突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!
作戦参謀軍師
「おい、こりゃすげえぞ」
ダッドが一番に回復した。
砲弾は放射状に拡散して飛ぶと判明した。
仰角をとらなければ、大半が地面だったろう。
「いやー凄いわこれ、ただ、射程は極端に短いね、砲口から10㍍位から砲弾がバラけ始めて、100㍍先くらいで降下かな?多分有効射程は200㍍位?」
多分それくらいだろう、……それよりこの砲弾。
「諸君、この試射は口外法度で頼む」
後ろから声がした。
一同が振り替えると、視察に訪れたゴーン少佐が従卒と共にそこにあった。
「一同気を付け!少佐に敬礼!」
咄嗟だったが、号令出来た自分を誉めたい。
軍に置いて階級は絶対だ。将官に次いで佐官、尉官と続くのだが、それらの官位には壁が有るものと理解してもらいたい。
階級章は少佐の物だ、従卒がついているのだ、昇官したのだろう、つまり。
「第三砲台に出向する事となった、参謀本部作戦参謀ゴーンだ」
辞令と共に任命書を受けたのだ。
階級はおそらく後任で入る三砲台守備長より上になるが、上司となる訳ではない。
発言力は強い物になるだろうが、職務は三砲台内の監査、査察だ。
「開発部の工房に寄ってきたのだが、重火砲移動架台は見事な出来だな、軍馬による牽引か」
視線がアル技官に向いている、……仕方がない、彼が制作者だ、アル技官を促す。
「……軍師だ、本物の軍師がいる。おお!スゲエな此処は、流石は軍隊。軍曹はいるし、伍長もいるし、憲兵や兵卒もいるから、もしやとは思っていたけど、軍師までいるとは」
流石のダッドも咄嗟過ぎて反応出来なかった。
あれだけ念を押して置いて、まさかやらかすとは思わなかった。
馬鹿を見誤ったか、そういえばコイツは狂人寄りの馬鹿だった。
大体言ってる事が意味不明だ。
軍曹や伍長は軍の階級だし、
兵卒は階級兼通称だし、憲兵は職務だしそれらが軍に有って当然だ。
民間に居る訳がない。
軍曹や伍長や兵卒や憲兵がいるから軍師が居る理屈が意味不明だし、何より軍に軍師なる職務は無いし、
いや、帝政期の軍隊なら居たかも知れないけど……
ダッドは現実逃避を始めていた。
当のゴーンはと云えば高笑いだ。
「あはははは!軍師か、これは良い、作戦参謀だから大差無いが、軍師の呼称の方が個人的にはしっくりくるな」
「アル技官、口を慎んでくれ、頼むから」
アルの身分が軍属で助かる。軍人だったら上官侮辱罪が適用される。
「?何でよ、軍師ったら知恵者の尊号だぞ、戦場に有って100万の兵を指揮して、雨を降らしたり風を吹かしたりして、勝利せしめる存在だ。事実上の元帥だぞ」
……この男のこの手の知識の元は、昔読んだ外国の小説か雑誌だ。しかも内容からして、三流小説だろう。
それに、この男、階級とか職務とかがゴッチャになっている。
三軍、複数の軍を統帥する大元だから元帥で、これは職務であり階級であり称号だ。
他国はいざ知らず、アルニンでは国家元首が兼任する軍の最高責任者が元帥だ。
100歩程譲る。
軍師は軍司令の任命下、作戦立案、運営、場合により実行する一配下に過ぎず、最良の結果を出そうが、任命した軍司令を飛び越えて、最高責任者と同一視する事自体、妙な発想だ。
大体歴史上、雨風を呼んだ軍師など存在しない。
それは雨乞い呪術師の仕事。更には雨乞いの成、不成功は考えない物とする。
100万の兵員だと?ハッ!
ただ、人間の感性とは分からないもので、ゴーン少佐は、この頭の悪い評価を大いに喜んで、作戦参謀軍師と、公的でない場では自称する事になる。
……なんだかなぁ……
「ははは。アル技官は噂に違わずユニークな人の様だ、だが軍師は気に入った、勝利せしめる存在か」
スゲえ、サラッと流した。
こんな感じで、一同の少佐に対する好感度が爆上げした。
「ガリレイ技術少尉の話では、三種類の砲弾を開発したと聞いた。今のは砲撃散弾とでも言うべきか。対人砲撃か……」
そう、破壊対物目的、牽制目的でない、殺傷目的の対人弾。
今更だが、使用者のモラルが問われる。
砲弾試射は続けられた。
0.3配合は、散弾と判明した。別に散弾は長銃でも有るので理解は早い。
壊れやすい弾殻を中の鉄片が突き破って飛散するのだ、破壊力は長銃の比ではないが。
0.5は最初は分からなかった。100㍍の距離だと、0.8と結果が変わらないからだ。
0.8は、着弾後破裂した。当然中身の鉄片は飛び散り、着弾点を中心に半円状に拡散する。流石に地面下に影響は及ぼせない。
0.3はやはり有効射程は200㍍程だったので、300㍍以降の試射では、省く事とした。
距離が600㍍の時、0.5砲弾は大体500㍍付近で弾け始めて600㍍付近で鉄片は拡散した。
射程距離は600㍍と判明した。
なので、着弾するまで鉄片が破裂しない0.8の有効射程を計測してみた。
中の鉄片を適当に詰めたので、砲弾の重心がバラついた為か誤差が出た。
平均して1100㍍、重心を揃えれば、1200㍍は飛ぶものと推測された。これは改良点として、開発部へ丸投げだ。
砲弾が比較的軽い為、最大飛距離が伸びている様だ
結論から言えば、全て対人弾と判明した。
砲兵は支援攻撃が主な任務だ。だから、被弾した死体はあまり見ない。
そもそも砲撃被弾なら、死体の損壊が著しく、あまり人の死体だと認識しない。
歩兵に馬鹿にされる所以の一つだが、戦場に有って死が遠いのだ。
この対人弾の開発により、その砲兵の戦場認識を改める必用が生じた。
ゴーン少佐が口外法度を言いつけたのは、その為である。
ダッドが一番に回復した。
砲弾は放射状に拡散して飛ぶと判明した。
仰角をとらなければ、大半が地面だったろう。
「いやー凄いわこれ、ただ、射程は極端に短いね、砲口から10㍍位から砲弾がバラけ始めて、100㍍先くらいで降下かな?多分有効射程は200㍍位?」
多分それくらいだろう、……それよりこの砲弾。
「諸君、この試射は口外法度で頼む」
後ろから声がした。
一同が振り替えると、視察に訪れたゴーン少佐が従卒と共にそこにあった。
「一同気を付け!少佐に敬礼!」
咄嗟だったが、号令出来た自分を誉めたい。
軍に置いて階級は絶対だ。将官に次いで佐官、尉官と続くのだが、それらの官位には壁が有るものと理解してもらいたい。
階級章は少佐の物だ、従卒がついているのだ、昇官したのだろう、つまり。
「第三砲台に出向する事となった、参謀本部作戦参謀ゴーンだ」
辞令と共に任命書を受けたのだ。
階級はおそらく後任で入る三砲台守備長より上になるが、上司となる訳ではない。
発言力は強い物になるだろうが、職務は三砲台内の監査、査察だ。
「開発部の工房に寄ってきたのだが、重火砲移動架台は見事な出来だな、軍馬による牽引か」
視線がアル技官に向いている、……仕方がない、彼が制作者だ、アル技官を促す。
「……軍師だ、本物の軍師がいる。おお!スゲエな此処は、流石は軍隊。軍曹はいるし、伍長もいるし、憲兵や兵卒もいるから、もしやとは思っていたけど、軍師までいるとは」
流石のダッドも咄嗟過ぎて反応出来なかった。
あれだけ念を押して置いて、まさかやらかすとは思わなかった。
馬鹿を見誤ったか、そういえばコイツは狂人寄りの馬鹿だった。
大体言ってる事が意味不明だ。
軍曹や伍長は軍の階級だし、
兵卒は階級兼通称だし、憲兵は職務だしそれらが軍に有って当然だ。
民間に居る訳がない。
軍曹や伍長や兵卒や憲兵がいるから軍師が居る理屈が意味不明だし、何より軍に軍師なる職務は無いし、
いや、帝政期の軍隊なら居たかも知れないけど……
ダッドは現実逃避を始めていた。
当のゴーンはと云えば高笑いだ。
「あはははは!軍師か、これは良い、作戦参謀だから大差無いが、軍師の呼称の方が個人的にはしっくりくるな」
「アル技官、口を慎んでくれ、頼むから」
アルの身分が軍属で助かる。軍人だったら上官侮辱罪が適用される。
「?何でよ、軍師ったら知恵者の尊号だぞ、戦場に有って100万の兵を指揮して、雨を降らしたり風を吹かしたりして、勝利せしめる存在だ。事実上の元帥だぞ」
……この男のこの手の知識の元は、昔読んだ外国の小説か雑誌だ。しかも内容からして、三流小説だろう。
それに、この男、階級とか職務とかがゴッチャになっている。
三軍、複数の軍を統帥する大元だから元帥で、これは職務であり階級であり称号だ。
他国はいざ知らず、アルニンでは国家元首が兼任する軍の最高責任者が元帥だ。
100歩程譲る。
軍師は軍司令の任命下、作戦立案、運営、場合により実行する一配下に過ぎず、最良の結果を出そうが、任命した軍司令を飛び越えて、最高責任者と同一視する事自体、妙な発想だ。
大体歴史上、雨風を呼んだ軍師など存在しない。
それは雨乞い呪術師の仕事。更には雨乞いの成、不成功は考えない物とする。
100万の兵員だと?ハッ!
ただ、人間の感性とは分からないもので、ゴーン少佐は、この頭の悪い評価を大いに喜んで、作戦参謀軍師と、公的でない場では自称する事になる。
……なんだかなぁ……
「ははは。アル技官は噂に違わずユニークな人の様だ、だが軍師は気に入った、勝利せしめる存在か」
スゲえ、サラッと流した。
こんな感じで、一同の少佐に対する好感度が爆上げした。
「ガリレイ技術少尉の話では、三種類の砲弾を開発したと聞いた。今のは砲撃散弾とでも言うべきか。対人砲撃か……」
そう、破壊対物目的、牽制目的でない、殺傷目的の対人弾。
今更だが、使用者のモラルが問われる。
砲弾試射は続けられた。
0.3配合は、散弾と判明した。別に散弾は長銃でも有るので理解は早い。
壊れやすい弾殻を中の鉄片が突き破って飛散するのだ、破壊力は長銃の比ではないが。
0.5は最初は分からなかった。100㍍の距離だと、0.8と結果が変わらないからだ。
0.8は、着弾後破裂した。当然中身の鉄片は飛び散り、着弾点を中心に半円状に拡散する。流石に地面下に影響は及ぼせない。
0.3はやはり有効射程は200㍍程だったので、300㍍以降の試射では、省く事とした。
距離が600㍍の時、0.5砲弾は大体500㍍付近で弾け始めて600㍍付近で鉄片は拡散した。
射程距離は600㍍と判明した。
なので、着弾するまで鉄片が破裂しない0.8の有効射程を計測してみた。
中の鉄片を適当に詰めたので、砲弾の重心がバラついた為か誤差が出た。
平均して1100㍍、重心を揃えれば、1200㍍は飛ぶものと推測された。これは改良点として、開発部へ丸投げだ。
砲弾が比較的軽い為、最大飛距離が伸びている様だ
結論から言えば、全て対人弾と判明した。
砲兵は支援攻撃が主な任務だ。だから、被弾した死体はあまり見ない。
そもそも砲撃被弾なら、死体の損壊が著しく、あまり人の死体だと認識しない。
歩兵に馬鹿にされる所以の一つだが、戦場に有って死が遠いのだ。
この対人弾の開発により、その砲兵の戦場認識を改める必用が生じた。
ゴーン少佐が口外法度を言いつけたのは、その為である。
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