突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!
砲兵科は超不人気兵科
アルとダッドは退出した。
話は済んだ、アルの身分が決まっていなかったので、それに随行する形でダッドは業務から離れていたが、本来ならこの時間は訓練中だ。
もっとも現在は訓練は中止で、先日の演習で破損したヵ所の応急措置や、土嚢の撤去(工兵は片付まではしない)
砲撃による通用路の修復に人員が回されていた。
ダッドは大義名分の元、堂々とサボっている形になる。
「どのみち、移動架台を作らなければ、何も出来ないな」
「仕方ない、城塞の方へ行くか。
……軍曹達は簡単に言うけどさ、例えば便所で生活してみ、便所で飯食って、便所で寝るの想像してごらん」
「……凄え嫌だ。いつもそうなのか?」
「だいたい何時もだ。ここも演習直後は凄かった。何か軍人の三号が増えたし」
「……なあ、つまり人は死ぬと、その黒い霧みたいになって、たまに人の形になるって事か?」
「しらね、俺がイカれているだけかも知らん」
「いや、イカれてるのは周知だが、イカれていればウンコ臭い匂いまみれになるとは、聞いた事がない」
「おやおや、軍曹にイカれていると言われる日が来ようとは、長生きはするもんだ」
「何なら、その長寿記録を今日でストップするか」
などと呑気な会話を交わしていると、見慣れない上官を、ダッドは目敏く見つけた。
まあ、下士官の悲しい性だ。
階級章は大尉、所属は記章から作戦参謀本部と知れる。
少尉から、参謀本部よりケツを蹴られていると聞いていたので、
隣の馬鹿が奇声を上げる前に、極て自然な動作で回れ右をした。
参謀大尉は、大手門の破損門扉を引見していて、まだこちらに気がついていなかった。
「なんだよ、軍曹いきなり?小便か?」
「ジジイじゃあるまいし、小便ばかり出るかよ、城塞の開発部の工房へいくなら、車両持ってくだろ、なら、コロンボとブブエロに持って行かそう」
ダッド砲班はそれぞれ昇格していて、コロンボ砲兵伍長は軍曹に、ブブエロ一等卒は上等卒になっていた。
コロンボは軍曹に昇格したことにより、砲班長の資格を有したので、空きの多くなった第三砲台の何れかの台場の砲手に任命される。
現在はまだ任命前で、ダッド砲班の班員だ。
ブブエロが掃除手から装填手に任務変更となる。掃除手は現段階では配員未定だ。
態々遠回りをして、コロンボとブブエロを回収し、接収を免れたアルの車両、愛称マークを押して第三砲台を後にした。
「伍長さん、ブブさん、補修作業は良いのか?あんまし捗って無いみたいだけど」
コロンボ軍曹については、ダッドと同じ理由で伍長呼びだが、ブブエロは短縮形に敬称を付けただけだ、だが、本人に受けた。
なんでも、出身部族の昔の英雄に、ブブサンと云う阿呆鳥の加護持ちの戦士がいたそうな。
阿呆鳥の加護、侮れないかも知れない。
「本職に直させるさ、あと、俺軍曹ね」
「班長がサボってイるのに、やっテらんね」
「まあ、そんな訳でコイツらもサボらせてやりたくてな」
因みに、この面子は火砲術研究室に強制的に加盟だ。手当は付くらしい。
“マーク”は現在火砲を外してあるから空荷だ。だからじゃんけんで負けた者が押して、勝った者が荷台上だ。
湾内を高速艇で移動すれば、軍港まで10分もかからないが、現物見本で“マーク”を見せねばならないから、陸上移動だ。
「なあ、軍曹」
「なんだ」
「なんだい」
ダッドとコロンボだ。
「伍長さん、紛らわしいから伍長で通して」
「なんだそりゃ」
「諦めろコロンボ、俺は諦めた。馬鹿は強い。いくら言っても、三歩で忘れる」
“マーク”を押しているのはアルだ。言い出しっぺもアルだから自業自得だ。
「伍長さん、軍曹の所から独立するんだろ、補充に誰がくるの?伍長さんに残留して貰えないのか」
「それがな、今砲手が足んなくてな、それに砲手ってのは班長だから、人材がなぁ、コロンボみたいに軍歴が長くないと務まんねぇ」
「まあ、班長ん所は面白いから、砲班長やりたくは無いんだけどね」
「ふーん、この間の輜重科の兵卒、あいつ引っ張ってこれない?兵科違うけど、一番下っ端だし、仕事はこれから覚えれば良いし」
「ああ、あいつな、なんつったかな、ピ?ピ何とかな。本人が転科願いを出せば何とかなる。本人出世したがってたから、脈はあるかもな」
「いっそ、全兵科に募集出す?物好きが転科してくるかもよ」
「でも歩兵科ハ駄目ダ、あいつらハ憎たらしイ、砲兵馬鹿ニしやがる」
「まあ、これを押す要員として募集掛けるのも良いかもな、少尉に進言してみよう」
士官にとっては、砲兵科は出世が早い兵科だが、下士官、兵卒には人気はない。
戦場の華は騎兵だ。重装も軽装も人気兵科だ。
次いで歩兵科。重装歩兵がやはり人気だが、これはかなり倍率が高い。
歩兵に軽装歩兵はない。これは当然で軽装歩兵とは普通の歩兵だ。
重装歩兵に次いで人気なのが猟兵、狙撃専門の歩兵だ。
不人気なのが工兵で、一般歩兵より人気が無く、輜重科よりはマシと云う具合だ。
砲兵科はその輜重科の下で、なり手はまず無い。
砲兵科は後方支援が主で、つまり地味だ。
砲手がまだ人気的にマシだが、掃除手となると……いや、そもそも掃除手の存在自体が認知されていない。
兵員自体が不足兵科の為、今回兵員の大量処分で空いた穴はそう簡単に塞がらない。
他兵科からの募集は、まあ、やらないよりは良いかも、といったものである。
 当人達はその程度の認識だったが、実は“マークⅡ”の勇姿は深く兵士の心掴んだようだ。
第三砲台付火砲術研究室に、アル達が所属している事が知れると、第三砲台人員募集と同時に転科願いが続出した。
騎兵に成れない、重装兵に成れない、射撃の才能が無い、輜重兵は詰まらない、といった歩兵、輜重兵が機動砲兵に目を付けたのだ。
呑気に交わした雑談から、兵員不足が解消してしまった。
話は済んだ、アルの身分が決まっていなかったので、それに随行する形でダッドは業務から離れていたが、本来ならこの時間は訓練中だ。
もっとも現在は訓練は中止で、先日の演習で破損したヵ所の応急措置や、土嚢の撤去(工兵は片付まではしない)
砲撃による通用路の修復に人員が回されていた。
ダッドは大義名分の元、堂々とサボっている形になる。
「どのみち、移動架台を作らなければ、何も出来ないな」
「仕方ない、城塞の方へ行くか。
……軍曹達は簡単に言うけどさ、例えば便所で生活してみ、便所で飯食って、便所で寝るの想像してごらん」
「……凄え嫌だ。いつもそうなのか?」
「だいたい何時もだ。ここも演習直後は凄かった。何か軍人の三号が増えたし」
「……なあ、つまり人は死ぬと、その黒い霧みたいになって、たまに人の形になるって事か?」
「しらね、俺がイカれているだけかも知らん」
「いや、イカれてるのは周知だが、イカれていればウンコ臭い匂いまみれになるとは、聞いた事がない」
「おやおや、軍曹にイカれていると言われる日が来ようとは、長生きはするもんだ」
「何なら、その長寿記録を今日でストップするか」
などと呑気な会話を交わしていると、見慣れない上官を、ダッドは目敏く見つけた。
まあ、下士官の悲しい性だ。
階級章は大尉、所属は記章から作戦参謀本部と知れる。
少尉から、参謀本部よりケツを蹴られていると聞いていたので、
隣の馬鹿が奇声を上げる前に、極て自然な動作で回れ右をした。
参謀大尉は、大手門の破損門扉を引見していて、まだこちらに気がついていなかった。
「なんだよ、軍曹いきなり?小便か?」
「ジジイじゃあるまいし、小便ばかり出るかよ、城塞の開発部の工房へいくなら、車両持ってくだろ、なら、コロンボとブブエロに持って行かそう」
ダッド砲班はそれぞれ昇格していて、コロンボ砲兵伍長は軍曹に、ブブエロ一等卒は上等卒になっていた。
コロンボは軍曹に昇格したことにより、砲班長の資格を有したので、空きの多くなった第三砲台の何れかの台場の砲手に任命される。
現在はまだ任命前で、ダッド砲班の班員だ。
ブブエロが掃除手から装填手に任務変更となる。掃除手は現段階では配員未定だ。
態々遠回りをして、コロンボとブブエロを回収し、接収を免れたアルの車両、愛称マークを押して第三砲台を後にした。
「伍長さん、ブブさん、補修作業は良いのか?あんまし捗って無いみたいだけど」
コロンボ軍曹については、ダッドと同じ理由で伍長呼びだが、ブブエロは短縮形に敬称を付けただけだ、だが、本人に受けた。
なんでも、出身部族の昔の英雄に、ブブサンと云う阿呆鳥の加護持ちの戦士がいたそうな。
阿呆鳥の加護、侮れないかも知れない。
「本職に直させるさ、あと、俺軍曹ね」
「班長がサボってイるのに、やっテらんね」
「まあ、そんな訳でコイツらもサボらせてやりたくてな」
因みに、この面子は火砲術研究室に強制的に加盟だ。手当は付くらしい。
“マーク”は現在火砲を外してあるから空荷だ。だからじゃんけんで負けた者が押して、勝った者が荷台上だ。
湾内を高速艇で移動すれば、軍港まで10分もかからないが、現物見本で“マーク”を見せねばならないから、陸上移動だ。
「なあ、軍曹」
「なんだ」
「なんだい」
ダッドとコロンボだ。
「伍長さん、紛らわしいから伍長で通して」
「なんだそりゃ」
「諦めろコロンボ、俺は諦めた。馬鹿は強い。いくら言っても、三歩で忘れる」
“マーク”を押しているのはアルだ。言い出しっぺもアルだから自業自得だ。
「伍長さん、軍曹の所から独立するんだろ、補充に誰がくるの?伍長さんに残留して貰えないのか」
「それがな、今砲手が足んなくてな、それに砲手ってのは班長だから、人材がなぁ、コロンボみたいに軍歴が長くないと務まんねぇ」
「まあ、班長ん所は面白いから、砲班長やりたくは無いんだけどね」
「ふーん、この間の輜重科の兵卒、あいつ引っ張ってこれない?兵科違うけど、一番下っ端だし、仕事はこれから覚えれば良いし」
「ああ、あいつな、なんつったかな、ピ?ピ何とかな。本人が転科願いを出せば何とかなる。本人出世したがってたから、脈はあるかもな」
「いっそ、全兵科に募集出す?物好きが転科してくるかもよ」
「でも歩兵科ハ駄目ダ、あいつらハ憎たらしイ、砲兵馬鹿ニしやがる」
「まあ、これを押す要員として募集掛けるのも良いかもな、少尉に進言してみよう」
士官にとっては、砲兵科は出世が早い兵科だが、下士官、兵卒には人気はない。
戦場の華は騎兵だ。重装も軽装も人気兵科だ。
次いで歩兵科。重装歩兵がやはり人気だが、これはかなり倍率が高い。
歩兵に軽装歩兵はない。これは当然で軽装歩兵とは普通の歩兵だ。
重装歩兵に次いで人気なのが猟兵、狙撃専門の歩兵だ。
不人気なのが工兵で、一般歩兵より人気が無く、輜重科よりはマシと云う具合だ。
砲兵科はその輜重科の下で、なり手はまず無い。
砲兵科は後方支援が主で、つまり地味だ。
砲手がまだ人気的にマシだが、掃除手となると……いや、そもそも掃除手の存在自体が認知されていない。
兵員自体が不足兵科の為、今回兵員の大量処分で空いた穴はそう簡単に塞がらない。
他兵科からの募集は、まあ、やらないよりは良いかも、といったものである。
 当人達はその程度の認識だったが、実は“マークⅡ”の勇姿は深く兵士の心掴んだようだ。
第三砲台付火砲術研究室に、アル達が所属している事が知れると、第三砲台人員募集と同時に転科願いが続出した。
騎兵に成れない、重装兵に成れない、射撃の才能が無い、輜重兵は詰まらない、といった歩兵、輜重兵が機動砲兵に目を付けたのだ。
呑気に交わした雑談から、兵員不足が解消してしまった。
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