ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
233 夜の海と来訪者
森林都市モクハにあるホウゲツ学園所有の海水浴場で遊んだ最初の夜。
何度も水かけ合戦をしている間にラハさんが素潜り(?)で海から大量に獲ってきた魚介類を夕飯として平らげた後、しばらくして。
「ライムさん、子供達を見ていて貰っても大丈夫ですか?」
電池が切れたように深い眠りに落ちてしまったセト達(ルトアさん、ヘスさんを含む)を布団に寝かせ、そのまま熟睡している彼らに視線を向けながら尋ねる。
「ああ。問題ない」
対してライムさんは、全く疲れた様子もなく承知してくれた。
ここにいる中で唯一、第二次性徴を迎えた大人の体格。更には十分に鍛えてもいるし、基礎的な体力は一番あると考えていい。
加えてその人格も、大きな罪は犯したものの本質的には信用に値する。
今回もそうだが、俺が救世の転生者だと知る数少ない人物であることも含め、大人枠として頼りにすることができて実務的にも精神的にも常々助かっている。
……まあ、彼のパートナーであるルシネさんとパレットさんの方は、子供達につき合って疲れ果ててしまったらしく、今はボンヤリと体を休めているけれども。
彼女達については少女のカテゴリーに含まれるので構うまい。
「じゃあ、少し外に出てきます」
「分かった。ゆっくりしてくるといい」
「はい」
恐らくは今回の件に限らない諸々を労うように告げたライムさんに頷き、それから俺はレンリと共に宿泊場所のログハウスから再び浜辺へと向かった。
海辺の夜は夏でも割と涼しく、風が特に心地いい。
「……月は出ていませんね。残念です」
と、隣を歩くレンリが空を見上げながら呟いた。
怪盗ルエットが犯行に及んだのが満月の日だから、それから一週間と少し経った今は下弦より少し欠けたぐらいの月になるだろうか。
確か、それぐらいの月齢だと夜中過ぎに月の出となるはずだ。
夕日が沈んでしばらく、という今現在では見えないのも当然だ。
……しかし、一体何が残念なのやら。
もしかしたら、月が綺麗ですね、とでも言いたかったのだろうか。
彼女、日本の知識を伝聞で少し知っているようだからな。
それはともかくとして。
こうしてわざわざ外に出てきたのは、そのレンリに「セトさん達が寝たらテアさんを外に出して上げてもいいのではないでしょうか」と言われたからだ。
勿論、テアには可能な範囲で色々な経験をさせて上げたいと思っているので、それは俺の頭の中にもあった考えではある。
だが、彼女の言葉はライムさんに話を切り出すのに丁度いい切っかけだった。
それに、レンリが誰かに促された訳でもなく提案した事実は、彼女のことを苦手としているテアとの関係改善に多少なり繋がるかもしれない。
なので、俺も今言おうと思っていた、とか余計なことは言わないでおく。
「ほら、テア。出ておいで」
「うん」
そして俺が促すと、星空が僅かに作る影からテアがゆっくり出てきた。
次いで、昼は余り外に出ていなかったサユキとイリュファもまたつき添いで。
他の三人、リクルとフェリトとアスカは疲れて影の中で休んでいる。
フェリトとアスカにはずっとセト達の遊び相手をして貰ったし、リクルには細々と全員の世話を焼いて貰っていたので、彼女達はそっとしておくべきだろう。
イリュファは途中から浜辺で溢れんばかりの魚介類を全て捌きながら、あの人数全員分の海鮮バーベキューの用意をしていたはずだが、特に疲れはないようだ。
年の功、もとい慣れというものだろう。
その彼女はログハウス側に立ち、万一セト達が起きてきた時にも窓からすぐに見えないように祈念魔法で闇を濃くし、こちらの様子を隠しているようだった。
相変わらずテアとの間に明確に一線を引いているようだが、俺達が彼女を成長させようとするのをとめるつもりがないのもまた相変わらずだ。
どちらかと言えばレンリに近い立場だが、歩み寄ろうという感じは乏しい。
まあ、人形化魔物に強烈な敵意を抱くイリュファのことを思えば距離を縮めろと強要する気にはなれないし、そういった一歩引いたスタンスの存在もまたテアの成長には不可欠だろうと思って干渉はしないでいる。
最凶の人形化魔物【ガラテア】の肉体であるテアが普通に接することができる相手は限られているのだから。
イリュファとテアの関係については、救世という使命を果たし終えた後で時間をかけて考えればいいだろう。
「テアちゃん、夜に日傘を使う必要はないよ?」
そうこう考えていると、サユキが夜の浜辺で傘を差し始めたテアに向けて言う。
テアは砂浜に立っているが水着姿ではない。
夜だから、ということではなく。
ちなみにサユキは夜だが、あの着物っぽい水着のままだ。
テアの場合は、露出が多ければ勿論のこと、大体の水着は体のラインが分かってしまうので球体関節を隠し切ることができないというのが最大の理由だ。
なので、彼女はいつものゴシックアンドロリータ的な黒を基調としたワンピースのまま、同じく黒いレース生地の日傘を広げて肩にかけるように持っていた。
まあ、いずれにしても傘を差す必要性はないが……。
「でも、イサクが買ってくれたから」
「うん。なら仕方がないね」
テアの一言に、あっさりと同意するサユキ。
サユキ理論に馴染み過ぎると、ちょっと常識外れになりかねないが、これに関しては子供が買って貰ったお気に入りの傘を雨が降ってないのに差すのと近い。
そういった記憶は尊い思い出だ。
大人の理屈を押しつけるだけが、子供のためになる教育ではないだろう。
そこまで喜んで貰えると、買い与えた俺としても嬉しいことだし。
「とてもいい日傘ですね」
そこへ。何とか会話に参加しようとしてか、レンリが声をかける。
「…………あげない」
対してテアは、その彼女を子供っぽく不機嫌そうに睨み、日傘の持ち手の部分を抱きしめるように自分の体に引き寄せた。
「も、勿論、そんなつもりはありません。それはテアさんのものですから」
その姿を見て、慌てて弁明するレンリ。
初対面の印象が悪いだけに是非もない部分もあるが、少々理不尽でもある。
しかし、裏に思惑はあれどレンリが大人の忍耐力で応対してくれている以上、彼女がギブアップしない限りは俺が頭ごなしに仲よくしろと言うべきではない。
テアが色々とよく考えた上で許容して関係を改善することができれば、それは彼女の確かな成長に繋がるのだから。見守るのもまた教育だ。
…………それはそれとして、さすがに少し可哀想なので、どこか別のところでレンリには優しくしておこう。
「ほら、テアちゃん。星がたくさん見えるよ」
空気を読まずに、あるいは少し落ち込んでいるレンリを気遣ってわざとそうしているのか、横からサユキが言う。
空を指差して砂浜で踊るように回りながら楽しそうに。
……やはりマイペースなだけのようだ。
「うん。綺麗」
そんなサユキへの返しは、レンリへの応対とは全く異なる素直で愛らしい声。
初めて見る光景であるかのように、テアは星空に目を奪われている。
とは言え、真っ暗闇の空を飛んだこともあるし、ホウゲツ学園でも夜は明かりがほとんど消えるので前世より遥かに星がクリアに見える。こことそう大差はない。
しかし、こうしてゆっくり星空を眺めるのは久し振りだと俺が思うぐらいだ。
恐らくテアも満天の星空をじっくりと観賞するのは初めてだろう。
学園都市トコハを訪れてからこっち、日々忙しくて機会を持てなかったから。
加えて、一定のリズムを刻むような波の音。
街中で空を見上げるのとはまた違った趣がある。
前世でもこんなに贅沢に時間を使ったことはないかもしれない。
大学の卒業旅行がそれのはずだったが、こうして転生する羽目になったし。
「……まあ、だから、そう長くは続かないよな」
俺が救世の転生者である限り。
その使命を果たすまでは穏やかな時間など許されないのかもしれない。
「おやおやー、気づかれましたかー」
「当たり前だろう」
気配に振り返り、それに応じて声をかけてきた存在に軽く嘆息しながら告げる。
普通に近寄ってこられて、気づかないはずがない。
余りに堂々とし過ぎていて、逆にここまで接近を許してしまったぐらいだ。
「さすがはー、救世の転生者ですねー」
間延びしたその喋り方と微かな笑みを浮かべた表情によって緊張感が削がれそうになってしまうが、告げられた一言に警戒心を一気に高めて身構える。
「お前は、何者だ?」
そして俺は、少女化魔物にしては珍しくふくよかな姿をした彼女を厳しく睨みつけながら、そう問いかけたのだった。
何度も水かけ合戦をしている間にラハさんが素潜り(?)で海から大量に獲ってきた魚介類を夕飯として平らげた後、しばらくして。
「ライムさん、子供達を見ていて貰っても大丈夫ですか?」
電池が切れたように深い眠りに落ちてしまったセト達(ルトアさん、ヘスさんを含む)を布団に寝かせ、そのまま熟睡している彼らに視線を向けながら尋ねる。
「ああ。問題ない」
対してライムさんは、全く疲れた様子もなく承知してくれた。
ここにいる中で唯一、第二次性徴を迎えた大人の体格。更には十分に鍛えてもいるし、基礎的な体力は一番あると考えていい。
加えてその人格も、大きな罪は犯したものの本質的には信用に値する。
今回もそうだが、俺が救世の転生者だと知る数少ない人物であることも含め、大人枠として頼りにすることができて実務的にも精神的にも常々助かっている。
……まあ、彼のパートナーであるルシネさんとパレットさんの方は、子供達につき合って疲れ果ててしまったらしく、今はボンヤリと体を休めているけれども。
彼女達については少女のカテゴリーに含まれるので構うまい。
「じゃあ、少し外に出てきます」
「分かった。ゆっくりしてくるといい」
「はい」
恐らくは今回の件に限らない諸々を労うように告げたライムさんに頷き、それから俺はレンリと共に宿泊場所のログハウスから再び浜辺へと向かった。
海辺の夜は夏でも割と涼しく、風が特に心地いい。
「……月は出ていませんね。残念です」
と、隣を歩くレンリが空を見上げながら呟いた。
怪盗ルエットが犯行に及んだのが満月の日だから、それから一週間と少し経った今は下弦より少し欠けたぐらいの月になるだろうか。
確か、それぐらいの月齢だと夜中過ぎに月の出となるはずだ。
夕日が沈んでしばらく、という今現在では見えないのも当然だ。
……しかし、一体何が残念なのやら。
もしかしたら、月が綺麗ですね、とでも言いたかったのだろうか。
彼女、日本の知識を伝聞で少し知っているようだからな。
それはともかくとして。
こうしてわざわざ外に出てきたのは、そのレンリに「セトさん達が寝たらテアさんを外に出して上げてもいいのではないでしょうか」と言われたからだ。
勿論、テアには可能な範囲で色々な経験をさせて上げたいと思っているので、それは俺の頭の中にもあった考えではある。
だが、彼女の言葉はライムさんに話を切り出すのに丁度いい切っかけだった。
それに、レンリが誰かに促された訳でもなく提案した事実は、彼女のことを苦手としているテアとの関係改善に多少なり繋がるかもしれない。
なので、俺も今言おうと思っていた、とか余計なことは言わないでおく。
「ほら、テア。出ておいで」
「うん」
そして俺が促すと、星空が僅かに作る影からテアがゆっくり出てきた。
次いで、昼は余り外に出ていなかったサユキとイリュファもまたつき添いで。
他の三人、リクルとフェリトとアスカは疲れて影の中で休んでいる。
フェリトとアスカにはずっとセト達の遊び相手をして貰ったし、リクルには細々と全員の世話を焼いて貰っていたので、彼女達はそっとしておくべきだろう。
イリュファは途中から浜辺で溢れんばかりの魚介類を全て捌きながら、あの人数全員分の海鮮バーベキューの用意をしていたはずだが、特に疲れはないようだ。
年の功、もとい慣れというものだろう。
その彼女はログハウス側に立ち、万一セト達が起きてきた時にも窓からすぐに見えないように祈念魔法で闇を濃くし、こちらの様子を隠しているようだった。
相変わらずテアとの間に明確に一線を引いているようだが、俺達が彼女を成長させようとするのをとめるつもりがないのもまた相変わらずだ。
どちらかと言えばレンリに近い立場だが、歩み寄ろうという感じは乏しい。
まあ、人形化魔物に強烈な敵意を抱くイリュファのことを思えば距離を縮めろと強要する気にはなれないし、そういった一歩引いたスタンスの存在もまたテアの成長には不可欠だろうと思って干渉はしないでいる。
最凶の人形化魔物【ガラテア】の肉体であるテアが普通に接することができる相手は限られているのだから。
イリュファとテアの関係については、救世という使命を果たし終えた後で時間をかけて考えればいいだろう。
「テアちゃん、夜に日傘を使う必要はないよ?」
そうこう考えていると、サユキが夜の浜辺で傘を差し始めたテアに向けて言う。
テアは砂浜に立っているが水着姿ではない。
夜だから、ということではなく。
ちなみにサユキは夜だが、あの着物っぽい水着のままだ。
テアの場合は、露出が多ければ勿論のこと、大体の水着は体のラインが分かってしまうので球体関節を隠し切ることができないというのが最大の理由だ。
なので、彼女はいつものゴシックアンドロリータ的な黒を基調としたワンピースのまま、同じく黒いレース生地の日傘を広げて肩にかけるように持っていた。
まあ、いずれにしても傘を差す必要性はないが……。
「でも、イサクが買ってくれたから」
「うん。なら仕方がないね」
テアの一言に、あっさりと同意するサユキ。
サユキ理論に馴染み過ぎると、ちょっと常識外れになりかねないが、これに関しては子供が買って貰ったお気に入りの傘を雨が降ってないのに差すのと近い。
そういった記憶は尊い思い出だ。
大人の理屈を押しつけるだけが、子供のためになる教育ではないだろう。
そこまで喜んで貰えると、買い与えた俺としても嬉しいことだし。
「とてもいい日傘ですね」
そこへ。何とか会話に参加しようとしてか、レンリが声をかける。
「…………あげない」
対してテアは、その彼女を子供っぽく不機嫌そうに睨み、日傘の持ち手の部分を抱きしめるように自分の体に引き寄せた。
「も、勿論、そんなつもりはありません。それはテアさんのものですから」
その姿を見て、慌てて弁明するレンリ。
初対面の印象が悪いだけに是非もない部分もあるが、少々理不尽でもある。
しかし、裏に思惑はあれどレンリが大人の忍耐力で応対してくれている以上、彼女がギブアップしない限りは俺が頭ごなしに仲よくしろと言うべきではない。
テアが色々とよく考えた上で許容して関係を改善することができれば、それは彼女の確かな成長に繋がるのだから。見守るのもまた教育だ。
…………それはそれとして、さすがに少し可哀想なので、どこか別のところでレンリには優しくしておこう。
「ほら、テアちゃん。星がたくさん見えるよ」
空気を読まずに、あるいは少し落ち込んでいるレンリを気遣ってわざとそうしているのか、横からサユキが言う。
空を指差して砂浜で踊るように回りながら楽しそうに。
……やはりマイペースなだけのようだ。
「うん。綺麗」
そんなサユキへの返しは、レンリへの応対とは全く異なる素直で愛らしい声。
初めて見る光景であるかのように、テアは星空に目を奪われている。
とは言え、真っ暗闇の空を飛んだこともあるし、ホウゲツ学園でも夜は明かりがほとんど消えるので前世より遥かに星がクリアに見える。こことそう大差はない。
しかし、こうしてゆっくり星空を眺めるのは久し振りだと俺が思うぐらいだ。
恐らくテアも満天の星空をじっくりと観賞するのは初めてだろう。
学園都市トコハを訪れてからこっち、日々忙しくて機会を持てなかったから。
加えて、一定のリズムを刻むような波の音。
街中で空を見上げるのとはまた違った趣がある。
前世でもこんなに贅沢に時間を使ったことはないかもしれない。
大学の卒業旅行がそれのはずだったが、こうして転生する羽目になったし。
「……まあ、だから、そう長くは続かないよな」
俺が救世の転生者である限り。
その使命を果たすまでは穏やかな時間など許されないのかもしれない。
「おやおやー、気づかれましたかー」
「当たり前だろう」
気配に振り返り、それに応じて声をかけてきた存在に軽く嘆息しながら告げる。
普通に近寄ってこられて、気づかないはずがない。
余りに堂々とし過ぎていて、逆にここまで接近を許してしまったぐらいだ。
「さすがはー、救世の転生者ですねー」
間延びしたその喋り方と微かな笑みを浮かべた表情によって緊張感が削がれそうになってしまうが、告げられた一言に警戒心を一気に高めて身構える。
「お前は、何者だ?」
そして俺は、少女化魔物にしては珍しくふくよかな姿をした彼女を厳しく睨みつけながら、そう問いかけたのだった。
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