武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?
おやおや、嬉しい事を言ってくれるね、マルコ君
周家に着いた。
南遨家からは首脳三名の見送りを受けての事だ、帰りの道中跳ね返りは、つまらない事に居なかった。
三や士の出番は殆ど無かったな。
(……ねぇ、大姐。さっきも言ったけど、貴女発想が物騒になっているよ。分からないでもないけど、抑えて)
ムゥ、未熟。心が繋がっている小姐に、嘘は通じない。
わたしの、心の奥には、いつも怒が鎮座している。
気に入った相手には怒りが向くことはないが、
どうでも良い相手にはそこそこに、
敵対すれば、完全に憤怒が向く。
自分から言い出したとはいえ、遨家から出て独り暮らしを始めた頃は、荒れた。
と、言うより怒りの制御が難しく、わたしに接触してきた、敵性士大夫などに発散したものだ。
老師や黄姐に、諭され、叱られ、誉められ、喜ばれ、悲しまれて、何とかなってきたが、
心の深奥に鎮座する怒は、消える事無く存在し続けた。
面倒臭くなって、特に意識せず放置していたら、最近覗かせてきたみたいだ。心せねば。
妙に思えるかもしれないが、これは小姐が心に同居、同化した事が影響したと思える。
感情が他人の物の様に感じるのだ。
あの日黄姐の件で、一昼夜感情を垂れ流した事も、要因かも知れない。
……まあ、良い。
わたしの扱いは客人なので、遠慮する事無く周家の客用門から入館した。
帰宅の報は某に通された様で、直ぐにやってきた。
マルコ君の面倒を頼んでいたので、マルコ君も一緒だ。
「お帰りなさい、胡嬢。何事も無くて良かったです」
いや、何事かは有ったのだが、色々としがらみが有り、そこから説明しなければ意味不明になるので、簡単に答えた。
「ただいまマルコ君」
そう言って、行きの時と同様に頭を撫でた。
“お返しします”と、マルコ君が包みを渡してきた。
金子だ、律儀に肌身離さず保管してくれたようだ。 本当良い子だ。
「お帰りなさいまし胡嬢。よくぞ無事で」
某は武林に片足を突っ込んでいる、全く何事も無かったとは思わないだろう。
まあ、高師範の弟子だし、マルコ君の面倒を見てくれたから、気が向いたら後で話してやるか。
(……ねぇ、私思ったんだけど、道中手形どうするの?陸路では清々関所を通過したから、全の件で偽名が割れてるよ)
(?帰りは海路だから関係ないだろ、沙海に着けば何とかなるだろ)
そもそも全の商用手形と違い、わたしとマルコ君のは、ただの通行手形だ。
本籍と住所、本人の特徴などが、ザックリ記載されている程度のものだ。
全の商用手形には、商目的、行き先、同行人、予想滞在日数などが記載されているが、
死亡して別行動のわたしとマルコ君の手形は、ただの旅人扱いとなるので、他州に行けば足は付かない。
陸路ならともかく、海路に関所は無いし。
(いやいやいや、海路には無いよ。でも港には有るよ、多分手配されてるよ)
「そうなのか?」
てっきり適当に出入港している物と。
某とマルコ君はわたしの突然の奇声には慣れたもので、質問してきた。
「どうした?左道関係で何か報せが?」
「?誰と話を?例の怖い人とか?」
正解。凄いね二人共。
すねるな小姐、自業自得だ。
「周兄、明後日の出航だが、わたしの手形で大丈夫か?そもそも民間の周家にすら、わたしの所在は割れていた、港に関所は無いのか?」
「ああ、それなら大丈夫。旅客船なら出入関で乗客の人別審査が有るけど、商用貨物船での移動だから審査は無いよ。
ただ、胡嬢には周物品卸公司員証を携帯してもらうよ」
「うん?公司員証」
「つまりは、ウチで身元保証をした社員証。
偽名の方は割れているから、別の偽名か本名で作っておくよ」
「面倒だから本名で、新しい偽名だと咄嗟に忘れている可能性があるし。
マルコ君はどうするの?」
「年令的に公司員は無理が有るから、申し訳ないが、“商品”と云う事で乗船して貰うしか……勿論、二人共客人として沙海まで送るよ」
「どうする?マルコ君、わたしの用が終わるまで広州で待ってくれても良いよ」
(異議有り!何戯言ほざいてんの!馬鹿なの!ねえ!馬鹿なの!ねえ!馬鹿なの!ねえ!ねえ!ねえ!)
(馬鹿馬鹿うるさい!落ち着け小姐!こちらに伝の無かった昨日迄と違い、今は南遨家を頼れる。
わざわざ嫌な思いをさせてまで、洛都につれ歩く事も無い)
(本名で手形作り直して、旅客船で移動したら?ん、なら別に陸路でも大丈夫なんじゃ)
……それもそうか、南遨老師にお願いすれば、通行手形の保証人には、なってくれそうだしな。
この偽名の手形は、全が手配したから分からないが、発行迄どれくらいかかるのか?
「いえ、胡嬢と行きます。ごめんなさい、他の人は怖い、もう売られたくありません」
「いや、マルコ君。乗船の口実で“商品”とするだけで、君は客人として遇するよ、危害は絶対加えない」
「ごめんなさい、周勇さん。分かってはいます、胡嬢と離れたくないんです。
だから“商品”名目でも構いません」
おやおや、嬉しい事を言ってくれる。
なるほど、黄姐が言っていたが、年少者に慕われて悪い気はしないものだ。
なあ、小……何をいじけている、なに?もう嫌になっただ?何に?
あん、わたしだけが良いとこ取りだぁ?
あのね、わたしは別に稚児趣味じゃ……
何?あの時だってわたしが? いつよ?
あー!もう面倒臭ぇな! 某と話続ける!
「周兄、ふと思い付いたが、道中の通行手形を新たに作るとしたら、どのくらい掛かるんだ?」
「う~ん、書類揃えて本人確認の審査が有るから、最短で二月位かな?マルコ君は無理」
「なんで?」
「言いにくいけど、マルコ君は売買されているからね。戸籍が無い。
全が売買契約書を持っていたから、それが有れば何とかなったけど、書類一式警邏官吏局に証拠品として保管されてるからね」
成る程、後悔先に立たずだな。今度から書類関係と手形関係は回収しよう。
「……それより、二人の手形は本物だけど、どうやったんだ?」
「全の手配だからわからないが、多分別人の物だ、戸籍住所は出鱈目だし、特長の似た人物の物だろう。……赤髪は珍しいが」
一人だけ心当たりが有るが、まさかねぇ。
開業を離れた事がないので、手形云々知らない事ばかりだ。
いつまでいじけている、小姐、知恵を貸せ。
(あのね、手形や書類回収したら、殺人の証拠品を態々持ち歩く事になるの、だから全の時は放置したの、お分かり?)
そうだったのが、流石は小姐だ。
(本気で言ってるよ。何か寒気がしてきた、大姐、マジかよ)
知恵を貸す!
(貴女、たまにそうなるね。……マル吾子が私と一緒に来たいなら、周勇の提案が一番かな。
流石に州を跨いで参考人の召喚手配はしてないと思う。
沙海からは手持ちの手形で大丈夫なんじゃない?)
「なら決まりだ、周兄、手配を頼む。マルコ君、不快だろうけど我慢してくれ、わたしが必ず君を守るから。
そうだな、洛都に着いたら、わたしの大事な家族を紹介しよう」
「はい!」
元気が出た様で何よりだ。
「それから周兄、大人と面会したいんだが、都合はどうかな?投資の話を詰めたいんだが」
わたしが無事に戻ったら、話をまとめる事になっていたのだ。
某は確認の為に退出した。
南遨家からは首脳三名の見送りを受けての事だ、帰りの道中跳ね返りは、つまらない事に居なかった。
三や士の出番は殆ど無かったな。
(……ねぇ、大姐。さっきも言ったけど、貴女発想が物騒になっているよ。分からないでもないけど、抑えて)
ムゥ、未熟。心が繋がっている小姐に、嘘は通じない。
わたしの、心の奥には、いつも怒が鎮座している。
気に入った相手には怒りが向くことはないが、
どうでも良い相手にはそこそこに、
敵対すれば、完全に憤怒が向く。
自分から言い出したとはいえ、遨家から出て独り暮らしを始めた頃は、荒れた。
と、言うより怒りの制御が難しく、わたしに接触してきた、敵性士大夫などに発散したものだ。
老師や黄姐に、諭され、叱られ、誉められ、喜ばれ、悲しまれて、何とかなってきたが、
心の深奥に鎮座する怒は、消える事無く存在し続けた。
面倒臭くなって、特に意識せず放置していたら、最近覗かせてきたみたいだ。心せねば。
妙に思えるかもしれないが、これは小姐が心に同居、同化した事が影響したと思える。
感情が他人の物の様に感じるのだ。
あの日黄姐の件で、一昼夜感情を垂れ流した事も、要因かも知れない。
……まあ、良い。
わたしの扱いは客人なので、遠慮する事無く周家の客用門から入館した。
帰宅の報は某に通された様で、直ぐにやってきた。
マルコ君の面倒を頼んでいたので、マルコ君も一緒だ。
「お帰りなさい、胡嬢。何事も無くて良かったです」
いや、何事かは有ったのだが、色々としがらみが有り、そこから説明しなければ意味不明になるので、簡単に答えた。
「ただいまマルコ君」
そう言って、行きの時と同様に頭を撫でた。
“お返しします”と、マルコ君が包みを渡してきた。
金子だ、律儀に肌身離さず保管してくれたようだ。 本当良い子だ。
「お帰りなさいまし胡嬢。よくぞ無事で」
某は武林に片足を突っ込んでいる、全く何事も無かったとは思わないだろう。
まあ、高師範の弟子だし、マルコ君の面倒を見てくれたから、気が向いたら後で話してやるか。
(……ねぇ、私思ったんだけど、道中手形どうするの?陸路では清々関所を通過したから、全の件で偽名が割れてるよ)
(?帰りは海路だから関係ないだろ、沙海に着けば何とかなるだろ)
そもそも全の商用手形と違い、わたしとマルコ君のは、ただの通行手形だ。
本籍と住所、本人の特徴などが、ザックリ記載されている程度のものだ。
全の商用手形には、商目的、行き先、同行人、予想滞在日数などが記載されているが、
死亡して別行動のわたしとマルコ君の手形は、ただの旅人扱いとなるので、他州に行けば足は付かない。
陸路ならともかく、海路に関所は無いし。
(いやいやいや、海路には無いよ。でも港には有るよ、多分手配されてるよ)
「そうなのか?」
てっきり適当に出入港している物と。
某とマルコ君はわたしの突然の奇声には慣れたもので、質問してきた。
「どうした?左道関係で何か報せが?」
「?誰と話を?例の怖い人とか?」
正解。凄いね二人共。
すねるな小姐、自業自得だ。
「周兄、明後日の出航だが、わたしの手形で大丈夫か?そもそも民間の周家にすら、わたしの所在は割れていた、港に関所は無いのか?」
「ああ、それなら大丈夫。旅客船なら出入関で乗客の人別審査が有るけど、商用貨物船での移動だから審査は無いよ。
ただ、胡嬢には周物品卸公司員証を携帯してもらうよ」
「うん?公司員証」
「つまりは、ウチで身元保証をした社員証。
偽名の方は割れているから、別の偽名か本名で作っておくよ」
「面倒だから本名で、新しい偽名だと咄嗟に忘れている可能性があるし。
マルコ君はどうするの?」
「年令的に公司員は無理が有るから、申し訳ないが、“商品”と云う事で乗船して貰うしか……勿論、二人共客人として沙海まで送るよ」
「どうする?マルコ君、わたしの用が終わるまで広州で待ってくれても良いよ」
(異議有り!何戯言ほざいてんの!馬鹿なの!ねえ!馬鹿なの!ねえ!馬鹿なの!ねえ!ねえ!ねえ!)
(馬鹿馬鹿うるさい!落ち着け小姐!こちらに伝の無かった昨日迄と違い、今は南遨家を頼れる。
わざわざ嫌な思いをさせてまで、洛都につれ歩く事も無い)
(本名で手形作り直して、旅客船で移動したら?ん、なら別に陸路でも大丈夫なんじゃ)
……それもそうか、南遨老師にお願いすれば、通行手形の保証人には、なってくれそうだしな。
この偽名の手形は、全が手配したから分からないが、発行迄どれくらいかかるのか?
「いえ、胡嬢と行きます。ごめんなさい、他の人は怖い、もう売られたくありません」
「いや、マルコ君。乗船の口実で“商品”とするだけで、君は客人として遇するよ、危害は絶対加えない」
「ごめんなさい、周勇さん。分かってはいます、胡嬢と離れたくないんです。
だから“商品”名目でも構いません」
おやおや、嬉しい事を言ってくれる。
なるほど、黄姐が言っていたが、年少者に慕われて悪い気はしないものだ。
なあ、小……何をいじけている、なに?もう嫌になっただ?何に?
あん、わたしだけが良いとこ取りだぁ?
あのね、わたしは別に稚児趣味じゃ……
何?あの時だってわたしが? いつよ?
あー!もう面倒臭ぇな! 某と話続ける!
「周兄、ふと思い付いたが、道中の通行手形を新たに作るとしたら、どのくらい掛かるんだ?」
「う~ん、書類揃えて本人確認の審査が有るから、最短で二月位かな?マルコ君は無理」
「なんで?」
「言いにくいけど、マルコ君は売買されているからね。戸籍が無い。
全が売買契約書を持っていたから、それが有れば何とかなったけど、書類一式警邏官吏局に証拠品として保管されてるからね」
成る程、後悔先に立たずだな。今度から書類関係と手形関係は回収しよう。
「……それより、二人の手形は本物だけど、どうやったんだ?」
「全の手配だからわからないが、多分別人の物だ、戸籍住所は出鱈目だし、特長の似た人物の物だろう。……赤髪は珍しいが」
一人だけ心当たりが有るが、まさかねぇ。
開業を離れた事がないので、手形云々知らない事ばかりだ。
いつまでいじけている、小姐、知恵を貸せ。
(あのね、手形や書類回収したら、殺人の証拠品を態々持ち歩く事になるの、だから全の時は放置したの、お分かり?)
そうだったのが、流石は小姐だ。
(本気で言ってるよ。何か寒気がしてきた、大姐、マジかよ)
知恵を貸す!
(貴女、たまにそうなるね。……マル吾子が私と一緒に来たいなら、周勇の提案が一番かな。
流石に州を跨いで参考人の召喚手配はしてないと思う。
沙海からは手持ちの手形で大丈夫なんじゃない?)
「なら決まりだ、周兄、手配を頼む。マルコ君、不快だろうけど我慢してくれ、わたしが必ず君を守るから。
そうだな、洛都に着いたら、わたしの大事な家族を紹介しよう」
「はい!」
元気が出た様で何よりだ。
「それから周兄、大人と面会したいんだが、都合はどうかな?投資の話を詰めたいんだが」
わたしが無事に戻ったら、話をまとめる事になっていたのだ。
某は確認の為に退出した。
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