ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
173 デート(同行者多数)
翌朝。レンリの希望を叶えるために学園長室に向かった俺は、国一番の複製師たるアマラさんとのアポイントをトリリス様に取って貰ってから女子寮に向かった。
そして時刻は午前八時五十五分。
約束の時間より五分早く待ち合わせ場所の女子寮前に着いたが、既にレンリはそこにいて、俺に気づくと嬉しそうに小走りで駆け寄ってきた。
「もしかして、結構待ってたのか?」
「いえ、今来たところですよ」
そして彼女は、俺の問いに混じり気のない笑顔と共に答える。
……無意識に、何ともテンプレなやり取りをしてしまった。
そう内心で苦笑していると――。
「デートの定番の台詞だね!」
「もう。サユキさんったら、茶化さないで下さい!」
より直球な内容をサユキが影の中から面白がっているような口調で言い、それに対してレンリは文句を口にしつつも楽しげな声で応じた。
「それをしたいがために、レンリは三十分も前から待機していましたからね」
「ラハは余計なことを言わないで下さい」
更にレンリの影からラハさんの声も聞こえてきたが、こちらには割と辛辣な対応。
その様子で一目瞭然だが、この場にいるのは俺達二人だけではない。
当然ながら俺達とサユキ、ラハさんのみという訳でもない。
イリュファ達もまた俺の影の中に揃っている。
デートとは言いながら同行者が多数だ。
勿論、レンリの反応を見ても分かる通り、彼女は了承済みだが……。
「と言うか、貴方はセトさん達を見守るはずでしょう?」
ラハさんの方は予定になかったらしく、丁寧な言葉遣いながら嘆息気味に問うた。
するとラハさんは、わざとらしく絶妙にゆっくりとレンリの影から出てきて口を開く。
「承知していますよ。少女化魔物使いの荒いレンリ。まだ彼らは全員部屋にいるようなので挨拶に来ただけです。皆様は存分に休日をお楽しみ下さい」
口調こそ淡々としているが、どことなく表現のチョイスが嫌味っぽい。
「では、ワタクシはこれで」
それから彼女はそう告げると俺達に一礼してから、男子寮の方へと歩いていった。
セト達の様子をそれとなく窺いに行ってくれるのだろうが……。
どうにも扱いに不満を感じているような反応だ。
折角の休日にやらされていることを考えると、正直理解できなくもないけれども。
「指切りの契約、ラハさんは迷惑してるんじゃ……」
「あのちょっと感じの悪い話し方は彼女の癖と言うか、性格のせいですので。どうか御容赦下さい。後で私の方から注意しておきますから」
「いや、そこまで気にしてはいないけど……性格?」
「はい。三大特異思念集積体の内の一体だからなのか、ラハは変なところでプライドが高いようで、些細なことでも優位に立ちたがるのです」
俺の問いかけにそう答えたレンリは、諦めたように深く嘆息した。
いわゆるマウントを取りたがる性格という訳だ。
割とよくいるタイプではあるが、実力が伴っているだけに少々たちが悪い、というところか。レンリは慣れているようだけれども。
「ともあれ、指切りの契約はお気になさらず。ちゃんと役割分担もしていますから。私がセトさん達の傍にいる授業中は、ラハは一人で気ままに行動しているようですし」
「そうなのか」
……まあ、二人が納得しているのなら俺が心配することではないだろう。
それはそれとして、今の口振りだとレンリはこれからも授業に出るつもりらしい。
「学生生活は退屈じゃないか?」
肉体はともかく、精神は二十歳の女性であるはずのレンリ。
そんな彼女が、十二歳の少女の振りをしながら新入生レベルの授業に拘束されているのは苦痛なのではないか。
ふと気になって、そう暗に問うように尋ねる。
まだ二日しか体験していない訳だが、大まかな雰囲気は既に把握しているはずだ。
「いえ。何だかんだ言って私は世間知らずの箱入り娘でしたので、ああいった多人数での勉強は新鮮でした。今のところ意外と楽しんでいますよ」
対して、そうした含意も十分に理解している様子を見せつつも、全く嘘をついている感じのない柔らかな笑顔で答えるレンリ。
「目的のために日々鍛錬漬けでしたので、同年代の子と接する機会もありませんでしたからね。……ようやく得た同級生達は皆、大分年下ですが」
そう考えると、生まれてから二十年の月日こそ経っているものの、他者との接点の少なかったレンリの精神年齢は意外と幼いと考えた方がいいのかもしれない。
……加えて、アガートラムとその複製品によって肉体の成長は抑制されている。
肉体年齢も精神年齢も低いとなると、それはもう実質的に単なる子供では? という疑問が浮かぶが、それは口にしないで心の奥底に封印しておく。
まあ、単なる子供は、大人もたじろぎそうな意思を宿した目をしないはずだけども。
「勿論、それも慣れていくと変わっていくのかもしれませんが。とりあえず、セトさん達に合わせて飛び級をしていくつもりですので問題ありませんよ」
それからレンリは、そう最後につけ加えて締め括った。
彼女自身が持ち出してきたものとは言え、指切りの契約のせいでその辺りに微妙な制限がついてしまっているのは少々申し訳がないが……。
実際、優秀な弟達ならばアロン兄さんよりも早く飛び級していけるのは間違いない。
少なくとも、九年間みっちりと退屈な授業に囚われるということはまずないだろう。
彼女の目的の進捗如何では、留学を切り上げて祖国に帰る可能性もあり得るし。
「それより旦那様。立ち話も何ですから、そろそろ行きましょう」
そう考えているとレンリが右隣に並んできて俺の右手を取りながら言い、それから促すように、彼女の身体能力からすると本当にささやかな力で引っ張り気味に一歩進む。
「ああ、そうだな」
そんなレンリに同意を示し……。
当然ながら、その手を振り解いて少女の姿をした相手を傷つける真似など俺にできるはずがないため、形としては仲よく手を繋いだまま一緒に歩き出す。
天下の往来でそうするのは少々体面が悪いかもしれないが、傍目には二次性徴前の子供同士だから、そこまで気にする必要はないだろう。
そのまま隣の彼女をチラリと見る。
今日の服装は学園の制服ではなく、ラハさんと同じくロシア的な民族衣装。
歩みに合わせてサラサラと流れつつ春の陽光を反射して輝く金髪と希少なグリーンアイは北欧的で、やはり後者の方がよく似合っているように思う。
勿論、袴との程よいミスマッチ感も、それはそれで全く以って悪くはないけれども。
「どうなさいました? 旦那様」
そんな俺の視線に、はにかんだような笑顔を浮かべながら問うレンリ。
デートと銘打つからには、その辺はしっかり口に出して褒めないといけないだろう。
「今日の服装。レンリらしくて可愛いと思って」
「かっ!? ……あ、ああ、ありがとうございます。その、とても嬉しいです」
頬を仄かに赤らめながら一層恥ずかしげに顔を隠すように背けたレンリだが、キュッと俺の手を握る力を僅かに強めた辺り、口に出した通り喜んでいるようだ。
「うーん、恥じらってるレンリちゃん、可愛いね!」
「こら、サユキ。空気を読みなさい!」
と、影の中で観客達が騒ぐ声が耳に届く。
「こっちを意識されたら、自然な反応が楽しめなくなるでしょ!」
「あ、そうだね。ごめんね、フェリトちゃん」
「そう思うなら、二人共もう少し声を潜めなさい」
「…………全員、大概なのです」
彼女達の姦しいリアクションにレンリは更に顔を赤くしたが、そうした恥ずかしさも含めて楽しんでいるかのように、顔を上げて俺に笑みを見せた。
そんな風に賑やかに移動し、ホウゲツ学園の校門前の停留所。
「あれがメルカバスですね」
そこで少し待ってから、バスもどきに共に乗り込む。
正直なところ俺もレンリも走るか飛ぶかした方が速いのだが、今日は名目上デートなのにそれでは風情も味気もないと、これを利用することにしていた。
彼女がそれに乗った経験がないと言っていたことも理由の一つだ。
「たまにはのんびりした移動も悪くないですね。旦那様が隣にいて下さるのなら特に」
隣同士で俺の肩に頭を乗せるように寄りかかってくるレンリ。
窓の外で、それなりに発展した和洋折衷な街並みが緩やかに過ぎ去っていく。
ここ二日慌ただしかっただけに、ゆっくりするのは確かに悪くないと思う。
まあ、その慌ただしかった原因は、今正にくっついている彼女だが。
ともあれ、この移動時間は穏やかさを楽しむように。一転して言葉は少なく。
彼女達と共にメルカバスに揺られ、やがて目的地近くの停留所に至る。
そこからアマラさんの住居兼工房まで、再びレンリと手を繋いで歩いていき……。
「イラッシャイマセ」
呼び鈴を鳴らすと、前回と同様に自動人形ターロスの複製品が俺達を出迎えた。
「え?」
既に一度それを見た俺は特に驚かなかった。
だが、初見のレンリはそうはいかなかったらしい。
彼女は一瞬目を大きく見開いて――。
「ピ、人形化魔物!? このっ!!」
対象の姿形を認識した瞬間、何やら盛大に勘違いしたらしく、真・複合発露〈制海神龍・轟渦〉を発動させて名もなき人形を全力でぶん殴らんと拳を振りかぶった。
「ま、待った待った!」
そんな彼女の行動を前に、俺もまた慌てて〈裂雲雷鳥・不羈〉と〈万有凍結・封緘〉を発動させ、氷でその動きを縛ると共に後ろから羽交い締めにして何とか抑え込む。
「だ、旦那様、危険です!!」
「いや、危険なのはレンリの方だから!」
俺が制止しても尚、人形に挑みかからんと拘束を振り解こうとするレンリ。
物凄い力だ。長くは持たないだろう。
妻を自称する彼女だが、もし本当に結婚して夫婦喧嘩となったら命が危ういかもしれない。そんな余計なことを考えながら……。
「この人形は複製師のアマラさんが――」
俺は眼前の人形が何なのかを早口かつ丁寧に説明し、レンリを落ち着かせたのだった。
そして時刻は午前八時五十五分。
約束の時間より五分早く待ち合わせ場所の女子寮前に着いたが、既にレンリはそこにいて、俺に気づくと嬉しそうに小走りで駆け寄ってきた。
「もしかして、結構待ってたのか?」
「いえ、今来たところですよ」
そして彼女は、俺の問いに混じり気のない笑顔と共に答える。
……無意識に、何ともテンプレなやり取りをしてしまった。
そう内心で苦笑していると――。
「デートの定番の台詞だね!」
「もう。サユキさんったら、茶化さないで下さい!」
より直球な内容をサユキが影の中から面白がっているような口調で言い、それに対してレンリは文句を口にしつつも楽しげな声で応じた。
「それをしたいがために、レンリは三十分も前から待機していましたからね」
「ラハは余計なことを言わないで下さい」
更にレンリの影からラハさんの声も聞こえてきたが、こちらには割と辛辣な対応。
その様子で一目瞭然だが、この場にいるのは俺達二人だけではない。
当然ながら俺達とサユキ、ラハさんのみという訳でもない。
イリュファ達もまた俺の影の中に揃っている。
デートとは言いながら同行者が多数だ。
勿論、レンリの反応を見ても分かる通り、彼女は了承済みだが……。
「と言うか、貴方はセトさん達を見守るはずでしょう?」
ラハさんの方は予定になかったらしく、丁寧な言葉遣いながら嘆息気味に問うた。
するとラハさんは、わざとらしく絶妙にゆっくりとレンリの影から出てきて口を開く。
「承知していますよ。少女化魔物使いの荒いレンリ。まだ彼らは全員部屋にいるようなので挨拶に来ただけです。皆様は存分に休日をお楽しみ下さい」
口調こそ淡々としているが、どことなく表現のチョイスが嫌味っぽい。
「では、ワタクシはこれで」
それから彼女はそう告げると俺達に一礼してから、男子寮の方へと歩いていった。
セト達の様子をそれとなく窺いに行ってくれるのだろうが……。
どうにも扱いに不満を感じているような反応だ。
折角の休日にやらされていることを考えると、正直理解できなくもないけれども。
「指切りの契約、ラハさんは迷惑してるんじゃ……」
「あのちょっと感じの悪い話し方は彼女の癖と言うか、性格のせいですので。どうか御容赦下さい。後で私の方から注意しておきますから」
「いや、そこまで気にしてはいないけど……性格?」
「はい。三大特異思念集積体の内の一体だからなのか、ラハは変なところでプライドが高いようで、些細なことでも優位に立ちたがるのです」
俺の問いかけにそう答えたレンリは、諦めたように深く嘆息した。
いわゆるマウントを取りたがる性格という訳だ。
割とよくいるタイプではあるが、実力が伴っているだけに少々たちが悪い、というところか。レンリは慣れているようだけれども。
「ともあれ、指切りの契約はお気になさらず。ちゃんと役割分担もしていますから。私がセトさん達の傍にいる授業中は、ラハは一人で気ままに行動しているようですし」
「そうなのか」
……まあ、二人が納得しているのなら俺が心配することではないだろう。
それはそれとして、今の口振りだとレンリはこれからも授業に出るつもりらしい。
「学生生活は退屈じゃないか?」
肉体はともかく、精神は二十歳の女性であるはずのレンリ。
そんな彼女が、十二歳の少女の振りをしながら新入生レベルの授業に拘束されているのは苦痛なのではないか。
ふと気になって、そう暗に問うように尋ねる。
まだ二日しか体験していない訳だが、大まかな雰囲気は既に把握しているはずだ。
「いえ。何だかんだ言って私は世間知らずの箱入り娘でしたので、ああいった多人数での勉強は新鮮でした。今のところ意外と楽しんでいますよ」
対して、そうした含意も十分に理解している様子を見せつつも、全く嘘をついている感じのない柔らかな笑顔で答えるレンリ。
「目的のために日々鍛錬漬けでしたので、同年代の子と接する機会もありませんでしたからね。……ようやく得た同級生達は皆、大分年下ですが」
そう考えると、生まれてから二十年の月日こそ経っているものの、他者との接点の少なかったレンリの精神年齢は意外と幼いと考えた方がいいのかもしれない。
……加えて、アガートラムとその複製品によって肉体の成長は抑制されている。
肉体年齢も精神年齢も低いとなると、それはもう実質的に単なる子供では? という疑問が浮かぶが、それは口にしないで心の奥底に封印しておく。
まあ、単なる子供は、大人もたじろぎそうな意思を宿した目をしないはずだけども。
「勿論、それも慣れていくと変わっていくのかもしれませんが。とりあえず、セトさん達に合わせて飛び級をしていくつもりですので問題ありませんよ」
それからレンリは、そう最後につけ加えて締め括った。
彼女自身が持ち出してきたものとは言え、指切りの契約のせいでその辺りに微妙な制限がついてしまっているのは少々申し訳がないが……。
実際、優秀な弟達ならばアロン兄さんよりも早く飛び級していけるのは間違いない。
少なくとも、九年間みっちりと退屈な授業に囚われるということはまずないだろう。
彼女の目的の進捗如何では、留学を切り上げて祖国に帰る可能性もあり得るし。
「それより旦那様。立ち話も何ですから、そろそろ行きましょう」
そう考えているとレンリが右隣に並んできて俺の右手を取りながら言い、それから促すように、彼女の身体能力からすると本当にささやかな力で引っ張り気味に一歩進む。
「ああ、そうだな」
そんなレンリに同意を示し……。
当然ながら、その手を振り解いて少女の姿をした相手を傷つける真似など俺にできるはずがないため、形としては仲よく手を繋いだまま一緒に歩き出す。
天下の往来でそうするのは少々体面が悪いかもしれないが、傍目には二次性徴前の子供同士だから、そこまで気にする必要はないだろう。
そのまま隣の彼女をチラリと見る。
今日の服装は学園の制服ではなく、ラハさんと同じくロシア的な民族衣装。
歩みに合わせてサラサラと流れつつ春の陽光を反射して輝く金髪と希少なグリーンアイは北欧的で、やはり後者の方がよく似合っているように思う。
勿論、袴との程よいミスマッチ感も、それはそれで全く以って悪くはないけれども。
「どうなさいました? 旦那様」
そんな俺の視線に、はにかんだような笑顔を浮かべながら問うレンリ。
デートと銘打つからには、その辺はしっかり口に出して褒めないといけないだろう。
「今日の服装。レンリらしくて可愛いと思って」
「かっ!? ……あ、ああ、ありがとうございます。その、とても嬉しいです」
頬を仄かに赤らめながら一層恥ずかしげに顔を隠すように背けたレンリだが、キュッと俺の手を握る力を僅かに強めた辺り、口に出した通り喜んでいるようだ。
「うーん、恥じらってるレンリちゃん、可愛いね!」
「こら、サユキ。空気を読みなさい!」
と、影の中で観客達が騒ぐ声が耳に届く。
「こっちを意識されたら、自然な反応が楽しめなくなるでしょ!」
「あ、そうだね。ごめんね、フェリトちゃん」
「そう思うなら、二人共もう少し声を潜めなさい」
「…………全員、大概なのです」
彼女達の姦しいリアクションにレンリは更に顔を赤くしたが、そうした恥ずかしさも含めて楽しんでいるかのように、顔を上げて俺に笑みを見せた。
そんな風に賑やかに移動し、ホウゲツ学園の校門前の停留所。
「あれがメルカバスですね」
そこで少し待ってから、バスもどきに共に乗り込む。
正直なところ俺もレンリも走るか飛ぶかした方が速いのだが、今日は名目上デートなのにそれでは風情も味気もないと、これを利用することにしていた。
彼女がそれに乗った経験がないと言っていたことも理由の一つだ。
「たまにはのんびりした移動も悪くないですね。旦那様が隣にいて下さるのなら特に」
隣同士で俺の肩に頭を乗せるように寄りかかってくるレンリ。
窓の外で、それなりに発展した和洋折衷な街並みが緩やかに過ぎ去っていく。
ここ二日慌ただしかっただけに、ゆっくりするのは確かに悪くないと思う。
まあ、その慌ただしかった原因は、今正にくっついている彼女だが。
ともあれ、この移動時間は穏やかさを楽しむように。一転して言葉は少なく。
彼女達と共にメルカバスに揺られ、やがて目的地近くの停留所に至る。
そこからアマラさんの住居兼工房まで、再びレンリと手を繋いで歩いていき……。
「イラッシャイマセ」
呼び鈴を鳴らすと、前回と同様に自動人形ターロスの複製品が俺達を出迎えた。
「え?」
既に一度それを見た俺は特に驚かなかった。
だが、初見のレンリはそうはいかなかったらしい。
彼女は一瞬目を大きく見開いて――。
「ピ、人形化魔物!? このっ!!」
対象の姿形を認識した瞬間、何やら盛大に勘違いしたらしく、真・複合発露〈制海神龍・轟渦〉を発動させて名もなき人形を全力でぶん殴らんと拳を振りかぶった。
「ま、待った待った!」
そんな彼女の行動を前に、俺もまた慌てて〈裂雲雷鳥・不羈〉と〈万有凍結・封緘〉を発動させ、氷でその動きを縛ると共に後ろから羽交い締めにして何とか抑え込む。
「だ、旦那様、危険です!!」
「いや、危険なのはレンリの方だから!」
俺が制止しても尚、人形に挑みかからんと拘束を振り解こうとするレンリ。
物凄い力だ。長くは持たないだろう。
妻を自称する彼女だが、もし本当に結婚して夫婦喧嘩となったら命が危ういかもしれない。そんな余計なことを考えながら……。
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