武侠少女!絹之大陸交易路を往く!?
阿婆擦れか、小姐に言われたくないな
迎えに行ってもらう事にした。
実の所、自分で迎えに走ったほうが、圧倒的に速いのだが、それでは周家の面子を潰してしまう。
中級武技、“神行歩” ただ、走る為だけに経の往復をする。
坂道や速度を上げる時は、追加で経を入れるが、基本、始動発経のみで術を行う。
達者ならば、全速疾走で一日走っても疲労しない。
道法でも同じ様な術がある。ただ、兎歩経絡が元となるため、神行歩よりは肉体的、精神的に疲労する。
わたしが呼んだ証拠として、道中見慣れたで有ろう、頭巾と簡単な手紙を持たせた。
(マル吾子には、黒午朗と黒三が憑いてるからね、強盗に襲われたって大丈夫)
との事なので、心配無用だった。
わたし達は客人として、周家に滞在する事になった。
全の事だが、物取りに殺害され、金子を盗まれてたとされ、警邏官吏が犯人を一応捜査しているとの事だった。
それから船便の手配を依頼した。広州から、開業の洛都近くの港となると、開業、天湊だが、直通便は無いそうだ。
大長巾河の河口の沙海を経由し、そこで天湊行きの便を探す事になり、
周物品卸沙海支店で、その手配を引き続き頼む事になった。
ここ広州は香湊を出立するのは、五日後になった。
周家の海運船に乗船させてもらう。
さて、わたしはと云うと。
(暇ね)
(暇だ)
暇をもて余していた。
何せ、上げ膳据え膳の上客待遇だ。
しかも、全の道中手形から、わたしの偽名が割れている。
関所を堂々と通過してきたので、全、わたし、マルコ少年、の三人が連れ立って移動してきた事も割れている筈だ。
だから大っぴらに出歩けない、と、思ったら。
(黒三を纏えば良いのよ)
だ、そうだ。肌の色が黒く感じて見えるらしく、目立つ赤髪も、染めたように黒く感じて見えるらしい。
いや、マルコ君でも試したが、わたしには変化なしに見えるので、何とも言えない。
左道を使う事を知っている、周某に尋ねた所、二人とも黒褐色の肌に黒髪に感じて見えるそうだ。
なので、丸二日振りに街中に出掛けてみた。
某も暇なのか、やたらと纏わりついてくる。
まあ、道案内にはなるだろう。
湊街だ、活気がある。わたしは気の向くままにふらついた。
「胡姐、少し休みませんか?」
そうだ、マルコ君の体力を失念していた。
八歳だった。
わたしはその頃には、発経を習得していたので疲れ知らずだったから、失念していた。
普通の子供に、わたしの散策はつらいだろう。
(散策と言い切る?同じ所を犬みたいにぐるぐると周回したり、かと思えば四半刻も店先で唸っていたり、大姐、馬鹿なの?)
(いや、買った簪は使えるんだよ。いま髪を晒しているから試してみたい)
(あれ?色気付いた?周勇?……まさかマル吾子!貴女って奴は、全然少年に興味が無いって顔していながら、なんて破廉恥な!)
「なら、そこの喫茶飲茶で、休みがてらお茶にしよう」
面倒だから、小姐は無視する事にした。
「それなら、胡嬢。この先にある喫茶飲茶を薦めるよ。蓮葉粽が名物で、胡嬢は米食を好むから、口に合うと思う」
わたしは、米が好きと言うより、粥が好きなのだ。あの朝食べた、“貝柱粥”以来大好物だ。
広州料理は、全般的に塩味が強く感じる。
南方で、汗をかくからだろうか?
しかし、この地で食した皮蛋粥は気に入った。
アヒルの卵ではなく、鶏卵から作った皮蛋を、あっさりと味付けした粥に乗せただけで、見た目は貧相だが、味は絶品だ。
粥の素朴な米の味に、調味料的にピータンを……
(はい、そこまで。マル吾子が可哀想だから、とっとと行け)
それもそうだ、蓮葉粽も食べたいしな。
(太るよ、大姐)
店は繁盛していた。周某の顔、と言うより、周家の縄張りなのだろう。
二階の周囲を見回せる、窓側席が新に用意された。
席待ちの客が驚くが、某を見て納得する。
悪びれるのも妙な話なので、遠慮なく席に着いた。その際上席にマルコ君を据えた。
周某は席順がどうの、体面がどうのとうるさいのだ、礼儀に疎い子供を上座に座らせれば、いちいち煩くしないだろう。
と言うより、わたしの意図に気がつくだろう。
“いちいち飯屋で騒ぐな”と
「周兄、適当に見繕ってくれ。その蓮葉粽の他にも」
広州と開業では、微妙に字が違う。
鮎が菜譜に載っているので、“季節外れで変わっているな?”などと注文すると、ナマズだったりする。
あと野猪が狗肉だったり、般若湯が酒だったり。
(般若湯は佛道の隠語、洛都でも言うでしょ)
だから、地元産人に任せるに限る。
「胡嬢、酒はどうする?ここには銘酒を置かせているんだ」
わたしは飲まない。下戸ではなく、拳士の嗜みだ。小姐の事もある。
面白い発見だったが、酒に酔った状態で小姐に体を渡すと、わたしは即座に醒める。
逆に小姐は酔う、体に魂が引っ張られるらしい。
ついでに、小姐の酒癖は悪い。自分以外の人間全てに、特に年少者に絡み出す悪癖がある。
(そう言う大姐も大概だけどね、貴女は悪食が始まる)
それは仕方ない。孤児が奪い合った残飯だけで足りる訳がない。雑草の根や虫なんかは普通に食べていた。
酔うと、わたしは自分の常識で行動するみたいだ。
クウッ、と云う可愛らしい腹の音が鳴った。
わたしではない、マルコ君だ。羞恥に顔を赤くした。わたしには黒靈の影響が無いから、普通に顔色が分かる。
可愛い。
(やっぱり狙ってんじゃねぇか!阿婆擦れ!)
「周兄、酒はいらない。ただ、マルコ君のお腹にたまる物も見繕ってくれ」
腹立たしいが、こんな時小姐は無視するに限る。
実の所、自分で迎えに走ったほうが、圧倒的に速いのだが、それでは周家の面子を潰してしまう。
中級武技、“神行歩” ただ、走る為だけに経の往復をする。
坂道や速度を上げる時は、追加で経を入れるが、基本、始動発経のみで術を行う。
達者ならば、全速疾走で一日走っても疲労しない。
道法でも同じ様な術がある。ただ、兎歩経絡が元となるため、神行歩よりは肉体的、精神的に疲労する。
わたしが呼んだ証拠として、道中見慣れたで有ろう、頭巾と簡単な手紙を持たせた。
(マル吾子には、黒午朗と黒三が憑いてるからね、強盗に襲われたって大丈夫)
との事なので、心配無用だった。
わたし達は客人として、周家に滞在する事になった。
全の事だが、物取りに殺害され、金子を盗まれてたとされ、警邏官吏が犯人を一応捜査しているとの事だった。
それから船便の手配を依頼した。広州から、開業の洛都近くの港となると、開業、天湊だが、直通便は無いそうだ。
大長巾河の河口の沙海を経由し、そこで天湊行きの便を探す事になり、
周物品卸沙海支店で、その手配を引き続き頼む事になった。
ここ広州は香湊を出立するのは、五日後になった。
周家の海運船に乗船させてもらう。
さて、わたしはと云うと。
(暇ね)
(暇だ)
暇をもて余していた。
何せ、上げ膳据え膳の上客待遇だ。
しかも、全の道中手形から、わたしの偽名が割れている。
関所を堂々と通過してきたので、全、わたし、マルコ少年、の三人が連れ立って移動してきた事も割れている筈だ。
だから大っぴらに出歩けない、と、思ったら。
(黒三を纏えば良いのよ)
だ、そうだ。肌の色が黒く感じて見えるらしく、目立つ赤髪も、染めたように黒く感じて見えるらしい。
いや、マルコ君でも試したが、わたしには変化なしに見えるので、何とも言えない。
左道を使う事を知っている、周某に尋ねた所、二人とも黒褐色の肌に黒髪に感じて見えるそうだ。
なので、丸二日振りに街中に出掛けてみた。
某も暇なのか、やたらと纏わりついてくる。
まあ、道案内にはなるだろう。
湊街だ、活気がある。わたしは気の向くままにふらついた。
「胡姐、少し休みませんか?」
そうだ、マルコ君の体力を失念していた。
八歳だった。
わたしはその頃には、発経を習得していたので疲れ知らずだったから、失念していた。
普通の子供に、わたしの散策はつらいだろう。
(散策と言い切る?同じ所を犬みたいにぐるぐると周回したり、かと思えば四半刻も店先で唸っていたり、大姐、馬鹿なの?)
(いや、買った簪は使えるんだよ。いま髪を晒しているから試してみたい)
(あれ?色気付いた?周勇?……まさかマル吾子!貴女って奴は、全然少年に興味が無いって顔していながら、なんて破廉恥な!)
「なら、そこの喫茶飲茶で、休みがてらお茶にしよう」
面倒だから、小姐は無視する事にした。
「それなら、胡嬢。この先にある喫茶飲茶を薦めるよ。蓮葉粽が名物で、胡嬢は米食を好むから、口に合うと思う」
わたしは、米が好きと言うより、粥が好きなのだ。あの朝食べた、“貝柱粥”以来大好物だ。
広州料理は、全般的に塩味が強く感じる。
南方で、汗をかくからだろうか?
しかし、この地で食した皮蛋粥は気に入った。
アヒルの卵ではなく、鶏卵から作った皮蛋を、あっさりと味付けした粥に乗せただけで、見た目は貧相だが、味は絶品だ。
粥の素朴な米の味に、調味料的にピータンを……
(はい、そこまで。マル吾子が可哀想だから、とっとと行け)
それもそうだ、蓮葉粽も食べたいしな。
(太るよ、大姐)
店は繁盛していた。周某の顔、と言うより、周家の縄張りなのだろう。
二階の周囲を見回せる、窓側席が新に用意された。
席待ちの客が驚くが、某を見て納得する。
悪びれるのも妙な話なので、遠慮なく席に着いた。その際上席にマルコ君を据えた。
周某は席順がどうの、体面がどうのとうるさいのだ、礼儀に疎い子供を上座に座らせれば、いちいち煩くしないだろう。
と言うより、わたしの意図に気がつくだろう。
“いちいち飯屋で騒ぐな”と
「周兄、適当に見繕ってくれ。その蓮葉粽の他にも」
広州と開業では、微妙に字が違う。
鮎が菜譜に載っているので、“季節外れで変わっているな?”などと注文すると、ナマズだったりする。
あと野猪が狗肉だったり、般若湯が酒だったり。
(般若湯は佛道の隠語、洛都でも言うでしょ)
だから、地元産人に任せるに限る。
「胡嬢、酒はどうする?ここには銘酒を置かせているんだ」
わたしは飲まない。下戸ではなく、拳士の嗜みだ。小姐の事もある。
面白い発見だったが、酒に酔った状態で小姐に体を渡すと、わたしは即座に醒める。
逆に小姐は酔う、体に魂が引っ張られるらしい。
ついでに、小姐の酒癖は悪い。自分以外の人間全てに、特に年少者に絡み出す悪癖がある。
(そう言う大姐も大概だけどね、貴女は悪食が始まる)
それは仕方ない。孤児が奪い合った残飯だけで足りる訳がない。雑草の根や虫なんかは普通に食べていた。
酔うと、わたしは自分の常識で行動するみたいだ。
クウッ、と云う可愛らしい腹の音が鳴った。
わたしではない、マルコ君だ。羞恥に顔を赤くした。わたしには黒靈の影響が無いから、普通に顔色が分かる。
可愛い。
(やっぱり狙ってんじゃねぇか!阿婆擦れ!)
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