突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!

蟹江カニオ

プロローグ

 もし、この世界が無数に分岐した平行世界の中の一つとしたら、
この世界に似たまったく別の世界があっても、おかしく無いだろう。


 その世界は、本当にこちらに似ていた。


 文明を築くほど高度な知能を有する生命体は、人類しか存在せず、亜人など存在しなかった。


 魔法や魔力、魔石なども存在せず、
技術や知識がベースのオカルト的な意味での魔術は、一般的では無いが存在した。


 戦闘において人類は、火と金属から剣を作った。


 安全に殺すため槍を作った。


 一方的に攻撃するために弓を作った。


 蹂躙するために投石機を作った。


そしてそれは徐々に大型化した


 その延長線上に、人は火砲かほうを作った。


 その世界では、集団戦闘において火砲戦術の黎明期であり、効果的な運用は確立していなかった。


 そんな世界で、機動火砲部隊きどうかほうぶたいなる砲兵部隊を編成し、
いささか変態じみた運用をした者達がいた。


 砲兵突撃ほうへいとつげき


 これは何らかの要因で火砲が使用不能になった時、


砲兵を歩兵として運用し突撃攻撃するという意味ではない。


文字通り砲兵自体が機動特攻きどうとっこうをするわけである。 


 砲兵の機動特攻。意味不明である。


 その砲兵科の常識を、まるで無視したのが、


後の世に英雄と呼ばれるレオン.パルトと


 天災の佞人てんさいのねいじん。と嘲られ、憎まれ、笑われ、その狂気を恐れられたアルであった。


 これは、そんな二人の物語である。

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