ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
087 水難対応
グラウンドで授業を受けていたセト達、一年A組の面々を突然襲った水の塊。
それを前にして俺は咄嗟に跳躍すると共に祈念魔法で浮遊し、まず事態を正確に把握するため、探知を維持しながら全体を見回した。
「これは……」
高さ約六メートル程度の水がグラウンド全体を、もっと正しく言えば、きっちりグラウンドのみを覆っている。
その境界は、透明の板にでも区切られたかのように綺麗に水の壁で分かたれていた。
迫り来る流れの速さからして自然的なものではなかったが、視覚的にも異常な光景だ。
余程、制御がしっかりしていないとこのような光景は作り出せない。
「これを、レギオが?」
俺の知る彼の姿を思い浮かべ、余りの疑わしさに思わず呟く。
探知によると、攻撃の発生位置はグラウンドに面していた校舎の壁面付近。
さすがに外からあからさまに近づいてくるような愚は犯さず、襲撃者は校内を移動して窓際から攻撃を仕かけてきたようだが……。
探知で判別できるのはそこまで。誰がやったかまで分かる訳ではない。
そこに何かが存在するかしないか、そして形状から大まかな種族ぐらいまでは分かっても、個人の区別はつきにくいのだ。
余程分かり易い身体的特徴でもあれば話は別だが。
ファンタジー世界なら魔力の波長やら生命力やらで特定できそうなものだが、祈念魔法があるとは言え、ここは魔力やら生命力やらを感じることができる世界ではない。
コウモリやクジラ、イルカのような反響定位で探知するか、視覚を強化して直接見つけ出すぐらいが精々だ。
「イサク様!」
「分かってる!」
緊迫したイリュファの呼びかけに頷き、意識を水の中へと向ける。
どうやら内部では急な流れができているらしく、多くの生徒がもがき苦しんでいる。
気を失っている者もいる。
間違いなく、このままでは命に関わる。
何にせよ、救助が優先だ。
まずは救助と救助後の処置の人手を確保するために、意識を保って水から脱しようと足掻いているセト達やシモン先生を助け、それから……。
「っ!? あれは――」
取るべき行動を即座に脳内で組み立てていると、突如として一部の流れが急激に変わり、セトとラクラちゃんの二人だけが瞬く間にある方向へと流されていく。
かと思えば、その先で水中に突如として地面を起点に半球形の空間が生じた。
そこにセトとラクラちゃんは放り出され、咳き込みながら激しく呼吸する。
水の密室のような空間だが、酸素は供給されているようだ。
そして、そんな二人の前には二つの人影。
一つは見覚えのある少年。レギオ。
もう一つは深い青の髪と瞳が印象的な少女。間違いなく少女化魔物だろう。
全身が濡れているところを見るに、校舎の窓際から水の中を通ってきたに違いない。
「〈万有凍結・封緘〉!」
そんな状況を前に、俺はすぐさま真・複合発露を発動し、先にこの複合発露を潰すためにレギオと少女化魔物の拘束を試みた。
その方が救助がやり易くなる。
詳しい経緯を問い質すことも、後からで十分だ。しかし――。
「この水は……暴走・複合発露か」
彼らを氷漬けにしてしまおうと発動した俺の攻撃は、水の表面を多少凍りつかせるのみに終わった。続けて、氷の弾丸を放つが、彼らがいる空間の周囲は特に流れが激しいようで、相手に届く前に押し流されて阻まれてしまう。
間違いなく、位階は第六。俺の攻撃を緩和させたことから考えても、その上位はある。
とは言え、あのレギオがこの短期間で真性少女契約を結んだとは考えにくい。
その力の強さも含め、暴走隷属状態と考えるのが妥当だ。
高度に制御された複合発露は、少女化魔物のものと考えれば辻褄が合う。
「ちっ……仕方ない。セト、少しでも時間を稼いでくれ」
突破は不可能ではない。
しかし、想定通りにいっても少なからず時間を消費させられてしまう。
あの少女化魔物の戦力が如何ばかりかも読めない。てこずる可能性も十分ある。
そうなれば、流された生徒達の中に犠牲者が出てしまいかねない。
「やっぱり救助を先にするしかない」
忌々しく眉間にしわを寄せながら、セト達へと意識を残しつつ他の生徒に目を向ける。
「もう一度。〈万有凍結・封緘〉!」
同時に俺は一定の大きさの氷を複数生成し、それらを彼らの近くに高速で射出した。
あの半球形の空間から離れれば離れる程に、流れは比較的緩やかになっているようだ。
レギオの目的は自分を虚仮にしたセトとラクラちゃんのみで、その二人以外は助かろうと助かるまいとどうでもいいのだろう。
何にせよ、おかげで氷の塊は生徒達に容易く到達した。
「掴まれ!!」
水中故に声が届いたかどうかは分からないが、意識のある者は必死にそれに縋りつく。
気を失っている生徒に対しては、氷の形状をドーナツ状にすると共にうまくコントロールして引っかけた。
氷は密度が水よりも小さいため、水面に浮く。
この世界の人間も、氷を入れた飲みものを見て承知している。
その共通認識により、複合発露で生み出した氷であっても、いや、複合発露の産物だからか特に浮力が強く、救命浮輪の代わりとなって生徒達を水面へと引き上げる。
多くは息を荒くしているが、シモン先生とダン、トバルはすぐに呼吸を整えていた。
「シモン先生! 救命処置は任せます! ダン、トバルも手伝え!」
「わ、分かりました」
「「分かった!」」
ダンとトバルは命属性の祈念魔法もそれなりに使える。
死んでさえいなければ、どうにかなる。
まだ時間的には数分と経っていないから、たとえ呼吸が停止していたとしても救命処置は十分間に合うだろう。
祈念魔法のある世界では、いわゆる救命曲線が右に移行しているのは間違いない。
セトとラクラちゃん以外は一先ず何とかなったと考えていい。
後は――。
「あんちゃん、セトとラクラちゃんを!」
「ああ!」
トバルの言葉に頷き、視線をセト達へと戻す。
二人とレギオ、と言うより、セトとレギオの戦いは意識の端で常に把握していた。
水を束ね、鞭の如く振るうレギオ。その後ろに立つ少女化魔物は、グラウンドを満たした水を制御しているのか動かない。
対するセト。彼は当初、前回同様に認識欺瞞を使用してレギオを拘束しようとしていたが、相手も対策を取っていたようで防がれてしまった。
そして、今回ばかりは祈念魔法のみでは対処できないと判断してか、母さんから受け継いだ複合発露〈擬竜転身〉を使用している。
腰を抜かした様子のラクラちゃんを背に、彼女を守るように。
だが、やがてレギオが繰り出す水の鞭に徐々に打たれ、動きが鈍っていく。
レギオの攻撃は、少なくとも第五位階中位以上の力を持つらしかった。
そして今。
完全に動きを止めて膝を突いてしまったセトに、レギオは止めを刺そうと一際太く水を束ね、十分に敗北感を味わわせようとするように緩やかに歩み寄ろうとしていた。
「セト! ラクラちゃん!」
絶体絶命の危機に、寄り添いながら悔しげにレギオを睨む二人。
急いで彼らの下に向かわなければならない。
眼前の、第六位階の力を持つ水を即座に突破して。
だから俺は迷うことなく、そのための力を行使しながら水の壁に突っ込んだのだった。
それを前にして俺は咄嗟に跳躍すると共に祈念魔法で浮遊し、まず事態を正確に把握するため、探知を維持しながら全体を見回した。
「これは……」
高さ約六メートル程度の水がグラウンド全体を、もっと正しく言えば、きっちりグラウンドのみを覆っている。
その境界は、透明の板にでも区切られたかのように綺麗に水の壁で分かたれていた。
迫り来る流れの速さからして自然的なものではなかったが、視覚的にも異常な光景だ。
余程、制御がしっかりしていないとこのような光景は作り出せない。
「これを、レギオが?」
俺の知る彼の姿を思い浮かべ、余りの疑わしさに思わず呟く。
探知によると、攻撃の発生位置はグラウンドに面していた校舎の壁面付近。
さすがに外からあからさまに近づいてくるような愚は犯さず、襲撃者は校内を移動して窓際から攻撃を仕かけてきたようだが……。
探知で判別できるのはそこまで。誰がやったかまで分かる訳ではない。
そこに何かが存在するかしないか、そして形状から大まかな種族ぐらいまでは分かっても、個人の区別はつきにくいのだ。
余程分かり易い身体的特徴でもあれば話は別だが。
ファンタジー世界なら魔力の波長やら生命力やらで特定できそうなものだが、祈念魔法があるとは言え、ここは魔力やら生命力やらを感じることができる世界ではない。
コウモリやクジラ、イルカのような反響定位で探知するか、視覚を強化して直接見つけ出すぐらいが精々だ。
「イサク様!」
「分かってる!」
緊迫したイリュファの呼びかけに頷き、意識を水の中へと向ける。
どうやら内部では急な流れができているらしく、多くの生徒がもがき苦しんでいる。
気を失っている者もいる。
間違いなく、このままでは命に関わる。
何にせよ、救助が優先だ。
まずは救助と救助後の処置の人手を確保するために、意識を保って水から脱しようと足掻いているセト達やシモン先生を助け、それから……。
「っ!? あれは――」
取るべき行動を即座に脳内で組み立てていると、突如として一部の流れが急激に変わり、セトとラクラちゃんの二人だけが瞬く間にある方向へと流されていく。
かと思えば、その先で水中に突如として地面を起点に半球形の空間が生じた。
そこにセトとラクラちゃんは放り出され、咳き込みながら激しく呼吸する。
水の密室のような空間だが、酸素は供給されているようだ。
そして、そんな二人の前には二つの人影。
一つは見覚えのある少年。レギオ。
もう一つは深い青の髪と瞳が印象的な少女。間違いなく少女化魔物だろう。
全身が濡れているところを見るに、校舎の窓際から水の中を通ってきたに違いない。
「〈万有凍結・封緘〉!」
そんな状況を前に、俺はすぐさま真・複合発露を発動し、先にこの複合発露を潰すためにレギオと少女化魔物の拘束を試みた。
その方が救助がやり易くなる。
詳しい経緯を問い質すことも、後からで十分だ。しかし――。
「この水は……暴走・複合発露か」
彼らを氷漬けにしてしまおうと発動した俺の攻撃は、水の表面を多少凍りつかせるのみに終わった。続けて、氷の弾丸を放つが、彼らがいる空間の周囲は特に流れが激しいようで、相手に届く前に押し流されて阻まれてしまう。
間違いなく、位階は第六。俺の攻撃を緩和させたことから考えても、その上位はある。
とは言え、あのレギオがこの短期間で真性少女契約を結んだとは考えにくい。
その力の強さも含め、暴走隷属状態と考えるのが妥当だ。
高度に制御された複合発露は、少女化魔物のものと考えれば辻褄が合う。
「ちっ……仕方ない。セト、少しでも時間を稼いでくれ」
突破は不可能ではない。
しかし、想定通りにいっても少なからず時間を消費させられてしまう。
あの少女化魔物の戦力が如何ばかりかも読めない。てこずる可能性も十分ある。
そうなれば、流された生徒達の中に犠牲者が出てしまいかねない。
「やっぱり救助を先にするしかない」
忌々しく眉間にしわを寄せながら、セト達へと意識を残しつつ他の生徒に目を向ける。
「もう一度。〈万有凍結・封緘〉!」
同時に俺は一定の大きさの氷を複数生成し、それらを彼らの近くに高速で射出した。
あの半球形の空間から離れれば離れる程に、流れは比較的緩やかになっているようだ。
レギオの目的は自分を虚仮にしたセトとラクラちゃんのみで、その二人以外は助かろうと助かるまいとどうでもいいのだろう。
何にせよ、おかげで氷の塊は生徒達に容易く到達した。
「掴まれ!!」
水中故に声が届いたかどうかは分からないが、意識のある者は必死にそれに縋りつく。
気を失っている生徒に対しては、氷の形状をドーナツ状にすると共にうまくコントロールして引っかけた。
氷は密度が水よりも小さいため、水面に浮く。
この世界の人間も、氷を入れた飲みものを見て承知している。
その共通認識により、複合発露で生み出した氷であっても、いや、複合発露の産物だからか特に浮力が強く、救命浮輪の代わりとなって生徒達を水面へと引き上げる。
多くは息を荒くしているが、シモン先生とダン、トバルはすぐに呼吸を整えていた。
「シモン先生! 救命処置は任せます! ダン、トバルも手伝え!」
「わ、分かりました」
「「分かった!」」
ダンとトバルは命属性の祈念魔法もそれなりに使える。
死んでさえいなければ、どうにかなる。
まだ時間的には数分と経っていないから、たとえ呼吸が停止していたとしても救命処置は十分間に合うだろう。
祈念魔法のある世界では、いわゆる救命曲線が右に移行しているのは間違いない。
セトとラクラちゃん以外は一先ず何とかなったと考えていい。
後は――。
「あんちゃん、セトとラクラちゃんを!」
「ああ!」
トバルの言葉に頷き、視線をセト達へと戻す。
二人とレギオ、と言うより、セトとレギオの戦いは意識の端で常に把握していた。
水を束ね、鞭の如く振るうレギオ。その後ろに立つ少女化魔物は、グラウンドを満たした水を制御しているのか動かない。
対するセト。彼は当初、前回同様に認識欺瞞を使用してレギオを拘束しようとしていたが、相手も対策を取っていたようで防がれてしまった。
そして、今回ばかりは祈念魔法のみでは対処できないと判断してか、母さんから受け継いだ複合発露〈擬竜転身〉を使用している。
腰を抜かした様子のラクラちゃんを背に、彼女を守るように。
だが、やがてレギオが繰り出す水の鞭に徐々に打たれ、動きが鈍っていく。
レギオの攻撃は、少なくとも第五位階中位以上の力を持つらしかった。
そして今。
完全に動きを止めて膝を突いてしまったセトに、レギオは止めを刺そうと一際太く水を束ね、十分に敗北感を味わわせようとするように緩やかに歩み寄ろうとしていた。
「セト! ラクラちゃん!」
絶体絶命の危機に、寄り添いながら悔しげにレギオを睨む二人。
急いで彼らの下に向かわなければならない。
眼前の、第六位階の力を持つ水を即座に突破して。
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