神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

26話 ラフィキレる


早朝に城を出た俺は一人北に向かう
数はおよそ2万のスタンビートした魔物の群れの殲滅
ルリとハクを呼ぼうかとも思ったがやめた
今回使う魔法は広範囲殲滅魔法で巻き添えになる可能性があるからだ
普段は抑えている身体能力を今回は解き放っている
前世では親孝行も出来ず両親をきっと悲しませてしまったので、今の両親にはそのような思いをさせないために全力を出そうと決めたから

城を出て3時間ほどで北の戦場に到着した
後2時間後には西が戦闘を始める
北の1戦は士気向上にも繋がるため負けは許されない
負け=死なので負ける気なんて全くないし負ける気もしないけど

俺は群れを目視で確認し魔力を込め始める
アンデットが半数以上いるみたいで、普通は生きているなら例え魔物同士でもアンデットは襲うのに全く襲っていないのを確認し、これが自然発生では無い事を確信させる
俺は魔力を属性変換し雷と光に変え威力を徹底的に高めて効果範囲を決める
効果範囲は群れ全部を覆い尽くして更に一定範囲にまで広げる
更に神気を混ぜ神話級にまで持って行く
思い浮かべる造形は1本の雷光の柱だ
一切の抵抗なく跡形も残さず一撃で全てを屠る
但し、世界が滅びないように調整はきっちりしておかないといけない
気分が高揚したのか?普段は叫ばないのだが俺はオリジナル魔法の名を叫んで放っていた

『神雷・・裁きの光!ルミナインパルス!!』

その言葉と共に光が群れを包み込み遅れて雷の音が鳴り響く
時間にして数秒・・その後には北の魔物の群れは跡形も無く消し去っていた
念の為に探知するが生き残りは無し
確認し終わると俺は王都への帰還を開始する

北での一方的な蹂躙が終わった頃、西では目視で魔物の群れを確認できていた
予想より群れの進軍が速く戦闘開始まで1時間といったところだ
王国軍はここが死地とでもいうように全員が悲壮感を露わにしていた
だが、それも無理はない
王国軍1万5千に対し魔物は約10万・・7倍近い戦力比である
そこまで強力な個体はいないが数が数である

更に悪夢は続く
東の群れの進軍速度が異常で西とほぼ同時刻に戦闘開始になりそうだった
付け加えて東は強力な個体が多く、生息域がランシェス王国に無いワイバーンが1千にウェアウルフが各属性1千の計6千(属性は火水風土雷闇)おり、更にオーガ5百とトロール5百に加えてミノタウロス5百とケルベロス2百で、更なる追い打ちと言わんばかりにデュラハン2百とヒュドラが1百に統率者と思われる竜が1体と、どう見ても主力としか思えない
数は1万程だが質的に見れば西側よりも絶望的に見える
完全に予想外であり自然発生ではなく人為的と誰もが思えるものであった

絶望と呼べる状況下で遂に戦闘が開始された
王国軍も冒険者も士気は最悪・・軍の第1陣は戦闘開始から30分程で崩壊しかかっていた
そこに朗報かはわからないが士気向上の報告が届く
【北の群れは全滅!全軍奮起せよ!!】
この報告を聞き第2陣が持ち直して西は何とか押しとどめる事に成功する
だが東には地獄が広がっていた

東にも同じ報告が届けられるが5千の冒険者のうち死者5百人、重傷者1千5百人に達していた
死者の半数以上はF・Eランクの者で、更にもう半数も重傷者になっており、FとEは事実上壊滅
最も数の多いDランクも3分の1が重傷者になっており3分の2は最早諦めの境地にいる
Cランク7百人も無傷な者はおらず、ただ継戦が可能なだけ
250人のBランクと40人のAランクと10人のSランクが戦線の瓦解を防いでいる状況だ
僅か300人の精鋭で細い糸を繋いでいるに過ぎない
倒した魔物も多くはなく、東は時間稼ぎしかできない状況になっていた

この状況下でウォルド達のパーティー輝く星のメンバーも継戦こそしているが・・・
ウォルドの盾は既に砕かれ剣で盾の代わりをしている
バルドも2本目の剣が折れ予備の剣へと切り替えた
ヤナも矢が尽き短剣に持ち替えている
ナユルの魔力は既に4分の1まで減っており
ムムノに至っては魔力がほぼ枯渇して戦闘継続が無理になっていた
それはウォルド達だけではなくほとんどの者が同じ状況に陥っている
戦線の瓦解は時間の問題であった

そんな中で1匹のワイバーンがナユルに狙いをつけて襲いにかかる
全員気付くのに遅れワイバーンの咢がナユルに向かい喰らおうとする
魔力切れで動けないムムノが必死に動かそうとし助けようとするが間に合わない
他のメンバーも目の前の敵を放置すれば一気に崩れる
ナユルは⦅死にたくない・・誰か助けて・・・⦆と目をつむり諦めかけた
だが痛みはいつまで経ってもやってこない
戦場の騒音が徐々に戻ってくる
ナユルは目を開き見上げるとそこは少年の腕の中だった














時は少し戻り北の戦線だった場所
俺は身体強化で王都へと急いで戻っていた
何か嫌な予感を感じていた為だ
どんな時でもなんとかなると思っていた俺だが今回はそんな感じがしない
早く戻らないと大切な何かを失う感じがした

実は身体強化よりもさらに速度を上げる方法はある
だが陛下の指示で監視役が付いてるっぽい
監視と言うより状況報告人かな?
士気を上げる為には一早く報告が必要だし
俺はその人達がギリギリついてこられる位の速さで移動していた
だがさっきから嫌な予感が大きくなる
俺は足を止めて

「いるのはわかってる。相談があるから出てきて欲しい」

と告げると顔を隠した二人が出てきた

「すまないが俺はこれから全力で王都に戻る。置いて行くが問題は無いか?」

俺自身今は嫌な予感もあり、かなり余裕がないので言葉使いは悪いと思うが、二人は特に気にした様子も無く寧ろ出来る者ならやってみろって感じを出して頷く
言質を取ったので俺は全力で王都に戻る事にした

スキルの縮地に雷と光の魔法を組み合わせる
『雷化光速・・蠢光!!』
そう言葉を発してその場から消える
遥か後方に監視役の二人がいる
俺が眼の前からいきなり消え慌てて追いかけようとするが、追い付くわけも無く俺は王都へと意識を向け遠視を使って状況を確認する

西はまだ持つが東は戦力的にもう持たない
瓦解迄秒読み開始と言わんばかりの有様だ
そこに1匹のワイバーンが女の子を喰らおうとしている
狙われた女の子は・・・まさか!?

俺は更に身体に魔力を流し速度を上げる
いくら強靭な身体スキルを持っていても身体はまだ子供だ
軋み、悲鳴を上げ、毛細血管が所々破れて血が噴き出るが無視して速度を上げる
間に合わなければ一生後悔すると何故かその時は思った
今まさに女の子・・ナユルが食われそうになった僅か一瞬
俺はナユルを抱きかかえ、ついでにワイバーンの頭を離脱時に蹴って殺した



ワイバーンは苦悶の声すら出せずに瞬殺された
ムムノだけはその光景を見ていたが何が起きたかは理解してない
気付いたらワイバーンの頭が弾け少年が立っておりナユルが少年の腕の中にいた

目を開け、俺に気付いたナユルは顔を真っ赤にしていた
目元は助からないと思ったのだろうか?涙が溢れていた
俺はナユルに「もう大丈夫」と笑って告げムムノの隣に彼女を座らせた

俺はナユルを座らせた後、ウォルド達が足止めをしていた魔物を全て一撃で殺す
ウォルド達も魔物も何が起こったのかわからないだろう
俺の身体からは未だに出血が続いているが知ったことではない
俺はウォルド達に

「後は俺がやる。全員後方に下げてくれ」

それだけ告げ群れの中に突っ込む
ウォルド達は何か言っていたが聞こえなかった
自分でも後で驚くほどにブチキレていたからだ

ウォルド達が後方に下がり、ギルマスに伝えたのだろうか?冒険者が数名ずつ後退していく
後退できずに交戦している冒険者は俺が魔物を瞬殺し後退が出来るように支援する
それを繰り返して全ての冒険者が下がり終えると俺はルリとハクを召喚し後方の冒険者を守る様に指示を出す

ルリとハクは俺の決定に不服の様だ
理由は俺が怪我をして血を流しているから
だが二匹は従うしかなかった
主である俺がマジギレしてるのがわかったからだ
二匹は後方の冒険者の方に行き冒険者達の前に立って守りに入る

二匹の行動を確認した俺はちょろちょろと走る目障りな犬を始末することにした
属性持ちのウェアウルフは耐性を持っているが俺の前では無意味だ
雷の魔法を極限にまで圧縮し造形する
形を成した雷は俺が纏う雷光に呼応し手からゆっくりと離れ、前世の東洋の龍に似せた魔法が俺の周りを漂うかの如く形を成した
刹那、その力を解き放つ

『プラズマドラゴン!』

雷の龍は俺の言葉と共に身体の周囲へ高密度のプラズマを出し、意思があるかの様に動き犬共に向かって行き消し済みにしていく
数十秒で犬共はその姿を全て消した

次にクソトカゲ共だ
トカゲと言っても下級竜の種族で素材には価値がある
こいつらは慰謝料にでもなってもらう
風魔法を圧縮し竜巻と刃を造り放つ

『サイクロンカッター!!』

竜巻が全てのワイバーンとついでにヒュドラも飲み込み一太刀で首を刎ねる
更に空間収納から神銃を取り出し光の魔力に変換して放つ
狙いはデュラハンだ

『ルミナブラスト!!』

放たれし光は大きな光の線となりデュラハンを一撃で全て消滅させる
トロールとオーガの群れは燃え尽きろ

『ヘルインフェルノ!!』

地獄の業火の一つがオーガとトロールを全て燃やし尽くす
ミノタウロスは勝利の晩餐の肉になってもらう

『コキュートスモート!!』

氷の棺がミノタウロスを閉じ込め氷漬けにする
空間収納から神双剣を取り出しケルベロスを蠢光で動き1分程で全て斬り殺す
残るはデカいトカゲ1匹

そこでふと気付く
漆黒の竜の中に神喰いの力と別の神の力が存在していた
(神喰いの力はわからなくも無いがもう1柱の力は何だ?)
俺は空間収納からゼロを取り出して警戒度を上げる

この竜は操られてるだけか暴走しているのか判断がつきかねるので神の力を排除する事を優先した
蠢光で一気に近づき気付かないうちにゼロを突き刺そうとするが竜は上空に逃げ黒い炎弾を放つ
炎弾に神喰いの力が付与されていたので俺は回避するが地面に着弾した時に炎が腕を掠める
それだけで神気を結構減らされた
いや、違う・・・炎を通して文字通り喰らいやがった!
こんなの普通の奴が触れただけで即死か運が良くても瀕死だ

実際のところ俺も少しふらついてしまった
魔力も神気も余裕はまだまだあるが一気に持っていかれた為にふらついたのだ
症状で言えば軽い貧血に近いので問題はない
だが俺はさっきまでとは違い一気に冷静になって対峙する
そのタイミングで竜が話しかけてきた

「矮小で脆弱な者共よ・・何故に抗う?世の理に従い我に喰われよ」

こいつ喋れるのか?
俺は色々と判断する為に竜に語り掛ける

「それはお前の本心か?それとも何かに操られたり浸食されてなのか?」

この語り掛けに竜はさも当然という風に答えを返す

「我の意思だ。当然であろう?世は弱肉強食が摂理。ならば強きものが弱きものを喰らうもの。貴様は強者だが我には敵わぬ。大人しく喰われよ。汝ら人族は我らが餌よ今までもこれからもな」

その答えに俺は躊躇いを捨てた
こいつ自信が言っていたことだ
弱肉強食
強ければ生き弱ければ死ぬと
ならば強さを見抜けなかったお前が悪い!

俺はゼロをしまい両手剣の神剣を片手で持ち切っ先を竜に向ける
この両手剣は今まで使ってこなかった
何故か?破壊力が段違いなのだ
だがこいつ相手なら問題ないだろう

俺は片手で持っていた剣を両手に持ち替え身体に魔力を流し更に蠢光の力を引き上げ一撃で屠りに行く
奴は上空だが問題ない
時空間魔法で空間を凝固してしまえば良い
逃げられない様に奴自身の一部も空間凝固してしまえばそれで終わりだ
俺は即座に考えを実行に移す

空間凝固で認識した空間の時間を止める
それを踏み台にして一気に駆け上がる
時間はコンマ1秒にすら満たない
その中で竜の動きも止めて両手持神剣に力を込め首を刎ねる
刎ねられた首がこちらを見ている
目線が合うと思念が飛んでくる
思念の相手は懐かしいが会いたくない奴だった

「よう、久しぶりだな。こいつもただのメッセージだ。今回伝えるのはあいつのせいで散らばった俺の神格だが色んなとこにばら撒かれた。浸食されたりおかしくなったりこいつみたいにねじ伏せたりと様々だがそこにあいつが自分の力も混ぜ込みやがった。唯一の抵抗でお前が殺しても心が痛まねぇ奴にしといたぜ。俺の復讐に望まなくても付き合う事になるんだ。なら、最低限の事はしてやるよ」

伝えるだけ伝えると神喰いは消える
思念の間に竜の頭と体は地に落ちていた
俺は無意識に着地したようだ
東は片付いたがまだ西が残っている
俺は西に向かおうと足を動かそうとしたところで意識が途切れた


作者です
前話とは違い手直しが楽でしたー
そして77話の執筆は相変わらずです
もういっそ78話を77話にしようかと考えてる次第です
それもどうなるのか?今後のあとがきにこうご期待!

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