ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
247 保護と回収
いつものように真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉を使用し、茜色からやや薄暗くなった空を翔けていくこと数分。
俺は前世で言うところの長野県に存在する要塞都市ココロバの(雷速に近い速度で移動できる者の主観で)近く。
ユニコーンの少女化魔物とアーヴァンクの少女化魔物がいる千曲川の水源、甲武信ヶ岳山頂付近の更に上空に至っていた。
少し離れた盆地には、人の営みの灯りが円形の防壁を浮かび上がらせている。
確かにあれは、要塞都市と呼ばれるに相応しい。
「……どうやら、山道を封鎖しているようですね」
影の中からのイリュファの言葉を受け、目線をそちらに移す。
視覚が強化された目を更に凝らすと彼女が言った通り、人影が甲武信ヶ岳を取り囲むように配置されている様子が、沈む夕日によって若干赤い視界に映った。
人間至上主義者達が再び現れ、麓から侵入しないように見張っている訳だ。
もっとも、テネシス側には転移の複合発露を持つ少女化魔物がいるので焼石に水かもしれないが……。
まあ、やらないよりはやった方がマシだし、それをしない理由はない。
心の中で労いつつ、俺は俺の仕事を果たそう。
「さて。他にも彼女達を狙っている輩がいることを考えると、山頂一帯を凍結させてサッサと連れていきたいところだけど……」
「ホウゲツ最大の川の水源近くですからね。なるべくなら下流に影響が出ないように、攻撃は最小限に留めるべきだと思います」
「……だな」
イリュファの忠告通り、やるなら少女化魔物だけをピンポイントで狙うべきだ。
水資源は人間にとって最上級に大切なものなのだから。
たとえ前世とは違い、祈念魔法や複合発露が存在していようとも。
祈望之器やその複製品が存在していようとも。
ヨスキ村出身かつ優秀な人物に囲まれているから忘れがちになるが、最低限の祈念魔法しか使えない人間の方が大多数な訳だし、祈望之器も万能ではない。
川の水は生活に必要不可欠と言っていい。
浄化して飲むにしても、ちょっとした物質変換の材料とするにしても。
まあ、少し凍らせるだけならば大きな影響は出ないとは思うけれども、自然のサイクルというものはどこでどう繋がっているか分からないものだ。
ちょっと木を伐採しただけで土砂崩れが起きたり、大洪水が起きたり。
それを思えば、周りを巻き込むのは最後の手段とした方が無難だ。
「じゃあ、防御を固めながら近づいて、対象だけをサクッと凍らせよう」
だから俺は、真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉を発動させながら降下を始めた。
三大特異思念集積体が一体、ジズの少女化魔物たるアスカとのそれを使用した状態ならば、多少暴走しただけの少女化魔物から致命傷を受けるなどあり得ない。
サユキとの〈万有凍結・封緘〉で工夫していた頃が懐かしい。
ともあれ、そうして甲武信ヶ岳山頂付近に近づくと――。
「っと」
突然、山頂から少し離れた地点からウォーターカッターのように鋭い水流がこちらを目がけて放たれ、俺はそれを最小限の動作で回避した。
この攻撃はほぼ確実に、洪水を引き起こしてとある島を滅ぼしかけた逸話のある魔物、アーヴァンクの少女化魔物が持つ複合発露によるものだろう。
「やってることは、水精の少女化魔物とかと同レベルだな」
切断力のある水流は俺の動きに合わせて追尾するように軌道を変化させるが、残念ながら、その速度よりも真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉の方が遥かに速い。
ハッキリ言って、自ら位置を知らせてくれているようなものだ。
……もっとも、そうでなくとも風の探知によって居場所など丸分かりだが。
「あの子か」
それでも正確な姿は木々に隠れているためにまだ見て取れないが、空に描かれた水のアーチの根っこ辺りに華奢な少女の影が見て取れる。
間違いなく彼女がアーヴァンクの少女化魔物だ。
もう一人。本命であるユニコーンの少女化魔物については探知によるとすぐ傍にいるようだが、木々に遮られて視界の中には影も形もない。
「もう凍らせる?」
「いや、風の探知だと若干精度が悪いからな」
「それって、氷の粒子での探知に比べれば、の話でしょ。精々傍にあるものがほんの少し凍るぐらいじゃないの」
サユキの問いかけに対して答えた俺に、フェリトが呆れたように言う。
まあ、それはそうなんだけども。
避けられるのなら、その程度の影響も避けた方がベターだ。
何より――。
「無理に連れていこうとするなら、面と向かい合うのが筋だろう」
凶悪な犯罪者であるなら、いざ知らず。
自己満足に過ぎないだろうが、何が何やら分からぬ内に、というのは可哀想だ。
それに彼女達の性質を考えると恐らく、今後深く関わり合う可能性は低い。
聖女云々は救世の転生者とはまた別の枠組みのはずだから。
基本的に捕らえた後は、トリリス様達に丸投げという形になるに違いない。
たとえラクラちゃんがパートナーになることができたとしても、聖女という肩書きがついてしまえば、彼女自身とも自然と会う機会が減ってしまうだろう。
俺は精々、あいつに捕まえられた、と不満の矛先になるぐらいしか役割がない。
こちらが憎まれ役となれば、トリリス様達も懐柔し易くなるかもしれないし。
逆に誰の仕業かも分からず、知らない間に捕らえられたと彼女達が認識するような状況になったら、最初に目にした相手へと敵意を向けかねない。
だから俺は〈支天神鳥・煌翼〉と〈裂雲雷鳥・不羈〉を維持しながら、乱射される水流を軽く回避しつつ尚も高度を下げていった。
すると――。
「男ガ、オ姉様ニ近ヅクナッ!!」
アーヴァンクの少女化魔物はそんな如何にもなことを叫びながら木の陰から飛び出してきて、新たな攻撃を仕かけてきた。
宙に巨大な水の塊を浮かべると、それを獣の手の如く変形させて爪に当たる部分を鋭く研ぎ澄ませる。
そして形状をしっかり留めたまま、俺を引き裂こうとするように振り下ろした。
鋭い爪で獲物を引き裂くという逸話に寄っているのか、精度も速度も先程までの水流に比べるとこちらの方が遥かに優れている。
水の塊であるだけにそれで何かを切れるようには見えないが、概念的に切断力もまたこちらが上と見た方がいいだろう。
だが、如何せん相手が悪い。
俺はそれを軽々と回避し、次の攻撃の準備が整う前に少女の眼前に至った。
「悪いな。そうもいかないんだよ」
それから謝罪を口にしつつ、驚愕で目を見開く彼女を問答無用で凍結させる。
正常な状態の人外ロリが相手なら意思を尊重しつつ、じっくりと言葉を重ねて説得したいところだが、状況が状況だ。
俺がやらずとも国が。国が手をこまねいていれば再び人間至上主義組織が。
何より暴走状態のままでは、いつ何時、誰かに危害を加えるか知れない。
時に保護を強行することもまた、相手にために必要なこともある。
「パロン!? コノ、ヨクモッ!!」
と、そこへもう一人、ユニコーンの少女化魔物が飛び出してきた。
本来ならば端正であるだろうその顔は般若の如く歪み、怒りに染まっている。
「ん……これは……」
そんな彼女が姿を現した瞬間、何となく体に負荷がかかった気がした。
影響としては全く以って微々たるものだが、感覚的に間違いない。
恐らく、本来は治癒系統である複合発露が暴走したことによって反転し、対象を害するような効果となっているのだろう。
相手を強制的に体調不良にするような。
とは言え、最大レベルで身体強化をしている俺にとってみれば、ちょっと疲れたような気がしないでもない、という程度の些細なものだ。
大勢に影響が出ることはない。
「ごめんな」
本気も本気。全力も全力であるだろうだけに少々申し訳ないが、ユニコーンの少女化魔物についても軽くあしらってサクッと凍結させる。
そうして二体の氷漬けの像を影の中に収納し、甲武信ヶ岳を包囲している中の責任者に保護完了の旨を報告してから。
俺は速やかに、学園都市トコハへの帰路についた。
俺は前世で言うところの長野県に存在する要塞都市ココロバの(雷速に近い速度で移動できる者の主観で)近く。
ユニコーンの少女化魔物とアーヴァンクの少女化魔物がいる千曲川の水源、甲武信ヶ岳山頂付近の更に上空に至っていた。
少し離れた盆地には、人の営みの灯りが円形の防壁を浮かび上がらせている。
確かにあれは、要塞都市と呼ばれるに相応しい。
「……どうやら、山道を封鎖しているようですね」
影の中からのイリュファの言葉を受け、目線をそちらに移す。
視覚が強化された目を更に凝らすと彼女が言った通り、人影が甲武信ヶ岳を取り囲むように配置されている様子が、沈む夕日によって若干赤い視界に映った。
人間至上主義者達が再び現れ、麓から侵入しないように見張っている訳だ。
もっとも、テネシス側には転移の複合発露を持つ少女化魔物がいるので焼石に水かもしれないが……。
まあ、やらないよりはやった方がマシだし、それをしない理由はない。
心の中で労いつつ、俺は俺の仕事を果たそう。
「さて。他にも彼女達を狙っている輩がいることを考えると、山頂一帯を凍結させてサッサと連れていきたいところだけど……」
「ホウゲツ最大の川の水源近くですからね。なるべくなら下流に影響が出ないように、攻撃は最小限に留めるべきだと思います」
「……だな」
イリュファの忠告通り、やるなら少女化魔物だけをピンポイントで狙うべきだ。
水資源は人間にとって最上級に大切なものなのだから。
たとえ前世とは違い、祈念魔法や複合発露が存在していようとも。
祈望之器やその複製品が存在していようとも。
ヨスキ村出身かつ優秀な人物に囲まれているから忘れがちになるが、最低限の祈念魔法しか使えない人間の方が大多数な訳だし、祈望之器も万能ではない。
川の水は生活に必要不可欠と言っていい。
浄化して飲むにしても、ちょっとした物質変換の材料とするにしても。
まあ、少し凍らせるだけならば大きな影響は出ないとは思うけれども、自然のサイクルというものはどこでどう繋がっているか分からないものだ。
ちょっと木を伐採しただけで土砂崩れが起きたり、大洪水が起きたり。
それを思えば、周りを巻き込むのは最後の手段とした方が無難だ。
「じゃあ、防御を固めながら近づいて、対象だけをサクッと凍らせよう」
だから俺は、真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉を発動させながら降下を始めた。
三大特異思念集積体が一体、ジズの少女化魔物たるアスカとのそれを使用した状態ならば、多少暴走しただけの少女化魔物から致命傷を受けるなどあり得ない。
サユキとの〈万有凍結・封緘〉で工夫していた頃が懐かしい。
ともあれ、そうして甲武信ヶ岳山頂付近に近づくと――。
「っと」
突然、山頂から少し離れた地点からウォーターカッターのように鋭い水流がこちらを目がけて放たれ、俺はそれを最小限の動作で回避した。
この攻撃はほぼ確実に、洪水を引き起こしてとある島を滅ぼしかけた逸話のある魔物、アーヴァンクの少女化魔物が持つ複合発露によるものだろう。
「やってることは、水精の少女化魔物とかと同レベルだな」
切断力のある水流は俺の動きに合わせて追尾するように軌道を変化させるが、残念ながら、その速度よりも真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉の方が遥かに速い。
ハッキリ言って、自ら位置を知らせてくれているようなものだ。
……もっとも、そうでなくとも風の探知によって居場所など丸分かりだが。
「あの子か」
それでも正確な姿は木々に隠れているためにまだ見て取れないが、空に描かれた水のアーチの根っこ辺りに華奢な少女の影が見て取れる。
間違いなく彼女がアーヴァンクの少女化魔物だ。
もう一人。本命であるユニコーンの少女化魔物については探知によるとすぐ傍にいるようだが、木々に遮られて視界の中には影も形もない。
「もう凍らせる?」
「いや、風の探知だと若干精度が悪いからな」
「それって、氷の粒子での探知に比べれば、の話でしょ。精々傍にあるものがほんの少し凍るぐらいじゃないの」
サユキの問いかけに対して答えた俺に、フェリトが呆れたように言う。
まあ、それはそうなんだけども。
避けられるのなら、その程度の影響も避けた方がベターだ。
何より――。
「無理に連れていこうとするなら、面と向かい合うのが筋だろう」
凶悪な犯罪者であるなら、いざ知らず。
自己満足に過ぎないだろうが、何が何やら分からぬ内に、というのは可哀想だ。
それに彼女達の性質を考えると恐らく、今後深く関わり合う可能性は低い。
聖女云々は救世の転生者とはまた別の枠組みのはずだから。
基本的に捕らえた後は、トリリス様達に丸投げという形になるに違いない。
たとえラクラちゃんがパートナーになることができたとしても、聖女という肩書きがついてしまえば、彼女自身とも自然と会う機会が減ってしまうだろう。
俺は精々、あいつに捕まえられた、と不満の矛先になるぐらいしか役割がない。
こちらが憎まれ役となれば、トリリス様達も懐柔し易くなるかもしれないし。
逆に誰の仕業かも分からず、知らない間に捕らえられたと彼女達が認識するような状況になったら、最初に目にした相手へと敵意を向けかねない。
だから俺は〈支天神鳥・煌翼〉と〈裂雲雷鳥・不羈〉を維持しながら、乱射される水流を軽く回避しつつ尚も高度を下げていった。
すると――。
「男ガ、オ姉様ニ近ヅクナッ!!」
アーヴァンクの少女化魔物はそんな如何にもなことを叫びながら木の陰から飛び出してきて、新たな攻撃を仕かけてきた。
宙に巨大な水の塊を浮かべると、それを獣の手の如く変形させて爪に当たる部分を鋭く研ぎ澄ませる。
そして形状をしっかり留めたまま、俺を引き裂こうとするように振り下ろした。
鋭い爪で獲物を引き裂くという逸話に寄っているのか、精度も速度も先程までの水流に比べるとこちらの方が遥かに優れている。
水の塊であるだけにそれで何かを切れるようには見えないが、概念的に切断力もまたこちらが上と見た方がいいだろう。
だが、如何せん相手が悪い。
俺はそれを軽々と回避し、次の攻撃の準備が整う前に少女の眼前に至った。
「悪いな。そうもいかないんだよ」
それから謝罪を口にしつつ、驚愕で目を見開く彼女を問答無用で凍結させる。
正常な状態の人外ロリが相手なら意思を尊重しつつ、じっくりと言葉を重ねて説得したいところだが、状況が状況だ。
俺がやらずとも国が。国が手をこまねいていれば再び人間至上主義組織が。
何より暴走状態のままでは、いつ何時、誰かに危害を加えるか知れない。
時に保護を強行することもまた、相手にために必要なこともある。
「パロン!? コノ、ヨクモッ!!」
と、そこへもう一人、ユニコーンの少女化魔物が飛び出してきた。
本来ならば端正であるだろうその顔は般若の如く歪み、怒りに染まっている。
「ん……これは……」
そんな彼女が姿を現した瞬間、何となく体に負荷がかかった気がした。
影響としては全く以って微々たるものだが、感覚的に間違いない。
恐らく、本来は治癒系統である複合発露が暴走したことによって反転し、対象を害するような効果となっているのだろう。
相手を強制的に体調不良にするような。
とは言え、最大レベルで身体強化をしている俺にとってみれば、ちょっと疲れたような気がしないでもない、という程度の些細なものだ。
大勢に影響が出ることはない。
「ごめんな」
本気も本気。全力も全力であるだろうだけに少々申し訳ないが、ユニコーンの少女化魔物についても軽くあしらってサクッと凍結させる。
そうして二体の氷漬けの像を影の中に収納し、甲武信ヶ岳を包囲している中の責任者に保護完了の旨を報告してから。
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