神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

73話 ラフィ、マジギレする




謁見の間にて皇太子と挨拶をし、今の所は何事も無く進む

こちらに呼んだ理由は帝国からの直接依頼と聖魔剣が見たいとの事であった

何処で情報が漏れたのか?軽く探りを入れてみるか



「失礼ですが、何のお話でしょうか?」



「ふっ・・そう警戒しなくても良い。ランシェス王国からギルドへ情報提供があってな。王家が秘匿していた土地も、今では周知の事実よ」



王家が情報開示したのか?俺、何も聞いてないんだが・・・

・・・さて、どう判断するべきか

そう思うや、全智神核が自動発動し、思考加速をして情報をくれた



『世界の情報へ干渉し、皇太子の発言を精査・・・事実であると確認しました。聖魔剣への取り扱いにのみ、気を付ける様にすれば大丈夫です。マスター』



全智神核が太鼓判を押すので、問題なさそうだ

聖魔剣を見せると、近衛騎士が触ろうとするので軽く止める

周囲は怪訝な顔をするが理由を述べると、試しに誰か持ってみる事になった

忠告はしたので



「こちらには一切、非が無いですね?」



と問い、帝国側も



「無論だ。この件に関しては全て不問とする」



と答え、問題無いとする

まぁ、仮にそれで冤罪を仕掛ける様なら潰すがな・・・・物理的に

そして、一人の騎士が柄に手をかけて倒れる

幸いにも手をかけたのが一瞬だったので、命に別状はないみたいだ

話の信憑性も増したので聖魔剣についてはこれで終わる



次に依頼の話だが、聞いた瞬間にブチキレそうになった

依頼の内容は白竜族の殲滅

俺の眷属竜の眷属に大層なこと言ってんじゃねぇか

かなりキレていたが、ギリギリ耐える

ウォルドは、雰囲気が変わった俺に冷汗が止まらないでいた

当然、受ける気は無いので丁重にお断りを入れるが、次の言葉で完璧にキレた



「それにしてもお前の婚約者は美しいらしいな。俺が貰ってやるから差し出せ」



この言葉に「あ”!?」と声を出し、完全にブチキレた

俺の大切な家族を奪うだと?ふざけてんじゃねぇぞ!

俺がキレたのがわかり、ウォルドは戦闘態勢を取る



とてつもない殺気に皇太子を守ろうと近衛が動き、文官達は一様に腰を抜かし、中には気絶した者までいた

皇太子が何か喚いているが俺には全く聞こえてない

今すぐぶち殺したいほどキレていたのだ

何とか最後の理性を働かせて、ウォルドに命令を出す



「ウォルド!!リアとナユを最優先に守れ!手数が足りないなら、直ぐに増援を呼ぶ!!」



冒険者としてではなく、クロノアス侯爵としての言葉に、ウォルドは家臣として動く

その間も俺は、皇太子から目を逸らしてはいない

何かしようとすれば、その場で殺す!

しかし皇太子は、未だ何か喋っているようなので一応聞いてやる



「貴様!俺に歯向かうのは帝国に歯向かうのと一緒だとわかっているのか!?」



「あ”あ”?帝国ぐらい俺一人で潰せるわ・・何なら今日、滅亡してみるか?」



「貴様・・それは、ランシェス王国の総意と受け取って構わないのだろうな?」



「構わねぇよ・・・但し、戦争にはならねぇな。俺が、今日、今ここで、帝国を終わらせる。初めて人相手にマジギレさせたお前は大物だよ。だから・・・歴史に帝国を滅ぼした人物として消えろ」



そして、さらに殺気を膨れ上がらせる

近衛達は忠義か職務かはわからないが、懸命に皇太子を守っている

そこに追い打ちの言葉をかける



「それとさっきの依頼な・・てめぇ、誰に向かって依頼してやがる!白竜族は俺の眷属だ。俺の庇護下にある奴を殺すわけねぇだろうが!調べて依頼しろや!」



「き、貴様・・俺に向かって」



「何処のどいつでも関係ない。俺のもんに手ぇだすなら、死ぬ覚悟して出せや」



「ゆ、許さん・・許さんぞ!貴様の一族!全て皆殺しにして女は慰み者に・・・」



最後まで喋らせず、俺は神器で皇太子の頬を掠める様に撃つ

手加減無しの殺気に、神銃での発砲

俺は皇太子こいつを殺す!

帝国と戦争?上等!俺一人で灰燼にしてやんよ!

こいつは言ってはならない事を口にした!慈悲は無い!



召喚魔法を使い四神獣を顕現させる

召喚ではなく顕現だ

俺は神獣として力を振るう事を初めて許可したのだ



更に、城の上空へ召喚陣を開き、六天竜も呼び寄せる

空に六天竜の咆哮が鳴り響き、謁見の間には四神獣が顕現する

四神獣も天竜も、俺がマジギレしていることを瞬時に悟り、皇太子に殺意を向ける

更に七大精霊も呼び出し、俺のマジギレを見た精霊達は、いつでも力を行使できる状態にし、力を高める

俺が本気で〝帝国を一人で潰せる〟と理解したのか、近衛達が青褪める



「何事か!?」と、帝国兵や案内してきた指揮官達が謁見の間に入るが、俺の殺気に青褪め、後ずさりしてしまう

銃口を皇太子に向けたままの俺に対し、3人を守る様にフェニクとタマモが前に出る

ルリとハクは牙を向きだしにし、今にも飛び掛からん勢いだ

時間にして数十秒だが、相手にしてみれば長く感じるであろう



そんな均衡を破るかのように奥から一人の人物が姿を現す

歳は60代に見える老人だった

老人はこちらを見ると声を掛け



「息子が迷惑をかけた。謝罪するので、矛を収めては貰えまいか?」



「収める気は無い。こいつは、今、この場で殺す。帝国も潰す。それが、俺の意思だ」



俺は会話をぶった切る

しかし、老人が何者かわかっているので、どう出てくるか返事を待つ

老人は何とかしたいが、解決策が見つからない様だ

だが、俺との会話を終わらせる気は無い様なので、付き合う事にする



「お主が怒るのは当然だとも・・とりあえず、この馬鹿は皇太子を廃嫡し、皇族からも追放して、平民に落とす。勿論、迷惑をかけた詫びもさせてもらう。お主達にも手出しはさせん。何とか収めて貰えんか?」



「こいつを処刑するなら、交渉のテーブルにはついてやる。それが、交渉に応じる最低条件だ。禍根は断っておかないと安心できない」



「お主は、親に子を殺せと?」



「出来ないなら、俺が殺してやる。こいつの罪は〝帝国を滅ぼしかねない状況を作った〟のだから十分だろう?皇族なのだから、責任も、その覚悟もある筈だ」



「お主の言う事はわかる。だが、余も人の親だ。言いたい事は・・・わかるであろう?」



「確実性が無い。後顧の憂いを断つなら、殺した方が確実だ」



「では、こうしてはくれんか?平民に落とした上で、一生涯を牢屋で暮らさせる。反抗出来ないように、奴隷の首輪も付けよう。これで、何とかして貰えまいか?」



「もし、そいつが、俺の家族に手を出した時は?」



「その時は如何様にも。助けるのは一度きりよ。」



「ぬるい。その時は、諸共に滅べ」



「ならば、その時は悪あがきするか・・・ああ。諸共は余だけだな?」



「・・・・・いいだろう。最悪の結果にならない様に願う」



その言葉で会話が終り、俺は銃を下に下ろす

すかさず近衛が俺を捕らえようと動くが、老人の一言により止められ、代わりに皇太子が老人の命令によって捕縛される

皇太子は老人と俺を睨むが、老人が皇太子に向け罪状を告げ、皇太子を廃嫡、皇族から平民落ちになり、更に奴隷の首輪迄つけて連行させていく

老人の正体は言わずもがな【ガズディア帝国皇帝、ドグラギル・ザズ・フィン・ガズディア】その人である



とりあえず俺は殺気を消し、皇帝に相対する

周囲は警戒をするが、何も出来ないとわかっており、剣呑な空気が漂う

そんな中、口を開いたのは皇帝であった



「謝罪と礼を。この度はすまなかった。そして、こちらの頼みを聞いてくれて感謝する」



そう言って、頭を下げる皇帝

外聞で聞いた人とはずいぶん違うようだが・・・その答えは直ぐに判明した

病に倒れた後、一命を取り留めて、現在は快方に向かっているが、先の気迫は無くなってしまい、現在は好々爺っぽくなっているそうだ

では何故、帝位を継がせて隠居しなかったのか?

それは、あの皇太子が原因なのは、誰の目にも明らかであった

カリスマはあるのだが、帝国民を自分の所有物だと勘違いしており、更に『世界は俺に逆らえない』と勘違いしたまま、ここまで来ちゃったらしい

大馬鹿ここに極まれりである



皇帝には他にも子供がいるそうで、改めて皇太子を決めるそうだ

そこで一つ、苦言を言っておく・・・次はある程度の人格者にしろと

皇帝もわかってるそうで、ぶっちゃけた話



「誰か、廃嫡に出来る理由を作ってくれんかな・・・」



と、信用のおける者には愚痴っていた程らしい



そして、ここで疑問が一つ

皇太子が皇帝印を使い、独断で呼び寄せたのだは?との疑惑

もしそうならば〝皇帝を勝手に名乗った〟として、大罪になるのだが

しかし、俺を呼び出したのは紛れもなく皇帝で、俺の情報を集めた皇帝が



「あやつが十分暴走するだろうと見越した上で呼んだからな」



との事らしい

喰えないじぃさんである・・・流石は皇帝か



依頼に関しては白紙撤回し、家族も紹介したいとの事で、会食を求められて応じる

ウォルドは警戒していたが俺の



「騙し討ちする人間じゃない」



との言葉に、ある程度は警戒を解く

今日は色々あったし、明日に会食と言う事でお開きになる



「城に宿泊すれば良い」



と皇帝は言うが、そこは辞退する

今朝のゴーレム事件を話し



「緊急時に所在が変わっていたら、ギルド側が混乱するので」



と告げて、部屋を後にした

一応、四神獣はハクを残し、屋敷へ送還する

六天竜もリュミナ、バフラムを残して送還し、精霊達にも挨拶をして別れる

尚、七大精霊と六天竜達は



「マジギレした主(王)は、本気でヤバかったです」



と、若干ガクブルしながら帰って行った



翌日

俺はギルドに行き、その後の顛末を聞くが特に変わりなく、若干の事後処理が面倒だが何とかなっているそうだ

EXの容認については賛成側に変わると言われた

昨日の戦いぶりを見て考えが変わったらしい



「時間があれば、ダンジョン攻略もしてみてくれ」



と言われ、苦笑した

昨日の朝食については



「全額は無理だが、いくらかはギルドが立て替えるよ」



との事で、お言葉に甘えておくことにした



「何かあれば、また頼む」



と告げられ、苦笑しながら執務室を後にする



1階に降りると冒険者達は超歓迎ムードだった

中には英雄とか、兄貴とか、師匠とか言う奴もいたが、流石に恥ずかしいのでやめてくれとお願いした

昨日の城での出来事も既に伝わってるそうで「流石!」とか「言い気味だ!」など、前皇太子は冒険者達から不評であった



挨拶をしてからギルドを出て、街をぶらつきながら宿に戻る

一応『前皇太子のシンパ共が余計な真似をしないように』と護衛が付いている

護衛は城まで案内した者達で



「何かあってはいけないので、是非!是非!護衛を!」



と言われた時に断ったのだが、どうしてもと言われ、彼らを指名したのだ

正直、指揮官の人はうちに欲しいと思える人材だ



「(今日の会食で勧誘してみようかな?)」



と考えている程だ



半日ほど時間を部屋で潰し、護衛の人達を部屋に入れて、軽くティーパーティーなども開催して、談笑する

今、護衛についている兵達は指揮官を尊敬しているそうで「何があってもついて行きます!」と熱いパトスを迸っていた

この指揮官はどこまで男前なのだろうか?是非!うちに欲しい!

そんな感じで時間は進み、会食の為に城へと向かう



夕刻

帝城には、皇帝の家族と降嫁した娘達に旦那と子供達

加えて、何人かの貴族が晩餐会に参加していた

昨日、居合せた者は多少畏怖しているが、初見の貴族は怪訝な顔である

雰囲気が若干悪い中、メイドが席へと案内し、俺達は席に着く



初見の者が大半なので皇帝が自ら紹介を行う

皇帝が自ら紹介を行ったことに周りがざわつく

皇帝自身が周りの者を紹介するのは極めて異例だからであった

うちの王国でも、対等な立場の者でない限りは同じなので、驚くのは仕方ないだろう

尤も、昨日の現場を見ていた者達からすれば「皇帝陛下GJグッジョブ!」って言いたいだろうが



簡単な紹介であったが、全員の紹介が終わる

降嫁した娘達の家族と皇帝の嫁に息子二人

それぞれが、そこそこ良い年齢である

ただ、一人だけ皇帝の家族に年の離れた女の子がいた



「晩年に出来た子で、兄弟や嫁いだ娘の家族にすら、もの凄く大事にされている箱入り娘で、ご家族全員がダダ甘なんです」



とは近衛筆頭騎士の言葉だ

また、皇帝夫婦は孫にもダダ甘で、侵略戦争していた頃の面影は残っていないそうだ

大病を患い、一命を取り留めて以降、人が変わったみたいに穏やかになったとの話だ

皇妃曰く



「幼い娘に泣かれて以降、変わりまして」



との事だ

皇帝も可愛い娘には勝てなかったようである



皇帝の奥さんは全部で7人

末娘と次男が正室の子供だった



「(あの皇太子って、側室の子だったのか)」



その説明がなされた後、一人の女性が頭を下げた

頭を下げた初老の女性が皇太子の母親で



「厳しく教育したつもりが、何故かああなってしまって」



と、深く謝罪した

また、命迄取らないことに感謝もされたが、そこは皇帝にも述べた言葉を告げておく



2度は無い・・・と



重々承知しているとの事で、次に何かあれば親子の縁も切るそうだ



「皇妃である以上、一番に考える事は帝国の繁栄ですから」



と告げ、再度頭を下げて謝罪してきたので、この件は手打ちにした

一通り話が終り、晩餐会が始まるのだが、皇帝から一つ質問をされた



「帝国に来て、帝位を継ぐ気は無いか?」



答えは当然NOである

そもそも、跡取りいるんだからどちらかに継がせろよ!

しかし、皇帝の答えは



「3男は帝位に興味が無く、軍事方面ばかりでな。侵略がしたいわけでは無いんだが、戦うのが好きなやつで・・・次男は切れ者ではあるが、武術全般ダメで。更に帝位に興味がないのも3男と一緒でな。ぶっちゃけ跡継ぎがおらん。クロノアス卿に末娘の婿になって貰えればな・・・と」



「有難いお話ですが、自分は少し特殊・・と言うか、まぁ色々ありまして。婿入りは不可能ですし、仮にやっちゃうと・・・4国と多分、戦争になりますよ」



「4国同盟か。そう言えば、クロノアス卿が実現させたのであったな。・・・確かに婿入りさせたら、大変な事になるか」



そこで一度、会話が途切れ、沈黙が訪れる

「(もうすぐ配膳も終わるしこの空気は)」と、ここで皇帝が、再び口を開く



「その4国同盟だが、帝国も参加したいな。当然、4国とは戦争終結、交易、相互不可侵条約に、とある品を手土産にしようと思うのだが」



「恐らく可能ですが・・手土産と言うのは?」



「実は、帝国領内に、とある遺跡があってな。そこから古代の遺産が見付かったのだ。誰か!映像記録を持ってこい!」



兵の一人が一礼して退席し、走っていく

映像記録が来るまでの間は、食事を堪能し、雑談しながら待つ

食事中の雑談は、俺自身に関する事ではあったが



齢13歳にしてあの殺気を放ち、竜達を従える実力に精霊の行使である

興味を持つなと言うのが無理な話で、とりあえずは何をしてきたかだけ語るが、盛大に引かれてしまった



帝国は実力主義であるので当然、冒険者ランクの話も出て、帝国も支持する流れになってしまうのは当然の流れであった



「(俺的にはどうでも良いんだけどなぁ・・・)」



食事もある程度まで進んだ頃、先ほど退室した兵士が映像記録を持ってくる

その映像に映っていたのは・・・飛空船だった

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