ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

244 合宿の終わり

 その後は一先ず、大きな問題もなく過ごすことができた。
 もっとも俺には、人間至上主義組織スプレマシーの長テネシスの件が頭の片隅に残っていたため、憂いなく心の底から楽しむことはできなかったが……。
 俺達はともかくとして、セト達は有意義に時間を使うことができたようだった。
 それは、護衛として同行してくれた彼らのおかげという部分も大きいだろう。

「ライムさん、ルシネさん、パレットさん。今回はありがとうございました」
「いや、こちらもいい気分転換になった。感謝する」

 俺が頭を下げながら口にした感謝を受けての言葉。
 それが嘘偽りでないと示すように、穏やかな表情を浮かべて応じるライムさん。
 彼のすぐ傍にいるルシネさんとパレットさんもまた、優しげな微笑みと共に同意するような気配を見せている。

「故郷の子供達や、学園の後輩とも触れ合えたしな」

 そう続けながらチラッと向けられた彼の柔らかな視線に、弟達も笑顔を返す。
 どうも彼ら。俺がいない間に、随分と親しくなったらしい。
 そのおかげかは分からないが、何となくセト達の視野が広がったように感じる。
 ライムさんが精神干渉と転移という、割と珍しい複合発露エクスコンプレックスの使い手だったことも一つの要因としてあるかもしれないが……。
 それ以上に、同じように飛び級をしてホウゲツ学園を卒業した先輩の話は、単純な戦い方に限らず色々と参考になったのだろう。
 加えて彼は、さすがに特別労役中とは言えなかったので補導員という風に伝えたが、理由はともかく形としては一度犯罪に手を染めて更生した人物でもある。
 その事実は全く知らなくとも、内側から醸し出される人生経験的な何かはしっかりと感じ取ってくれたのかもしれない。

「有意義な旅になってよかったです」

 子供達は存分に海を楽しみ、それが正しく訓練にもなった。
 実際に彼らの確かな成長もまた、水かけ合戦の中で十分に確認できている。
 多少余計な出来事はあったものの、総合的にそう結論して差し支えないだろう。
 ……そんなこの旅行、もとい合宿も残り僅か。
 もう間もなく、学園都市トコハへの帰りの飛行機もどきマナプレーンが迎えに来る時刻だ。

「でも、もう少しここにいたかったな」

 と、名残惜しそうにセトが言う。
 それに他の三人も同意するような気配があった。
 その気持ちは分からなくもない。
 よき旅の終わりには、必然的に寂しさを伴うものだ。
 しかし、だからと言って、さすがに夏休みの間ずっとここにいるというのは余りよろしくない。一応、トリリス様達に頼めば不可能ではないだろうけれども。
 折角の長期の休みなのだから、普段は時間がなくてできないようなことを自分で探してやってみるのもいい経験になるはずだ。
 その試みが成功するにせよ、失敗するにせよ。
 子供達の成長の礎となることだろう。
 だから俺は、そんなようなことを告げようと口を開いたが――。

「ヘスさん。また工房に行ってもいいですか?」
「あ、僕も! お願いします!」

 実際に声を出すよりも早く。
 気持ちを切り替えたようにトバルが尋ね、それに続いてセトが右手を上げてアピールするようにしながら言った。
 積極的な二人の勢いに少しだけ驚きながらも、一先ず子供達の行動を見守る。

「勿論、大丈夫ッス。師匠にも伝えておくッスよ」

 そんな二人の希望に、白い歯を見せて嬉しそうに応じるヘスさん。
 トバルのことを特に気に入っている様子の彼女ならば、複製師に関する彼の頼みを断るようなことはまずないはずだ。
 それはトバルも薄々分かっているだろう。が、彼は若干躊躇いがちに口を開く。

「その。できれば、それなりの時間しっかりと指導して欲しいんですけど……」
「多分それも問題ないッス! 自分からも師匠にお願いするッス! 可能なら、仕事の手伝いもして貰えると許可を取り易いかもッス」

 無理を言っていると恐縮気味のトバルだったが、ほぼほぼ即答して乗り気になっているヘスさんの様子を見て安堵と共に表情を明るくする。
 彼が複製師という道を歩むことに随分と積極的になっている姿を目の当たりにすれば、彼女は尚のこと協力を惜しむようなことはないに違いない。

「分かりました! 頑張ります! ……あ、セトも大丈夫か?」

 力のこもった言葉で締め括ってヘスさんとの話を纏めた後で、ハッとしたようにセトを振り返って問いかけるトバル。
 途中から、完全に頭から抜け落ちていたらしい。

「大丈夫大丈夫。僕にできることなら、仕事の手伝いも頑張るよ」

 そんな彼の問いかけに、セトは完全な事後承諾ながらも苦笑気味に了承する。
 それから、俺から見ると蚊帳の外になっているようだったダンに視線を向けた。

「ダンはどうする?」
「俺は学園にいる少女化魔物ロリータにお願いして、色々な複合発露を使った特訓をしてみるよ。色んな種類の複合発露を経験してみて分かることもあるだろうし」

 そんな彼の返答を前にして、しかし、尋ねたセトの表情に驚きの色は生じない。
 トバルも似たような反応だ。
 どうやら二人共、薄々予想がついていたらしい。

「ラクラちゃんは?」
「ボクは聖女になれた時に備えて、祈念魔法での治療の練習ができるところがないか先生に聞いてみようかな。治癒の複合発露も人体に対する理解度によって精度が丸っきり変わってくるって聞くし」

 それは彼女の答えについても同様のようだ。
 俺は初耳の話だが、セト達は一様に納得の表情。
 ある程度、彼らの間で互いの意思はしっかりと共有されていたのだろう。
 ひしひしと、横の繋がりの強さのようなものが感じられる。
 これは縦の繋がりとは趣が違うものだ。

 しかし、いずれにしても。
 俺がわざわざ偉そうに説くまでもなく、皆ちゃんと自分自身の頭で考えて今後の計画を立てていた訳だ。
 相談されなかったことに少しばかり寂しい気持ちにならなくもないが、それはそれとして子供達が著しく成長していることがよく分かる光景は嬉しいものだ。
 先達として感慨深い。
 ここから先は、余程道を誤るようなことがない限り、もはや俺が口を出さない方が彼らの成長を促すことができるのかもしれない。
 だから――。

「どうせなら、二人の訓練のサポートもできるような複製改良品を作れないかな」
「そういうのもアリかもしれないッスね」
「だったら、トバル。アマラさんの許可が出るまで、とりあえず図書館に行って、面白い効果を持った祈望之器ディザイアードがないか探してみようよ」

 俺はマナプレーンの機影が見えてくるまでの間、更に夏休みの残りの過ごし方について互いに話し合う子供達に口を挟むことなく見守るのみに留めた。

「っと、来たな」

 やがて森林都市モクハに来る際に乗ってきたのと同型機が制動をかけてログハウス近くの発着場上空にて制止し、それからゆっくりと垂直着陸に入る。
 よくよく考えると、ウインテート連邦共和国に行った時も帰りは自力で空を飛んできたので、旅の帰路をこうして行きと同じ方式でゆっくりと帰るのは初めてか。
 妙な横槍が入ったのはともかくとして、こうして無事に工程を終えられそうなのは少しだけ心に染み入るものがあるな。
 子供達が少し俺の手を離れた感があるのも一因かもしれない。

「……さあ、帰ろうか」
「「「うん!」」」「はい!」

 時の経過に抱いた微かな切なさを隠し、皆を伴ってマナプレーンに乗り込む。
 こうして俺達は、短い期間に様々な変化が感じられた夏の海水浴場を後にしたのだった。

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