ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
222 〈写躯真影・混沌〉
「グオオオオオオオオオオオッ!!」
眼下には完全に理性をなくし、俺を威嚇するように咆哮するルエット。
動く山の如き巨体から発せられた叫びは、衝撃波を伴って大地を揺さぶる。
勿論、単なる叫び声が、アスカとの真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉の力で巨大な鳥人と化した俺の脅威になるようなことはあり得ない
だが、その常識外れの大きさは空で対峙した時の彼女を思い起こさせる。
とは言え、さすがに暴走したジズに比べれば大幅にスケールが小さいが……。
そこはあくまでも彼女は本物ではなく、三大特異思念集積体の一体たるベヒモスを模した偽物だから、というところか。
無意識的に、制御できる上限の大きさを判別したのだろう。
俺の方もこれ以上大きくなると、誤って周囲に甚大な被害を及ぼしそうだ。
「オオオオオオオオオオオオォォッ!!」
どうやらルエットは、狂乱しながらも完全に俺を敵と捉えているらしい。
こちらに向かって更に大きく吼えると同時に、大地を槍の如く鋭く研ぎ澄ませて俺に突き立てんとするように局所的な隆起を急激に発生させる。
対して俺は巨大な氷の塊を射出し、迫り来るそれを迎撃せんとした。
次の瞬間、激しく交錯する互いの攻撃。
数百メートル級の巨大重量物同士の衝突が、激しい音と共に世界を震わせる。
「……今は互角か」
俺の一撃は確かに大地の槍を破壊した。
が、彼女の攻撃もまた俺の氷塊を打ち砕いている。
どうやら同程度の威力を有しているようだ。
「なら、まずは数で押す!」
威力を保つために若干小さくした氷塊を数十と天から墜とし、その巨躯を狙う。
暴走した挙句に借り物の力を使っている彼女には、やはり素早く正確に槍を作り出して全てを撃ち落とすような真似はできないようだ。
いくつかの氷塊が諸に、そのサイに似た巨体の背に命中する。
が、陸上最強たるベヒモスと化した彼女がそれで怯むようなことはなく、全くものともしないまま反撃に移行して再び上空の俺へと無数の槍を伸ばした。
とは言え、あくまでも先程相打ちになった攻撃だ。
こちらはそれを氷で迎え撃ってもいいし、風の刃で切り刻んでもいい。
しかし、俺は次なる攻撃へと繋げるためにどちらも選択することなく、眼前に迫る巨大な槍をギリギリまで引きつけた。
そして〈裂雲雷鳥・不羈〉を以って、攻撃の隙間を縫うように空間を雷鳴と共に鋭角の軌道で翔けていき、ルエットへと肉薄する。
そのまま〈支天神鳥・煌翼〉の巨大化と身体強化の力を頼みにルエットを転倒させようと、その側面から体ごと突っ込んだ。
「がっ!?」
それは間違いなく会心の当たりだった。
微妙にずれたとか、受け流されたとか、そういったことはない。
にもかかわらず、ルエットは微動だにせず……。
「ぐ、う」
決して破壊され得ない壁に猛スピードで正面から衝突してしまったが如く、その衝撃のほとんどを俺が全身で受ける形で跳ね返されてしまった。
意識が飛びそうになり、一瞬遅れて全身に激痛が走る。
感覚的に、骨や内臓がやられたかもしれない。
放置すれば致命傷にもなり得るだろう。
まあ、それは〈支天神鳥・煌翼〉が付随的に持つ高い治癒力があれば何ら問題ないのだが、しかし、ここまでのダメージを受けたのは久方振りだ。
半ば自爆なのが恥ずかしい限りだが。
「何だ、こいつ。硬過ぎるぞ」
「地を司るベヒモス。その防御力は三大特異思念集積体の中でも随一とされておりますれば。全少女化魔物中最硬を誇ると言って間違いありませぬ」
そのまま無防備に反撃を受けることがないように即座に空中へと退避しながら忌々しく呟いた俺に、さもありなんと告げるアスカ。
正直、そういうことはもっと早く言って欲しかった。
……まあ、先に教えられていたとしても、実際に試さなければ甘く考えて同じような攻撃を仕かけていたかもしれないけれども。
人間、痛い目を見なければ骨身にしみないこともあるものだ。
そんなことをアスカの言葉を受けて俺が思うだけの猶予があったのは、ベヒモスと化したルエットがこちらに再び大地の槍を放つことがなかったからだ。
彼女は敵と見定めた眼前の存在が、しかし、己を傷つけることもできない取るに足らないものだと考えたのか、俺を無視するようにどこかへと歩き出していた。
一歩一歩、大地を揺さ振りながら。
己の目的を思い出したかのように。
その進行方向から察するに――。
「街へ戻る気か!」
首都リベランジェ、もとい大博物館へ向かい、今度こそウインテート連邦共和国の国宝たる第六位階の祈望之器アスクレピオスを奪い取ろうというのだろう。
暴走状態に陥ってしまう程の執着心だ。
かの杖を手にするまでは、自然に鎮静化することはないと見て間違いない。
だが、だからと言ってアスクレピオスを譲り渡す訳にはいかない。
第一、肥大化した彼女の今の状態では安全に受け渡すことも不可能だ。
下手をすれば、余波に巻き込まれて破壊されてしまいかねない。
「させるかっ!!」
勿論、放置という選択肢もない。
このまま行けば、まずリベランジェの街が壊滅してしまう。
だから俺はルエットの進行方向に回り込むと、地に足をつけて立ち塞がった。
そして地面を蹴って前に出る。
それに合わせるように、ルエットは邪魔者を排除せんと大地を隆起させた槍を撃ち放ってくるが、氷を纏った拳で砕きながら更に前へ。
サイに似た角を避けながら彼女の巨躯を受け止め、その場に押し留めんとした。
「く、ぬ、おおおっ!」
現時点の俺の攻撃では、硬い表皮を貫くことは難しい。
しかし、硬さと馬力はまた別の問題だ。
抑え込むだけなら不可能ではない。
周囲から隆起してくる大地の槍は、氷を撃ち出して破壊すれば脅威にならない。
後はこのまま時間を稼げばいい。
そうすれば、俺はその間フェリトとの真・複合発露〈共鳴調律・想歌〉を相互使用した循環共鳴によって、自らを強化し続けることができる。
その極限まで増幅した力を以ってルエットの意識を奪いさえすれば、これ以上の被害なく依頼を達成できるはずだ。
…………などという予測は、大概裏切られてしまうものだ。
「なっ!?」
突如として負荷が消え去り、前につんのめってしまう。
かと思えば急に太陽の光が遮られ、俺に影がかかった。
ハッとして見上げると、山の如き巨体の腹が視界一杯に映る。
それが重力に引かれて落下してくる。
「嘘だろっ!!」
あの硬度、あの重量のものを支えようとしても間違いなく負ける。
虫のように押し潰されてしまう。
だから俺は咄嗟に全速力で横に翔け、何とか落下地点から抜け出した。
直後、最初に俺が地面に投げつけた時よりも遥かに大きな衝撃と共に大地が砕かれ、高く高く土煙が舞い上がる。
今度はルエットの姿が見え辛くなる。
それを利用したかのように次の瞬間、完全にルエットの姿が見えなくなり、氷の粒子と風の探知が背後に馬鹿でかい存在が突然出現したことを知らせてきた。
「まさか転移かっ!?」
サイの如き角を振り上げ、それを俺に叩きつけようとするルエットを振り返る余裕もなく、その攻撃を探知の感覚のみで何とか回避する。
と同時に彼女は再び一時的に世界から消え去り、死角から一撃を狙ってきた。
明らかに、転移の複合発露以外では考えられない挙動。
これまで彼女がコピーしてきた少女化魔物の中に、この希少な複合発露を有していた者もいたのだろう。あるいは、狙ってコピーしておいたのかもしれない。
それをリベランジェへの移動に使わなかったのは、下手に転移すると街ごとアスクレピオスを破壊しかねないことを暴走状態にあっても分かっていたからか。
何にせよ、俺への攻撃に使用するのに躊躇いはないようだ。
「けど、これはつまり、所有する全ての複合発露を使用できるってことか?」
元々そうだったのか、暴走したからこうなったのかは分からない。
しかし、現状現実として。
彼女は己が持つ全てを暴走・複合発露として使用できると見て間違いない。
「くそっ、本当に厄介な」
暴走するドッペルゲンガーの少女化魔物。
その脅威をまだまだ甘く見ていたことを知って俺は思わず悪態をつき、別の複合発露が使用されることも頭に入れながら転移を利用した攻撃に備えた。
眼下には完全に理性をなくし、俺を威嚇するように咆哮するルエット。
動く山の如き巨体から発せられた叫びは、衝撃波を伴って大地を揺さぶる。
勿論、単なる叫び声が、アスカとの真・複合発露〈支天神鳥・煌翼〉の力で巨大な鳥人と化した俺の脅威になるようなことはあり得ない
だが、その常識外れの大きさは空で対峙した時の彼女を思い起こさせる。
とは言え、さすがに暴走したジズに比べれば大幅にスケールが小さいが……。
そこはあくまでも彼女は本物ではなく、三大特異思念集積体の一体たるベヒモスを模した偽物だから、というところか。
無意識的に、制御できる上限の大きさを判別したのだろう。
俺の方もこれ以上大きくなると、誤って周囲に甚大な被害を及ぼしそうだ。
「オオオオオオオオオオオオォォッ!!」
どうやらルエットは、狂乱しながらも完全に俺を敵と捉えているらしい。
こちらに向かって更に大きく吼えると同時に、大地を槍の如く鋭く研ぎ澄ませて俺に突き立てんとするように局所的な隆起を急激に発生させる。
対して俺は巨大な氷の塊を射出し、迫り来るそれを迎撃せんとした。
次の瞬間、激しく交錯する互いの攻撃。
数百メートル級の巨大重量物同士の衝突が、激しい音と共に世界を震わせる。
「……今は互角か」
俺の一撃は確かに大地の槍を破壊した。
が、彼女の攻撃もまた俺の氷塊を打ち砕いている。
どうやら同程度の威力を有しているようだ。
「なら、まずは数で押す!」
威力を保つために若干小さくした氷塊を数十と天から墜とし、その巨躯を狙う。
暴走した挙句に借り物の力を使っている彼女には、やはり素早く正確に槍を作り出して全てを撃ち落とすような真似はできないようだ。
いくつかの氷塊が諸に、そのサイに似た巨体の背に命中する。
が、陸上最強たるベヒモスと化した彼女がそれで怯むようなことはなく、全くものともしないまま反撃に移行して再び上空の俺へと無数の槍を伸ばした。
とは言え、あくまでも先程相打ちになった攻撃だ。
こちらはそれを氷で迎え撃ってもいいし、風の刃で切り刻んでもいい。
しかし、俺は次なる攻撃へと繋げるためにどちらも選択することなく、眼前に迫る巨大な槍をギリギリまで引きつけた。
そして〈裂雲雷鳥・不羈〉を以って、攻撃の隙間を縫うように空間を雷鳴と共に鋭角の軌道で翔けていき、ルエットへと肉薄する。
そのまま〈支天神鳥・煌翼〉の巨大化と身体強化の力を頼みにルエットを転倒させようと、その側面から体ごと突っ込んだ。
「がっ!?」
それは間違いなく会心の当たりだった。
微妙にずれたとか、受け流されたとか、そういったことはない。
にもかかわらず、ルエットは微動だにせず……。
「ぐ、う」
決して破壊され得ない壁に猛スピードで正面から衝突してしまったが如く、その衝撃のほとんどを俺が全身で受ける形で跳ね返されてしまった。
意識が飛びそうになり、一瞬遅れて全身に激痛が走る。
感覚的に、骨や内臓がやられたかもしれない。
放置すれば致命傷にもなり得るだろう。
まあ、それは〈支天神鳥・煌翼〉が付随的に持つ高い治癒力があれば何ら問題ないのだが、しかし、ここまでのダメージを受けたのは久方振りだ。
半ば自爆なのが恥ずかしい限りだが。
「何だ、こいつ。硬過ぎるぞ」
「地を司るベヒモス。その防御力は三大特異思念集積体の中でも随一とされておりますれば。全少女化魔物中最硬を誇ると言って間違いありませぬ」
そのまま無防備に反撃を受けることがないように即座に空中へと退避しながら忌々しく呟いた俺に、さもありなんと告げるアスカ。
正直、そういうことはもっと早く言って欲しかった。
……まあ、先に教えられていたとしても、実際に試さなければ甘く考えて同じような攻撃を仕かけていたかもしれないけれども。
人間、痛い目を見なければ骨身にしみないこともあるものだ。
そんなことをアスカの言葉を受けて俺が思うだけの猶予があったのは、ベヒモスと化したルエットがこちらに再び大地の槍を放つことがなかったからだ。
彼女は敵と見定めた眼前の存在が、しかし、己を傷つけることもできない取るに足らないものだと考えたのか、俺を無視するようにどこかへと歩き出していた。
一歩一歩、大地を揺さ振りながら。
己の目的を思い出したかのように。
その進行方向から察するに――。
「街へ戻る気か!」
首都リベランジェ、もとい大博物館へ向かい、今度こそウインテート連邦共和国の国宝たる第六位階の祈望之器アスクレピオスを奪い取ろうというのだろう。
暴走状態に陥ってしまう程の執着心だ。
かの杖を手にするまでは、自然に鎮静化することはないと見て間違いない。
だが、だからと言ってアスクレピオスを譲り渡す訳にはいかない。
第一、肥大化した彼女の今の状態では安全に受け渡すことも不可能だ。
下手をすれば、余波に巻き込まれて破壊されてしまいかねない。
「させるかっ!!」
勿論、放置という選択肢もない。
このまま行けば、まずリベランジェの街が壊滅してしまう。
だから俺はルエットの進行方向に回り込むと、地に足をつけて立ち塞がった。
そして地面を蹴って前に出る。
それに合わせるように、ルエットは邪魔者を排除せんと大地を隆起させた槍を撃ち放ってくるが、氷を纏った拳で砕きながら更に前へ。
サイに似た角を避けながら彼女の巨躯を受け止め、その場に押し留めんとした。
「く、ぬ、おおおっ!」
現時点の俺の攻撃では、硬い表皮を貫くことは難しい。
しかし、硬さと馬力はまた別の問題だ。
抑え込むだけなら不可能ではない。
周囲から隆起してくる大地の槍は、氷を撃ち出して破壊すれば脅威にならない。
後はこのまま時間を稼げばいい。
そうすれば、俺はその間フェリトとの真・複合発露〈共鳴調律・想歌〉を相互使用した循環共鳴によって、自らを強化し続けることができる。
その極限まで増幅した力を以ってルエットの意識を奪いさえすれば、これ以上の被害なく依頼を達成できるはずだ。
…………などという予測は、大概裏切られてしまうものだ。
「なっ!?」
突如として負荷が消え去り、前につんのめってしまう。
かと思えば急に太陽の光が遮られ、俺に影がかかった。
ハッとして見上げると、山の如き巨体の腹が視界一杯に映る。
それが重力に引かれて落下してくる。
「嘘だろっ!!」
あの硬度、あの重量のものを支えようとしても間違いなく負ける。
虫のように押し潰されてしまう。
だから俺は咄嗟に全速力で横に翔け、何とか落下地点から抜け出した。
直後、最初に俺が地面に投げつけた時よりも遥かに大きな衝撃と共に大地が砕かれ、高く高く土煙が舞い上がる。
今度はルエットの姿が見え辛くなる。
それを利用したかのように次の瞬間、完全にルエットの姿が見えなくなり、氷の粒子と風の探知が背後に馬鹿でかい存在が突然出現したことを知らせてきた。
「まさか転移かっ!?」
サイの如き角を振り上げ、それを俺に叩きつけようとするルエットを振り返る余裕もなく、その攻撃を探知の感覚のみで何とか回避する。
と同時に彼女は再び一時的に世界から消え去り、死角から一撃を狙ってきた。
明らかに、転移の複合発露以外では考えられない挙動。
これまで彼女がコピーしてきた少女化魔物の中に、この希少な複合発露を有していた者もいたのだろう。あるいは、狙ってコピーしておいたのかもしれない。
それをリベランジェへの移動に使わなかったのは、下手に転移すると街ごとアスクレピオスを破壊しかねないことを暴走状態にあっても分かっていたからか。
何にせよ、俺への攻撃に使用するのに躊躇いはないようだ。
「けど、これはつまり、所有する全ての複合発露を使用できるってことか?」
元々そうだったのか、暴走したからこうなったのかは分からない。
しかし、現状現実として。
彼女は己が持つ全てを暴走・複合発露として使用できると見て間違いない。
「くそっ、本当に厄介な」
暴走するドッペルゲンガーの少女化魔物。
その脅威をまだまだ甘く見ていたことを知って俺は思わず悪態をつき、別の複合発露が使用されることも頭に入れながら転移を利用した攻撃に備えた。
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