ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
216 ウインテート連邦共和国到着
『間もなく、ウインテート連邦共和国首都リベランジェに到着致します。着陸するに当たり、事故防止のため、座席に着いてシートベルトを締めて下さい』
暴走したアスカを鎮静化して飛行機もどきと合流してから早九時間。
伝声管から聞こえてきた客室乗務員の言葉に、祈念魔法を用いて無理矢理眠りについていた俺は即座に目を覚まし、指示通りに席に着いてシートベルトで体を固定した。
しばらくして減速が開始されたため、前のめりになるのを軽く踏ん張って抑え込む。
やがて機体は空中で一度完全に停止し、ホバリング状態から徐々に降下を始めた。
それもまた余り時間を置かずに終わりを告げ……。
『只今、着陸完了致しました。皆様、長旅お疲れ様でした。尚、六月下旬のリベランジェの朝はまだ意外と冷えますので一枚上着を羽織ることをお勧め致します』
マナプレーンが地面に降り立って少ししてから再びアナウンスが流れる。
後半部分はアドリブだろうか。
まあ、何にせよ、ようやく目的地に到着したようだ。
シートベルトつきのソファを離れ、個室を後にする。
すると、ほぼ同時にライムさん達もまた自身に宛がわれた部屋から出てきたので、そのまま彼らと一緒に乗降口の方へと向かう。
一つ廊下を曲がると既に出口を目指す他の乗客達の流れができていて、俺達もまたカムフラージュ用の鞄を片手にそこに加わってマナプレーンを降りた。
すると――。
「明らかに空気が違うな。乾燥している」
そうライムさんが呟いたように、ホウゲツとの違いが肌で感じられた。
前世の世界で言えばアメリカ西海岸、それもロサンゼルスの辺りに位置しているウインテート連邦共和国の首都リベランジェ。
六月下旬の今。梅雨真っ只中であるホウゲツとは大きく異なり、湿度も大分低く比較的涼しい……どころかアナウンス通り若干寒いぐらいだった。
ほんの少し前に日が出たばかりの時間帯だから尚更のことだろう。
まあ、自分の体表付近の温度を適度にコントロールするぐらい祈念魔法を用いれば不可能ではないが、またヨスキ村の常識は世の中の非常識となっては色々と困る。
主に精神干渉で周囲の認識を弄らなければならないライムさん達が。
なので、鞄の中から一枚薄手の外套を出して羽織っておくことにする。
「……ここがウインテート、か」
続けて、俺と同じように薄いコートを纏いながら告げるライムさん。
その口調はどこか感慨深げで、微妙にテンションが上がっているように感じられた。
彼のすぐ隣にいるルシネさんも同様だ。
視線の動きに若干ながら隠し切れない興奮が見て取れる。
「ライムさんは海外、初めてですか?」
「そうだ」
「ルシネさんも?」
「ああ。私も、ホウゲツで発生した魔物から変じた者だからな」
そういうことならば、その反応は理解できなくもない。
何ごとも初めての時には、言い知れぬ高揚感のようなものが無意識に生じるものだ。
初めての海外ともなれば尚更だろう。
……まあ、それはそれとして、だ。
「皆様、まずは係員の誘導に従い、移動の程お願い致します」
外国に来たならば、まずは入国審査を受けなければならない。
ウインテート連邦共和国側の担当官と思しき男性の指示を受け、今回の依頼を受けた他の人員共々空港内の入国管理局へと歩いていき、そこで各々その手続きを開始する。
とは言え、そもそもがウインテート側からの依頼で入国してきた訳だし、基本的に補導員としての身分証があれば面倒なことになったりはしないはずだ。
ランブリク共和国の時もそうだった。
「――万が一そちらのお二方が問題を起こされた場合は、身元保証人となっているイサク様が責任を問われますのでご注意下さい」
ただ、俺……と言うよりもライムさん達は、入国に関しては当然と言うべきか特殊な立場にあり、EX級補導員に紐づけされた特別な協力者という形で申請されているようだ。
動機の是非はどうあれ、犯罪者であることに間違いはないからな。
こればかりは仕方がないことだ。
勝手に身元保証人にされていることについては微妙な気持ちになるが……。
真面目に罪を償っているライムさん達が問題を起こすことはまずあり得ないし、この異国において二人の力は必要不可欠だろうから事後承諾としておこう。
「ようこそ、ウインテート連邦共和国へ。貴方の滞在がよきものとなりますように」
「ありがとうございます」
恙なく入国審査を終え、審査官に頭を下げて空港のロビーへと出る。
まだ俺達と先程のウインテート側の担当官の他に人影はない。
EX級補導員という身分は格別のものらしく、ライムさん達を連れた状態でも同じく審査を受けている他の人員達より遥かに速く入国審査を終えることができたようだった。
ライムさんとルシネさんも含めて。
結果時間が余り、一時的な待機場所となっていたそこで時間を潰す形となる。
ちなみに俺の同行者は一人増えている訳だが、複合発露の応用で情報通信的な役割を持つムニさんを利用してうまいこと先方に伝えたのか、特に問題視されることはなかった。
まあ、それは余談だが――。
「で、これからの段取りってどうなっているんですか?」
他の人員が集まるまでの間に、とライムさんに小声で確認をしておく。
今回の依頼は、怪盗ルエットとやらが出した次の満月の夜にウインテート連邦共和国の国宝である第六位階の祈望之器アスクレピオスを盗むという内容の予告状に端を発する。
その次の満月の夜というのは、昨日の時点で三日後。
つまり現時点からだと明後日ということになるはずだ。
「まずは宿泊するホテルに向かうことになるだろう。そこで荷物を置いて大博物館の近郊を視察する。……と言えば聞こえはいいが、実質的には単なる観光だな」
「え、それでいいんですか?」
「今日のところは時差ボケも考慮に入れて、一先ず体調を整えることを優先しているのだろう。そして明日、詳しく警備の分担に関する打ち合わせを行うはずだ」
まあ、そうか。
時差ボケならば最悪、祈念魔法で矯正することも不可能ではないかもしれないが、それにしたってその処置を行う時間が多少は必要となる。
精神的な疲労もあるだろうし……。
明日丸一日余裕があるのなら、今日は休んで万全の状態で依頼に臨んだ方がいい。
……そう考えると、この日程は全員が全員しっかりとパフォーマンスを発揮するには結構ギリギリだったと言うこともできるかもしれない。
後は、この人員で過不足があるのかないのか、だな。
「皆様、この度は我々の協力要請に応じて下さり、誠にありがとうございます」
ライムさん達の言葉を受けて少し頭の中で情報を整理していると、どうやら他の人員も全員入国審査を終えたようだ。
ロビーに集まった面々を前に、ウインテート側の担当官がそう言って頭を一つ下げる。
「私は皆様の案内役兼連絡係を致しますモリス・テール・クラッパーと申します。よろしくお願い致します」
更にそう続けたモリスさんは、もう一度礼をしてから顔を上げた。
その整った顔立ちは如何にも西洋的で髪もブロンド。
しかし、瞳の色は紫色で、少女化魔物の母親から生まれたことが分かる。
頬の辺りには若干そばかすが見て取れ、いい感じに親しみ易さを演出していた。
「これから皆様にはホテルにチェックインしていただき、それから体調に問題がない方には大博物館を私がご案内致します。まずはホテルへ向かいますので、ご同行下さい」
そう締め括り、再度頭を下げてから歩き出すモリスさん。
やはりライムさんから聞いていた通りのスケジュールになるようだ。
何にせよ、まずはその指示に従って俺達はモリスさんの先導で空港傍にあるホテルへと向かい、その受付で各々チェックインの手続きを行う。
飛行機でも個室だったので当然だろうが、それぞれに一部屋ずつの割り振り。
早朝にも程があるチェックインだが、空港に近いホテルであることもあってか、この早い時間帯でもいわゆるアーリーチェックインが可能なようだ。
そして一旦、宛がわれた部屋に行って荷物を置いた体で鞄を影の中にしまい込むと、集合時間に合わせて隣の部屋になったライムさん達と共にホテルのロビーに戻る。
「……随分、少なくなったな」
そこに集まった人数は全体の半数以下。
そんなすぐに時差ボケの影響が大きく出ることはないと思うが、機内で酒盛りをしていた人もいたので二日酔いなどが主な原因かもしれない。
とは言っても、彼らもプロなのだから明日までには体調を整えるだろう。
ともあれ――。
「では、参りましょうか」
そうして俺達は、一先ずウインテート連邦共和国大博物館を見学するため、軽く見て回った限り最高級レベルであろう豪華なホテルを後にしたのだった。
暴走したアスカを鎮静化して飛行機もどきと合流してから早九時間。
伝声管から聞こえてきた客室乗務員の言葉に、祈念魔法を用いて無理矢理眠りについていた俺は即座に目を覚まし、指示通りに席に着いてシートベルトで体を固定した。
しばらくして減速が開始されたため、前のめりになるのを軽く踏ん張って抑え込む。
やがて機体は空中で一度完全に停止し、ホバリング状態から徐々に降下を始めた。
それもまた余り時間を置かずに終わりを告げ……。
『只今、着陸完了致しました。皆様、長旅お疲れ様でした。尚、六月下旬のリベランジェの朝はまだ意外と冷えますので一枚上着を羽織ることをお勧め致します』
マナプレーンが地面に降り立って少ししてから再びアナウンスが流れる。
後半部分はアドリブだろうか。
まあ、何にせよ、ようやく目的地に到着したようだ。
シートベルトつきのソファを離れ、個室を後にする。
すると、ほぼ同時にライムさん達もまた自身に宛がわれた部屋から出てきたので、そのまま彼らと一緒に乗降口の方へと向かう。
一つ廊下を曲がると既に出口を目指す他の乗客達の流れができていて、俺達もまたカムフラージュ用の鞄を片手にそこに加わってマナプレーンを降りた。
すると――。
「明らかに空気が違うな。乾燥している」
そうライムさんが呟いたように、ホウゲツとの違いが肌で感じられた。
前世の世界で言えばアメリカ西海岸、それもロサンゼルスの辺りに位置しているウインテート連邦共和国の首都リベランジェ。
六月下旬の今。梅雨真っ只中であるホウゲツとは大きく異なり、湿度も大分低く比較的涼しい……どころかアナウンス通り若干寒いぐらいだった。
ほんの少し前に日が出たばかりの時間帯だから尚更のことだろう。
まあ、自分の体表付近の温度を適度にコントロールするぐらい祈念魔法を用いれば不可能ではないが、またヨスキ村の常識は世の中の非常識となっては色々と困る。
主に精神干渉で周囲の認識を弄らなければならないライムさん達が。
なので、鞄の中から一枚薄手の外套を出して羽織っておくことにする。
「……ここがウインテート、か」
続けて、俺と同じように薄いコートを纏いながら告げるライムさん。
その口調はどこか感慨深げで、微妙にテンションが上がっているように感じられた。
彼のすぐ隣にいるルシネさんも同様だ。
視線の動きに若干ながら隠し切れない興奮が見て取れる。
「ライムさんは海外、初めてですか?」
「そうだ」
「ルシネさんも?」
「ああ。私も、ホウゲツで発生した魔物から変じた者だからな」
そういうことならば、その反応は理解できなくもない。
何ごとも初めての時には、言い知れぬ高揚感のようなものが無意識に生じるものだ。
初めての海外ともなれば尚更だろう。
……まあ、それはそれとして、だ。
「皆様、まずは係員の誘導に従い、移動の程お願い致します」
外国に来たならば、まずは入国審査を受けなければならない。
ウインテート連邦共和国側の担当官と思しき男性の指示を受け、今回の依頼を受けた他の人員共々空港内の入国管理局へと歩いていき、そこで各々その手続きを開始する。
とは言え、そもそもがウインテート側からの依頼で入国してきた訳だし、基本的に補導員としての身分証があれば面倒なことになったりはしないはずだ。
ランブリク共和国の時もそうだった。
「――万が一そちらのお二方が問題を起こされた場合は、身元保証人となっているイサク様が責任を問われますのでご注意下さい」
ただ、俺……と言うよりもライムさん達は、入国に関しては当然と言うべきか特殊な立場にあり、EX級補導員に紐づけされた特別な協力者という形で申請されているようだ。
動機の是非はどうあれ、犯罪者であることに間違いはないからな。
こればかりは仕方がないことだ。
勝手に身元保証人にされていることについては微妙な気持ちになるが……。
真面目に罪を償っているライムさん達が問題を起こすことはまずあり得ないし、この異国において二人の力は必要不可欠だろうから事後承諾としておこう。
「ようこそ、ウインテート連邦共和国へ。貴方の滞在がよきものとなりますように」
「ありがとうございます」
恙なく入国審査を終え、審査官に頭を下げて空港のロビーへと出る。
まだ俺達と先程のウインテート側の担当官の他に人影はない。
EX級補導員という身分は格別のものらしく、ライムさん達を連れた状態でも同じく審査を受けている他の人員達より遥かに速く入国審査を終えることができたようだった。
ライムさんとルシネさんも含めて。
結果時間が余り、一時的な待機場所となっていたそこで時間を潰す形となる。
ちなみに俺の同行者は一人増えている訳だが、複合発露の応用で情報通信的な役割を持つムニさんを利用してうまいこと先方に伝えたのか、特に問題視されることはなかった。
まあ、それは余談だが――。
「で、これからの段取りってどうなっているんですか?」
他の人員が集まるまでの間に、とライムさんに小声で確認をしておく。
今回の依頼は、怪盗ルエットとやらが出した次の満月の夜にウインテート連邦共和国の国宝である第六位階の祈望之器アスクレピオスを盗むという内容の予告状に端を発する。
その次の満月の夜というのは、昨日の時点で三日後。
つまり現時点からだと明後日ということになるはずだ。
「まずは宿泊するホテルに向かうことになるだろう。そこで荷物を置いて大博物館の近郊を視察する。……と言えば聞こえはいいが、実質的には単なる観光だな」
「え、それでいいんですか?」
「今日のところは時差ボケも考慮に入れて、一先ず体調を整えることを優先しているのだろう。そして明日、詳しく警備の分担に関する打ち合わせを行うはずだ」
まあ、そうか。
時差ボケならば最悪、祈念魔法で矯正することも不可能ではないかもしれないが、それにしたってその処置を行う時間が多少は必要となる。
精神的な疲労もあるだろうし……。
明日丸一日余裕があるのなら、今日は休んで万全の状態で依頼に臨んだ方がいい。
……そう考えると、この日程は全員が全員しっかりとパフォーマンスを発揮するには結構ギリギリだったと言うこともできるかもしれない。
後は、この人員で過不足があるのかないのか、だな。
「皆様、この度は我々の協力要請に応じて下さり、誠にありがとうございます」
ライムさん達の言葉を受けて少し頭の中で情報を整理していると、どうやら他の人員も全員入国審査を終えたようだ。
ロビーに集まった面々を前に、ウインテート側の担当官がそう言って頭を一つ下げる。
「私は皆様の案内役兼連絡係を致しますモリス・テール・クラッパーと申します。よろしくお願い致します」
更にそう続けたモリスさんは、もう一度礼をしてから顔を上げた。
その整った顔立ちは如何にも西洋的で髪もブロンド。
しかし、瞳の色は紫色で、少女化魔物の母親から生まれたことが分かる。
頬の辺りには若干そばかすが見て取れ、いい感じに親しみ易さを演出していた。
「これから皆様にはホテルにチェックインしていただき、それから体調に問題がない方には大博物館を私がご案内致します。まずはホテルへ向かいますので、ご同行下さい」
そう締め括り、再度頭を下げてから歩き出すモリスさん。
やはりライムさんから聞いていた通りのスケジュールになるようだ。
何にせよ、まずはその指示に従って俺達はモリスさんの先導で空港傍にあるホテルへと向かい、その受付で各々チェックインの手続きを行う。
飛行機でも個室だったので当然だろうが、それぞれに一部屋ずつの割り振り。
早朝にも程があるチェックインだが、空港に近いホテルであることもあってか、この早い時間帯でもいわゆるアーリーチェックインが可能なようだ。
そして一旦、宛がわれた部屋に行って荷物を置いた体で鞄を影の中にしまい込むと、集合時間に合わせて隣の部屋になったライムさん達と共にホテルのロビーに戻る。
「……随分、少なくなったな」
そこに集まった人数は全体の半数以下。
そんなすぐに時差ボケの影響が大きく出ることはないと思うが、機内で酒盛りをしていた人もいたので二日酔いなどが主な原因かもしれない。
とは言っても、彼らもプロなのだから明日までには体調を整えるだろう。
ともあれ――。
「では、参りましょうか」
そうして俺達は、一先ずウインテート連邦共和国大博物館を見学するため、軽く見て回った限り最高級レベルであろう豪華なホテルを後にしたのだった。
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