ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
321 敵地上陸
「私はここまで」
「ありがとうございました、パレットさん」
「ん。頑張って」
そう簡潔ながら激励を残して速やかに転移していくパレットさんを見送り、それから俺達は目的地がある方角へと視線を戻した。
現在地はアフリカ大陸の南東。元の世界でマダガスカルと呼ばれていた島とモザンビーク海峡を挟んで向かい合う海岸だ。
ホウゲツからここまで。一回での移動距離で言うなら今生最長となるだろう。
無論、パレットさん自身が最初からここに転移可能だった訳ではない。
今回の緊急事態における諸々の特例により、昨日の内に転移することができるように色々と準備が整えられていたのだ。
「既に陽動部隊は上陸しているんですよね?」
「ああ。そっちは島に直接転移していっているはずだ」
「当初よりも少なくなったとは言え、それでも一定の数は確保しているとのことなので」「今も順次転移させている最中のはずです」
俺の問いかけにまずシニッドさんが答え、その後にウルさんとルーさんが続く。
この世界の現時点では無人の島。当然と言うべきか、この地を訪れたことのある者が都合よく転移の力を持つ少女化魔物か少女征服者の中にいたりはしなかったらしい。
それ故に今回。ムートとヒメ様直属の諜報員が協力して【ガラテア】の拠点の情報を得た際、彼女の感知の制約から島に上陸する必要があったため、現状を見越して転移の複合発露を扱える者を各国一人ずつ同行させて転移地点を作ったのだ。
……正直なところ、俺は対外向けのポーズのような気もしているが。
いずれにしても、この陸地に敵の本拠地が存在している訳で。
余り長々と探索をして転移可能な地点を増やそうと欲張ってしまうと、相手に気づかれて逆に襲撃を受けてしまうかもしれない。
そのため、ムート達は【ガラテア】の存在を感知してすぐに撤退しており、あの島において公的に利用できるこちら側の転移ポイントは一ヶ所のみ。
陽動部隊を囮にして拠点に突入しようという俺達は、こうして島の外から彼らとは【ガラテア】の拠点を挟んで反対側の海岸に上陸する予定になっていた。
「全員、支給された祈望之器は持ったな?」
人間の中では最年長のシニッドさんが仕切るように、全員を見回して問う。
支給されたのは、トバルとヘスさんが完全複製した第六位階の祈望之器。
その中でも特に真・複合発露による身体強化を大幅に強化してくれるメギンギョルズは、真・暴走・複合発露級が当たり前となる戦場では必要不可欠だろう。
また、オリジナルのクピドの金の矢から複製改良し、狂化隷属の矢よりも大幅に負担が軽減された狂化制御の矢も新たな切り札として重要だ。
トバル達はいい仕事をしてくれている。兄貴分として実に誇らしい。
「島への移動は、イサク達以外はジャスターの影の中だ。行くぞ」
続けて彼は、事前に聞いた段取り通りの指示を出す。
ここから島まで五百キロ以上。
さすがに祈念魔法による飛行では時間がかかり過ぎる。
だから、それぞれシニッドさんの言葉を受けて父さんに近寄っていくが……。
「いやいや待て待て。レンリもこっちじゃろう」
その中で一人、当たり前の顔をして俺の影に入ろうとしていたレンリを、母さんが呆れたような声と共にとどめた。
「ですが、私は旦那様と共にいなくては――」
「気持ちは分かる。妾達も可能ならそうしたい。じゃが、救世の転生者の【ガラテア】に対する特権のようなものは、お前にはないのじゃろう? 決戦の場に妾達がいて万が一奴に操られでもしたら、イサクの足手纏いになりかねん」
「あくまでも俺達は道中のサポートだ。冷静になれ」
「………………御義母様と御義父様の御言葉であれば」
レンリは短くない時間葛藤の表情を浮かべ、それから渋々という感じに応じる。
脳裏に今後の展開を描き、その上で一先ずはそうすべきと判断したのだろう。
「旦那様」
それから彼女は俺の手を取りながら、いつになく硬い表情で見上げてきた。
「どうか、生き残って下さい。旦那様がいなくなってしまったら、私は……」
「分かってる。必ず、未来を掴む」
落ち着いて会話ができるのは今が最後だろうから、と不安を湛えた彼女に微笑みかけ、俺とそう変わらない小さな体を抱き締める。
救世の実態は依然として不明だ。
どこに死の罠が潜んでいるか具体的なことは何も分からないし、かと言って真実を知っている彼女がそれを口にすることもできない。
恐らくレンリが全てを明かそうとしたら、現状の救世の形を維持しようとしている者達はまず間違いなく彼女の口封じを行うことだろう。
たとえ今この場の作戦に大きな支障が出たとしても。
レンリを代償として真実を知ったところで何の意味もない。
その先の未来を、胸を張って生きることはできない。
彼女自身、そうした俺の気持ちを重々理解してくれているから、我が身を犠牲にするような選択肢は排除してくれている。
だからこそ俺は、このまま先の見えない道を進み、死の罠を乗り越えて新たな形の救世を成し遂げなければならないのだ。そして、必ず成し遂げて見せる。
その思いを込めて彼女を抱く力を強め、それから体を離す。
レンリはそんな俺を少し潤んだ瞳で見上げてきていた。
今にも目を閉じて口づけを望んできそうな雰囲気だが……。
「イサクは転生者だからともかくとして、レンリは随分とませておるな」
それをすぐ傍で見守っていた母さんに首を傾げるようにしながら言われ、レンリは状況を思い出したのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。
常日頃から割と過激な愛情表現を口にしている彼女だが、さすがに我を忘れかけた行動を見られるのは恥ずかしいらしい。
可哀想なので、ちょっと話題を逸らしておこう。
「あれ? 母さんには言ってなかったっけ? レンリは二十歳だよ」
「な、何じゃと!? それが何故、セトの同級生なぞに……」
「え、ええと、その……話せば、そこそこ長くなってしまいますが――」
「……それはまた後にしよう。そろそろ先遣の陽動部隊が交戦を開始していてもおかしくない。いい加減、俺達も出発すべきだ」
見た感じ、父さんも隠しごとを取り払ったレンリの身の上話に興味がないようではなかったが、この作戦自体には関係のない話なので切り上げようと促す。
「……そうじゃな。イサクの言う未来で、存分に聞かせて貰うとしよう」
それを受けて母さんは一つ頷きながら呟き、一度だけ俺に無事を強く願うような目を向けてから、レンリを伴って父さんの影の中に入っていった。
続いて、俺達の様子を呆れ気味に見ていたシニッドさん達も。
口数が少なく若干気負った風だったガイオさん達も彼らに似たような気配を湛えていたところを見るに、今のやり取りが緊張感の緩和に役立ったようだ。
無意味な時間ではなかったと言っていいだろう。
ともあれ。そうして俺達は今度こそ砂浜を飛び立ち、目的地の島を目指した。
光速と、メギンギョルズの完全複製品の力で最大限再現された雷速。
それでも父さんに比べてワンテンポ遅れての到着になってしまうが、過度なタイムラグはない。数秒の内に海峡を越えて、あちら側の海岸に降り立つ。
「ここからは慎重に行くぞ」
着陸と同時に影の中から出てきたシニッドさんが告げ、ムートが伝える【ガラテア】の本拠地の位置情報を基に彼女の先導で進んでいく。
「今のところー、私達に気づいた様子はありませんねー」
そうしながら、相変わらずの呑気な口調で告げるムート。
大地を司るベヒモスの少女化魔物たる彼女が地に足をつけていれば、敵の位置はほぼ全て把握することができ……。
もし空からの脅威があれば、空を司るジズの少女化魔物アスカが気づく。
先制攻撃に晒される危険性は限りなく低い。それでも――。
「油断は禁物だ」
シニッドさん達の強化された嗅覚と俺の風による探知を加え、警戒を厳としながら目的地を目指して手つかずの大地を行く。
まあ、慎重とは言っても、メギンギョルズの力で極限まで強化された身体強化。
その速度は並ではない。
十数分、道なき道を身体能力に任せて突き進んでいき、人の手で破壊されていない豊かな森林を抜けて中央の高地を登っていくと……。
「……あれですねー。趣味が悪いにも程がありますー」
「ああ。あからさま過ぎるな」
視界が完全に開けたところで、禍々しい巨大な城が視界に入った。
黒を基調とし、人が中に入っていけなさそうな無駄に鋭い尖塔がいくつもある。
まるでRPGに登場する魔王城のようだ。
俺達はそれを視界に捉え、一層周囲に気を配りながら更に近づいていく。
「あ痛あー」
と、先頭を駆けていたムートが勢いよく何かにぶつかったかのようにゴツンという音と共に体を仰け反らせ、酷く間延びした悲鳴を上げた。
その珍妙さに一瞬緊張感が揺らぎかけるが、世界最高峰の身体強化状態にある彼女がダメージを受けている異常に空気が一気に張り詰める。
「これは……」
俺はそんなムートの傍に寄り、パントマイムの如く眼前の空間を手で探った。
すると、何やら硬質的なものに触れた感触があり、それをコンコンと叩く。
「かなり硬いな」
どうやら、不可視の壁によって進行を阻まれてしまっているようだった。
「ありがとうございました、パレットさん」
「ん。頑張って」
そう簡潔ながら激励を残して速やかに転移していくパレットさんを見送り、それから俺達は目的地がある方角へと視線を戻した。
現在地はアフリカ大陸の南東。元の世界でマダガスカルと呼ばれていた島とモザンビーク海峡を挟んで向かい合う海岸だ。
ホウゲツからここまで。一回での移動距離で言うなら今生最長となるだろう。
無論、パレットさん自身が最初からここに転移可能だった訳ではない。
今回の緊急事態における諸々の特例により、昨日の内に転移することができるように色々と準備が整えられていたのだ。
「既に陽動部隊は上陸しているんですよね?」
「ああ。そっちは島に直接転移していっているはずだ」
「当初よりも少なくなったとは言え、それでも一定の数は確保しているとのことなので」「今も順次転移させている最中のはずです」
俺の問いかけにまずシニッドさんが答え、その後にウルさんとルーさんが続く。
この世界の現時点では無人の島。当然と言うべきか、この地を訪れたことのある者が都合よく転移の力を持つ少女化魔物か少女征服者の中にいたりはしなかったらしい。
それ故に今回。ムートとヒメ様直属の諜報員が協力して【ガラテア】の拠点の情報を得た際、彼女の感知の制約から島に上陸する必要があったため、現状を見越して転移の複合発露を扱える者を各国一人ずつ同行させて転移地点を作ったのだ。
……正直なところ、俺は対外向けのポーズのような気もしているが。
いずれにしても、この陸地に敵の本拠地が存在している訳で。
余り長々と探索をして転移可能な地点を増やそうと欲張ってしまうと、相手に気づかれて逆に襲撃を受けてしまうかもしれない。
そのため、ムート達は【ガラテア】の存在を感知してすぐに撤退しており、あの島において公的に利用できるこちら側の転移ポイントは一ヶ所のみ。
陽動部隊を囮にして拠点に突入しようという俺達は、こうして島の外から彼らとは【ガラテア】の拠点を挟んで反対側の海岸に上陸する予定になっていた。
「全員、支給された祈望之器は持ったな?」
人間の中では最年長のシニッドさんが仕切るように、全員を見回して問う。
支給されたのは、トバルとヘスさんが完全複製した第六位階の祈望之器。
その中でも特に真・複合発露による身体強化を大幅に強化してくれるメギンギョルズは、真・暴走・複合発露級が当たり前となる戦場では必要不可欠だろう。
また、オリジナルのクピドの金の矢から複製改良し、狂化隷属の矢よりも大幅に負担が軽減された狂化制御の矢も新たな切り札として重要だ。
トバル達はいい仕事をしてくれている。兄貴分として実に誇らしい。
「島への移動は、イサク達以外はジャスターの影の中だ。行くぞ」
続けて彼は、事前に聞いた段取り通りの指示を出す。
ここから島まで五百キロ以上。
さすがに祈念魔法による飛行では時間がかかり過ぎる。
だから、それぞれシニッドさんの言葉を受けて父さんに近寄っていくが……。
「いやいや待て待て。レンリもこっちじゃろう」
その中で一人、当たり前の顔をして俺の影に入ろうとしていたレンリを、母さんが呆れたような声と共にとどめた。
「ですが、私は旦那様と共にいなくては――」
「気持ちは分かる。妾達も可能ならそうしたい。じゃが、救世の転生者の【ガラテア】に対する特権のようなものは、お前にはないのじゃろう? 決戦の場に妾達がいて万が一奴に操られでもしたら、イサクの足手纏いになりかねん」
「あくまでも俺達は道中のサポートだ。冷静になれ」
「………………御義母様と御義父様の御言葉であれば」
レンリは短くない時間葛藤の表情を浮かべ、それから渋々という感じに応じる。
脳裏に今後の展開を描き、その上で一先ずはそうすべきと判断したのだろう。
「旦那様」
それから彼女は俺の手を取りながら、いつになく硬い表情で見上げてきた。
「どうか、生き残って下さい。旦那様がいなくなってしまったら、私は……」
「分かってる。必ず、未来を掴む」
落ち着いて会話ができるのは今が最後だろうから、と不安を湛えた彼女に微笑みかけ、俺とそう変わらない小さな体を抱き締める。
救世の実態は依然として不明だ。
どこに死の罠が潜んでいるか具体的なことは何も分からないし、かと言って真実を知っている彼女がそれを口にすることもできない。
恐らくレンリが全てを明かそうとしたら、現状の救世の形を維持しようとしている者達はまず間違いなく彼女の口封じを行うことだろう。
たとえ今この場の作戦に大きな支障が出たとしても。
レンリを代償として真実を知ったところで何の意味もない。
その先の未来を、胸を張って生きることはできない。
彼女自身、そうした俺の気持ちを重々理解してくれているから、我が身を犠牲にするような選択肢は排除してくれている。
だからこそ俺は、このまま先の見えない道を進み、死の罠を乗り越えて新たな形の救世を成し遂げなければならないのだ。そして、必ず成し遂げて見せる。
その思いを込めて彼女を抱く力を強め、それから体を離す。
レンリはそんな俺を少し潤んだ瞳で見上げてきていた。
今にも目を閉じて口づけを望んできそうな雰囲気だが……。
「イサクは転生者だからともかくとして、レンリは随分とませておるな」
それをすぐ傍で見守っていた母さんに首を傾げるようにしながら言われ、レンリは状況を思い出したのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。
常日頃から割と過激な愛情表現を口にしている彼女だが、さすがに我を忘れかけた行動を見られるのは恥ずかしいらしい。
可哀想なので、ちょっと話題を逸らしておこう。
「あれ? 母さんには言ってなかったっけ? レンリは二十歳だよ」
「な、何じゃと!? それが何故、セトの同級生なぞに……」
「え、ええと、その……話せば、そこそこ長くなってしまいますが――」
「……それはまた後にしよう。そろそろ先遣の陽動部隊が交戦を開始していてもおかしくない。いい加減、俺達も出発すべきだ」
見た感じ、父さんも隠しごとを取り払ったレンリの身の上話に興味がないようではなかったが、この作戦自体には関係のない話なので切り上げようと促す。
「……そうじゃな。イサクの言う未来で、存分に聞かせて貰うとしよう」
それを受けて母さんは一つ頷きながら呟き、一度だけ俺に無事を強く願うような目を向けてから、レンリを伴って父さんの影の中に入っていった。
続いて、俺達の様子を呆れ気味に見ていたシニッドさん達も。
口数が少なく若干気負った風だったガイオさん達も彼らに似たような気配を湛えていたところを見るに、今のやり取りが緊張感の緩和に役立ったようだ。
無意味な時間ではなかったと言っていいだろう。
ともあれ。そうして俺達は今度こそ砂浜を飛び立ち、目的地の島を目指した。
光速と、メギンギョルズの完全複製品の力で最大限再現された雷速。
それでも父さんに比べてワンテンポ遅れての到着になってしまうが、過度なタイムラグはない。数秒の内に海峡を越えて、あちら側の海岸に降り立つ。
「ここからは慎重に行くぞ」
着陸と同時に影の中から出てきたシニッドさんが告げ、ムートが伝える【ガラテア】の本拠地の位置情報を基に彼女の先導で進んでいく。
「今のところー、私達に気づいた様子はありませんねー」
そうしながら、相変わらずの呑気な口調で告げるムート。
大地を司るベヒモスの少女化魔物たる彼女が地に足をつけていれば、敵の位置はほぼ全て把握することができ……。
もし空からの脅威があれば、空を司るジズの少女化魔物アスカが気づく。
先制攻撃に晒される危険性は限りなく低い。それでも――。
「油断は禁物だ」
シニッドさん達の強化された嗅覚と俺の風による探知を加え、警戒を厳としながら目的地を目指して手つかずの大地を行く。
まあ、慎重とは言っても、メギンギョルズの力で極限まで強化された身体強化。
その速度は並ではない。
十数分、道なき道を身体能力に任せて突き進んでいき、人の手で破壊されていない豊かな森林を抜けて中央の高地を登っていくと……。
「……あれですねー。趣味が悪いにも程がありますー」
「ああ。あからさま過ぎるな」
視界が完全に開けたところで、禍々しい巨大な城が視界に入った。
黒を基調とし、人が中に入っていけなさそうな無駄に鋭い尖塔がいくつもある。
まるでRPGに登場する魔王城のようだ。
俺達はそれを視界に捉え、一層周囲に気を配りながら更に近づいていく。
「あ痛あー」
と、先頭を駆けていたムートが勢いよく何かにぶつかったかのようにゴツンという音と共に体を仰け反らせ、酷く間延びした悲鳴を上げた。
その珍妙さに一瞬緊張感が揺らぎかけるが、世界最高峰の身体強化状態にある彼女がダメージを受けている異常に空気が一気に張り詰める。
「これは……」
俺はそんなムートの傍に寄り、パントマイムの如く眼前の空間を手で探った。
すると、何やら硬質的なものに触れた感触があり、それをコンコンと叩く。
「かなり硬いな」
どうやら、不可視の壁によって進行を阻まれてしまっているようだった。
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