神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

80話 さぁ!さっさとキリキリ全部吐けや!



 武術大会が終了し、皆が待つ席へ戻った俺は、ミリアに強制膝枕させてもらい、小1時間程で目覚めた


目覚めた直後、婚約者達から






「「「「「「ミリアだけずるい!!」」」」」」






と言われ、次の膝枕争奪戦が勃発した


そこで俺が作ったトランプで






「家に着いたら、これで勝負を決めたら?」






との提案に納得し、現在は仲良く屋敷への帰路に着いている


道中、両親からの説教があったのは言うまでもない








屋敷前に着くと戦神メナト様と・・何故に陛下と王妃が?


更にヴィルノー先代もいるし


イヤぁな予感しかないが、無視するわけにもいかず






「何で勢ぞろいしてるんですか?」






そう声をかけるも






「少し話がある。疲れているだろうが、神聖国に帰国したヴァルケノズ殿を呼んできてくれないか?」






「私からも頼みたいな。後は・・ラフィの婚約者達にも同席してもらうよ」






反論は聞かん!ってな感じで陛下とメナト様に言われ






「とりあえず、屋敷に入りましょう。立ち話もなんですし」






何故か父がそう言って決め、俺の屋敷に全員で入る


ナリア達メイドに陛下とメナト様が提示した全員が入れる部屋を用意させ、その間にヴァルケノズさんを拉致りに行く


仕事中だったヴァルケノズさんを拉致る時に






「緊急なのはわかるが、何も言わずに連れて行くのは止めてくれ!」






と文句を言われた


至極当然の正論だが、俺だって言われてしただけなので






「文句は陛下達に言って下さい」






そう返した


話し合いが始まる前に、一悶着あったのは言うまでもない


この間、数名の者が空気だったのはご愛敬






部屋の用意ができるまでの間、陛下達は応接室へ


ウォルドはクランへ行き、家臣内定の者達を招集


ブラガス殿には急遽指名依頼を出し、ウォルド指揮の元、周辺警護を頼んだ


ブラガス殿への依頼料は色を付けて、代わりに守秘義務として誓約魔法を呑んでもらった






両親と姉達は申し訳ないが蚊帳の外・・ではなく、全員が参加






「(あれ?もしかして、俺の大部分がバレる?)」






そう考え、それは現実のものとなる


・・・少し重苦しい空気の中






「さて、話し合いを始めるわけだが・・」






「その前に、何故呼ばれたのか聞きたいのですが?」






未だに納得の行ってないヴァルケノズさんが噛みつく


それに対し陛下の答えは予想外のものだった






「教皇殿。ここからの話に貴殿を呼んだのは、知りうる者だからだ。今は、それで察してもらえると助かる」






「・・・そう言う事ですか。では、そちらの女性が関係者ですか?」






「そうだ。・・だが、話をする前に・・グラキオス・フィン・クロノアスとその家族に一つ確認する」






「何でしょうか?」






「ここからの話は、クロノアス家にとって、好ましくない話になるかもしれぬ。故に、ここからの話に参加するかどうかはお主等の判断に任せる」






「具体的に・・好ましくないとはどういう事でしょうか?」






「・・・・貴殿らの考え方次第だが、最悪は家族が壊れる可能性がある」






陛下の言葉に、両親も、姉も、言葉を失う


そして俺は陛下の言葉を聞いた瞬間に、激高していた






「陛下!その話は内緒の筈です!」






「・・グラフィエル・フィン・クロノアスよ。お主はいつまで秘密にする?一生か?秘密とはいずれバレる。だが、余とて勝手には壊さん。だから、選択肢を与えた」






「しかし・・今、この場でなくても」






「少々事情が変わった。知っておるか?帝国の前皇太子が何者かの手引きによって姿をくらませたのを」






「!?」






「その様子じゃと、ヴィルノー叔父上と教皇殿以外は知らぬようじゃな。そして・・彼女だ。意味はわかろう?」






「しかし・・・」






珍しく渋る俺に、家族も、周りも、全員が驚いている


そんな俺を見かねてか






「ランシェス王。少し性急過ぎではないか?」






ヴァルケノズさんが助けを出すも






「いずれは通る問題だ。そして、今が一番最適でもあるのだよ」






「その理由が彼女ですか?」






「その通りだ。しかし、余とて親だ。故意に家族を壊そうとは思わん」






その言葉の後、皆黙ってしまう


数分後、沈黙を破ったのは父だった






「陛下。一つだけ確認します。息子の話に誓約は必要ですか?」






「それは、余が決めることではない」






「・・失礼。質問が悪かったようです。家族以外の者に誓約は必要ですか?」






「・・・必要ない。全く何も知らぬのはお主等家族だけだ」






陛下の言葉に、父は少し寂しく、悲しそうな、それでいて、どこか嬉しそうな顔を見せた


そして・・・父が言い放った一言に俺は驚愕する






「そうですか。家族に話す内容とは、グラフィエルの【ステータス】と【称号】ですかな?」






「グラキオス・・どこまで知っておる?」






「【称号】に【転生者】があることまで」






「父上!?」






「何を驚くことがある?俺はお前の父で家族だぞ?・・おっと!いかんな。つい、昔の言い方が出てしまった」






「父上・・」






「ははっ」っと笑った後、優しい顔で父は話を続ける






「グラフィエル。家族は全員知っている。ただ、いつかお前から話してくれる日を待っていた。まぁ・・家族より前に他の者に話していたのは悲しいがな」






「グラキオスよ。グラフィエルの名誉のために言っておく。わしらはゼロから聞いたのだ。グラフィエル本人から話したのは婚約者達だけだ」






実は王妃にも喋っちゃってるのだが、ここは空気を読んでおく






「息子の新しい家族のみですか・・やはり、少し寂しくはありますな。ですが、隠さずに話したのでしたら、嬉しくは思います」






「父上・・・申し訳ありませんでした。【転生者】の事を話せば、悲しむのではないかと・・」






俺の素直な気持ちを・・隠してきた思いを、全員が静かに聞き入れていた


そんな俺に父は・・家族は・・・






「前世の記憶を持っていたら、グラフィエルは息子ではないと?そんなわけがないだろう」






「そうですよ。あなたは私がお腹を痛めて産んだ、私達の子供なのですから」






「昔からあまり手がかからない子だったけど、少し寂しかったのよ」






「私達の弟は意外とナイーブだったのね。それで【蹂躙者】とか呼ばれてるのってギャップ萌えね!」






「変に守ってあげたくなっちゃうわね」






「私達の弟は、やっぱり最高!これが総意でしょう?」






「「異議なし!!」」






途中まで良い話だったのに、姉達のせいで台無しになっていた


多分、励ましてくれたんだろうけど


ナリア達メイドは貰い泣きしてるし、王族側は居た堪れないって顔をし、ヴァルケノズさんは・・あ、悪さがばれた子供の時みたいな顔になっている






姉達の暴走に婚約者達が混じり・・・やめろ!俺の幼少期を根掘り葉掘り聞かないでくれ!


ナリア!さり気無く参加するんじゃない!






収拾がつかなくなりそうになったところで、父が「んんっ!」と咳ばらいをし、話を戻す






「グラフィエル。詳しい話は、後でゆっくり聞こう。それで、お前はどうする?」






父の質問に、俺は行動で示した






「【ステータスフルオープン】」






何処かであった、家族への罪悪感


本来のグラフィエルではない俺


でも父は、家族は受け入れてくれた


だから俺は・・・全てを曝け出した










俺のステータスを一通り確認した後、今まで沈黙していた者が口を開く






「さて!家族愛の良い話が聞けたところで本題に入ろうか」






戦神メナトの一言に、またも空気が一段重くなる






「話の前に誓約だね。それと、今回私が・・いや、私達がご家族を含めたのは、我々なりのけじめだ。だからこそ、ご家族に問おう!全てを知るか否かを!」






「当然、全てを知りますとも。誓約も必要とあらば受け入れましょう。ですがその前に、貴殿は何者なのですか?」






父のもっともな質問


陛下と王妃以外の誰もが思っていただろう






〝お前は何者だ?〟と






その答えに移る前に






「うむ。では、答えを言う前に誓約だな。誓約内容は〝私の正体を口外しない〟だ。後は、ラフィが決めてくれ」






「え?ここにきて丸投げ!?」






そんなやり取りに、陛下と王妃は人知れず冷や汗ものであった


そう、陛下と王妃は先に正体を聞かされていたから






「ぐ、グラフィエル!彼女に対してその口の利き方は・・」






「問題ありませんよ。と言うか、こっちも色々聞きたかったんで好都合です」






家族にも全てバレたので完全に自重しなくなった俺


戦神メナトも気にしてないので話を進める


考えた結果、誓約内容は追加しないことにした


家族にあれこれと誓約ってのも変だしな


その返答に戦神メナトは






「本当に吹っ切れたようだね。我々としても君には幸せになってもらいたいからね。大恩もあることだし」






そう告げた


神って、ここまで恩義とか感じるのか?と若干疑わしくもなるが






「ラフィの言いたいこともわかるが、それだけ大事だったんだよ。君がしてくれたことはね」






戦神メナトとの分かり合った感


ミリア達が、ヒソヒソと嫁会議を始め・・る前に






「では本題に行きましょう。誓約を」






「任せた!」






・・・ジト目で睨むも、スルーする戦神


溜息をつきながら、誓約魔法を発動


何処か姉達を連想させる戦神に呆れるも話は進む






「きちんとかかったようだね。では、自己紹介だ!私は戦神メナト!十二神が一柱だ。尤も、分離体だけどね」






本人の言葉に驚愕する者


疑惑の目を向ける者


納得してる者


様々であるが、一つ疑問に思ったので聞いてみる






「陛下は何故、彼女がメナト様だと納得したので?」






「お主とあのような闘いが出来る者など、他にいるのか?」






「ごもっともで」






その闘いを知らないヴァルケノズさんは周りに話を聞くと、疑惑から一転、崇め始めた


戦神メナト、意に介さず


神は皆、強心臓の持ち主だった






「それでメナト様。我々家族を交えた話とは?」






父が核心を突く


戦神はその問いに






「クロノアス家の子供達についてだ。次世代の子供達・・君にとっては孫か。その子達は、少し加護が多くなるから驚かないようにと思ってね」






「わざわざありがとうございます」






「とは言え、ラフィの子供達ほどじゃない。だから、そのせいで争いにならないようにと、神からの直神託だね」






それだけ言うと、父が再度お礼を言う前に、次の話に移る






「それとラフィ。君に謝らなければならないことがある」






真顔になったメナト


何を言われるかと思い身構える






「実は・・・君の前世の世界で、想定外の事が起こった。そしてそれは、もう既に処理されて手が出せなくなった」






「何の話ですか?」






今一つピンとこない俺


そんな俺にお構いなしに話を続ける






「そう遠くない未来、ラフィは再び出会う。答えはその時にわかる」






メナトの奥歯に物が挟まったような、要領の得ない答え


そこでふと思い出す


前世の記憶が一部曖昧になっていたことに


そして、確信する・・何か隠していると






「メ・ナ・ト・さ・ま」






微笑みながらも、絶対に退かぬ意思を込めた瞳


戦神らしからぬ「うっ!」という声


詰め寄る俺


そして、俺は神に対し






「さぁ!さっさとキリキリ全部吐けや!」






暴言をぶちかました


周りはドン引きだ


いや、寧ろ恐れ慄いている






周りから「グラフィエル!神に対してなんて言葉を!」とか「・・世界は終わった」とか「すみません!すみません!すみません!」とかの声が


一部「・・・素敵」や「・・流石でございます」などの声もあったが






メナト本人はキョトンとしていたが、数秒後「くくく、あははは」と大きな笑い声が響き渡る


周りは気が気でないが






「君は本当に。久々に笑わせてもらったよ。神を笑わせるなんて君くらいなものだよ」






そう言って笑い続けていた








・・・笑い飽きたのか?メナトは真顔になって






「いいだろう。全て話そう」






その言葉の通り、全てを話し始めた






「まず、さっきの話だ。君の親しい友人達に予期せぬ事態が降りかかった。結論から言えば、全員死亡。ただ、この事態は世界への改編が原因だった」






「そこは少し後で話して下さい。今聞きたいのは、俺の前世の記憶に干渉したかどうかです」






その言葉にメナトは考え込んだ後






「はっきり言おう。干渉はした。しかしそれは、記憶の混濁を避けるためだ。10歳になった時に、干渉は効力を失うはずだ」






「しかし、年々記憶に齟齬がえています」






「考えられるのは二つ。一つはジェネス様が何か理由があって、我々にも内緒で処置した。そしてもう一つは・・・」






「疑惑のあの人神が何かした・・ですか」






「その通りだ。これに関しては情報が足りないな」






「では、不測の事態で前世の友人がなくなった件については?」






「これについては全くの想定外だった。君が死んだことによって多少の歯車は狂うが、決められた天寿は全うするはずなんだ。しかし結果は、天寿の全う前に全員死亡だ」






「後手になっても、対策はしたんでしょう?」






「当然だ。これ以上狂えば、世界が崩壊する。かなり強硬な方法を取ったが修正はした。ただ、問題がないわけではない」






「死んだ友人達ですか」






「ああ。肉体が無くなった者を生き返らせるわけにはいかないからな。だがそこで新たな問題が出る」






「新たな問題?」






「彼らが本来生きる時間だ。ラフィの場合は死神の手違いによって時間ごと刈り取られた。強制的に天寿を全うしたことにしたんだ。だから転生が可能だった」






「友人達もそうなのでは?」






「今回の件に死神は関与していない。だから、転生は不可能だ」






「シーエン様が刈り取ってしまえば良いのでは?もしくはジーラ様に時間を加速してもらうとか?」






「魂だけの状態でそれをすれば、魂が耐えきれ無い。だから我々がとった方法は、転移転生を行うことにした」






「転移転生?」






「魂は転移に当たるが、肉体は元の姿をした転生体と言う事だ。但し、準備期間がいる」






「・・・もしかして・・」






「この世界にさせる。時期に関しては、ランシェス内でラフィが発見しやすいようにする」






「やっぱりですか!また厄介ごとが・・・」






「すまない。しかしこれが一番、世界に影響を与えずに済む方法だった」






「・・・・はぁ~。わかりました。引き受けましょう」






周りを蚊帳の外に置いて話を進めた結果、完全にドン引きされていた


まぁ、世界軸の話なので仕方ないかもしれない


父なんて「我が息子は、神だったのか」なんて言ってる


とりあえず、頬をぺちぺちして、現実に戻す






「そして、これが最大の要件になる」






まだあるの!?そんな心の声が周りから聞こえた気がした






「奴が顕現・・いや、新たな肉体を持って復活した」






「まさか・・・」






「ああ。それで間違いない。奴の言葉を信じるなら、敵対はしないそうだが」






まじか・・まじですかぁ・・・


神喰いが肉体を得て復活したのかぁ


もうこれ、面倒なレベルSSSクラスだよねぇ


天を仰ぎ、顔を両手で覆い、ちょっと放心






事情を知らない周りは「何の話?」って顔だが、事情を話しても良いのかね?


メナトを見ると・・あ、喋っちゃダメな奴だ


どう説明しようか悩んでいると






「あの、ラフィ様は神々から何か使命を授かっているのですか?そして〝それは話せない〟で良いのでしょうか?」






ミリアの質問に対するメナトの返答は






「概ね間違ってない。流石は私達の神子だね」






肯定であった


それを聞いたランシェス王と神聖国教皇猊下は






「「要請があれば動くしかないか・・」」






最早全てを飲み込んだ上、諦めの境地であった


記憶に関する情報は少なからず得られたが、誰が何のために?という答えは出なかった


それでも〝神が関与していた〟という情報が得られただけマシか






話は終わり、メナトの視線が先程から3人に向いている


その3人とは、ウォルド、ブラガス殿、ナリアだ


実は、部屋の護衛に関して、高ランクの人間は全員室内にいる


そして、ウォルドとブラガス殿は決勝戦で闘っている


当然、メナトも見ているので






「君と君。名前は?」






「ウォルドと申します」






「ブラガス・ダーバラと言います」






「あと、そこのメイド」






「ナリアと申します。御館様が幼少期の頃からお仕えしております」






「3人とも、良い腕前だね。ラフィが鍛錬しているのかい?」






「ウォルドだけだな。ブラガス殿は緊急で指名依頼を出して、護衛についてもらっている。ナリアは特には」






「ふぅん。・・・メイドの方は私だと壊れてしまうかもしれ無いな。ブラガスだったか?彼はまだ伸びしろがあるな。もう一人に至っては鍛えれば鍛えるだけ強くなりそうだ」






何やら楽しそうに話すメナト


背筋が凍り、冷や汗が止まらないブラガス殿とウォルド


助けを求めるべく俺を見た二人






「鍛えるのか?」






この発言に二人は青褪める


対してメナトは






「ラフィの家臣なら鍛えるのも悪くないな。どういう鍛え方をしているのかも気になるし」






ブラガス、小さくガッツポーズ


ウォルド、死亡フラグが立ちそうだ






「そうだ!ウォルドってのは確か家名がなかったね。・・・上神界からも見てたけど、ラフィに良くしてくれたみたいだし。よし!君に家名と祝福を授けよう!」






ウォルド、死亡フラグ確定か?


その予想は半分正解で半分ハズレだった






「家名は・・・クヴァシルにしよう!私の加護も持ってるね。なら祝福は、スキル関係がよさそうだね。武器も用意しよう!」






神直々に与えられる家名


神は気まぐれとはこういうことを指すのだろうか?






こうして話は終わり・・何かはぐらかされた気もするが、一応終わりを迎え、メナトは暫くうちの屋敷に滞在した


色々と疲れ切ったヴァルケノズさんを神聖国に送り、陛下と王妃も疲れ切った顔で城へ帰っていった






家族とは色々と話したが、何も変わらないことは嬉しかった


いや、父の心労だけは増加しまくったようだが






ウォルドへの祝福地獄など生ぬるい修練は2週間ほど開催され、ウォルドは見るも無残にやつれていった


ついでにと言わんばかりに、俺も付き合わされたがな!










そして・・・ここまで一言も喋らず、触れられなかったヴィルノー先代は、完全に空気だった・・・


彼は人知れず泣いた・・・・・

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