突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!
レオンの嫌疑
時刻は午後10時を回っていた。一行は月明かりに助けられ、無灯火で街道を西進していた。
軍事調練の夜間行軍をこなしていた本職と違い、アルは足元の不安に難渋していた。
(街道は掃除屋が整備するから、何か落ちていて蹴躓く事は無いけどさぁ、たまにウンコ落ちてるからな、ムカつくんだよね。糞も片付けろや)
動物の物だろう、ついさっき踏んだ。
(冗談じゃねぇ、まだ臭ェ……ん、3号?)
「おい先生、街道別れてるけど、こっちで良いか?」
アルは、3号が指さしたほうの路を指差した。
「ああ、夜道なのに、良く気がついたね、湾東の第三砲台だから、そうだよ」
一行は街道を逸れていく。
3号はそれを見ているのか、いないのか、ただ馬鹿みたいにゲラゲラ笑っていた。 
(全く不愉快な馬鹿だ。ババアん時はケツ蹴りやがるしな、ん?別の3号だったか?)
そんな事を考えて、道なりに進んでいたら、混成歩兵大隊の後陣が見えてきた。
と、同時に、騎兵が数騎駆けてきた。
「止まれ!そこの輜重分隊、こんな夜半に何をしている、所属と官姓名を名乗れ!」
「うおっ軍隊だ、騎兵隊だ、憲兵だ……」の途中で軍曹に口を押さえられた。
彼らは憲兵では無く、歩哨兵で、任務のために騎乗しているだけで、騎兵隊ではない。
アルは知ったかぶった知識を放言しただけで、発言に意味はない。
ただ放っておくと、どんな爆弾発言が出るかわからないので、軍曹は早々に口を封じた。
「第三砲台一号台場守、准尉、レオン.パルト。任務で新型砲の受領した帰りに、即時帰還の命令と第三砲台攻略中の混成歩兵大隊への合流を命じられた、これが命令書だ」
下馬した歩哨兵は命令書を確認し、本物の命令書だと確証を得ると、初めて敬礼した。
「役儀とはいえ、失礼しました。司令部にはまだのようでしたら、案内いたします」
「ああ、頼む、それから隊員は砲兵小隊の方に誘導してくれ。」
そうして、一行は2手に別れた。
陣中を歩哨に案内され、陣中央の本陣に着いた。午後の11時を回っていたが、本陣の幕舎をくぐると今だ軍議中だった。レオンに視線が集まる。
「第三砲台一号台場守、レオン.パルト。現刻をもって混成歩兵大隊に合流いたしました」
「大隊指揮官のブロスだ、貴官の到着を待っていた」
ブロスは陸軍歩兵科の中佐だ、第三砲台攻略のため、4個歩兵中隊が預けられていた。
二人は敬礼を交わす。
「総合司令部参謀本部、作戦参謀ゴーンだ、貴官には嫌疑が掛かっている」
単刀直入だ、現在攻略中の部署所属だ、当然だろう。
「どのような嫌疑でしょうか、このように司令に従い、強行軍で合流いたしましたが」
「貴官の出張は、現在攻略中の第三砲台守備ビンゴの上申だった。
今回の内乱に示し合わせ、熟練砲手を外部に放出するのが、貴官の役割だったのでは?
まだある、貴官は帰路小隊の指揮を委譲し、単独行動をとった。
これはビンゴに、鳩、犬、早船などで通信連絡のためではないのか?」
………なるほど、さすがは参謀だ。そういう見方もあるのか。
レオンは逆に感心した。それから立場が悪くならない様、道中考えた言い訳をする。
「なるほど、小官の上官は確かにビンゴ大尉ですが、小官は第三砲台に配属されてまだ一月です。
大尉の人となりも知らなければ、信条も存じません。
知った所で今回の反逆には加わる事など無かったでしょう」
「なぜそう言いきれる?」
「今回の反逆行為に、意味を見いだせないからです。何故彼等はこんな無意味な事をしたのでしょうか?」
「続けてくれ」ブロス中佐が促す
「ナザレが海上封鎖された事で、第二、第三砲台の反逆が、国籍不明艦隊と連携している事が知れました。
一見、一大事に見えますが、たかが一個艦隊、二砲台の砲撃ではナザレ城塞は攻略不能でしょう、それは先方も承知の上」
「ふむ、続けたまえ」とゴーン参謀大尉
「とすると、ナザレ攻略が目的ではなく、海上封鎖自体が目的と考えられます。
ですが、永遠に封鎖出来る筈もなく、目標日数の封鎖がねらいで、目標達成と同時に、彼等を回収し撤退するでしょう」
「このように、実に大した事のない軍事行動に雷同し、祖国や家族を捨てるなどあり得ないのです」
「さすが、士官学校砲兵科主席」
「及第ですな、さすがではある」
「?小官を試されたので」
「いや、完全に嫌疑が晴れた訳ではない。ないが今の自己弁護に、破綻がない事を認めただけだ」
「大尉、あまり虐めるな、だが、如何なる理由が有ろうと、指揮官不在の状態を造り出した失態は消せない」
正論にぐうの音も出なかった。
「失態を帳消しにするような戦功をあげろ、
砲兵指揮官として、第三砲台攻略の所見を述べよ」
レオンは机の上に広げられている、かなり大きな尺度で書かれた、第三砲台周辺地図の一点を指差した。
「ここに土嚢を積み、砲台を築き、橋頭堡にします」
軍事調練の夜間行軍をこなしていた本職と違い、アルは足元の不安に難渋していた。
(街道は掃除屋が整備するから、何か落ちていて蹴躓く事は無いけどさぁ、たまにウンコ落ちてるからな、ムカつくんだよね。糞も片付けろや)
動物の物だろう、ついさっき踏んだ。
(冗談じゃねぇ、まだ臭ェ……ん、3号?)
「おい先生、街道別れてるけど、こっちで良いか?」
アルは、3号が指さしたほうの路を指差した。
「ああ、夜道なのに、良く気がついたね、湾東の第三砲台だから、そうだよ」
一行は街道を逸れていく。
3号はそれを見ているのか、いないのか、ただ馬鹿みたいにゲラゲラ笑っていた。 
(全く不愉快な馬鹿だ。ババアん時はケツ蹴りやがるしな、ん?別の3号だったか?)
そんな事を考えて、道なりに進んでいたら、混成歩兵大隊の後陣が見えてきた。
と、同時に、騎兵が数騎駆けてきた。
「止まれ!そこの輜重分隊、こんな夜半に何をしている、所属と官姓名を名乗れ!」
「うおっ軍隊だ、騎兵隊だ、憲兵だ……」の途中で軍曹に口を押さえられた。
彼らは憲兵では無く、歩哨兵で、任務のために騎乗しているだけで、騎兵隊ではない。
アルは知ったかぶった知識を放言しただけで、発言に意味はない。
ただ放っておくと、どんな爆弾発言が出るかわからないので、軍曹は早々に口を封じた。
「第三砲台一号台場守、准尉、レオン.パルト。任務で新型砲の受領した帰りに、即時帰還の命令と第三砲台攻略中の混成歩兵大隊への合流を命じられた、これが命令書だ」
下馬した歩哨兵は命令書を確認し、本物の命令書だと確証を得ると、初めて敬礼した。
「役儀とはいえ、失礼しました。司令部にはまだのようでしたら、案内いたします」
「ああ、頼む、それから隊員は砲兵小隊の方に誘導してくれ。」
そうして、一行は2手に別れた。
陣中を歩哨に案内され、陣中央の本陣に着いた。午後の11時を回っていたが、本陣の幕舎をくぐると今だ軍議中だった。レオンに視線が集まる。
「第三砲台一号台場守、レオン.パルト。現刻をもって混成歩兵大隊に合流いたしました」
「大隊指揮官のブロスだ、貴官の到着を待っていた」
ブロスは陸軍歩兵科の中佐だ、第三砲台攻略のため、4個歩兵中隊が預けられていた。
二人は敬礼を交わす。
「総合司令部参謀本部、作戦参謀ゴーンだ、貴官には嫌疑が掛かっている」
単刀直入だ、現在攻略中の部署所属だ、当然だろう。
「どのような嫌疑でしょうか、このように司令に従い、強行軍で合流いたしましたが」
「貴官の出張は、現在攻略中の第三砲台守備ビンゴの上申だった。
今回の内乱に示し合わせ、熟練砲手を外部に放出するのが、貴官の役割だったのでは?
まだある、貴官は帰路小隊の指揮を委譲し、単独行動をとった。
これはビンゴに、鳩、犬、早船などで通信連絡のためではないのか?」
………なるほど、さすがは参謀だ。そういう見方もあるのか。
レオンは逆に感心した。それから立場が悪くならない様、道中考えた言い訳をする。
「なるほど、小官の上官は確かにビンゴ大尉ですが、小官は第三砲台に配属されてまだ一月です。
大尉の人となりも知らなければ、信条も存じません。
知った所で今回の反逆には加わる事など無かったでしょう」
「なぜそう言いきれる?」
「今回の反逆行為に、意味を見いだせないからです。何故彼等はこんな無意味な事をしたのでしょうか?」
「続けてくれ」ブロス中佐が促す
「ナザレが海上封鎖された事で、第二、第三砲台の反逆が、国籍不明艦隊と連携している事が知れました。
一見、一大事に見えますが、たかが一個艦隊、二砲台の砲撃ではナザレ城塞は攻略不能でしょう、それは先方も承知の上」
「ふむ、続けたまえ」とゴーン参謀大尉
「とすると、ナザレ攻略が目的ではなく、海上封鎖自体が目的と考えられます。
ですが、永遠に封鎖出来る筈もなく、目標日数の封鎖がねらいで、目標達成と同時に、彼等を回収し撤退するでしょう」
「このように、実に大した事のない軍事行動に雷同し、祖国や家族を捨てるなどあり得ないのです」
「さすが、士官学校砲兵科主席」
「及第ですな、さすがではある」
「?小官を試されたので」
「いや、完全に嫌疑が晴れた訳ではない。ないが今の自己弁護に、破綻がない事を認めただけだ」
「大尉、あまり虐めるな、だが、如何なる理由が有ろうと、指揮官不在の状態を造り出した失態は消せない」
正論にぐうの音も出なかった。
「失態を帳消しにするような戦功をあげろ、
砲兵指揮官として、第三砲台攻略の所見を述べよ」
レオンは机の上に広げられている、かなり大きな尺度で書かれた、第三砲台周辺地図の一点を指差した。
「ここに土嚢を積み、砲台を築き、橋頭堡にします」
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