ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
235 人工林を抜けて
「――と言う訳で、俺はちょっとだけ出かけてくるから、ライムさん達の言うことをよく聞いて、怪我をしないように遊ぶんだぞ」
「「「分かった!」」」「分かりました!」
昨日早くに寝たからか、元気いっぱいの様子で返事をする子供達に若干苦笑しながら頷き、それからライムさんに視線を向ける。
すると彼は俺の意図をくみ、任せろと言うように首を縦に振って応じた。
ちょっとだけ出かけてくる用事。
それは人間至上主義組織スプレマシーの長、テネシス・コンヴェルトからの救世の転生者に対する依頼に他ならない。
……正直なところ釈然としない部分が残っていない訳ではないが、請け負ってしまった以上は仕方がないことだ。
間接的にせよ、半ば脅されているようなものだし、何より実際に現在進行形で苦しんでいる少女化魔物もいるとすれば引き受けない選択肢はない。
しかし、当然と言うべきか、細かい内容については弟達に伝えてはいなかった。
彼らは何かしら(一般的な嘱託補導員に対する)緊急の仕事が入った、という程度の認識しかないはずだ。
「…………まあ、余計なお世話だろうが、気をつけて行けよ」
だからか、ライムさんは気取られないように単なる定型文を装って注意を促す。
心配し過ぎな感もなくはないが、実際問題。敵対している相手からの依頼である以上、罠の可能性は消えない。警戒してもし過ぎることはない。
昨日ログハウスに帰ってからも同じようなことを話し合ったが、念を押すようにそう暗に伝えてきたライムさんに「いえ、ありがとうございます」と返しておく。
実際、いくら俺が人外ロリコンで、尚且つ話を持ってきた相手が少女化魔物だったとは言っても、盲目に信用するつもりは勿論ない。
その証という訳ではないが、この場から俺を引きはがした後でセト達が狙われる可能性を考え、ライムさん達に加えてレンリにもここに残って貰うつもりだし。
精神干渉に転移、最高レベルの身体強化と、彼らが子供達と一緒にいてくれるなら、万が一の時にも皆を連れて安全圏に逃げることぐらいは容易いだろう。
安心して任せることができる。
なので、そろそろ出発することにしよう。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、旦那様。行ってらっしゃいませ」
俺の言葉を受け、相変わらず伴侶の如く振る舞うレンリ。
昨日優しくして上げようと思ったばかりなので、そんな彼女に「早く帰ってくるから」と優しく微笑みと共に応じてから、俺はログハウスを後にした。
その足で、人間至上主義組織の長テネシスに与するベヒモスの少女化魔物、ムートに指定された待ち合わせ場所を目指す。
昨日遊んだ浜辺とは反対側。森林都市という呼び名に相応しい森が広がる方へ。
木々は配置も含めて統一感があり、人工林であることが分かる。
それもかなり長らく続いているようで、相当の樹齢になっているだろうヒノキが立ち並ぶ光景は日本の奥地にある神秘的な森という雰囲気もある。
……いや、さすがに境界付近から樹齢何百年クラスの木々が纏まって生えているのは、いくら人の手が入っているにしても、前世基準で考えるとおかしいな。
以前ランブリク共和国で出会ったアグリカさんが果樹を育成する複合発露を持っていたように、木々の成長を促すそれを持つ少女化魔物がいるのかもしれない。
「待っていましたー」
そんなことを考えていると、ひょっこりと木の裏からふくよかな少女が現れる。
昨日はそこまで意識が回らなかったが、彼女は文明から距離を置いた部族のいわゆるシャーマンのような民族衣装を着ていた。
霊験あらたかな周囲の様子とが相まって、何らかの精霊のようにも思える。
実際、地を司る存在という思念の蓄積が彼女を彼女たらしめている訳だから、似たようなものと言っても過言ではないかもしれないが。
「待ち合わせ場所は、もう少し先じゃなかったか?」
「森は迷い易いですからねー」
いや、探知の祈念魔法を使えば、多少擦れ違っても俺は問題ないけれども。
あるいは、それを使わせたくなかったのだろうか。何らかの理由で。
「……お前はこの辺りに詳しいのか?」
一先ず疑いは顔を出さないように努めつつ、自然に情報を引き出そうと試みる。
昨日の邂逅だけでは色々と不十分だ。
「いえー、初めてですー」
対するムートは、その間延びした声で緊張感をそぐような答えを返してくる。
思わずズッコケそうになるのを耐え、軽く咳払いをして相手のペースに巻き込まれないように気持ちを引き締め直す。
「迷ったらどうするんだ」
「心配はいりませんー。私は同じ地面に立つ存在なら全て把握できますのでー」
「……成程」
やろうと思えば、空にあるもの全てを感知することができるジズの少女化魔物。
海にあるもの全てを感知することができるリヴァイアサンの少女化魔物。
同じ三大特異思念集積体であれば、それぐらいのことは造作もないか。
となると、施設の正確な位置についても地図を持たされたとかではなく、彼女のその力によって把握しているのかもしれない。
あるいは地図を手に入れて先行し、という考えも頭の片隅に過ぎっていたが、気取られず近づくには結局のところ案内人が必要のようだ。
「ではー、行きましょー」
とりあえず警戒は緩めず、音もなく走りだしたムートの後に続く。
彼女は重そうな見た目に反し、身軽に素早く木々の間を縫って進んでいる。
〈裂雲雷鳥・不羈〉を使えば速さで劣ることはないが、それでも三大特異思念集積体に相応しい最高峰の身体強化を有していることは確かだ。
「ちなみにー、森林都市モクハは林業もそうですがー、ヒノキを利用した細工が有名ですー。基本は委託販売なので学園都市トコハでも買えますけどー、通はモクハを訪れてオーダーメイドするそうですねー」
息を乱すことなく、呑気に観光ガイドのような真似をしながら進むムート。
その雰囲気と声の感じに対し、流れる景色のスピードが余りにもミスマッチだ。
いずれにしても彼女の話は余談にも程があるが、そう言えば前世よりも質のよさそうな木の家具をよく見かけた気がする。
それは時代的なものだけではないのだろう。
「地を司る者として、思うところがあったりはしないのか?」
「いえー、特にはー。人もまた地に属するものですしー、命は循環してこそ命なのですー。それに度が過ぎればー、自然としっぺ返しが来るものなのですよー」
俺の問いに、割とドライな答えを返す大地の化身たるベヒモスの少女化魔物。
ある意味、一つの属性の頂点に立つ者らしいと言えばらしいか。
リヴァイアサンの少女化魔物たるラハさんも、昨日は海で好き放題魚を獲っていたし、三大特異思念集積体とはそういうものなのかもしれない。
「私にとってはー、命が停滞していることこそが悪なのですー」
最後に声色を少しだけ変えてポツリと独り言つように呟くムート。
他の言葉がどうかは口調のせいで今一分からないが、これに関しては本音の本音がつい毀れ出てしまったという感じだ。
……しかし、命の停滞、か。
どういう状況を想定して彼女は言っているのだろうか。
「ここからは余り音を立てないように気をつけて下さいー」
内心首を傾げていると急に森の雰囲気が変わり、それと同時に彼女が声の調子を完全に元に戻しながら注意を促してくる。
僅かな会話の間に強化された身体能力を以って結構な距離を走ってきたが、どうやら人工林の領域を抜けて人間の手が入っていない自然の森に至ったようだ。
道らしい道がなくなり、急激に走りにくくなったことからもそうと分かる。
当然のことながら、人間至上主義組織スプレマシーの施設が森のどこかにあるとして、誰かに管理されているはずの人工林の中にあるはずがない。
フロント企業的なものならば街中にすらあってもおかしくはないが、非合法の研究を行っているとすれば間違いなく人目を忍ぼうとするだろう。
ここから先が本番、ということだ。
しかし、そうした意気込みを挫くように。
「さて、もう間もなくですよー」
ムートは相変わらず間延びした、囁くような声を出すのだった。
「「「分かった!」」」「分かりました!」
昨日早くに寝たからか、元気いっぱいの様子で返事をする子供達に若干苦笑しながら頷き、それからライムさんに視線を向ける。
すると彼は俺の意図をくみ、任せろと言うように首を縦に振って応じた。
ちょっとだけ出かけてくる用事。
それは人間至上主義組織スプレマシーの長、テネシス・コンヴェルトからの救世の転生者に対する依頼に他ならない。
……正直なところ釈然としない部分が残っていない訳ではないが、請け負ってしまった以上は仕方がないことだ。
間接的にせよ、半ば脅されているようなものだし、何より実際に現在進行形で苦しんでいる少女化魔物もいるとすれば引き受けない選択肢はない。
しかし、当然と言うべきか、細かい内容については弟達に伝えてはいなかった。
彼らは何かしら(一般的な嘱託補導員に対する)緊急の仕事が入った、という程度の認識しかないはずだ。
「…………まあ、余計なお世話だろうが、気をつけて行けよ」
だからか、ライムさんは気取られないように単なる定型文を装って注意を促す。
心配し過ぎな感もなくはないが、実際問題。敵対している相手からの依頼である以上、罠の可能性は消えない。警戒してもし過ぎることはない。
昨日ログハウスに帰ってからも同じようなことを話し合ったが、念を押すようにそう暗に伝えてきたライムさんに「いえ、ありがとうございます」と返しておく。
実際、いくら俺が人外ロリコンで、尚且つ話を持ってきた相手が少女化魔物だったとは言っても、盲目に信用するつもりは勿論ない。
その証という訳ではないが、この場から俺を引きはがした後でセト達が狙われる可能性を考え、ライムさん達に加えてレンリにもここに残って貰うつもりだし。
精神干渉に転移、最高レベルの身体強化と、彼らが子供達と一緒にいてくれるなら、万が一の時にも皆を連れて安全圏に逃げることぐらいは容易いだろう。
安心して任せることができる。
なので、そろそろ出発することにしよう。
「じゃあ、行ってきます」
「はい、旦那様。行ってらっしゃいませ」
俺の言葉を受け、相変わらず伴侶の如く振る舞うレンリ。
昨日優しくして上げようと思ったばかりなので、そんな彼女に「早く帰ってくるから」と優しく微笑みと共に応じてから、俺はログハウスを後にした。
その足で、人間至上主義組織の長テネシスに与するベヒモスの少女化魔物、ムートに指定された待ち合わせ場所を目指す。
昨日遊んだ浜辺とは反対側。森林都市という呼び名に相応しい森が広がる方へ。
木々は配置も含めて統一感があり、人工林であることが分かる。
それもかなり長らく続いているようで、相当の樹齢になっているだろうヒノキが立ち並ぶ光景は日本の奥地にある神秘的な森という雰囲気もある。
……いや、さすがに境界付近から樹齢何百年クラスの木々が纏まって生えているのは、いくら人の手が入っているにしても、前世基準で考えるとおかしいな。
以前ランブリク共和国で出会ったアグリカさんが果樹を育成する複合発露を持っていたように、木々の成長を促すそれを持つ少女化魔物がいるのかもしれない。
「待っていましたー」
そんなことを考えていると、ひょっこりと木の裏からふくよかな少女が現れる。
昨日はそこまで意識が回らなかったが、彼女は文明から距離を置いた部族のいわゆるシャーマンのような民族衣装を着ていた。
霊験あらたかな周囲の様子とが相まって、何らかの精霊のようにも思える。
実際、地を司る存在という思念の蓄積が彼女を彼女たらしめている訳だから、似たようなものと言っても過言ではないかもしれないが。
「待ち合わせ場所は、もう少し先じゃなかったか?」
「森は迷い易いですからねー」
いや、探知の祈念魔法を使えば、多少擦れ違っても俺は問題ないけれども。
あるいは、それを使わせたくなかったのだろうか。何らかの理由で。
「……お前はこの辺りに詳しいのか?」
一先ず疑いは顔を出さないように努めつつ、自然に情報を引き出そうと試みる。
昨日の邂逅だけでは色々と不十分だ。
「いえー、初めてですー」
対するムートは、その間延びした声で緊張感をそぐような答えを返してくる。
思わずズッコケそうになるのを耐え、軽く咳払いをして相手のペースに巻き込まれないように気持ちを引き締め直す。
「迷ったらどうするんだ」
「心配はいりませんー。私は同じ地面に立つ存在なら全て把握できますのでー」
「……成程」
やろうと思えば、空にあるもの全てを感知することができるジズの少女化魔物。
海にあるもの全てを感知することができるリヴァイアサンの少女化魔物。
同じ三大特異思念集積体であれば、それぐらいのことは造作もないか。
となると、施設の正確な位置についても地図を持たされたとかではなく、彼女のその力によって把握しているのかもしれない。
あるいは地図を手に入れて先行し、という考えも頭の片隅に過ぎっていたが、気取られず近づくには結局のところ案内人が必要のようだ。
「ではー、行きましょー」
とりあえず警戒は緩めず、音もなく走りだしたムートの後に続く。
彼女は重そうな見た目に反し、身軽に素早く木々の間を縫って進んでいる。
〈裂雲雷鳥・不羈〉を使えば速さで劣ることはないが、それでも三大特異思念集積体に相応しい最高峰の身体強化を有していることは確かだ。
「ちなみにー、森林都市モクハは林業もそうですがー、ヒノキを利用した細工が有名ですー。基本は委託販売なので学園都市トコハでも買えますけどー、通はモクハを訪れてオーダーメイドするそうですねー」
息を乱すことなく、呑気に観光ガイドのような真似をしながら進むムート。
その雰囲気と声の感じに対し、流れる景色のスピードが余りにもミスマッチだ。
いずれにしても彼女の話は余談にも程があるが、そう言えば前世よりも質のよさそうな木の家具をよく見かけた気がする。
それは時代的なものだけではないのだろう。
「地を司る者として、思うところがあったりはしないのか?」
「いえー、特にはー。人もまた地に属するものですしー、命は循環してこそ命なのですー。それに度が過ぎればー、自然としっぺ返しが来るものなのですよー」
俺の問いに、割とドライな答えを返す大地の化身たるベヒモスの少女化魔物。
ある意味、一つの属性の頂点に立つ者らしいと言えばらしいか。
リヴァイアサンの少女化魔物たるラハさんも、昨日は海で好き放題魚を獲っていたし、三大特異思念集積体とはそういうものなのかもしれない。
「私にとってはー、命が停滞していることこそが悪なのですー」
最後に声色を少しだけ変えてポツリと独り言つように呟くムート。
他の言葉がどうかは口調のせいで今一分からないが、これに関しては本音の本音がつい毀れ出てしまったという感じだ。
……しかし、命の停滞、か。
どういう状況を想定して彼女は言っているのだろうか。
「ここからは余り音を立てないように気をつけて下さいー」
内心首を傾げていると急に森の雰囲気が変わり、それと同時に彼女が声の調子を完全に元に戻しながら注意を促してくる。
僅かな会話の間に強化された身体能力を以って結構な距離を走ってきたが、どうやら人工林の領域を抜けて人間の手が入っていない自然の森に至ったようだ。
道らしい道がなくなり、急激に走りにくくなったことからもそうと分かる。
当然のことながら、人間至上主義組織スプレマシーの施設が森のどこかにあるとして、誰かに管理されているはずの人工林の中にあるはずがない。
フロント企業的なものならば街中にすらあってもおかしくはないが、非合法の研究を行っているとすれば間違いなく人目を忍ぼうとするだろう。
ここから先が本番、ということだ。
しかし、そうした意気込みを挫くように。
「さて、もう間もなくですよー」
ムートは相変わらず間延びした、囁くような声を出すのだった。
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