ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
324 〈跪き、人形に隷属せよ〉
「さあ、救世の転生者を捕らえろ。それで全てが終わる」
続けて【ガラテア】がそう静かに告げた直後、謁見の間の如きその部屋に乱入してきた人形化魔物達が一斉に動き出した。
人の形を模していながらも決して人ではない存在。
少女化魔物達ともかけ離れた異形。
それらもまた他の者達と同様に【ガラテア】の滅尽・複合発露によって操られているのだろうが、恐らく同じ破滅欲求の産物故に叛意は欠片もないに違いない。
まあ、操り人形の如き様相からでは実態など分からないが。
いずれにしても、それらはただ忠実に主の命を果たさんと迫り来る。
対して俺は、相手の出方を見るよりも早く反射的に。
「凍れ」
真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を使用して周囲の全てを凍結させた。
それから改めて、状況を確認しようとする。
しかし、次の瞬間。
「さすがは救世の転生者というところか。だが、甘い」
玉座のように置かれていた奥の椅子の近く。透明な何かに遮られたかの如く小さなドーム状に形成された氷の中から、熊のぬいぐるみが少女の声で嗤う。
どうやら【ガラテア】とそれを抱きかかえていた少女化魔物、そしてアロン兄さんは、俺達が城に突入する際に破ったものと同種の結界で守られていたらしい。
他方、その外側で凍りついていた人形化魔物達は【ガラテア】の声と共に一瞬にして氷を破り、何ごともなかったかのように再び俺に殺到してきた。
【ガラテア】の滅尽・複合発露によって強化されていると思しき人形化魔物達。
さすがに完全に行動不能にすることはできなかったようだ。
風の探知と凍結した一瞬で観察した限り、向かってくる敵は三種合計七十体。
その内訳は――。
「彫像の人形化魔物【アイアンゴーレム】が三十体。雨樋の人形化魔物【ガーゴイル】が三十体。それと拷問器具の人形化魔物【アイアンメイデン】が十体です!」
形状と過去の記録とを照らし合わせ、ルトアさんが正体を断定しながら告げる。
まず【アイアンゴーレム】。【ガラテア】が生じるより以前、普通に人型の彫像が作られていた頃に生じた類型。そういったものが独りでに動き出して人を襲うという妄想の具現。【リビングアーマー】と同系統の人形化魔物と言っていい。
次に【ガーゴイル】。魔除けの役割も持つ悪魔的な意匠の雨樋が、その恐ろしい外見が先行して伝わってしまった結果、魔そのものとして扱われるに至ったもの。
人工物が動く点ではこれも【リビングアーマー】と系統が同じだが、翼によって空を飛ぶことができ、元来の魔除け要素も加わって複合発露への耐性が強い。
「【ガラテア】の発言を鑑みるに、【アイアンメイデン】が本命です! 絶対に捕まらないように気をつけて下さい!」
戦場の緊張感と不安を必死に抑え込むように叫ぶルトアさんに頷いて応えながら全方位に氷の塊を射出し、接近してくる人形化魔物達を牽制する。
【アイアンメイデン】。実在を疑われながらも世に広く知られた拷問器具。
本来は閉じ込めた人間を開閉式の扉の内に備えた釘で突き刺す容器の如き形状だが、人形化魔物となった結果、女性的な人型に無数の釘が生えた姿となっている。
見た感じ、抱擁と共にその釘で突き刺すのが基本的な攻撃手段のようだ。
しかし、滅尽・複合発露を発動させれば恐らく、かの拷問器具の如く姿を変えて対象を拘束し、己の内側に捕らえた者の全身を串刺しにしてしまうことだろう。
その状態で生かさず殺さず、絶えず苦痛を与え続けながら、救世の転生者が最後の観測者となるまで人々の死を見せつける。
【ガラテア】の目的はそんなところだと予想できる。
戦法としては【アイアンゴーレム】が壁となり、【ガーゴイル】が撹乱し、【アイアンメイデン】が捕縛するといったところか。
「さて……」
そういった情報を踏まえた上でどう戦うべきか考える。
「まずは数を減らすのが肝要か」
ここは大広間ではあるものの、さすがにこの数では動きが阻害されてしまう。
特に宙に浮かぶ【ガーゴイル】の群れが邪魔だ。
今の俺の状態では、一足飛びに大将首を狙うにしてもタイムラグが大き過ぎる。
だから俺は影の中から印刀ホウゲツを取り出し、まず最も近い位置にいる【アイアンゴーレム】に切りかかった。しかし――。
「ちっ、硬いな」
道中の【リビングアーマー】と同じく、以前の人形化魔物ならば容易く切り裂くことができたにもかかわらず、その鋼鉄の肌で刃を受け止められてしまう。
それどころか衝撃をものともせずに掴みかかろうとしてくる。
「鈍いっ!」
対して俺はそれを体にかすらせながら避け、真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉の膂力で逆に腕を掴んで最も近い位置にいた【ガーゴイル】に投げつけた。
激しい衝突音が響き渡り、その末に【ガーゴイル】が砕け散る。
どうやら強度的には【アイアンゴーレム】の方が上らしい。
いずれにしても、ここまで破壊されれば消滅するだろう。
つまりは【アイアンゴーレム】を武器にすれば【ガーゴイル】は処理することができるということ。恐らくは【アイアンメイデン】も同様のはずだ。
この方法でまず数を減らす。本命はそれからだ。
俺はそうやって頭の中で方針を立てた。が、それを嘲笑うかのように。
「破滅欲求は破壊によって消失することはない。再び観測者の集合的無意識の底に還るのみ。その流れをこの私が操ってやれば――」
粉々になって消滅を待つばかりだったはずの【ガーゴイル】の欠片が全て逆再生されたようにくっついていき、完全に修復されてしまった。
その【ガーゴイル】はそのまま万全の状態で、再生している間も途切れることなく襲いかかってきていた人形化魔物の集団に再び加わってしまう。
同様の手段を何度か繰り返してみるが、結果は皆同じだった。だから……。
「……破滅欲求の具現とも言える【ガラテア】がいる限り、この場の人形化魔物は無尽蔵に補充されるようなもの、か。なら頭を潰すしか、ない訳だ」
俺はそう口の中で呟くと同時に〈裂雲雷鳥・不羈〉の速度と鋭角な軌跡を以って【ガーゴイル】の合間を縫って空間を翔け、【ガラテア】達の背後に回った。
だが、やはり最高速最短距離とはいかない。
懸念した通り、タイムラグが大きい。
「ああ。そうくるだろうな」
その言葉からしても【ガラテア】には捉えられていることは明白だが、そう理解した上で結界があるだろう空間を狙い、影から取り出した結界通しを振るう。
しかし、切っ先が到達する前に、突如として無数の牙のようなものが結界を上から覆い隠すが如く発生して実体の壁を作り出した。
「くっ」
一芸に特化した結果、それ以外には単なる硬い刀と成り果てている結界通し。
それ故に。その牙にぶち当たった瞬間、刀身が圧し折れてしまう。
しかし、動じている暇はない。
ならばと俺は即座に印刀ホウゲツに持ち替え、その刃を叩きつけた。
が、甲高い音を残すのみで爪の壁に傷がつくことはなかった。
「まだ人形化魔物の伏兵がいたのか!」
その余りの強度にそう判断しながら、しかし、風の探知が敵の存在に反応を示していなかったがために思わず驚愕の声を上げてしまう。
「いいや、どちらも私が操った少女化魔物の力だとも」
対して己の力ではないものを得意気に語る【ガラテア】。
既に自らの勝利を確信しているのだろう。
あるいは誰かとの会話に高揚しているのか。
何にせよ、概念的な強度で人形化魔物に一段以上劣るはずの少女化魔物がこれ程の力を本当に生み出しているとすれば、それだけ確固たる理屈があるということ。
自信がある素振りも理解できなくもない。
「どうやら今回は世界が私に味方しているようだ。こうも都合のいい複合発露を得ることができるとは。……これで、ようやく終わらせることができる」
どこか諦観を湛えた喜びを声色に滲ませた【ガラテア】だが、それは一瞬。
「さあ、シャテン。障害を生み出せ」
それはすぐさま愉悦に塗れた邪悪な声で誰かに指示を出した。
直後、結界突破に失敗した隙を突いて迫り来る【ガーゴイル】から退避せんと高速で移動した俺は、何かにぶつかって動きを遮られる。
「ぐっ、結界かっ!!」
「然り。さあ、逃げ惑え。私の手に落ちるまで!」
続けて【ガラテア】がそう静かに告げた直後、謁見の間の如きその部屋に乱入してきた人形化魔物達が一斉に動き出した。
人の形を模していながらも決して人ではない存在。
少女化魔物達ともかけ離れた異形。
それらもまた他の者達と同様に【ガラテア】の滅尽・複合発露によって操られているのだろうが、恐らく同じ破滅欲求の産物故に叛意は欠片もないに違いない。
まあ、操り人形の如き様相からでは実態など分からないが。
いずれにしても、それらはただ忠実に主の命を果たさんと迫り来る。
対して俺は、相手の出方を見るよりも早く反射的に。
「凍れ」
真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を使用して周囲の全てを凍結させた。
それから改めて、状況を確認しようとする。
しかし、次の瞬間。
「さすがは救世の転生者というところか。だが、甘い」
玉座のように置かれていた奥の椅子の近く。透明な何かに遮られたかの如く小さなドーム状に形成された氷の中から、熊のぬいぐるみが少女の声で嗤う。
どうやら【ガラテア】とそれを抱きかかえていた少女化魔物、そしてアロン兄さんは、俺達が城に突入する際に破ったものと同種の結界で守られていたらしい。
他方、その外側で凍りついていた人形化魔物達は【ガラテア】の声と共に一瞬にして氷を破り、何ごともなかったかのように再び俺に殺到してきた。
【ガラテア】の滅尽・複合発露によって強化されていると思しき人形化魔物達。
さすがに完全に行動不能にすることはできなかったようだ。
風の探知と凍結した一瞬で観察した限り、向かってくる敵は三種合計七十体。
その内訳は――。
「彫像の人形化魔物【アイアンゴーレム】が三十体。雨樋の人形化魔物【ガーゴイル】が三十体。それと拷問器具の人形化魔物【アイアンメイデン】が十体です!」
形状と過去の記録とを照らし合わせ、ルトアさんが正体を断定しながら告げる。
まず【アイアンゴーレム】。【ガラテア】が生じるより以前、普通に人型の彫像が作られていた頃に生じた類型。そういったものが独りでに動き出して人を襲うという妄想の具現。【リビングアーマー】と同系統の人形化魔物と言っていい。
次に【ガーゴイル】。魔除けの役割も持つ悪魔的な意匠の雨樋が、その恐ろしい外見が先行して伝わってしまった結果、魔そのものとして扱われるに至ったもの。
人工物が動く点ではこれも【リビングアーマー】と系統が同じだが、翼によって空を飛ぶことができ、元来の魔除け要素も加わって複合発露への耐性が強い。
「【ガラテア】の発言を鑑みるに、【アイアンメイデン】が本命です! 絶対に捕まらないように気をつけて下さい!」
戦場の緊張感と不安を必死に抑え込むように叫ぶルトアさんに頷いて応えながら全方位に氷の塊を射出し、接近してくる人形化魔物達を牽制する。
【アイアンメイデン】。実在を疑われながらも世に広く知られた拷問器具。
本来は閉じ込めた人間を開閉式の扉の内に備えた釘で突き刺す容器の如き形状だが、人形化魔物となった結果、女性的な人型に無数の釘が生えた姿となっている。
見た感じ、抱擁と共にその釘で突き刺すのが基本的な攻撃手段のようだ。
しかし、滅尽・複合発露を発動させれば恐らく、かの拷問器具の如く姿を変えて対象を拘束し、己の内側に捕らえた者の全身を串刺しにしてしまうことだろう。
その状態で生かさず殺さず、絶えず苦痛を与え続けながら、救世の転生者が最後の観測者となるまで人々の死を見せつける。
【ガラテア】の目的はそんなところだと予想できる。
戦法としては【アイアンゴーレム】が壁となり、【ガーゴイル】が撹乱し、【アイアンメイデン】が捕縛するといったところか。
「さて……」
そういった情報を踏まえた上でどう戦うべきか考える。
「まずは数を減らすのが肝要か」
ここは大広間ではあるものの、さすがにこの数では動きが阻害されてしまう。
特に宙に浮かぶ【ガーゴイル】の群れが邪魔だ。
今の俺の状態では、一足飛びに大将首を狙うにしてもタイムラグが大き過ぎる。
だから俺は影の中から印刀ホウゲツを取り出し、まず最も近い位置にいる【アイアンゴーレム】に切りかかった。しかし――。
「ちっ、硬いな」
道中の【リビングアーマー】と同じく、以前の人形化魔物ならば容易く切り裂くことができたにもかかわらず、その鋼鉄の肌で刃を受け止められてしまう。
それどころか衝撃をものともせずに掴みかかろうとしてくる。
「鈍いっ!」
対して俺はそれを体にかすらせながら避け、真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉の膂力で逆に腕を掴んで最も近い位置にいた【ガーゴイル】に投げつけた。
激しい衝突音が響き渡り、その末に【ガーゴイル】が砕け散る。
どうやら強度的には【アイアンゴーレム】の方が上らしい。
いずれにしても、ここまで破壊されれば消滅するだろう。
つまりは【アイアンゴーレム】を武器にすれば【ガーゴイル】は処理することができるということ。恐らくは【アイアンメイデン】も同様のはずだ。
この方法でまず数を減らす。本命はそれからだ。
俺はそうやって頭の中で方針を立てた。が、それを嘲笑うかのように。
「破滅欲求は破壊によって消失することはない。再び観測者の集合的無意識の底に還るのみ。その流れをこの私が操ってやれば――」
粉々になって消滅を待つばかりだったはずの【ガーゴイル】の欠片が全て逆再生されたようにくっついていき、完全に修復されてしまった。
その【ガーゴイル】はそのまま万全の状態で、再生している間も途切れることなく襲いかかってきていた人形化魔物の集団に再び加わってしまう。
同様の手段を何度か繰り返してみるが、結果は皆同じだった。だから……。
「……破滅欲求の具現とも言える【ガラテア】がいる限り、この場の人形化魔物は無尽蔵に補充されるようなもの、か。なら頭を潰すしか、ない訳だ」
俺はそう口の中で呟くと同時に〈裂雲雷鳥・不羈〉の速度と鋭角な軌跡を以って【ガーゴイル】の合間を縫って空間を翔け、【ガラテア】達の背後に回った。
だが、やはり最高速最短距離とはいかない。
懸念した通り、タイムラグが大きい。
「ああ。そうくるだろうな」
その言葉からしても【ガラテア】には捉えられていることは明白だが、そう理解した上で結界があるだろう空間を狙い、影から取り出した結界通しを振るう。
しかし、切っ先が到達する前に、突如として無数の牙のようなものが結界を上から覆い隠すが如く発生して実体の壁を作り出した。
「くっ」
一芸に特化した結果、それ以外には単なる硬い刀と成り果てている結界通し。
それ故に。その牙にぶち当たった瞬間、刀身が圧し折れてしまう。
しかし、動じている暇はない。
ならばと俺は即座に印刀ホウゲツに持ち替え、その刃を叩きつけた。
が、甲高い音を残すのみで爪の壁に傷がつくことはなかった。
「まだ人形化魔物の伏兵がいたのか!」
その余りの強度にそう判断しながら、しかし、風の探知が敵の存在に反応を示していなかったがために思わず驚愕の声を上げてしまう。
「いいや、どちらも私が操った少女化魔物の力だとも」
対して己の力ではないものを得意気に語る【ガラテア】。
既に自らの勝利を確信しているのだろう。
あるいは誰かとの会話に高揚しているのか。
何にせよ、概念的な強度で人形化魔物に一段以上劣るはずの少女化魔物がこれ程の力を本当に生み出しているとすれば、それだけ確固たる理屈があるということ。
自信がある素振りも理解できなくもない。
「どうやら今回は世界が私に味方しているようだ。こうも都合のいい複合発露を得ることができるとは。……これで、ようやく終わらせることができる」
どこか諦観を湛えた喜びを声色に滲ませた【ガラテア】だが、それは一瞬。
「さあ、シャテン。障害を生み出せ」
それはすぐさま愉悦に塗れた邪悪な声で誰かに指示を出した。
直後、結界突破に失敗した隙を突いて迫り来る【ガーゴイル】から退避せんと高速で移動した俺は、何かにぶつかって動きを遮られる。
「ぐっ、結界かっ!!」
「然り。さあ、逃げ惑え。私の手に落ちるまで!」
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