ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
124 慌ただしい一日はまだ終わらない?
「鰻重、おいしかったね!」
「……サユキは相変わらず能天気ね。おいしかったのは確かだけど」
少し疲労が溜まった体を軽く解しつつ、ホウゲツ学園の敷地内を職員寮へと歩く中。
足元の影からサユキ達の声が聞こえてくる。
「でも、あんな贅沢しちゃっていいのかしら、私」
「私もちょっと申し訳ないです」
とりあえず特上鰻重の味に満足したのは間違いないようだが、値段が値段だけにフェリトとリクルは心苦しくも思ったようだ。
「……最近は私の力、戦いの役に立ってないのに、です」
その理由をポツリと口にするリクル。
彼女の複合発露は第五位階のままであるだけに、第六位階の戦いにおいて目に見えた活躍をするのは中々厳しいものがあるのは事実。それはフェリトの力も同じだ。
とは言え、リクルの力はフェリトを、フェリトの力はサユキを救うのに必要不可欠だった訳で……正直、それだけで一生分の恩義を感じてもいいぐらい価値があると思う。
フェリトの方はそれとは別に、未だ行方知れずのままになっている姉への罪悪感もあるだろうが、鰻重を我慢したところで新たな情報が得られる訳でもない。
なので、俺は二人に対して遠慮しなくていいと口にしようとしたが、その前に――。
「必要経費というものです。複合発露はイメージ力によって威力も形も変わります。故に、それを活用する補導員は心を豊かに保ってこそ、安定した力を発揮できるのです」
先んじてイリュファが、最年長者の役目を果たすようにフォローを入れる。
彼女の複合発露も二人と同じく最近では影が薄くなっているが、知識面、家事面で存在感を出している自負があるからか堂々としたものだ。
「……それと私達の食事に何の関係があるのよ」
「自分だけ高価なものを食べ、契約している少女化魔物にはみすぼらしい食事を与えて悦に入る趣味などイサク様にはありません。サユキぐらい何も考えずに喜ぶ姿を見せた方が、イサク様もお喜びになります。そして、それが心の豊かさに繋がるのです」
俺の気持ちを断定するように語るイリュファ。
だが、言っていることは間違っていない。
人外ロリコンたる者、彼女達の笑顔こそ一番の心の保養となるのだから。
さすがはイリュファというところか。最もつき合いが長いだけのことはある。
まあ、サユキには微妙に辛辣なことを言っているが……。
「そうそう。イリュファさんの言う通り。イサクはサユキ達が嬉しいと嬉しくて、サユキ達もイサクが嬉しければ嬉しい。それでいいんだよ」
当のサユキは全く気にした様子を見せず、彼女らしい形で同意を示す。
ただし、イリュファの名前にはさん付け。もう五年以上は一緒に暮らしているはずだが、二人の間には何故か妙な距離感が構築されたままだった。
理由をサユキに聞いても「何となく」としか返ってこないため、その真相は不明だ。
あくまでも感覚的なものらしい。
「……サユキは単純ね。まあ、それもサユキらしいけど」
「ですです」
いずれにしても全くぶれないサユキの様子に、フェリトとリクルは苦笑気味に言う。
「もー、二人共酷いよ」
こちらには冗談っぽく文句を口にするサユキ。
二人とは完全に友達、いや、姉妹感覚だ。
それだけにイリュファへの態度が謎だが……まあ、今はいい。
「リクル」
「はいです」
イリュファとサユキがほとんど代弁してくれたにしても、ちゃんと俺の口からも言っておかなければ不義理というものだろう。
「いつもイリュファと一緒に身の回りのことをしてくれてるリクルには感謝してる。それだけじゃなく、最初に少女契約した少女化魔物がリクルだったからこそ今があるんだ。だから、リクルはもっと我儘になっていいんだぞ?」
「あ、ありがとうございますです」
対して、小さくない驚きとそれ以上の喜びの混じった声で礼を言うリクル。
やっぱり彼女は、ちょっと自己評価が低いのが玉に瑕だ。
出会った時も落ちこぼれのスライムを自称してたしな。
そんなことはないと、彼女には今後もちゃんと言葉にして伝えていくべきだろう。
「フェリト」
「うん」
「力を借りる代わりに、お姉さんを助ける取引を結んだ対等な関係のはずなのに、俺の方が役割を果たせてなくてごめん。正直、借りを全く返せてないよな」
「……そんなことないわ。トリリス様やヒメ様に姉さんの情報収集をお願いしてくれてるんでしょ? 私一人だけだったら何もできずにいただろうし」
素人が動いても空回りするだけだろうという判断。
フェリトも重々理解してフォローしてくれるが、直接行動していないと妙な引け目や焦りを感じてしまうものだ。何より――。
「それでも実質的に成果は出てないからな。完全に借りっ放しの状態だ。だから、せめて普段の生活は何の不自由もないようにしておきたいんだ」
「…………イサクも結構頑固よね」
「そうか?」
「そうよ。でも、その配慮、ありがたく受け取るわ」
ともすれば互いに自分が至らないから釣り合いが取れていないとループしそうになるのを、若干困ったような微苦笑と共にフェリトの方が折れる形でとめてくれた。
これも借りとしてカウントしておくとしよう。
しかし、特上鰻重一つで妙に真面目な話に発展してしまったな。
本当に皆、律義な子ばかりだ。
類は友を呼ぶとでも言うべきか。
そんなことを考えながら職員寮に入って廊下を進み、自室への角を曲がると……。
「ん?」
玄関の扉に背中を預け、ポツンと体育座りをしている人影が目に映った。
見慣れた橙色の髪。いつもの快活な雰囲気は鳴りを潜めているが、あれは――。
「ルトアさん? 何してるんです? そんなところで」
疲れた様子で膝を抱える彼女に声をかけると、ハッとしたように顔がこちらに向く。
それから彼女はガバッと立ち上がると、泣きそうな表情を浮かべて口を開いた。
「イサク君、どこに行ってたんですかあっ!?」
「い、いや、学園の外の店に夕食を食べに」
「それにしたって遅いですよお!!」
まあ、外食だし、十人前の注文だったからか少し時間もかかったからな。
……いや、そんなことは今はどうでもいい。
目下の問題は、何故彼女が玄関の前で待ち構えていたのか、だ。
「もしかしてストーカー?」
「こら、サユキ」
そんな様子のルトアさんを評し、影の中から口を出してきたサユキを窘める。
彼女とは真性少女契約を結んだ仲だ。
わざわざストーキングをする必要性はない。いつでも会いに来ていい。
「ルトアさん、一体どうしたんですか?」
「丁度仕事を上がろうとした瞬間にトリリス様から指示が来て、イサク君を探してたんです!! 真っ直ぐここに来たらいなくて、食堂にもいなくて、探し回って……」
どうやら完全に擦れ違いになってしまっていたようだ。
携帯電話なんてものはない世界だからな。こういうこともままある。
「ドアにメモでも挟んでおけばよかったのでは?」
「迅速、確実にとのお達しだったので」
確かに、ドアに挟んだメモでは気づかない可能性もあるし、書き方次第では下手をすると悪戯と思われる危険性がないでもない。
迅速かつ確実にとなると、直に会うのが手っ取り早いと考えても仕方がない。
会えれば、の話だが。
……一先ず時間がかかったとは言え、一応は会えたのだから話を進めよう。
「ええと、それでトリリス様の指示というのは?」
「あ、そうでした! 至急、学園長室に来て欲しいとのことです!!」
「ええ!? 今からですか?」
海外出張を終えて夕食も済ませ、完全にオフモードに入りつつあったのだが。
ここからもう一度、仕事モードに戻すのは少々難しい。
いや、世話になっているトリリス様の要請ならやむを得ないけれども。
「何でも、ウラバでの緊急依頼について話があると――」
「分かりましたすぐに行きます」
背筋を正して即座に掌を返す。
そういうことであれば、全く話は別だ。
親孝行は前世からの責務。宿願だ。多少の疲労など気にしていられない。
早速、踵を返そうとして……。
「ああ、そうだ。ルトアさん、これを」
一旦彼女を振り返り、俺は影の中から取り出したものを差し出した。
「これって、鍵!?」
「ええ。この部屋の鍵です」
また似たようなことがあると可哀想だ。
なので、自室の合い鍵を渡しておくことにする。
部屋の中の目立つ位置にメモを置いてくれれば、確実に伝わるはずだ。
「あわ、あわわ。合い鍵だなんて」
物凄い宝物を軽く渡された人のように狼狽し、変な動きをするルトアさん。
完全な不審人物だ。
そのままにしておくのは少々気が引ける。
が、今はトリリス様のところに急がなければならない。
「じゃあ、ルトアさん。また」
だから俺は、ちょっと申し訳なく思いながらもそんな彼女を放置し、今度こそ今し方来た道を引き返して学園長室を目指したのだった。
「……サユキは相変わらず能天気ね。おいしかったのは確かだけど」
少し疲労が溜まった体を軽く解しつつ、ホウゲツ学園の敷地内を職員寮へと歩く中。
足元の影からサユキ達の声が聞こえてくる。
「でも、あんな贅沢しちゃっていいのかしら、私」
「私もちょっと申し訳ないです」
とりあえず特上鰻重の味に満足したのは間違いないようだが、値段が値段だけにフェリトとリクルは心苦しくも思ったようだ。
「……最近は私の力、戦いの役に立ってないのに、です」
その理由をポツリと口にするリクル。
彼女の複合発露は第五位階のままであるだけに、第六位階の戦いにおいて目に見えた活躍をするのは中々厳しいものがあるのは事実。それはフェリトの力も同じだ。
とは言え、リクルの力はフェリトを、フェリトの力はサユキを救うのに必要不可欠だった訳で……正直、それだけで一生分の恩義を感じてもいいぐらい価値があると思う。
フェリトの方はそれとは別に、未だ行方知れずのままになっている姉への罪悪感もあるだろうが、鰻重を我慢したところで新たな情報が得られる訳でもない。
なので、俺は二人に対して遠慮しなくていいと口にしようとしたが、その前に――。
「必要経費というものです。複合発露はイメージ力によって威力も形も変わります。故に、それを活用する補導員は心を豊かに保ってこそ、安定した力を発揮できるのです」
先んじてイリュファが、最年長者の役目を果たすようにフォローを入れる。
彼女の複合発露も二人と同じく最近では影が薄くなっているが、知識面、家事面で存在感を出している自負があるからか堂々としたものだ。
「……それと私達の食事に何の関係があるのよ」
「自分だけ高価なものを食べ、契約している少女化魔物にはみすぼらしい食事を与えて悦に入る趣味などイサク様にはありません。サユキぐらい何も考えずに喜ぶ姿を見せた方が、イサク様もお喜びになります。そして、それが心の豊かさに繋がるのです」
俺の気持ちを断定するように語るイリュファ。
だが、言っていることは間違っていない。
人外ロリコンたる者、彼女達の笑顔こそ一番の心の保養となるのだから。
さすがはイリュファというところか。最もつき合いが長いだけのことはある。
まあ、サユキには微妙に辛辣なことを言っているが……。
「そうそう。イリュファさんの言う通り。イサクはサユキ達が嬉しいと嬉しくて、サユキ達もイサクが嬉しければ嬉しい。それでいいんだよ」
当のサユキは全く気にした様子を見せず、彼女らしい形で同意を示す。
ただし、イリュファの名前にはさん付け。もう五年以上は一緒に暮らしているはずだが、二人の間には何故か妙な距離感が構築されたままだった。
理由をサユキに聞いても「何となく」としか返ってこないため、その真相は不明だ。
あくまでも感覚的なものらしい。
「……サユキは単純ね。まあ、それもサユキらしいけど」
「ですです」
いずれにしても全くぶれないサユキの様子に、フェリトとリクルは苦笑気味に言う。
「もー、二人共酷いよ」
こちらには冗談っぽく文句を口にするサユキ。
二人とは完全に友達、いや、姉妹感覚だ。
それだけにイリュファへの態度が謎だが……まあ、今はいい。
「リクル」
「はいです」
イリュファとサユキがほとんど代弁してくれたにしても、ちゃんと俺の口からも言っておかなければ不義理というものだろう。
「いつもイリュファと一緒に身の回りのことをしてくれてるリクルには感謝してる。それだけじゃなく、最初に少女契約した少女化魔物がリクルだったからこそ今があるんだ。だから、リクルはもっと我儘になっていいんだぞ?」
「あ、ありがとうございますです」
対して、小さくない驚きとそれ以上の喜びの混じった声で礼を言うリクル。
やっぱり彼女は、ちょっと自己評価が低いのが玉に瑕だ。
出会った時も落ちこぼれのスライムを自称してたしな。
そんなことはないと、彼女には今後もちゃんと言葉にして伝えていくべきだろう。
「フェリト」
「うん」
「力を借りる代わりに、お姉さんを助ける取引を結んだ対等な関係のはずなのに、俺の方が役割を果たせてなくてごめん。正直、借りを全く返せてないよな」
「……そんなことないわ。トリリス様やヒメ様に姉さんの情報収集をお願いしてくれてるんでしょ? 私一人だけだったら何もできずにいただろうし」
素人が動いても空回りするだけだろうという判断。
フェリトも重々理解してフォローしてくれるが、直接行動していないと妙な引け目や焦りを感じてしまうものだ。何より――。
「それでも実質的に成果は出てないからな。完全に借りっ放しの状態だ。だから、せめて普段の生活は何の不自由もないようにしておきたいんだ」
「…………イサクも結構頑固よね」
「そうか?」
「そうよ。でも、その配慮、ありがたく受け取るわ」
ともすれば互いに自分が至らないから釣り合いが取れていないとループしそうになるのを、若干困ったような微苦笑と共にフェリトの方が折れる形でとめてくれた。
これも借りとしてカウントしておくとしよう。
しかし、特上鰻重一つで妙に真面目な話に発展してしまったな。
本当に皆、律義な子ばかりだ。
類は友を呼ぶとでも言うべきか。
そんなことを考えながら職員寮に入って廊下を進み、自室への角を曲がると……。
「ん?」
玄関の扉に背中を預け、ポツンと体育座りをしている人影が目に映った。
見慣れた橙色の髪。いつもの快活な雰囲気は鳴りを潜めているが、あれは――。
「ルトアさん? 何してるんです? そんなところで」
疲れた様子で膝を抱える彼女に声をかけると、ハッとしたように顔がこちらに向く。
それから彼女はガバッと立ち上がると、泣きそうな表情を浮かべて口を開いた。
「イサク君、どこに行ってたんですかあっ!?」
「い、いや、学園の外の店に夕食を食べに」
「それにしたって遅いですよお!!」
まあ、外食だし、十人前の注文だったからか少し時間もかかったからな。
……いや、そんなことは今はどうでもいい。
目下の問題は、何故彼女が玄関の前で待ち構えていたのか、だ。
「もしかしてストーカー?」
「こら、サユキ」
そんな様子のルトアさんを評し、影の中から口を出してきたサユキを窘める。
彼女とは真性少女契約を結んだ仲だ。
わざわざストーキングをする必要性はない。いつでも会いに来ていい。
「ルトアさん、一体どうしたんですか?」
「丁度仕事を上がろうとした瞬間にトリリス様から指示が来て、イサク君を探してたんです!! 真っ直ぐここに来たらいなくて、食堂にもいなくて、探し回って……」
どうやら完全に擦れ違いになってしまっていたようだ。
携帯電話なんてものはない世界だからな。こういうこともままある。
「ドアにメモでも挟んでおけばよかったのでは?」
「迅速、確実にとのお達しだったので」
確かに、ドアに挟んだメモでは気づかない可能性もあるし、書き方次第では下手をすると悪戯と思われる危険性がないでもない。
迅速かつ確実にとなると、直に会うのが手っ取り早いと考えても仕方がない。
会えれば、の話だが。
……一先ず時間がかかったとは言え、一応は会えたのだから話を進めよう。
「ええと、それでトリリス様の指示というのは?」
「あ、そうでした! 至急、学園長室に来て欲しいとのことです!!」
「ええ!? 今からですか?」
海外出張を終えて夕食も済ませ、完全にオフモードに入りつつあったのだが。
ここからもう一度、仕事モードに戻すのは少々難しい。
いや、世話になっているトリリス様の要請ならやむを得ないけれども。
「何でも、ウラバでの緊急依頼について話があると――」
「分かりましたすぐに行きます」
背筋を正して即座に掌を返す。
そういうことであれば、全く話は別だ。
親孝行は前世からの責務。宿願だ。多少の疲労など気にしていられない。
早速、踵を返そうとして……。
「ああ、そうだ。ルトアさん、これを」
一旦彼女を振り返り、俺は影の中から取り出したものを差し出した。
「これって、鍵!?」
「ええ。この部屋の鍵です」
また似たようなことがあると可哀想だ。
なので、自室の合い鍵を渡しておくことにする。
部屋の中の目立つ位置にメモを置いてくれれば、確実に伝わるはずだ。
「あわ、あわわ。合い鍵だなんて」
物凄い宝物を軽く渡された人のように狼狽し、変な動きをするルトアさん。
完全な不審人物だ。
そのままにしておくのは少々気が引ける。
が、今はトリリス様のところに急がなければならない。
「じゃあ、ルトアさん。また」
だから俺は、ちょっと申し訳なく思いながらもそんな彼女を放置し、今度こそ今し方来た道を引き返して学園長室を目指したのだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
52
-
-
3087
-
-
4
-
-
59
-
-
70810
-
-
221
-
-
37
-
-
140
-
-
11128
コメント