ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
251 攻撃無効の刺客達
ランブリク共和国において、人間のみが住む領域にある都市ノースアル。
街一つ丸ごと覆う超巨大な膜を前に、俺は腕を組みながら方針を立てていた。
闘技場の人形化魔物【コロセウム】の滅尽・複合発露が作り出した結界の強度に負け、圧し折れてしまった布都御魂の複製改良品は影にしまってあるが……。
前回はそれを用いて成功していたこともあって、次善の策は示されなかった。
俺もここに来るまでの間に何も考えていなかった訳ではないが、如何せん時間的猶予もなかったため、妙案は一つもない。
……まあ、下手な考え休むに似たりとも言うからな。
【コロセウム】の結界を突破するには現状、祈望之器を使用するしかない以上、速やかにホウゲツに戻ってアマラさんに相談するべきだろう。
「主様っ!!」
頭の中でそう結論していると、影の中からアスカが注意を促すように大きな声で呼びかけてきて、俺はハッとして顔を上げた。
眼前の膜に微妙な変化が生じている。何やら波打っているようだ。
思わず数歩後退して身構えながら、様子を窺っていると――。
「これは……」
ほぼ間を置かず、膜の表面から何かが生じ始める。
やや角度を変えて見てみても、膜の奥側は何も変化していない。
そう観察している間に、生じた何かはすぐに一定の形を作り出していく。
「人間、か?」
輪郭は間違いない。
加えて、どことなくランブリク共和国の(ややアジアっぽい)特徴が感じられる服装から判断する限り、ここノースアルの住人と思われる。
それが一人を皮切りに、次から次へと幾人も膜の中から現れ出てきていた。
が、俺は彼らを即座に人間だと明確に断定できなかった。
外見は一点を除き、この地域の一般的な服を着た極普通の人間だったが……。
「何これ……」
「お化け?」
そうフェリトが不審げに呟き、テアが若干怯え気味の声を出してしまう程に、その一点が余りにも異質だった。
と言うのも、彼らの姿は半透明で奥が透けて見えているるのだ。
正に幽霊のように。
「実体っぽくないです。変です」
勿論、わざわざ幽霊のようにと表現したからには、半透明は半透明でもいわゆるスライムのようなゼリー状という訳ではない。
正にそのスライムの少女化魔物であるリクルも複合発露を使用した時には半透明になるが、光の屈折が存在して奥の景色は歪む。
目の前の存在にはそれがない。
正に非実体的だ。
これに似た特徴は、この世界に実在している幽霊(悪霊)とでも言うべきゴーストの魔物が持っている。が、イリュファの基にもなっているその魔物は、もっと異質な気配を漂わせているため、それに類するものでないことは間違いない。
イリュファが複合発露を使うと若干近い感じになるが、しかし、透過率が全く違う。何と言うか、こちらは余りにも薄過ぎる。
それに、この地域にこんなに多くゴーストの少女化魔物と少女契約をした者がいるはずもない。何より、街を覆っているこの半透明の膜と似た気配を感じる。
「あ、あの――」
いずれにせよ、頭の中でこねくり回していても答えは出ない。
とりあえず情報を得られないか試みようと考え、俺が話しかけた直後。
その言葉を遮るように、先頭の一人が突如として殴りかかってきた。
「な、何をするんですか!?」
「お前、お前を殺しさえすれば!!」
彼は俺の問いに答えになっていない答えを口にしつつ、尚も攻撃と呼ぶには余りにも御粗末な攻撃を仕かけてくる。
それに続いて、奥にいた人々もまた敵意と共に俺へと殺到してきた。
「お前さえ殺せば、全員生きて帰れる!」
「これ以上、家族と殺し合いなんかしなくて済むっ!」
「奴がそう言ったんだ!」
「お前に恨みはないが、死んでくれ!」
口々に勝手なことを言いながら遅いかかってくる彼らの動きは素人そのものながら、何故か単純なスピードだけは一級品だった。
そう言えば、人形化魔物【コロセウム】が作り出した結界の中で生き残った最後の一人は精神干渉と共に身体強化が施されていると聞いた。
あるいは、後者の効果が全員に及んでいるのかもしれない。
拙くとも第六位階相当の攻撃と見なしておくべきだろう。
「……奴、ってのは【コロセウム】のことだな」
そうした住人達の様子から改めて間違いないと確信する。
恐らく彼らを、かの人形化魔物が唆したのだろう。
この結界を破ろうとしている者を殺せば、最後の一人になるまで殺し合いをするまでもなく解放してやる、と。
失敗したとは言え、異次元の結界に攻撃を加えられた事実を脅威に思い、閉じ込めた人々に強制していた殺し合いを中断してまで排除にかかった訳だ。
彼らが疑いを持たないのは精神干渉故か、それとも隣人と殺し合うよりも見知らぬ誰かを殺す方がマシだと考えたからか。
どちらにせよ、状況を思えば仕方がないと感じる部分もあるが、しかし、これはどう考えてもいいように使われているだけとしか思えない。
十中八九、解放されたところでフレギウス王国の時に勝ち残った者と同じように狂戦士の如く気を狂わされ、暴れ続けるだけの存在と成り果てることだろう。
「けど、逆に都合がいいかもしれないな」
そうした状況を前にしながら口の中で呟く。
わざわざ俺達の手の届かない異次元空間から、半ば人質となっているようなものである彼らを出してくれたのだ。
ここで確保することができれば、それは即ち救出に相当する。
だから俺は、内心で謝りながら真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を使用して彼らを凍結させた。……つもりだった。しかし――。
「……まあ、そんなことだろうとは思ったけどさ」
半透明の彼らは、形成された氷の塊の中から何ごともなかったかのように抜け出してきて、そのまま俺に殴りかかってきた。
どうやら結界と同じように、通常の攻撃は透過してしまうらしい。
彼らに意味のない行動をさせているとは思えないので、恐らく彼らが攻撃をする分には瞬間的に実体化するなどして効果があるのだろうが……。
こちらは布都御魂の複製品を使うぐらいしか、反撃の手立てはなさそうだ。もっとも、それは既に破損してしまっているが。
それ以前に、たとえまだ壊れていなかったとしても、あんな物騒なものを一般人相手に振るう訳にはいかない。
「ちっ」
結界に囚われた被害者達は、ただ闇雲に襲いかかってくる。
普通ならば、こんなにも人が殺到していれば互いに衝突し合ってしまい、攻撃をするどころの話ではなくなるはずだ。
しかし、それぞれ更に次元が異なっているのか、重なり合っても干渉することなく、各々が好き勝手な動きで俺を打ち倒さんと迫ってくる。
こちらからの攻撃が通用しない状態で、空間的制約のない大多数に四方八方から殴りかかられれば、さすがの俺も地に足をつけたままでは回避しようがない。
勿論、〈支天神鳥・煌翼〉で身体強化している以上、ダメージはそう大きくないはずだが、この状況を維持していても事態が好転するとは思えない。
そもそもにして、結界を突破して異次元空間に侵入し、その核である【コロセウム】の本体を叩く方法もないままだ。こうなれば――。
「イサク様、撤退しましょう」
「ああ」
当初考えていた通り、そうする以外にない。
だから俺はイリュファの提言に同意し、垂直に飛び上がって空高くに逃れた。
さすがにそこまでは人々も追ってくることはない。
当然と言うべきか、闘技場の人形化魔物である【コロセウム】が使用する滅尽・複合発露には飛行の概念はないようだから。
そして俺は、真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉を用いて一先ずランブリク共和国の都市ノースアルを離れ……。
この状況の対処法をアマラさんに相談するため、ホウゲツへと全速力で戻った。
街一つ丸ごと覆う超巨大な膜を前に、俺は腕を組みながら方針を立てていた。
闘技場の人形化魔物【コロセウム】の滅尽・複合発露が作り出した結界の強度に負け、圧し折れてしまった布都御魂の複製改良品は影にしまってあるが……。
前回はそれを用いて成功していたこともあって、次善の策は示されなかった。
俺もここに来るまでの間に何も考えていなかった訳ではないが、如何せん時間的猶予もなかったため、妙案は一つもない。
……まあ、下手な考え休むに似たりとも言うからな。
【コロセウム】の結界を突破するには現状、祈望之器を使用するしかない以上、速やかにホウゲツに戻ってアマラさんに相談するべきだろう。
「主様っ!!」
頭の中でそう結論していると、影の中からアスカが注意を促すように大きな声で呼びかけてきて、俺はハッとして顔を上げた。
眼前の膜に微妙な変化が生じている。何やら波打っているようだ。
思わず数歩後退して身構えながら、様子を窺っていると――。
「これは……」
ほぼ間を置かず、膜の表面から何かが生じ始める。
やや角度を変えて見てみても、膜の奥側は何も変化していない。
そう観察している間に、生じた何かはすぐに一定の形を作り出していく。
「人間、か?」
輪郭は間違いない。
加えて、どことなくランブリク共和国の(ややアジアっぽい)特徴が感じられる服装から判断する限り、ここノースアルの住人と思われる。
それが一人を皮切りに、次から次へと幾人も膜の中から現れ出てきていた。
が、俺は彼らを即座に人間だと明確に断定できなかった。
外見は一点を除き、この地域の一般的な服を着た極普通の人間だったが……。
「何これ……」
「お化け?」
そうフェリトが不審げに呟き、テアが若干怯え気味の声を出してしまう程に、その一点が余りにも異質だった。
と言うのも、彼らの姿は半透明で奥が透けて見えているるのだ。
正に幽霊のように。
「実体っぽくないです。変です」
勿論、わざわざ幽霊のようにと表現したからには、半透明は半透明でもいわゆるスライムのようなゼリー状という訳ではない。
正にそのスライムの少女化魔物であるリクルも複合発露を使用した時には半透明になるが、光の屈折が存在して奥の景色は歪む。
目の前の存在にはそれがない。
正に非実体的だ。
これに似た特徴は、この世界に実在している幽霊(悪霊)とでも言うべきゴーストの魔物が持っている。が、イリュファの基にもなっているその魔物は、もっと異質な気配を漂わせているため、それに類するものでないことは間違いない。
イリュファが複合発露を使うと若干近い感じになるが、しかし、透過率が全く違う。何と言うか、こちらは余りにも薄過ぎる。
それに、この地域にこんなに多くゴーストの少女化魔物と少女契約をした者がいるはずもない。何より、街を覆っているこの半透明の膜と似た気配を感じる。
「あ、あの――」
いずれにせよ、頭の中でこねくり回していても答えは出ない。
とりあえず情報を得られないか試みようと考え、俺が話しかけた直後。
その言葉を遮るように、先頭の一人が突如として殴りかかってきた。
「な、何をするんですか!?」
「お前、お前を殺しさえすれば!!」
彼は俺の問いに答えになっていない答えを口にしつつ、尚も攻撃と呼ぶには余りにも御粗末な攻撃を仕かけてくる。
それに続いて、奥にいた人々もまた敵意と共に俺へと殺到してきた。
「お前さえ殺せば、全員生きて帰れる!」
「これ以上、家族と殺し合いなんかしなくて済むっ!」
「奴がそう言ったんだ!」
「お前に恨みはないが、死んでくれ!」
口々に勝手なことを言いながら遅いかかってくる彼らの動きは素人そのものながら、何故か単純なスピードだけは一級品だった。
そう言えば、人形化魔物【コロセウム】が作り出した結界の中で生き残った最後の一人は精神干渉と共に身体強化が施されていると聞いた。
あるいは、後者の効果が全員に及んでいるのかもしれない。
拙くとも第六位階相当の攻撃と見なしておくべきだろう。
「……奴、ってのは【コロセウム】のことだな」
そうした住人達の様子から改めて間違いないと確信する。
恐らく彼らを、かの人形化魔物が唆したのだろう。
この結界を破ろうとしている者を殺せば、最後の一人になるまで殺し合いをするまでもなく解放してやる、と。
失敗したとは言え、異次元の結界に攻撃を加えられた事実を脅威に思い、閉じ込めた人々に強制していた殺し合いを中断してまで排除にかかった訳だ。
彼らが疑いを持たないのは精神干渉故か、それとも隣人と殺し合うよりも見知らぬ誰かを殺す方がマシだと考えたからか。
どちらにせよ、状況を思えば仕方がないと感じる部分もあるが、しかし、これはどう考えてもいいように使われているだけとしか思えない。
十中八九、解放されたところでフレギウス王国の時に勝ち残った者と同じように狂戦士の如く気を狂わされ、暴れ続けるだけの存在と成り果てることだろう。
「けど、逆に都合がいいかもしれないな」
そうした状況を前にしながら口の中で呟く。
わざわざ俺達の手の届かない異次元空間から、半ば人質となっているようなものである彼らを出してくれたのだ。
ここで確保することができれば、それは即ち救出に相当する。
だから俺は、内心で謝りながら真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を使用して彼らを凍結させた。……つもりだった。しかし――。
「……まあ、そんなことだろうとは思ったけどさ」
半透明の彼らは、形成された氷の塊の中から何ごともなかったかのように抜け出してきて、そのまま俺に殴りかかってきた。
どうやら結界と同じように、通常の攻撃は透過してしまうらしい。
彼らに意味のない行動をさせているとは思えないので、恐らく彼らが攻撃をする分には瞬間的に実体化するなどして効果があるのだろうが……。
こちらは布都御魂の複製品を使うぐらいしか、反撃の手立てはなさそうだ。もっとも、それは既に破損してしまっているが。
それ以前に、たとえまだ壊れていなかったとしても、あんな物騒なものを一般人相手に振るう訳にはいかない。
「ちっ」
結界に囚われた被害者達は、ただ闇雲に襲いかかってくる。
普通ならば、こんなにも人が殺到していれば互いに衝突し合ってしまい、攻撃をするどころの話ではなくなるはずだ。
しかし、それぞれ更に次元が異なっているのか、重なり合っても干渉することなく、各々が好き勝手な動きで俺を打ち倒さんと迫ってくる。
こちらからの攻撃が通用しない状態で、空間的制約のない大多数に四方八方から殴りかかられれば、さすがの俺も地に足をつけたままでは回避しようがない。
勿論、〈支天神鳥・煌翼〉で身体強化している以上、ダメージはそう大きくないはずだが、この状況を維持していても事態が好転するとは思えない。
そもそもにして、結界を突破して異次元空間に侵入し、その核である【コロセウム】の本体を叩く方法もないままだ。こうなれば――。
「イサク様、撤退しましょう」
「ああ」
当初考えていた通り、そうする以外にない。
だから俺はイリュファの提言に同意し、垂直に飛び上がって空高くに逃れた。
さすがにそこまでは人々も追ってくることはない。
当然と言うべきか、闘技場の人形化魔物である【コロセウム】が使用する滅尽・複合発露には飛行の概念はないようだから。
そして俺は、真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉を用いて一先ずランブリク共和国の都市ノースアルを離れ……。
この状況の対処法をアマラさんに相談するため、ホウゲツへと全速力で戻った。
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