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有限の泉

わたしはわたしの泉に来てくれる人を歓迎していた。
そこへ来てくれる人は迷い込んだように見えて、疲弊しているようにも見えたから。
でも、来てくれる人の中には少しずつ水を汲んでは遠くへ持っていき、財とし商売をする者が現れた。
そして泉は次第に枯渇し始める。

時は経ち、泉はまたかつての姿を取り戻すが、以前のようには戻らない。

わたしは間違えていたのだろうか。
泉は誰の手にも触れられないものにするべきだったのか。
わたしは憩いの場を作られればそれでいいと、再び希望をもてるようにと。
ただそれだけだった。
わたしは間違えてしまったのだろうか。

価値に変えないで。
わたしの泉に価値をつけないで。
わたしの泉を汚さないで。
わたしの願いは届かない。

「あの泉だ」
口を揃えて指を指す。
お願い、わたしの泉を汚さないで。

その日、わたしの泉はなくなった。
誰も見つけられない、わたしの泉。

しかし、訪れてくれた者の中にはわたしの泉が今もなお光輝くだろう。

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