ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
205 予告状とマナプレーン
「問題が二つ、ですか?」
軽く首を傾げながら、眼前のトリリス様とディームさんに確かめるように問う。
俺に対処して欲しい事案が二つもあったにもかかわらず、何故それを提示する前に旅行など勧めてきたのか、と何とも釈然としない気持ちを抱きながら。
しかし、トリリス様は一つも不自然な流れではないとでも言うような顔のまま――。
「うむ。その通りだゾ」
当たり前のように肯定するのみだった。
比較的良識のあるディームさんまでもが、同意するように頷いている。
まるで疑問を感じている俺がおかしいかのようだ。
「まずはこれを見て欲しいのです……」
そんな俺を余所に、ディームさんは妙なマークの入ったカードを差し出してきた。
納得しかねる気持ちを抱きながらも、それを受け取って視線を落とす。
目に映った方の面には、既に渡された時に視界に入っていた以上の情報はない。
なので、裏返して背面を見る。すると、そこには――。
「次なる満月の夜、国宝アスクレピオスを頂きに参上します……怪盗ルエット?」
そんなふざけた内容が、教科書のように美しく整った文字で書かれていた。
印字されたもののようにも見えるが、強化された視覚で確認する限りは手書きだ。
インクに書き順通りの流れが見える。
恐らく、筆跡で本人だと示しているつもりなのだろう……。
「イサク、大丈夫カ?」
どうやらカードに書かれた文章の理解を頭が拒否して現実逃避気味に余計なことに意識を向け、半ば固まってしまっていたらしい。
そこへトリリス様が心配そうに声をかけてくる。
我に返ってカードを再度確認するが、文字が変化したりはしない。現実だ。
……いや、でも、怪盗って。
「ええと、今度は何のネタですか?」
「そう疑うイサクの気持ちは、分からなくもないのです……」
「しかし、これは冗談でも何でもないのだゾ」
真面目な声で言うトリリス様は置いておくとして……。
俺の心中を察しているかのような労わりの目と微妙に困ったような表情のディームさんを見る限り、どうやらトリリス様のおふざけではないらしい。
だとすると、本当に怪盗などという戯けた輩がこの世界には実在するということか。
元の世界ではフィクションでしかお目にかかれない上、昨今ではネタキャラ寄りの扱いが目立つ感もある存在、という印象が強いのだが……。
「怪盗ルエット。主にウインテート連邦共和国にて活動し、基本的に金銭や貴金属を中心に富裕層から盗みを働き、そのほとんどを貧民にばら撒いているのだゾ」
「義賊って奴ですか?」
トリリス様の説明を聞くと、前世の日本で有名だった鼠小僧を思い出す。
もっとも、鼠小僧に関しては、現実には義賊でも何でもない単なるコソ泥でしかなかったとも聞くけども。何でも、博打と女と酒に使い果たしたという説が有力らしいし。
彼女の話が正しければ、こちらはガチだ。
「ワタシ達体制側としてはそのような呼び方をしたくはないが、どうやら一部ではそのような扱いも受けているようだナ」
まあ、何だかんだと言っても泥棒、犯罪者であることに変わりはない。
なので、トリリス様の言い分は理解できる。
だが、それはそれとして――。
「あの……ウインテートって、そんなのがありがたがられるぐらい貧しいんですか?」
ホウゲツを除く他の国に比べると少女化魔物の扱いも悪くないと聞いていたので、勝手にそれなりに豊かな国だと思っていたのだが。
「ウインテート連邦共和国は、州によって貧富の差が激しいのです……」
「自由を尊ぶ国。人間も少女化魔物も平等に自由。と言えば聞こえはいいがナ。ホウゲツに比べ、社会保障は最低限で一度貧民に落ちたら中々這い上がれないのだゾ」
「そもそもホウゲツに比べ、国土も人口も魔物の出現数も数十倍なのです。端々まで目が届かないのも仕方がないと言えば仕方がないことなのです……」
「一つの州が半分以上スラム街という場合もあるナ」
ウインテート連邦共和国の国土は、ザックリ言えばアメリカ大陸全土にわたると言う。
それ程に広大ならば確かに、ホウゲツとは比べものにならないようなレベルの貧富の差が発生してしまうのも、無理からぬことなのかもしれない。
そして、件の怪盗とやらが義賊として祭り上げられてしまうことも。
「……つまり、この予告状は紛うことなき本物で、その怪盗ルエットとやらがウインテートの国宝の一つであるアスクレピオスを狙っている、と」
「最初からそう言っているのだゾ。……そして、ウインテートのみでは対処することができないと判断され、友好国であるホウゲツに応援の要請が来た訳だナ」
若干不満げに説明を続けるトリリス様は一先ずスルーし、改めて予告状を見る。
標的となったアスクレピオス。それは癒やしの力を持つ第六位階の祈望之器だ。
義賊の側面があるということを考えると、あるいは、誰か第五位階辺りの複合発露か祈望之器による毒などの状態異常にでもなっているのかもしれない。
普通の怪我やら病気なら低位階の複製品でも十分なはずだし。
「……次の満月って――」
「三日後だナ」
「なので、イサクにはそれを防ぐ手助けをして欲しいのです……」
一般的な警備を増員するだけでは駄目なのか、と一瞬思うが、これまで駄目だったからウインテートからホウゲツに応援の要請があり、俺にまで回ってきたのだろう。
それで十分だったなら、とっくのとうに捕まっているはずだし。
「話は理解しました。当日に現地に赴いて警備に参加すればいいんですか?」
「いや、いくらイサクでもアスクレピオスが安置されている大博物館の全てをカバーするのは難しい広さなのだゾ。それに、切った張っただけで済む話でもないだろうからナ」
「ホウゲツからもある程度、少女征服者と少女化魔物を人員として出すのです。イサクには彼らと共にマナプレーンでウインテートに向かって欲しいのです……」
「マナプレーン、ですか」
飛行能力を持つ祈望之器ヴィマナ。その複製改良品たる飛行機もどき。
元の世界では飛行機に乗ったことはあるが、こちらでそれに乗ったことはなかったな。
初体験だ。そこは少し楽しみかもしれない。
「ただナ」
「ここでもう一つの問題が出てくるのです……」
「と言うと?」
難しい顔をする二人に、半分空の旅に思いを馳せていた意識を戻して尋ねる。
「実はナ。ホウゲツとウインテートの間ではマナプレーンによる定期便が運航しているのだが、しばらく前から太平洋上でとある少女化魔物の襲撃を受けて運休しているのだゾ」
「人形化魔物への対応でイサクが遠出できずにいた間に何度か補導を試みたのですが、相手が余りにも強大過ぎて対処できずにいるのです……」
「いやいや、それ、大問題じゃないですか。俺に旅行を勧めている場合じゃないでしょ」
それこそ、真っ先に緊急指名依頼を出してもいいぐらいの話ではないだろうか。
新技術のおかげで俺の外出制限が解除されたと言うのなら。
「単に順番が前後するだけなのだゾ」
「私達としては、イサクに自発的に旅行をする決断をして欲しかったのです……」
よくは分からない理屈だ。
正直、もし勧めに素直に応じた後でこの二つの問題について話をされていたら、思い切り水を差されたような気分になりそうなものだが。
まあ、トリリス様は言うに及ばず、比較的良識的であるディームさんも割とずれたところがあるようだから、そこを執拗に突っ込むと話が進まなくなりかねない。
二人とのつき合いもそれなりになってきたので、その程度のことは分かる。
何より今、大事なのは少女化魔物による襲撃の方だ。
「それで、その問題の少女化魔物ってどんな相手なんです?」
そうして気を取り直して尋ねた俺に対し、トリリス様は「それはナ……」と若干勿体振るように前置いてから口を開き――。
「三大特異思念集積体が一体、ジズの少女化魔物なのだゾ」
そう重々しく告げたのだった。
軽く首を傾げながら、眼前のトリリス様とディームさんに確かめるように問う。
俺に対処して欲しい事案が二つもあったにもかかわらず、何故それを提示する前に旅行など勧めてきたのか、と何とも釈然としない気持ちを抱きながら。
しかし、トリリス様は一つも不自然な流れではないとでも言うような顔のまま――。
「うむ。その通りだゾ」
当たり前のように肯定するのみだった。
比較的良識のあるディームさんまでもが、同意するように頷いている。
まるで疑問を感じている俺がおかしいかのようだ。
「まずはこれを見て欲しいのです……」
そんな俺を余所に、ディームさんは妙なマークの入ったカードを差し出してきた。
納得しかねる気持ちを抱きながらも、それを受け取って視線を落とす。
目に映った方の面には、既に渡された時に視界に入っていた以上の情報はない。
なので、裏返して背面を見る。すると、そこには――。
「次なる満月の夜、国宝アスクレピオスを頂きに参上します……怪盗ルエット?」
そんなふざけた内容が、教科書のように美しく整った文字で書かれていた。
印字されたもののようにも見えるが、強化された視覚で確認する限りは手書きだ。
インクに書き順通りの流れが見える。
恐らく、筆跡で本人だと示しているつもりなのだろう……。
「イサク、大丈夫カ?」
どうやらカードに書かれた文章の理解を頭が拒否して現実逃避気味に余計なことに意識を向け、半ば固まってしまっていたらしい。
そこへトリリス様が心配そうに声をかけてくる。
我に返ってカードを再度確認するが、文字が変化したりはしない。現実だ。
……いや、でも、怪盗って。
「ええと、今度は何のネタですか?」
「そう疑うイサクの気持ちは、分からなくもないのです……」
「しかし、これは冗談でも何でもないのだゾ」
真面目な声で言うトリリス様は置いておくとして……。
俺の心中を察しているかのような労わりの目と微妙に困ったような表情のディームさんを見る限り、どうやらトリリス様のおふざけではないらしい。
だとすると、本当に怪盗などという戯けた輩がこの世界には実在するということか。
元の世界ではフィクションでしかお目にかかれない上、昨今ではネタキャラ寄りの扱いが目立つ感もある存在、という印象が強いのだが……。
「怪盗ルエット。主にウインテート連邦共和国にて活動し、基本的に金銭や貴金属を中心に富裕層から盗みを働き、そのほとんどを貧民にばら撒いているのだゾ」
「義賊って奴ですか?」
トリリス様の説明を聞くと、前世の日本で有名だった鼠小僧を思い出す。
もっとも、鼠小僧に関しては、現実には義賊でも何でもない単なるコソ泥でしかなかったとも聞くけども。何でも、博打と女と酒に使い果たしたという説が有力らしいし。
彼女の話が正しければ、こちらはガチだ。
「ワタシ達体制側としてはそのような呼び方をしたくはないが、どうやら一部ではそのような扱いも受けているようだナ」
まあ、何だかんだと言っても泥棒、犯罪者であることに変わりはない。
なので、トリリス様の言い分は理解できる。
だが、それはそれとして――。
「あの……ウインテートって、そんなのがありがたがられるぐらい貧しいんですか?」
ホウゲツを除く他の国に比べると少女化魔物の扱いも悪くないと聞いていたので、勝手にそれなりに豊かな国だと思っていたのだが。
「ウインテート連邦共和国は、州によって貧富の差が激しいのです……」
「自由を尊ぶ国。人間も少女化魔物も平等に自由。と言えば聞こえはいいがナ。ホウゲツに比べ、社会保障は最低限で一度貧民に落ちたら中々這い上がれないのだゾ」
「そもそもホウゲツに比べ、国土も人口も魔物の出現数も数十倍なのです。端々まで目が届かないのも仕方がないと言えば仕方がないことなのです……」
「一つの州が半分以上スラム街という場合もあるナ」
ウインテート連邦共和国の国土は、ザックリ言えばアメリカ大陸全土にわたると言う。
それ程に広大ならば確かに、ホウゲツとは比べものにならないようなレベルの貧富の差が発生してしまうのも、無理からぬことなのかもしれない。
そして、件の怪盗とやらが義賊として祭り上げられてしまうことも。
「……つまり、この予告状は紛うことなき本物で、その怪盗ルエットとやらがウインテートの国宝の一つであるアスクレピオスを狙っている、と」
「最初からそう言っているのだゾ。……そして、ウインテートのみでは対処することができないと判断され、友好国であるホウゲツに応援の要請が来た訳だナ」
若干不満げに説明を続けるトリリス様は一先ずスルーし、改めて予告状を見る。
標的となったアスクレピオス。それは癒やしの力を持つ第六位階の祈望之器だ。
義賊の側面があるということを考えると、あるいは、誰か第五位階辺りの複合発露か祈望之器による毒などの状態異常にでもなっているのかもしれない。
普通の怪我やら病気なら低位階の複製品でも十分なはずだし。
「……次の満月って――」
「三日後だナ」
「なので、イサクにはそれを防ぐ手助けをして欲しいのです……」
一般的な警備を増員するだけでは駄目なのか、と一瞬思うが、これまで駄目だったからウインテートからホウゲツに応援の要請があり、俺にまで回ってきたのだろう。
それで十分だったなら、とっくのとうに捕まっているはずだし。
「話は理解しました。当日に現地に赴いて警備に参加すればいいんですか?」
「いや、いくらイサクでもアスクレピオスが安置されている大博物館の全てをカバーするのは難しい広さなのだゾ。それに、切った張っただけで済む話でもないだろうからナ」
「ホウゲツからもある程度、少女征服者と少女化魔物を人員として出すのです。イサクには彼らと共にマナプレーンでウインテートに向かって欲しいのです……」
「マナプレーン、ですか」
飛行能力を持つ祈望之器ヴィマナ。その複製改良品たる飛行機もどき。
元の世界では飛行機に乗ったことはあるが、こちらでそれに乗ったことはなかったな。
初体験だ。そこは少し楽しみかもしれない。
「ただナ」
「ここでもう一つの問題が出てくるのです……」
「と言うと?」
難しい顔をする二人に、半分空の旅に思いを馳せていた意識を戻して尋ねる。
「実はナ。ホウゲツとウインテートの間ではマナプレーンによる定期便が運航しているのだが、しばらく前から太平洋上でとある少女化魔物の襲撃を受けて運休しているのだゾ」
「人形化魔物への対応でイサクが遠出できずにいた間に何度か補導を試みたのですが、相手が余りにも強大過ぎて対処できずにいるのです……」
「いやいや、それ、大問題じゃないですか。俺に旅行を勧めている場合じゃないでしょ」
それこそ、真っ先に緊急指名依頼を出してもいいぐらいの話ではないだろうか。
新技術のおかげで俺の外出制限が解除されたと言うのなら。
「単に順番が前後するだけなのだゾ」
「私達としては、イサクに自発的に旅行をする決断をして欲しかったのです……」
よくは分からない理屈だ。
正直、もし勧めに素直に応じた後でこの二つの問題について話をされていたら、思い切り水を差されたような気分になりそうなものだが。
まあ、トリリス様は言うに及ばず、比較的良識的であるディームさんも割とずれたところがあるようだから、そこを執拗に突っ込むと話が進まなくなりかねない。
二人とのつき合いもそれなりになってきたので、その程度のことは分かる。
何より今、大事なのは少女化魔物による襲撃の方だ。
「それで、その問題の少女化魔物ってどんな相手なんです?」
そうして気を取り直して尋ねた俺に対し、トリリス様は「それはナ……」と若干勿体振るように前置いてから口を開き――。
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