ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

088 狂化隷属状態改

「我流・氷鎧装フロストアーマード

 水難救助の合間に影の中から出てきたリクルと彼女の複合発露エクスコンプレックス如意フィギュア鋳我トランスファー〉で同化し、同時に俺自身の複合発露〈擬竜転身デミドラゴナイズ〉を使用。
 更にサユキとの真・複合発露〈万有アブソリュート凍結コンジール封緘サスペンド〉を発動させ、氷の鎧を生成していく。
 半球形の空間に向けて突っ込む直前にそれは完成し、俺は大きな水柱を上げながら巨大な直方体状に溜まった水へと突入した。
 それに反応したように、水中に激流が生じて俺の行く手を阻もうとしてくるが……。

「その程度で!」

 全身を覆う氷の鎧。その背面から水の流れに合わせて氷の塊を無数に射出し、その反作用の力を利用して推進力を無理矢理に得る。
 それによって俺は激流を突き抜け、半球形の空間の内部に入り込み――。

「セト!!」

 今正に弟に迫ろうとしているレギオが作り出した水の鞭の前に躍り出た。
 そして、分厚い氷に覆われた右腕をそれに叩きつける。
 すると、水の鞭はその衝撃によって弾け、周囲に水飛沫を撒き散らした。

「に、兄さん……」
「え? イサクさん、なの?」

 消沈した様子のセトの呟きに、この状態の俺を初めて見るラクラちゃんは最初戸惑った様子を見せながらも安堵の色濃い声を上げる。

 状況が状況。
 二人を安心させるために一言二言、声をかけてやるべきだったかもしれない。
 しかし、俺は予想外に大きく感じた右手の衝撃を前に、そうできずにいた。
 この半球形の空間を内包する直方体状の水溜まりが第六位階の力、レギオの傍に控えている少女化魔物ロリータ暴走パラ複合発露エクスコンプレックスであることは予想していたが……。

「この感覚……第六位階の力か?」

 今正にセト達へと向けてレギオが放った攻撃もまた、それに相当する位階なのは右手に受けた感覚からして間違いない。俄かには信じられないが……。

「何だ、お前は! 横からしゃしゃり出てきて!」

 俺の呟くような疑問には答えず、苛立ちを顕にするレギオ。
 とどめの一撃を妨害されたことに相当ご立腹のようだ。
 だが、怒りの度合いはこちらの方が遥かに上だ。
 何かやらかすとは思っていたが、さすがにこれはやり過ぎだ。

「俺はイサク・ヨスキ。セト・ヨスキの兄だ」

 だから俺は、そう声に怒気を込めて言葉を返し――。

「答えろ、レギオ・フレギウス。何故、第六位階の力を使うことができる」

 続けて、有無を言わせずに従わせるように威圧しながら命令した。
 対してレギオは一瞬怯んだように一歩後退りし、それからチラッと少女化魔物へと視線を向ける。それから自信を取り戻したように胸を張り、見下すように俺達を見た。
 やはりと言うべきか、彼女こそが驕り高ぶる理由のようだ。
 つまり自分の中には何一つとして根拠がない。
 にもかかわらず、自惚れている姿は滑稽極まりない。

「ヨスキ村の人間。セトの兄か。少なくとも弟よりも優れているらしい。なら、お前を倒せば、より確かな強さの証明となる!」

 レギオは道化のように演技がかった台詞を言いながら、再び水の鞭を作り出す。
 太い一本ではなく、セトをなぶるように打ち据えた十本。
 未知の相手に対しては、前者よりはベターな選択ではあるだろう。
 ベストな選択ではあり得ないが。

「レギオ、質問に答えろ」

 蠢く水を前に、淡々と繰り返す。
 レギオが調子に乗る程の複合発露を前にしながら全く恐れる様子のない俺の反応は彼にとって想定外だったのか、水の鞭の動きが鈍る。
 しかし、それは一瞬のこと。

「……選ばれて与えられたのさ。改良されて、暴走パラ複合発露エクスコンプレックスを安全に使えるようになった狂化隷属の矢をな。これさえあれば、真性少女契約ロリータコントラクトなど結ばずとも、第六位階の力を使うことができる。こんな風にな!!」

 相手の力量を推し量ることもできず、戦いを回避するというベストな選択を取ろうともしなかった愚かなレギオは得意げにそう告げると、水の鞭を一斉に振るった。
 上下左右、四方から蛇の如くうねりつつ、第六位階の攻撃が迫る。
 対して俺は全く動かず、無造作にそれらを受けた。

「与えられた、か。つまり、あの事件の……」
「なっ!?」

 そんな俺の行動と、自身の攻撃の結果にレギオは愕然と目を見開いた。
 増長しているにしても、随分と舐められたものだ。
 周囲の水を突破してきた時点で、相応の力があると分かりそうなものなのに。

 まして俺は氷の装甲を解除していない。変わらず身に纏っている。
 当然ながら、身動きをせずとも無防備ではない。
 いくら第六位階、しかも暴走状態と言えど、前世の記憶を持つことでイメージ力において上に立つ俺が作り出したそれを、一点集中すらせずに破壊できるはずもない。

「詳しく話を聞かせて貰おうか」

 それから俺はそう呟きながら、水の鞭が接触した部分から強制的に凍結させ、俺からレギオへと氷の橋を伸ばしていった。
 このまま彼の体まで到達すれば氷漬けになると分からせてやるように、緩やかに。
 力の差を理解して素直になって欲しいところだが……。

「こ、このっ!」

 それでもまだレギオは頑ななまま、水の鞭を一旦消し去って凍結から逃れた。
 別に、水を伝っていかなくともレギオ自身を凍らせることなど容易い。
 だが、その事実に気づく様子はない。思わず嘆息する。
 とは言え、何とか更生させたい側からすれば、問答無用で氷漬けにして警察に引き渡して終わりという訳にはいかない。
 その辺りは先達たる者の宿命という奴だ。

「悪いことは言わない。そんな紛いものの力に頼るな」
「紛いもの、だと?」
「ああ、そうだ。少女契約は互いの信頼の上に成り立つもの。一方的な隷属では、その少女化魔物の本来の力なんて発揮できない」
「黙れ! 少女化魔物如きを信頼だと!? 馬鹿げたことを言うな! こいつらは道具として使ってやることが最も効率的な方法なんだ! あいつらだってそうだった!」
「……あいつら?」

 引っかかりを覚えて問い気味に繰り返すが、レギオに答える気はないようだった。
 その様子を見る限り、恐らく動機にも深く関わるところだろう。
 事態を解決してから追及するとしよう。

「その効率的な方法とやらは、どうやら俺に傷一つつけられないみたいだけどな」
「黙れ! まだこれからだ!!」

 呆れ気味の俺の言葉に声を荒げ、再び水の鞭を振り回すレギオ。
 しかし、十本のそれでは威力が足りない。
 ならばと今度はセトにとどめを刺そうとした時と同様に、太く一本に収束させる。
 さっきから工夫も何もない。
 振り下ろされたそれを、氷の装甲に覆われた拳の一撃で粉砕にしてやる。

 この少女化魔物をあの事件の犯人から与えられてから恐らく、まだ一日かそこら。
 それでは完全に力を使いこなすこともできまい。
 手に入れた強い力(以前の彼に比べて)に舞い上がって襲撃してきたのだろうが、全く以って浅慮としか言いようがない。
 彼の未来のため、どうにかそれを分からせてやりたいところだが……。

「くそっ! おい、メイム!!」

 と、愚か者なりにこのままでは敵わないとさすがに悟ってか、レギオは後ろに控える少女化魔物を振り返って乱暴に呼びかけた。
 すると、グラウンドを覆っていた水が一瞬にして消滅すると共に、乏しい表情と負の感情に彩られた瞳の彼女が前に出てくる。
 安定した狂化隷属。矛盾した状態を強引に成り立たせていることが、その本来なら多彩な表情によって愛らしく彩られていただろう顔から分かる。

「そいつを殺せ!」

 そして、レギオはそんな憐憫を誘う状態にある少女にそう命令する。
 どうやら次は、この憐れな少女に戦わせるつもりのようだ。

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