ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
092 作戦実行許可要請
「トリリス様、いらっしゃいますか? イサクです」
学園長室の扉をノックしてから中に声をかける。
完全なアポなしだが、状況が状況だと言い訳させて貰いたい。
とは言え、さすがに留守ならば出直さざるを得ないが……。
「イサクか。入って構わないゾ」
トリリス様が許可を出してくれたので、扉を開けて学園長室に入る。
いつも通り、体に不釣り合いな大きめの机にはトリリス様。
その傍にはディームさんも姿勢よく立っている。
真剣な口調が伝わったからかどうかは分からないが、今日は悪戯の気配はない。
「すみません。火急の用でして」
言いながら机の前、所定の位置まで行って立ち止まると、真面目な表情でディームさんが(彼女は割といつもそんな顔つきだが)口を開く。
「レギオの件についてなら把握しているのです……」
「え? もうですか?」
先回りするようにサラッと言われ、少し驚いた。
あの後、真っ直ぐに学園長室に来たはずなのだが。
「この学園の敷地内で起きている異常は、すぐにワタシ達のところに情報が来るようになっているのだゾ。今回は比較的危険度の高い事件だったようだナ」
言葉とは裏腹に特段大した危険などなかったかのようにトリリス様が言う。
割と大ごとになっていたと思うのだが……。
「え……っと、そこまで把握してたなら何で――」
「傍にイサクがいることも分かっていたからナ」
「イサクを信頼して、手を出さなかったのです……」
敢えて、という口振りのディームさん。ものは言いようだ。
ちょっと釈然としないが……。
よくよく考えれば、彼女達に対処する術がないはずがない。
いくら最高位、第六位階の力だったとしても、あくまでも未熟な子供の暴走。
俺がいなかったら間違いなく生徒に犠牲者が出ていた、というような状態では、子供達を預かる立場である教育機関として危機管理がなっていないにも程がある。
ましてや少女征服者を育て、時によっては高い戦闘力を有する方向へと導く専門機関でもあるホウゲツ学園なら尚更だろう。
万が一のことがあれば、介入してサクッと解決していたに違いない。
実際、例えばトリリス様の複合発露〈迷宮悪戯〉を利用すれば、レギオ達を早々に隔離してしまうぐらいのことは容易かったはずだ。
俺で何とかできそうな内は、実行する気はまるでなかったようだが。
それでも、その程度のことは思いついてもよかった。
弟達を心配する余り、少々冷静ではなくなっていたようだ。
そして落ち着いた今では、もしかすると生徒達の教育のために体よく利用されたのかもしれない、という邪推も脳裏を過ぎる。それは考え過ぎだろうけど。
と、自省を交え、そんなようなことを考えていると――。
「それで、一体どうしたのダ? レギオの処遇に関してカ?」
トリリス様がそう軽く首を傾げるようにしながら尋ねてきた。
おっと、そうだった。意識の焦点を彼女達に戻す。
「心配しなくても、私達としても突き放すつもりはないのです……」
「とは言え、さすがにこれが正真正銘最後のチャンスになるだろうけどナ」
どうやら二人共、俺の用件はレギオの事件の後処理に関することだと思ったらしい。
その辺りのことに関してシモン先生にお願いしていたことも、もしかしたら彼女達には既に伝わっているのかもしれない。
「用件は別ですが……ありがとうございます」
まあ、スパルタ指導でも何でもいいから、教育を諦めないで欲しいと学園長たるトリリス様には念を押しておきたかったのは事実だ。感謝を口にしておく。
……結局、あの規模の騒動ながら結果としては《・・・・・・》セト一人の負傷だけ済んだ。被害は最小限と言える。
しかし、家族が傷を負ったのだ。身内としては許しがたい気持ちも強い。
それに窒息死しかけた生徒もいる。
帳尻が合っていればいいという訳でもない。
仏の顔も三度。次はない。
だから、次を防ぐためにも今後は彼に少し積極的に干渉すべきかもしれない。
っと、また思考が横道に逸れたな。その辺りは後回しだ。
「本題は何なのです……?」
「はい。例の事件についてです。レギオはあのクラーケンの少女化魔物メイムを何者かから与えられたと言っていました。犯人と接触したと考えられます」
「それは……まあ、そうだろうナ」
「遺憾ではあるのですが、特別驚くことではないのです……」
ディームさんの言う通り、二人の顔に驚きの色はなく、代わりに苦虫を噛み潰したような表情だけが浮かんでいた。
「この時期にヨスキ村の人間でもない新入生が少女化魔物と少女契約を結ぶこと自体もあり得ないですし、まして、それが暴走状態ともなれば尚更なのです……」
「何者かの手が介在していると考えるのが妥当だゾ」
確かに、その程度のことなら状況から簡単に推測できるか。
もしレギオが自慢げに明かしていたことを耳にしていなかったとしても。
「改良された狂化隷属の矢とも言ってましたけど……」
彼の発言を思い出しながら告げると、二人はいつになく厳しい顔になった。
同じ少女化魔物として、当然ながら狂化隷属の矢は唾棄すべき道具なのだろう。
特に今回は、対象を暴走させるに飽き足らず、同意なき少女契約によって暴走・複合発露を使用できるようにまでなっている。
禁断の技術と言って過言ではないものだ。
心の奥に抱く怒りの感情も殊更強いに違いない。
それでも感情をむき出しにはしないのは、年の功という奴か。
「……実はそれは、最近人間至上主義組織スプレマシーにおいて新たに開発されたばかりのものらしいのだゾ。少し前に他国で存在が確認されている。つまり――」
「一連の事件の犯人は、人間至上主義者の可能性があるのです……」
トリリス様の言葉を引き継ぎ、ディームさんが告げる。
人間至上主義組織の関与、か。
……正直、今一ピンと来ないな。
新たな改良を施された最先端の技術。
子供の自尊心を満たすために、ホイホイと与えるとは考えにくい。
これまで正体がばれないように行動していた人物像からも外れる。
とは言え、ここで犯人の素性を想像していても仕方がない。
「……いずれにしても、子供達まで巻き込まれてしまっている以上、事件解決は待ったなしです。速やかに犯人を捕まえなければなりません」
「それは分かっているがナ。如何せん方法が難しいのはイサクも承知の上のはずだゾ」
犯人が持つと推測される第六位階の複合発露。認識の書き換え。
それに阻まれ、手がかりも碌に集まらないのが現状だ。しかし――。
「一つ。俺に考えがあります」
「考え?」
「はい。その方法の許可を頂きたく、ここに来ました」
訝しげに首を傾げるトリリス様にハッキリと告げる。
それから俺は、思いついた策を彼女とディームさんに詳しく語った。
「成程。救世の転生者特有のイメージ力にものを言わせた方法だナ」
「それなら、いけるかもしれないのです……」
聞き終えた二人は頷きながら納得の意を示す。
どうやら彼女達も可能性はあると判断してくれたようだ。
ならば、後はその策の問題となる二つの部分に関して許可を貰うだけだ。
「ついては、緊急時に無差別攻撃を行う可能性があることをお伝えしておきます」
「……まあ、こればかりは仕方がないナ。だが、余り派手にはやるんじゃないゾ」
まず一つ目。渋々という感じに受け入れるトリリス様。
そんな内容のものを許容してくれたのは勿論、無差別攻撃とは言っても俺が誰かに外傷を負わせることなどないと信頼してくれているからだ。
当然、俺もそのつもりはない
次。二つ目。
「それから、作戦開始から犯人が見つかって事件が解決するまでの間。この学園都市トコハには雪が降り続けます。それもご了承下さい」
「……関係各所への通達に一日は見て欲しいゾ」
「それと、作戦を実行に移したら、なるべく早く決着をつけて欲しいのです……」
「はい。それは勿論です」
可能なら、その日の内に解決まで持っていきたいところだ。
いや、即日犯人確保まで行かなければ、むしろ警戒されて失敗しかねない。
二度目はないだろう。実行即決着はマストだ。
「では、まずヒメにも伝えておかなければナ」
そして勢いよく立ち上がるトリリス様。
「イサク。作戦を開始しても問題ない時刻は、明日の正午までにはルトアに連絡しておくのです……」
「分かりました。今日は失礼します」
ディームさんに半ば促され、二人に頭を下げてから学園長室を後にする。
さて、俺はコンディションを整えておくとしよう。
学園長室の扉をノックしてから中に声をかける。
完全なアポなしだが、状況が状況だと言い訳させて貰いたい。
とは言え、さすがに留守ならば出直さざるを得ないが……。
「イサクか。入って構わないゾ」
トリリス様が許可を出してくれたので、扉を開けて学園長室に入る。
いつも通り、体に不釣り合いな大きめの机にはトリリス様。
その傍にはディームさんも姿勢よく立っている。
真剣な口調が伝わったからかどうかは分からないが、今日は悪戯の気配はない。
「すみません。火急の用でして」
言いながら机の前、所定の位置まで行って立ち止まると、真面目な表情でディームさんが(彼女は割といつもそんな顔つきだが)口を開く。
「レギオの件についてなら把握しているのです……」
「え? もうですか?」
先回りするようにサラッと言われ、少し驚いた。
あの後、真っ直ぐに学園長室に来たはずなのだが。
「この学園の敷地内で起きている異常は、すぐにワタシ達のところに情報が来るようになっているのだゾ。今回は比較的危険度の高い事件だったようだナ」
言葉とは裏腹に特段大した危険などなかったかのようにトリリス様が言う。
割と大ごとになっていたと思うのだが……。
「え……っと、そこまで把握してたなら何で――」
「傍にイサクがいることも分かっていたからナ」
「イサクを信頼して、手を出さなかったのです……」
敢えて、という口振りのディームさん。ものは言いようだ。
ちょっと釈然としないが……。
よくよく考えれば、彼女達に対処する術がないはずがない。
いくら最高位、第六位階の力だったとしても、あくまでも未熟な子供の暴走。
俺がいなかったら間違いなく生徒に犠牲者が出ていた、というような状態では、子供達を預かる立場である教育機関として危機管理がなっていないにも程がある。
ましてや少女征服者を育て、時によっては高い戦闘力を有する方向へと導く専門機関でもあるホウゲツ学園なら尚更だろう。
万が一のことがあれば、介入してサクッと解決していたに違いない。
実際、例えばトリリス様の複合発露〈迷宮悪戯〉を利用すれば、レギオ達を早々に隔離してしまうぐらいのことは容易かったはずだ。
俺で何とかできそうな内は、実行する気はまるでなかったようだが。
それでも、その程度のことは思いついてもよかった。
弟達を心配する余り、少々冷静ではなくなっていたようだ。
そして落ち着いた今では、もしかすると生徒達の教育のために体よく利用されたのかもしれない、という邪推も脳裏を過ぎる。それは考え過ぎだろうけど。
と、自省を交え、そんなようなことを考えていると――。
「それで、一体どうしたのダ? レギオの処遇に関してカ?」
トリリス様がそう軽く首を傾げるようにしながら尋ねてきた。
おっと、そうだった。意識の焦点を彼女達に戻す。
「心配しなくても、私達としても突き放すつもりはないのです……」
「とは言え、さすがにこれが正真正銘最後のチャンスになるだろうけどナ」
どうやら二人共、俺の用件はレギオの事件の後処理に関することだと思ったらしい。
その辺りのことに関してシモン先生にお願いしていたことも、もしかしたら彼女達には既に伝わっているのかもしれない。
「用件は別ですが……ありがとうございます」
まあ、スパルタ指導でも何でもいいから、教育を諦めないで欲しいと学園長たるトリリス様には念を押しておきたかったのは事実だ。感謝を口にしておく。
……結局、あの規模の騒動ながら結果としては《・・・・・・》セト一人の負傷だけ済んだ。被害は最小限と言える。
しかし、家族が傷を負ったのだ。身内としては許しがたい気持ちも強い。
それに窒息死しかけた生徒もいる。
帳尻が合っていればいいという訳でもない。
仏の顔も三度。次はない。
だから、次を防ぐためにも今後は彼に少し積極的に干渉すべきかもしれない。
っと、また思考が横道に逸れたな。その辺りは後回しだ。
「本題は何なのです……?」
「はい。例の事件についてです。レギオはあのクラーケンの少女化魔物メイムを何者かから与えられたと言っていました。犯人と接触したと考えられます」
「それは……まあ、そうだろうナ」
「遺憾ではあるのですが、特別驚くことではないのです……」
ディームさんの言う通り、二人の顔に驚きの色はなく、代わりに苦虫を噛み潰したような表情だけが浮かんでいた。
「この時期にヨスキ村の人間でもない新入生が少女化魔物と少女契約を結ぶこと自体もあり得ないですし、まして、それが暴走状態ともなれば尚更なのです……」
「何者かの手が介在していると考えるのが妥当だゾ」
確かに、その程度のことなら状況から簡単に推測できるか。
もしレギオが自慢げに明かしていたことを耳にしていなかったとしても。
「改良された狂化隷属の矢とも言ってましたけど……」
彼の発言を思い出しながら告げると、二人はいつになく厳しい顔になった。
同じ少女化魔物として、当然ながら狂化隷属の矢は唾棄すべき道具なのだろう。
特に今回は、対象を暴走させるに飽き足らず、同意なき少女契約によって暴走・複合発露を使用できるようにまでなっている。
禁断の技術と言って過言ではないものだ。
心の奥に抱く怒りの感情も殊更強いに違いない。
それでも感情をむき出しにはしないのは、年の功という奴か。
「……実はそれは、最近人間至上主義組織スプレマシーにおいて新たに開発されたばかりのものらしいのだゾ。少し前に他国で存在が確認されている。つまり――」
「一連の事件の犯人は、人間至上主義者の可能性があるのです……」
トリリス様の言葉を引き継ぎ、ディームさんが告げる。
人間至上主義組織の関与、か。
……正直、今一ピンと来ないな。
新たな改良を施された最先端の技術。
子供の自尊心を満たすために、ホイホイと与えるとは考えにくい。
これまで正体がばれないように行動していた人物像からも外れる。
とは言え、ここで犯人の素性を想像していても仕方がない。
「……いずれにしても、子供達まで巻き込まれてしまっている以上、事件解決は待ったなしです。速やかに犯人を捕まえなければなりません」
「それは分かっているがナ。如何せん方法が難しいのはイサクも承知の上のはずだゾ」
犯人が持つと推測される第六位階の複合発露。認識の書き換え。
それに阻まれ、手がかりも碌に集まらないのが現状だ。しかし――。
「一つ。俺に考えがあります」
「考え?」
「はい。その方法の許可を頂きたく、ここに来ました」
訝しげに首を傾げるトリリス様にハッキリと告げる。
それから俺は、思いついた策を彼女とディームさんに詳しく語った。
「成程。救世の転生者特有のイメージ力にものを言わせた方法だナ」
「それなら、いけるかもしれないのです……」
聞き終えた二人は頷きながら納得の意を示す。
どうやら彼女達も可能性はあると判断してくれたようだ。
ならば、後はその策の問題となる二つの部分に関して許可を貰うだけだ。
「ついては、緊急時に無差別攻撃を行う可能性があることをお伝えしておきます」
「……まあ、こればかりは仕方がないナ。だが、余り派手にはやるんじゃないゾ」
まず一つ目。渋々という感じに受け入れるトリリス様。
そんな内容のものを許容してくれたのは勿論、無差別攻撃とは言っても俺が誰かに外傷を負わせることなどないと信頼してくれているからだ。
当然、俺もそのつもりはない
次。二つ目。
「それから、作戦開始から犯人が見つかって事件が解決するまでの間。この学園都市トコハには雪が降り続けます。それもご了承下さい」
「……関係各所への通達に一日は見て欲しいゾ」
「それと、作戦を実行に移したら、なるべく早く決着をつけて欲しいのです……」
「はい。それは勿論です」
可能なら、その日の内に解決まで持っていきたいところだ。
いや、即日犯人確保まで行かなければ、むしろ警戒されて失敗しかねない。
二度目はないだろう。実行即決着はマストだ。
「では、まずヒメにも伝えておかなければナ」
そして勢いよく立ち上がるトリリス様。
「イサク。作戦を開始しても問題ない時刻は、明日の正午までにはルトアに連絡しておくのです……」
「分かりました。今日は失礼します」
ディームさんに半ば促され、二人に頭を下げてから学園長室を後にする。
さて、俺はコンディションを整えておくとしよう。
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