者になれたな。・・まぁ、こっちはそう言う訳なんで」






話は終わり、食料分配の話に移る


食料と水は2週間分


それと、嗜好品を少々


酒は無いけどな






次に再度異変が起こった時についてだが、魔法陣の効力を確認することを忘れない様に伝え、強行突破の際は上に逃げるように伝えておく


万が一、生き残れるなら上った方が確率が上がるからな






最後に勇者(笑)一行だが、俺達が面倒を一応見ることになった


来栖と阿藤のアホのせいでお荷物が増えた形だ


八木、姫崎、春宮は待機を主張したが、押し切られたのかな?


若しくは、同郷だから見捨てられないとか?






どちらでも良いが、あの三人はこれからも苦労しそうだな


三人は協力的なので、助けはするが












・・・・俺は、もし前世の親友と出会ったら、最後まで付き合うのだろうか?


それとも、現実が見えていないと突き放すのだろうか?


ふと、そんなことを考えたが、答えが出るはずもなく、お荷物五人と共に次の階層へ降りた

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